ドバイでは2018年からValue Added Tax (VAT)と呼ばれる日本の消費税に相当する税金が導入されています。VATに関する法律は、フリーゾーンにおいて設立された法人についても適用されるため、ドバイに移住し起業するにあたってはVAT対応が不可欠となります。本稿では、ドバイに移住し起業する際に選択されるフリーゾーン法人を前提に、VAT対応として発生する事項について解説します。

VAT登録対応
メインランド法人かフリーゾーン法人かに関係なく、VATに関する法律は等しく適用されますが、全ての法人にVAT登録義務が発生するわけではなく、以下のいずれかの条件を満たした法人についてのみVAT登録を実施することが求められます。
(i) 過去 12 ヶ月間に、課税対象となる供給と輸入の合計額がAED 375,000を超える場合
(ii) 将来30日以内に、課税対象となる供給と輸入の合計額がAED 375,000を超えることが見込まれる場合
ここにいう「課税対象となる供給」とはUAE内の事業者が行う物品またはサービスの供給で、5%または0%の税率で課税される可能性のある取引を意味します。後述のとおり、フリーゾーン法人が日本法人にサービスや物品を提供する場合、0%の税率が課されるとされているため、基準額を超えるか否かの判定に際して、日本法人に対する売上も算定の基礎となります。
なお、上記基準額に達しない場合であっても、AED187,500を超える場合には自主登録ができるものとされています。事業上、VAT番号が求められるなど自主登録の検討を迫られる場面が発生することもありますが、一度VAT登録を実施してしまうと、VAT申告義務が発生するとともにVATの徴収・納付が必要になるなどコストや手間が発生するため、慎重に検討する必要が推奨されます。
VAT申告の実施
VAT登録を行なった場合、各税期間(tax period)の末日から28日以内にVAT申告業務を実施しなければならないとされていますが、年間売上額によって、税期間が異なるため、VAT申告の頻度に差異が発生します。年間売上額に応じた申告頻度については以下のとおりです。
(i) 年間売上額がAED 150 百万未満の場合:四半期毎
(ii)年間売上額がAED 150 百万以上の場合:1ヶ月毎
なお、VAT申告書は期限までに提出しなければならず、初めて遅延が発生した場合はAED 1,000の罰金が課され、24ヶ月以内に複数回の違反が発生した場合、違反1回につき罰金は2倍のAED 2,000となります。違反法人には機械的に罰金が課されますのでしっかりと申告対応をする必要があります。
VAT税率及び対象取引
VAT登録を実施した場合、VATの徴収と納税義務が発生することとなります。VATは取引の性質に応じて5%と0%の税率で課されます。ドバイ国内の法人との取引については、5%の税率が課されるものとされていますが、Gulf Cooperation Council(GCC)と呼ばれるペルシア湾岸6か国(アラブ首長国連邦、バーレーン、クウェート、オマーン、カタール、サウジアラビア)以外に所在する法人との取引には0%の税率が課されるものとされています。そのため、日本に所在する法人との取引の税率は0%となりますので、日本法人との取引についてはVATを徴収する必要がありません。
また、フリーゾーンの中には、VATとの関係で指定ゾーン(Designated Zone)として指定されたフリーゾーンがあり、指定ゾーンについてはGCC外とみなされるものとされているため、指定ゾーンの法人との間の取引についてはVAT税率が0%となります。ドバイにおける指定ゾーンは以下のとおりとなります。これらの指定ゾーンに所在するフリーゾーン法人との取引の税率は0%となりますが、それ以外のフリーゾーン法人については5%のVATが課されることとなりますので、VAT徴収及び納税対応が発生することとなります。
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