広告表現における注意点などを、医療広告の摘発事例を踏まえて弁護士が解説します。
美容・医療関係者様は、ぜひ参考になさってください。
医療広告の適法性の確認手順
医療広告の適法性確認の流れ
適法性確認フロー① 医療広告該当性
医療広告に該当する場合、医療広告規制を受けます。
医療広告とは?
① 受療者の受診等を誘引する意図があること(誘引性)
② 医師名や医療機関名が特定可能であること(特定性)
→2要件を満たすものが医療広告に該当し、規制を受けることになります。
- ① 誘引性
-
基本的に医療機関が出す広告は要件を満たしています。下記は例外です。
- ② 特定性
-
医療機関名等を排除することで、規制対象外にすることも可能です。
例:バナー広告
医療広告に該当しない例
- 学術論文、学術発表
- 新聞や雑誌での記事(※医療機関が費用を負担して記事の掲載を依頼することにより、患者等を誘引する所謂記事風広告は、広告規制の対象となる。)
- 受療者等がSNS等に自ら掲載する体験談等(※医療機関から依頼を受けた場合等は広告規制の対象になる。医療機関の経営に関与する者の家族によるものも同様。インフルエンサーマーケティングなどは医療広告に該当。)
- 院内掲示、院内で配布するパンフレット等
適法性確認フロー② 限定解除の可否
医療広告では、広告可能事項以外は、原則、広告してはいけません。
例外的に、限定解除した場合には、広告可能事項以外の事項の広告が可能になります。
- 受療者の求めに応じて表示されるウェブサイト等であること
- 当該広告について容易に照会ができる問い合わせ先の記載
- 自由診療に係る通常必要とされる治療内容、費用等に関する事項の記載
- 自由診療に係る治療等に係る主なリスク、副作用等に関する事項の記載
※限定解除要件を満たさない場合には、広告可能事項以外の広告をしたことになります。
※受療者の求めに応じて送付するメルマガ、パンフレットなどが該当します。
限定解除要件を満たした場合、広告可能事項以外の広告が可能になります。以下が具体例です。
- 特定の医師の治療実績
- 医師等の専門性に関する資格名
- 未承認医薬品による治療の内容(※別要件の具備が必要)
未承認医薬品・医療機器を用いた治療の広告
薬機法において、承認等されていない医薬品・医療機器や、承認された効果等と異なる効果による医薬品・医療機器を用いた治療については、限定解除の要件を満たしたと判断される場合には広告が可能になります。
※令和6年3月に改正あり
ただし、国内で承認されていない未承認医薬品等を自由診療に使用する場合は、医療広告ガイドラインに記載された限定解除の要件として、以下の事項の記載が必要です。
参考:医療広告ガイドラインに関するQ&A
- 未承認医薬品等であること
- 入手経路等
- 国内の承認医薬品等の有無
- 諸外国における安全性等に係る情報
- 医薬品副作用被害救済制度の対象にはならないこと
適法性確認フロー③ 禁止事項の広告でないか
限定解除をした場合であっても、禁止事項の広告をすることはできません。
限定解除した場合の広告禁止事項は以下のとおりです。
- 虚偽広告(法)
- 比較優良広告(法)
- 誇大広告(法)
- 公序良俗に反する広告(法)
- 受療者の主観に基づく、治療内容・効果等に関する体験談(規則)
- 治療内容・効果等につき誤認させるおそれがある写真等(所謂ビフォーアフター写真)(規則)
- その他品位を損なう広告等(ガイドライン)
広告禁止事項について
虚偽広告
広告に示された内容が虚偽である場合、受療者に著しく事実に相違する情報を与え、適切な受診機会を喪失させ、不適切な医療を受けさせるおそれがあるため禁止されています。
以下が具体例です。
- 「絶対安全な手術です!」
- 「どんなに難しい症例でも必ず成功します」
- 「厚生労働省の認可した○○専門医」
- 「加工・修正した術前術後の写真等の掲載」
- 「一日で治療が終了します」(治療後の定期的な処置等が必要な場合)
- 「○%の満足度」(根拠・調査方法の提示がないもの)
- 「当院は、○○研究所を併設しています」(研究の実態がないもの)
比較優良広告
他の医療機関と比較し、提供する医療の内容等について、自らの病院等が優良である旨を広告することは医療広告としては認められていません。
客観的な事実であったとしても、「No1」、「最高」等の最上級の表現その他優秀性について著しく誤認を与える表現は禁止されています。また、著名人との関連性を強調した表現も比較優良広告に該当します。
以下が具体例です。
- 「肝臓がんの治療では、日本随一の実績を有する病院です。」
- 「当院は県内一の医師数を誇ります。」
- 「本グループは全国に展開し、最高の医療を広く国民に提供しております。」
- 「芸能プロダクションと提携しています」
- 「著名人も○○医師を推薦しています」
- 「著名人も当院で治療を受けております。」
誇大広告
必ずしも虚偽ではないが、施設の規模、人員配置、提供する医療の内容等について、事実を誇張して表現していたり、人を誤認させる広告は禁止されています。
以下が具体例です。
- 知事の許可を取得した病院です!(「許可」を強調表示する事例)
- 医師数○名(○年○月現在)(その後医師数が大きく減少した場合)
- 顔面の○○術1カ所○○円
- ○○学会(○○協会)認定医(活動実態のない団体による認定)
- ○○センター
- 手術や処置等の効果又は有効性を強調するもの
- 比較的安全な手術です。(比較対象が不明確な場合)
- 伝聞や科学的根拠に乏しい情報の引用(医学的・科学的な根拠に乏しい文献やテレビからの情報)
- ○○の症状のある二人に一人が○○のリスクがあります。
- 科学的根拠が乏しいにもかかわらず、特定の症状のリスクを強調するもの
- 科学的根拠が乏しいにもかかわらず、特定の手術や措置の有効性を強調するもの
公序良俗に反する内容の広告
わいせつ若しくは残虐な図画や映像又は差別を助長する表現等を使用した広告は禁止されています。
受療者の主観的な治療の効果等に関する体験談
体験談については、個々の患者の状態等により当然にその感想は異なるものであり、誤認を与えるおそれがあることから禁止されています。
受療者の体験談の記述内容が、広告可能な範囲であっても認められません。
※個人が運営するウェブサイト、SNS の個人のページ及び第三者が運営するいわゆる口コミサイト等への体験談の掲載は広告に該当しないが、ステルスマーケティング等の場合には広告に該当します。
以下が具体例です。
- 医療機関が広告料等を負担して掲載を依頼している場合
- 医療機関自ら運営するウェブサイト等にSNSの投稿等を引用する場合
- 所謂ステルスマーケティングにより体験談を投稿させる場合
誤認させるおそれのあるビフォーアフター写真
個々の受療者の状態等により当然に治療等の結果は異なるものであることを踏まえ、受療者に誤認させるおそれがある写真等については広告が禁止されています。
ただし、術前又は術後の写真に通常必要とされる治療内容、費用等に関する事項や、治療等の主なリスク、副作用等に関する事項等の詳細な説明を、分かりやすい箇所に付した場合については表示が可能です。
以下が禁止の具体例です。
- 術前又は術後(手術以外の処置等を含む。)の写真やイラストのみを示し、説明が不十分なもの
- ビフォーアフター写真を掲載しているが、リスク等を分かりやすい箇所に記載しておらず、リンク先、小さな文字で表示している場合
その他品位を損ねる広告等
品位を損ねる内容の広告、他法令又は他法令に関連する広告ガイドラインで禁止される内容の広告は、医療広告として適切ではなく、厳に慎むべきとされています。
参考資料:医療広告ガイドライン ❘ 厚生労働省
以下が具体例です。
- ①費用を強調した広告
-
・ 今なら○円でキャンペーン実施中!
・ ただいまキャンペーンを実施中!
・ 期間限定で○○療法を50%オフで提供しています
・ 100,000円→50,000 円(所謂二重価格表示)
・ ○○治療し放題プラン - ②提供される医療の内容とは直接関係ない事項による誘引
-
・無料相談をされた方全員に○○をプレゼント
- ③ふざけたもの、ドタバタ的な表現による広告
広告可能事項
限定解除ができない場合、広告可能な事項は以下の15項目のみです。
- 医師又は歯科医師である旨
- 診療科名
- 病院又は診療所の名称、電話番号及び所在、管理者の氏名等
- 診療日若しくは診療時間又は予約による診療の実施の有無
- 法令の規定に基づき一定の医療を担うものとして指定を受けた旨
- 法第5条の2第1項の認定を受けた医師である旨
- 地域医療連携推進法人の参加病院等である旨
- 入院設備の有無等の設備の案内
- 病院又は診療所において診療に従事する医師、歯科医師、薬剤師、看護師その他の医療従事者の氏名、年齢、性別、役職、略歴等、受療者の選択に資するものとして厚生労働大臣が定めるもの
- 患者又はその家族からの医療に関する相談に応ずるための措置等に関するもの
- 紹介可能な提携病院等
- 診療に関する諸記録に係る情報の提供等に関する事項
- 当該医療機関において提供される医療の内容に関する事項
- 当該医療機関における受療者の平均的な入院日数等受療者による医療に関する適切な選択に資するものとして厚生労働大臣が定めるもの
- その他上記に準ずるものとして厚生労働大臣が定める事項
ウェブサイトに関連する違反事例
下記が医療広告規制におけるウェブサイト等の違反事例です。
画像引用: 医療広告規制におけるウェブサイト等の事例解説書(第4版) ❘ 厚生労働省
画像をタップすると拡大されます。
違反事例①

違反事例②

違反事例③

違反事例④

違反事例⑤

違反事例⑥

違反事例⑦

違反事例⑧

違反事例⑨

→正しい例

違反した場合
医療広告規制に違反した場合には、以下のような行政処分や罰則等があります。
- 任意の調査
- 立入検査
- 報告命令
- 広告の中止命令
- 広告の是正命令
- 刑事処罰
命令に従わない場合は、6か月以下の懲役または30万円以下の罰金が課され、また、悪質な場合は医療機関の開設許可取消し等の可能性があります。
命令等は公表される場合があり、信用の毀損や行政対応等が必要になります。
違反に対する調査
厚生労働省から委託を受けた機関による調査があります。
→デロイトトーマツコンサルティング合同会社によるパトロール
厚生労働省の調査に加え、一般から違反事例の報告も募っています。
→同業者間、受療者による監視
医療広告の違反数
令和4年度の違反数の合計は4,115件、そのうち、2,451件が広告可能事項以外の広告でした。
→限定解除要件を適切に満たせていない広告が多いということです。(2023年3月31日時点)
最後に
ネクスパート法律事務所での対応事例をご紹介いたします。ぜひ一度ご相談ください。
- 医療法、薬機法、医師法等に関する法律相談
- 新規事業スキーム構築の支援
- ウェブサイト、LP等のリーガルチェック(代替表現のご提案含む)
- 診療報酬等の債権回収(完全成果報酬にて対応)
- 美容医療分野の特商法対応(書面整備等)
- 労働問題の相談・対応
- 従業員の法律相談への対応
- 各種契約書等の作成・リーガルチェック
- サプリメント等の販売に際しての薬機チェック