離婚を決めたら、婚姻期間中に夫婦で築いてきた財産を公平に分ける財産分与を行います。
対象となるものに預貯金がありますが、どのように財産分与をすればよいでしょうか?
この記事では、主に以下の点について解説します。
- 財産分与の対象になる預貯金・ならない預貯金
- 相手が預貯金を隠している場合の対処法
- その他預貯金の財産分与時に注意すべき3つのケース
目次
財産分与の対象となる預貯金は?
財産分与の対象となる預貯金は、以下3つのケースです。
婚姻期間中に夫婦で貯めた預貯金
婚姻期間中に夫婦で貯めた預貯金は、財産分与の対象です。
夫婦の一方の単独名義でも、婚姻期間中に協力して蓄えた預貯金は財産分与の対象となります。
夫と妻のどちらかが専業主婦(夫)で収入がない場合でも、相手の収入でやりくりをして貯蓄したのであれば、財産分与の対象です。
夫婦で管理していた子ども名義の預貯金
夫婦の収入を原資とする子ども名義の預貯金は、子どもが未成年で、その預貯金の管理を夫婦のどちらかが行っていれば、財産分与の対象となります。
原資が夫婦の収入だとしても、子どもが自ら口座を管理している場合は、子どもの固有財産となるため、財産分与の対象になりません。
次の場合は、子どもの固有財産となるため、財産分与の対象にはなりません。
- 子どもが親族から受け取ったお年玉や入学の祝い金のみを預け入れた預貯金
- 子ども自身が得たアルバイト代等のみを預け入れた預貯金
夫や妻のタンス預金
夫や妻が、婚姻期間中に配偶者に内緒で貯めていたタンス預金も財産分与の対象です。
例えば夫や妻からもらっていた生活費をやりくりし、余った分をタンス預金にしていた場合、お金の出所が夫もしくは妻の収入なら共有財産となるため、財産分与の対象となります。
財産分与の対象とならない預貯金は?
財産分与の対象とならない預貯金は、以下3つのケースです。
結婚前に貯めていた預貯金
結婚前に貯めていた預貯金は、特有財産なので財産分与の対象になりません。
ただし、結婚前に同居していた期間があれば、その期間に貯めた預貯金は財産分与の対象となる可能性があります。
相続や贈与で得た預貯金
夫もしくは妻が、それぞれの親族からの相続や贈与で得た預貯金は、財産分与の対象となりません。
相続や贈与で得た預貯金は特有財産だからです。
別居後に貯めた預貯金
別居後に貯めた預貯金は、原則として、財産分与の対象となりません。
財産分与の対象となるのは、婚姻してから離婚もしくは別居するまでの間に夫婦が協力して築いた財産だからです。
別居期間中は夫婦が協力して生活していたとはいえないため、別居後に貯めた預貯金は財産分与の対象から除外されます。
もっとも、別居中に婚姻費用の支払いがなく、生活費に充てるために預貯金を費消せざるを得なかったような場合で、未払い婚姻費用の清算を別途行わない場合などには、例外的に、別居後の預貯金の変動が考慮され、離婚時の残高が基準とされることがあります。
預貯金を財産分与する際の方法は?
預貯金を財産分与する際の方法は、以下の手順で行います。
夫婦それぞれの名義の預貯金口座を開示する
夫婦それぞれの名義の預貯金口座の残高を開示します。
最近は通帳レスのケースも多いため、その場合はWeb通帳で残高を確認しましょう。
どの割合で預貯金を分けるか話し合いをする
お互いの預貯金を開示したら、どの割合で預貯金を分けるか話し合いをします。
2分の1ずつ分けるのが原則ですが、どちらか一方が抜きんでた才能で高額の財産を形成した場合、財産形成に貢献したほうが預貯金を多く得るケースがあります。
話し合いに合意ができたら離婚協議書を作成する
預貯金の分け方に双方が合意できたら、離婚協議書を作成しましょう。
後のトラブル防止のために、お互いの考えに齟齬がないかどうか離婚協議書を作成して確認します。
可能であれば公正証書で作成しましょう。
相手が預貯金を隠している疑いがある場合の対処法は?
預貯金を財産分与する際に、相手が預貯金を隠している疑いがある場合の対処法について解説します。
引き出し等に通帳やキャッシュカードがないか探す
自宅の引き出し等に通帳やキャッシュカードがないか確認をしましょう。
自宅に届く郵便物等から金融機関を推測する方法もありますが、郵便物を勝手に開封してはいけません。
弁護士に財産分与ないし離婚手続きを依頼する
弁護士に財産分与もしくは離婚手続きの依頼をしましょう。
弁護士は受任した案件に関して弁護士会照会制度が利用できます。
弁護士会照会制度とは、弁護士法に基づいて弁護士会が官公庁・企業等に必要事項を調査照会する制度です。
相手が所有している可能性がある口座の金融機関が分かれば、預金口座の有無を照会することにより回答を得られることがあります(金融機関によっては照会に応じてくれないケースがあります。)。
調停や裁判になった場合は、裁判所の調査嘱託の利用ができます。
調査嘱託とは、裁判所が官庁や企業等に対して、必要な調査を嘱託し、回答を求める制度です。調査嘱託であれば弁護士会照会よりも照会に応じてくれる可能性が高いです(この場合、相手が所有している口座の金融機関名だけでなく支店名も特定しなければいけません。)。
弁護士に財産分与もしくは離婚手続きを依頼することで本気度が伝わり、これらの制度を利用するまでもなく、配偶者が通帳の開示に応じてくれることもあるでしょう。
制度を利用する場合も、弁護士が開示の必要性を適切に主張することで、回答を得られる可能性が高まります。
預貯金を財産分与するにあたって注意を要する3つのケースは?
預貯金を財産分与するにあたって、注意を要する3つのケースについて解説します。
婚姻前から同じ口座を利用しているケース
婚姻前から同じ金融機関の口座を利用している場合、特有財産と共有財産の区別がつかないケースがあります。
預貯金を貯めているだけであれば、区別がつく可能性があります。
しかし、定期的に生活費や光熱費の引き落としをしている場合、生活費等のために出金されたお金の原資が特有財産なのか共有財産なのかの特定が困難です。共有財産であるか否かの判別がつかない場合には、共有財産と推定され、財産分与の対象となる可能性もあります。
銀行口座をなるべく増やしたくないと一つの口座で管理をする方もいらっしゃるでしょう。
そのような場合は、日頃から特有財産と共有財産が区別できるように口座を分けて管理することをおすすめします。
別居時に配偶者に口座から預貯金を引き出されるケース
別居時に配偶者に口座から預貯金を引き出されるケースがあります。
例えば夫もしくは妻に生活費の管理を任せてキャッシュカードを預けている場合、別居時に無断で預貯金を引き出す可能性があります。
こうした事態を避けるためキャッシュカードを預けずに、生活費を現金で渡すなどの対策を練ったほうがよいでしょう。
離婚時に財産分与の話し合いをしなかったケース
離婚時に財産分与の話し合いをせずに、請求期限が過ぎるケースです。
早く離婚したい気持ちから財産分与について話し合いをしなかったり、親権や養育費など他の件を優先したため、あとまわしになってしまったりする人もいらっしゃいます。
離婚後でも財産分与の請求はできますが、離婚成立から2年以内に行わなければいけません。当事者双方の合意があれば、2年経過後も財産分与の請求ができますが、できれば離婚時に話し合いをしておいたほうがよいです。
まとめ
預貯金の財産分与の話し合いは、お互いが正直に口座を開示すればスムーズにいきますが必ずしもそうなるとはかぎりません。
財産分与は離婚後の生活に影響を与えますので、後悔しないように弁護士へ依頼をして、手続きをしてもらったほうがよいでしょう。
ネクスパート法律事務所には、離婚全般に強い弁護士が在籍しています。
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