今回の記事では、協議離婚とは何か、進め方や流れ、協議離婚で決めるべき・話し合っておくべき内容をご紹介します。
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目次
協議離婚とは
協議離婚とは、夫婦の合意をもって役所に離婚届を出すだけで成立する離婚の方法です。離婚の約9割が協議離婚であり、最も一般的な離婚方法です。(参考:平成 21 年度「離婚に関する統計」の概況 |厚生労働省)
協議離婚は、離婚条件などについて夫婦の話し合いがスムーズに進めば、簡単に早く離婚の手続きを終わらせることができます。
協議離婚の証人とは
協議離婚は、役所に離婚届を提出することにより成立するものですが、その際に2人の証人が必要とされています。これは、離婚を望んでいる側が一方的に出した離婚届が受理されてしまうことを防ぐためです。
協議離婚の証人は、20歳以上(成人年齢の引き下げにより令和4年4月1日から18歳に変更)で、離婚当事者でなければ誰でもなることができます。証人になる方は、日本に住んでいる必要もなく、外国籍の人でも証人になることは可能です。また、離婚届の証人はあくまでも「当事者の離婚を見届ける人」という意味であり、法的な責任を負うものではありません。
協議離婚と調停離婚の違い
調停離婚とは、話し合いでは合意が達成できない場合に、裁判所が仲介することで離婚の成立を目指す方法です。協議離婚とは異なり、調停では裁判所から選任された調停委員が間に入り、離婚の話し合いを進めていきます。第三者が間に入るため、冷静に議論を進められるという特徴があります。
また、調停離婚の成立時に取得できる調停調書は、裁判の判決と同等の強い法的効力を持ちます。そのため、相手が慰謝料や養育費の未払いがあった際は、強制執行手続きによって相手の財産を差し押さえて金銭を回収することが可能です。
・離婚調停とは?調停の流れから手続き方法・費用まで詳しく解説
協議離婚のメリットデメリット
次に、協議離婚のメリットとデメリットにはどういったものがあるのか見ていきましょう。
メリット
協議離婚における主なメリットは以下の通りです。
- 離婚の理由が問われない
- 話し合いの日時や場所、方法が自由である
- 費用がかからない
- 手続きが手軽である
- お互いが合意すればすぐに離婚できる
協議離婚は当事者双方の好きな時間に好きなだけ話し合いができるため、合意に至ればすぐに離婚を成立させられます。また、お互いに納得さえしていれば、慰謝料や養育費などの金額も自由に決められるという点も大きなメリットといえるでしょう。
デメリット
一方で、以下のようなデメリットが考えられます。
- 意見が対立して揉めやすい
- 嫌いな相手でも会う必要がある
- 不利な条件で離婚に合意させられる可能性がある
- 離婚の取り決めを忘れやすい
- 離婚後のトラブルを招きやすい
協議離婚は当事者同士の話し合いが基本です。顔も見たくないほど嫌でも、基本的に会って話し合う必要があります。これはDVがあるような夫婦では大きなリスクとなるでしょう。
また、当事者のみでは慰謝料や離婚条件をしっかりと話し合わずに離婚に踏み切りがちな側面があり、後々のトラブルを招きやすい傾向があります。こういった後々のトラブルを防ぐためには、決まった離婚条件を書面として残しておくことが重要です。
協議離婚で決めること
協議離婚において決めることは、「離婚すること」だけではありません。離婚後になって後悔しないために、面倒でも以下のような内容を協議しておくことが大切です。
お金に関すること
離婚の際に話し合う「お金に関すること」は以下のようなものがあります。
- 財産分与
- 婚姻費用
- 慰謝料
たとえば相手の浮気やDV、モラハラが原因で協議離婚する場合は、慰謝料を請求できる可能性があります。慰謝料は離婚する際に必ず発生するものではありませんが、相手の不法行為によって精神的苦痛を受けた場合には請求できます。
また、協議離婚する際には、どの財産をどのように分け合うかなど、財産分与についてもしっかりと話し合って決めておきましょう。
・離婚の慰謝料相場|年収との関係や請求できないケースとは
・離婚時の財産分与とは?財産分与の対象になるものと3つの決定方法
子どもに関すること
離婚の際に話し合う「子どもに関すること」は以下のようなものがあります。
- 親権
- 養育費
- 面会交流
離婚届には親権者となる親の氏名を記載する欄があり、この欄が空白になっている場合、役所は基本的に離婚届を受理してくれません。ですので、未成年の子どもがいる場合、必ず「親権者」を決める必要があります。親権者を決める際は、子どもへの愛情やこれまでの養育状況、子どもの意見などを踏まえて検討しましょう。
なお、離婚したからといって、親子の関係の事実は変わりません。そのため、子どもを監護・養育する親は、子どもと離れて暮らす親に養育費を請求することができます。面会交流についても、頻度や場所、日時などできる限り具体的に決めておきましょう。
協議離婚の進め方や流れ
離婚するには大きく、以下のような流れに沿って進めていきます。
- 離婚の意思を伝える
- 離婚条件の話し合い
- 離婚協議書や公正証書の作成
- 離婚届の提出
ここからは、協議離婚の進め方や流れについて解説します。
離婚の意思を伝える
離婚するにあたって、まずは「離婚の意思」を伝えます。相手にスムーズに伝えられるよう、なぜ離婚したいのか、希望する離婚条件、などについて事前にまとめておきましょう。
不倫やDV、モラハラなどが離婚原因の場合は、それらの証拠を集めておくことが重要です。証拠がなければ、慰謝料も請求できず、離婚も認められない可能性があります。
・浮気・不倫の慰謝料請求で有効な証拠|LINEやメールだけでも請求できる?
・DVで離婚する場合の慰謝料相場や必要な証拠
離婚条件の話し合い
離婚の意思を伝えたら、次は慰謝料や財産分与、養育費など離婚条件の具体的な話し合いに移ります。離婚条件には譲れない部分などを優先順位をつけてリストを作っておくと良いでしょう。具体的な協議項目は、以下の通りです。
- 財産分与
- 慰謝料
- 未成年の子どもの親権者
- 養育費
- 面会交流
話し合うときには、筆記用具でメモをとる、ボイスレコーダーを利用するなど、記憶ではなく記録するよう習慣づけておくことをおすすめします。
離婚協議書・公正証書の作成
離婚協議書を作成しなくても離婚はできますが、協議離婚で多いトラブルの1つに「離婚時に決めた約束が守られない」という事があります。こうしたトラブルを防ぐため、財産分与の分割や養育費などの支払いがある場合は取り決めの内容を文書として残しておきます。
離婚協議書は、話し合いで取り決めた内容をそれぞれ条項にして、作成した日付と夫婦の署名押印すれば完成です。一方で、公正証書を作成する場合は、あなたが住んでいる地域を管轄している公証役場で作成してもらう必要があります。公正証書にすると、養育費などが支払われない場合に、強制執行で相手の財産を強制的に差し押させることが可能となります。
・離婚協議書とは|離婚協議書の書き方や記載すべき内容
・養育費の強制執行とは|デメリットとお金がとれない場合の対処法
離婚届の提出
離婚の協議がまとまれば、離婚届に必要事項を記入したうえで役場窓口へ持参、もしくは郵送にて提出します。このとき、夫婦と承認の署名押印以外は誰が作成しても問題ありません。
なお、本籍地以外の役所に届け出る場合は、戸籍抄本や本人確認書類などが必要となる場合があるので注意しましょう。
協議離婚で必要な書類とは
協議離婚の場合、離婚届が役所で受理されるとその時点で離婚が成立します。最後に、離婚の際に必要となる書類について解説します。
離婚届
まず欠かせない書類として挙げられるのが離婚届です。離婚届を提出する日付や、氏名・住所、同居期間などを間違いのないよう記入していきましょう。未成年の子どもがいる場合は、親権者のチェック欄への記入も必要です。
記入時には、鉛筆やシャープペンは使用せず、ボールペンや万年筆など消せないもので記入するようにしましょう。誤った内容を記入した場合は、二重線で消して横に訂正印を押してください。
離婚協議書
離婚協議書とは、離婚の際に財産分与や慰謝料、離婚後の養育費など、話し合いで取り決めた内容を書面化した「個人が作成する私文書」のことです。
作成しておけば、慰謝料や養育費の支払いが滞った場合に、離婚協議書を根拠に訴訟を提起して支払いを求められます。
しかし、あくまで個人間の契約書であるため、離婚協議書だけでは相手の財産を強制的に差し押さえることはできないという点に注意してください。
公正証書
公正証書とは、公証人が公証役場において作成する「公文書」で、信用性の高い書類です。強制執行認諾文言の付いた公正証書を作成しておけば、養育費などの未払いが生じた場合に、裁判を経ずして相手の財産に対する強制執行の申し立てができます。
まとめ
今回は、協議離婚の流れについて解説しました。協議離婚は手軽な離婚方法ですが、意見が対立してしまえば離婚成立まで長引いてしまう恐れがあります。また、離婚の際、金銭に関する約束事がある場合は離婚協議書や公正証書を作成しておくことをおすすめします。
協議離婚をスムーズに進められるか不安だという方は、まずは弁護士に相談しながら、納得のいく解決を目指しましょう。