【薬局・ドラッグストア向け】オンライン服薬指導の要件緩和と対応のポイント〜改正薬機法が拓く新たなビジネスと法務〜

2023年に施行された改正薬機法と、オンライン服薬指導に関する制度変更は、薬局・ドラッグストア事業者に大きな影響を与えています。

事業の拡大や効率化のためにオンライン服薬指導の導入を検討されている企業のみなさまは、この制度変更のポイントと、システム導入・運用における法的な注意点を理解し、適切な対応をしましょう。

本記事では、オンライン服薬指導の要件緩和の背景と、それに伴う法務上の注意点について、専門家の視点から解説します。

目次

オンライン服薬指導の要件が大幅に緩和

2023年、厚生労働省は「オンライン服薬指導の実施要領について」を通知し、オンライン服薬指導に関する要件を大きく緩和しました。

これは、これまで特例として認められていた状況から、オンライン服薬指導をより普遍的なものへと位置づけるものです。

薬剤師が薬局外でオンライン服薬指導を実施可能に

今回の改正により、薬局開設者が適切と判断すれば、薬剤師は調剤を行った薬局外の場所からオンライン服薬指導を行うことが可能になりました。
これは、以前は原則として薬局内で行う必要があった運用が大きく変わる画期的な変更です。

しかし、薬局外で服薬指導を行う場合でも、いくつかの要件を満たす必要があります。
例えば、

  • 調剤を行う薬剤師と相互に連絡が取れる場所であること
  • 患者のプライバシーに配慮されていること
  • 騒音等により適切な判断が困難になるおそれがある場所ではないこと
  • 第三者が容易に立ち入ることができない空間であること
  • 薬局に所属し労務を提供している薬剤師が実施すること

これらの要件は、患者の安全と医療の質を確保しつつ、柔軟な働き方を認めるためのものです。
特に、「第三者が容易に立ち入ることができない空間」という要件は、患者のプライバシー情報保護の観点から非常に重要です。

リフィル処方箋の活用

2022年4月から導入された「リフィル処方箋」は、症状が安定している患者について、医師が同じ薬を繰り返し調剤できるようにする処方箋です。これによって、患者は医療機関を受診する手間や費用を減らし、よりスムーズに薬を受け取れるようになります。

オンライン服薬指導とリフィル処方箋を組み合わせることで、患者にとっての利便性は飛躍的に向上し、薬局側にとっても新たなビジネスモデルを構築する機会が生まれます。

ただし、リフィル処方箋をオンライン服薬指導で活用するためには、処方箋の原本の取り扱いなど、薬機法に基づく適切な運用が不可欠です。
例えば、処方箋はFAXやメールではなく、原本を薬局に郵送するなど、厳格な手続きが求められます。

オンライン服薬指導のシステム導入・運用における注意点

オンライン服薬指導を円滑に導入し、運用するためには、法律で定められた体制の整備が不可欠です。

体制整備と薬剤師への研修

薬局開設者は「体制省令」に基づき、オンライン服薬指導に関する指針の策定や、薬剤師への研修実施など、必要な措置を講じなければなりません。

具体的には、

  • 指針の策定

    オンライン服薬指導の実施手順、緊急時の対応、個人情報保護など、具体的な運用ルールを定める必要があります。
  • 従事者への研修

    薬剤師には、情報通信機器の安全な使用方法、情報セキュリティ対策、個人情報保護に関する知識を習得させるための研修を定期的に実施することが求められます。

患者本人確認とプライバシー保護

オンライン服薬指導では、対面での服薬指導と同様に、患者本人の状況を確認することが求められます。
原則として、薬剤師は顔写真付きの身分証明書、患者は保険証や運転免許証などを用いて本人確認を行います。

また、患者がオンライン服薬指導を受ける場所は、プライバシーが確保されるよう配慮が必要です。
例えば、周囲に会話が聞こえてしまうような場所や、第三者が画面に映り込むような場所での実施は避けるよう、事前に患者に周知徹底する必要があります。

通信環境と情報セキュリティ

オンライン服薬指導の実施にあたり、情報セキュリティやプライバシー保護は最も重要な課題の一つです。

  • 通信環境

    サービスを提供する側は、「オンライン診療の適切な実施に関する指針」を参考に、安定した通信環境を確保する必要があります。
  • 情報セキュリティ

    医療情報を取り扱うシステムであるため、「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン」に準拠したセキュリティ対策が必須です。システム選定時には、データの暗号化、アクセス制限、ログ管理などの機能が備わっているかを慎重に確認しましょう。

オンライン服薬指導と関連法務

法改正により、各薬局が自律的に適切な運用体制を構築しなければならなくなりました。要件を満たさないままオンライン服薬指導を実施すると、薬機法違反となるおそれがあるため、法務部門や弁護士との連携が不可欠です。

特にシステム導入においては、ベンダーとの契約内容を慎重に検討する必要があります。

  • 提供されるシステムの法的要件準拠性

    システムが薬機法や関連ガイドラインの要求事項を満たしているか、機能面だけでなく、セキュリティやプライバシー保護の仕組みを含めて確認します。
  • データ保護とプライバシー

    患者の個人情報を取り扱うため、データ保護に関する契約条項が十分に盛り込まれているか、また、万が一の情報漏洩時の責任分担についても明確にしておくべきです。

当事務所では、オンライン服薬指導の導入や運用体制の構築について、法的な観点から総合的なサポートを提供しています。

まとめ

2023年の改正薬機法と関連通知の施行により、オンライン服薬指導はより柔軟に実施できるようになりました。しかし、同時に、薬局開設者や運営者には、患者の安全とプライバシーを確保するための体制構築が求められます。

  • 薬剤師が薬局外でもオンライン服薬指導を実施できるようになった。
  • 新しい要件に沿った運用体制の構築が必須になった。
  • オンライン服薬指導のシステム導入・運用では、体制整備、本人確認、プライバシー保護、情報セキュリティに十分な注意が必要である。

新たなビジネスモデルを構築するこの機会に、法的なリスクを回避し、安全で信頼性の高いサービスを提供するために、専門家である弁護士に相談することをお勧めします。

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