相続財産に暗号資産が含まれる場合に注意すべき3つのこと

暗号資産には、その法的性質に争いがありますが、どのような立場であっても相続の対象となることには争いはありません。

相続財産に暗号資産が含まれる場合、以下の3つの点に注意が必要です。

  • 暗号資産がどこに保有されているか、パスワードやシークレットリカバリーフレーズがわかるか?
  • 相続財産の価値を把握ができているか?
  • 相続放棄をする場合の注意点 

このコラムでは、暗号資産と相続について弁護士が解説します。

目次

相続財産に暗号資産が含まれる場合の3つの注意点

相続財産に暗号資産が含まれる場合の注意点を、ひとつずつ解説します。

暗号資産がどこに保有されているか、パスワードやシークレットリカバリーフレーズがわかるか?

被相続人が暗号資産取引所に暗号資産を保有していた場合、銀行などの金融機関との間の出金などからも確認できるため、まだ保有している取引所の把握は比較的やりやすいです。

しかし、NFTやDefiなどの取引をしている場合、メタマスクなどのウォレットに暗号資産が入っている場合も少なくありません。

このメタマスクなどのウォレットに暗号資産が入っている場合、パスワードがわかり、被相続人のPCがあればそれで把握できますが、パスワードが分からない場合、あるいは、別のPC等でログインする場合には、シークレットリカバリーフレーズが分からないとログインすることができません。

これらがわからないと、いわゆるセルフゴックスの状態に陥り、相続財産を確認したり、引き出したりすることはできません。

また、暗号資産は、不動産などのように登記されているわけではないので、そもそもどのようなウォレットを保有しているか(メタマスクなのかファントムなのかなど)が分からないことが多いです。

そのため、残される相続人のためにも、生前に自己の暗号資産を把握し、対象やパスワードなども含めた明確な遺言を残すことが大切です。なお、これらを相続人に知られてしまえば、引き出しが可能になってしまうため、弁護士などの信用のできる専門家に作成を委ねることも一つの方法です。 

相続財産の価値を把握ができているか?

暗号資産は、1週間のうちに10%以上もその価値が下落(上昇)することは珍しくありません。

そのため、暗号資産の先物取引などをしていた場合には、相続時には、プラスの財産であったにもかかわらず、その後、大きくマイナスに変化し、債務のみを相続してしまう可能性もあります。

このような事態を避けるためにも、相続財産に暗号資産が存在する場合には、慎重な調査が必要です。

原則として、相続人は、自己のために相続の開始があったことを知った時から、わずか3か月で、単純承認、限定承認又は相続放棄をしなければなりません。

もっとも、被相続人がウォレットや取引所を明記していなかった場合、わずか3か月で被相続人の暗号資産すべてを把握することは容易ではありません。

この点については、3か月の間に相続人が相続財産の状況を調査しても、なお、単純承認、限定承認又は相続放棄のいずれをするかを決定できない場合には、家庭裁判所は、相続人となる者らの申立てにより、この3か月の熟慮期間を伸長することができます。

相続財産に暗号資産がある場合には、ウォレットの調査や資産価値の調査のために、上記の熟慮期間の伸長手続きをとるというのも一つの方法です。

この手続きは、裁判所への申し立てが必要となるため、確実に期間を延ばし、慎重な判断を行うためには、専門家に相談することをお勧めします。

相続放棄をする場合の注意点

相続放棄をすると、初めから相続人にならなかったものとみなされ、次順位の者が相続人となります。

そして、相続放棄をした者は、自己の財産と同一の注意をもって財産の管理を継続しなければなりません(民法940条1項)。

例えば、上記のようなメタマスクなどのウォレットのパスワードやシークレットリカバリーフレーズを把握していた場合、相続放棄によって、相続人となった者が暗号資産の管理をできるようになるまでしっかりと保管しておく必要があります。

まとめ

暗号資産が絡む相続は、その処理や対応が複雑になりがちです。

遺言作成等の生前の対策でも相続発生後であっても、暗号資産等に精通した専門家にご相談いただくことをお勧めします。

目次
閉じる