不動産を相続した場合、名義変更はいつまでにすればよいか?

不動産を相続した場合、その不動産の名義変更をするのに期限はあるのでしょうか。
今回は、相続不動産の名義変更はいつまですればよいのかについて解説します。
目次
不動産を相続した場合、いつまでに名義変更をすればよいか?
ここでは、不動産を相続した場合いつまでに名義変更をすればよいか解説します。
現行法では不動産の名義変更に期限はない
不動産の名義変更をするには相続登記が必要ですが、現行法では期限がありません。
遺産分割協議が終了し、誰が不動産を相続するのか確定したら、どのタイミングで相続登記をしても構いません。
不動産の名義変更を怠った場合に起きる問題は?
名義変更(相続登記)をするには、法務局での手続きが必要です。
引っ越しで住所変更をしたときのように法務局の窓口で簡単にできると考えている人が多いですが、実際は簡単な手続きではありません。
決められた形式で申請書を作成し、被相続人が生まれてから亡くなるまでの戸籍謄本や遺産分割協議書、相続人の戸籍謄本や印鑑証明書など、提出する書類もたくさんあります。
窓口で簡単に済ませられる手続きではなく期限もないので、名義変更を保留にする人も多くみられます。現行法では、これによって罰則が科せられることはありませんが、登記をしないことで起きる問題は多々あります。
不動産の名義変更を怠った場合に起こり得る主な問題は、以下のとおりです。
不動産の売却や担保設定ができない
相続した不動産を売却する場合、被相続人の名義のままだと売却できません。不動産を担保にして金融機関からお金を借りることもできません。
数次相続が起きるなど権利関係が複雑になる
名義変更を保留にしている間に、新たに相続が起きて権利関係が複雑になる可能性があります。例えば、被相続人Aさんの相続人が、Aさんの子どものCさん、Dさんだったとします。Aさんの死後、相続登記を保留しているうちにCさんが死亡すると、数次相続が発生します。
この状況になると、原則として、Aさんを被相続人とする相続手続きとCさんを被相続人とする相続手続きで、それぞれ登記を経る必要があります。原則として、相続登記を2回しなければならず、手続きが複雑になり費用も嵩みます。
登記に必要な書類が入手できない可能性がある
相続登記には、被相続人の住民票の除票の添付が必要です。
住民票の除票の保存期間は5年なので、保存期間が過ぎてしまうと取得できません。その際は法務局の担当者に相談しながらの対応となり、手間や時間がかかります。
2024年4月1日以降はいつまでに相続不動産の名義変更を行えばよい?
ここでは、2024年4月1日から実施される相続登記の義務化について解説します。
不動産の相続登記の義務化とは?
2024年4月1日から不動産の相続登記が義務化されます。
相続で不動産を取得した人は、相続の開始及び所有権を取得したことを知った日から3年以内に不動産登記の名義変更をしなければいけません。
相続登記が義務化される背景には、所有者が分からない土地が増えてきたことが挙げられます。先に述べたように、名義変更を保留しておくことで複数の相続が発生し、現在の所有者が誰なのかわからなくなることがあるからです。
名義変更手続きの期限としなかった場合の罰則は?
相続による不動産取得後、正当な理由がないにもかかわらず3年以内に名義変更の手続きをしなかった場合、10万円以下の過料の対象となります。
ここでいう正当な理由とは、以下のような場合が該当します。
- 申請人である相続人に病気などの事情がある
- 数次相続が発生して相続人の把握に時間がかかっている
- 相続関係で争いがある
今回の登記義務化は、法改正後に発生した相続だけでなく法改正以前に起きた相続で未登記の不動産も対象となります。
所有者の氏名、住所変更登記も義務化される
相続登記の義務化に合わせて、所有者の氏名や住所変更登記も義務化されました。住所や氏名が変更してから2年以内に変更登記をしなければいけません。
正当な理由がないのに申請をしなかった場合、5万円以下の過料が科せられます。法改正以前に変更している住所や氏名についても適用されます。
相続人申告登記とは?
2024年4月1日から実施される相続人申告登記は、相続が発生したことと相続人であることを法務局に申し出る制度です。
これにより申し出をした相続人の氏名と住所が登記され、相続登記申請義務の履行期間内に申請義務を履行したとみなされます。ただし、申請した相続人のみが申請義務を履行したとみなされるため、相続人が複数人いる場合は、それぞれが申請しなければなりません。
なお、相続人申告登記には持ち分などは記載されないため、相続登記のように権利の取得を公示するものではありません。
相続登記の義務化に備えて行うべきことは?
相続登記の義務化に備えて、被相続人が所有していた不動産の登記事項証明書(不動産登記簿)を取得して、登記情報を確認しましょう。
戸籍謄本等を収集し、数次相続が起きていないかなど相続人を正確に把握することも必要です。遺産分割協議が終わっていなければ、速やかに協議を行い、相続登記に必要な書類を取り寄せる準備をしましょう。
相続に関する懸念があれば弁護士に相談を
被相続人が不動産を所有していたけれど、誰が相続するのか決めていないなど、相続に関する懸念があれば弁護士に相談をしましょう。
司法書士と連携のある弁護士であれば、相続登記の義務化に備えてすべきことを的確にアドバイスができます。特に数次相続が起きている場合は申請が複雑になるため、早めに相談することをおすすめします。
まとめ
相続が発生したとき、まずは期限のある相続税の問題を片付けようとして、相続登記をあとまわしにする傾向があります。
大切な財産を公に示すためには相続登記を早めにすることが重要です。
ネクスパート法律事務所では、多数の相続案件を手掛けてきた弁護士が所属しています。ネクスパートアドバイザリーグループとして、司法書士との連携体制も整っております。
相続問題で困ったことがあれば、ぜひネクスパート法律事務所の弁護士にご相談ください。
この記事を監修した弁護士

寺垣 俊介(第二東京弁護士会)
はじめまして、ネクスパート法律事務所の代表弁護士の寺垣俊介と申します。お客様から信頼していただく大前提として、弁護士が、適切な見通しや、ベストな戦略・方法をお示しすることが大切であると考えています。間違いのない見通しを持ち、間違いのないように進めていけば、かならず良い解決ができると信じています。お困りのことがございましたら、当事務所の弁護士に、見通しを戦略・方法を聞いてみてください。お役に立つことができましたら幸甚です。