離婚を検討する際、重要な問題の一つが財産分与です。
婚姻期間中に夫婦が協力して形成した共有財産をどのように分けるか(清算的財産分与)は、離婚後の生活設計に大きく影響する可能性があります。
「専業主婦でも2分の1を請求できるのか」
「相手が開示しない財産を調べる方法はあるのか」
このような疑問を抱く方は、実務上も少なくありません。
財産分与は、裁判実務上、家事・育児を含む夫婦双方の寄与を踏まえ、いわゆる「2分の1ルール」を基準(目安)として判断されることが多いとされています。
もっとも、特有財産の有無、寄与度修正(高額所得の形成経緯など)、一方の著しい浪費、別居に至るまでの経緯などの個別事情により、割合が調整される場合もあります。
そのため、弁護士の助言を得ることが有力な選択肢となる場合もあります。
この記事では、民法第768条(財産分与)を前提に、

  • 財産分与を弁護士に依頼すべきかの判断基準
  • 財産分与の弁護士費用の相場・目安
  • 財産分与を適切に進めるための留意点

について、裁判実務の考え方を踏まえつつ整理します。

【この記事でわかること】

  • 財産分与を弁護士に依頼すべきケースの判断基準
    不動産や退職金の評価が争点となる場合・相手が財産を開示しない場合・経営者で自社株式を保有している場合など弁護士の関与が検討される主な場面を整理します。
  • 財産分与の弁護士費用の相場・目安
    着手金(30万~50万円程度)、成功報酬(30万円~50万円程度+経済的利益の10%~20%程度)などの一般的な費用構造を解説します。
    ※具体的な金額は事務所や事案により異なります。
  • 財産分与を適切に進めるためのポイント
    弁護士会照会制度などを通じた財産調査の方法や、財産分与の請求期限(除斥期間)に関する留意点を整理します。
    ※現行法では離婚成立から2年以内(民法第768条第2項の除斥期間)とされていますが、法改正により5年へ延長される見直しが予定されています。
    もっとも、施行時期や経過措置により、離婚成立の時期によって適用関係が分かれる可能性があるため、最新の法令・運用を前提に確認することが重要です。
  • 財産分与における弁護士の役割
    代理交渉による負担軽減や、民法第768条に基づく財産分与の法的整理について、実務上の位置付けを解説します。

目次

財産分与で弁護士は必要?不要?判断基準を解説

離婚に際し、すべてのケースで弁護士が必要となるわけではありません。
もっとも、財産分与の対象や相手方の対応によっては、評価や法的整理が複雑となる場合があります。
ここでは、一般的に財産分与を弁護士に依頼することが検討されやすいケースと、当事者間で解決できる可能性があるケースを整理します。

財産分与を弁護士に依頼すべきケース【セルフチェックリスト】

以下のいずれかに当てはまる場合、弁護士への相談が有力な選択肢となることがあります。

①不動産(自宅・投資用物件)が含まれる

査定額の妥当性(固定資産税評価額か時価か)、住宅ローン(オーバーローン・アンダーローン)の処理が争点になりやすいため。

②退職金が高額となる見込みがある

将来の支給額をどう計算し、現在の価値として評価するかの判断が分かれることがあるため。

③相手が財産を十分に開示しない

相手の任意開示に限界がある場合、弁護士が関与して弁護士会照会制度弁護士法23条の2)や、手続き段階に応じて裁判所の調査嘱託などの活用を検討できることがあるため。
もっとも、照会が常に奏功するとは限らず、可否や範囲は証拠状況・提出先の運用等に左右されます。

④会社経営者・自営業である

法人資産と個人資産の区別や、自社株式(非公開株式)の評価が問題となることがあるため。

⑤相手方に弁護士が付いている

法的知識の差により、不利な条件で合意してしまうリスクがあるため。

⑥財産分与の割合(2分の1ルール)に争いがある

2分の1を基本としつつも、寄与度修正特有財産の主張が問題となるため。

⑦調停や裁判に進む可能性がある

書面作成や証拠整理など、手続対応が必要となるため。

【補足】
不動産・株式・退職金は、基準時(実務上は別居時とされることが多い)や、評価時点・評価方法(時価、査定、鑑定、算定方式など)の違いによって結論が変わり得ます。
特に評価時点は、手続(協議・調停・審判・訴訟)や争点の立て方により問題となりやすいため、前提整理が重要です。
これらが含まれる場合は、見通しを確認するために弁護士へ相談することも一つの方法です。

弁護士が不要・自分たちで解決できる可能性があるケース

次の条件を概ね満たしている場合は、当事者間の協議のみで解決できる可能性もあります。

  • 分与対象が預貯金のみで金額が明確
  • 分与割合(原則2分の1)に双方が合意している
  • すべての財産が自主的に開示されている
  • 冷静な話し合いが継続できている

もっとも、合意内容は後日の紛争防止のため離婚協議書に明確化し、公正証書とする方法が検討されることもあります。

【弁護士依頼の必要性まとめ】

項目自分で進める場合弁護士に依頼する場合
費用協議書作成などの実費中心着手金・成功報酬などが発生する場合あり
法的整理当事者の理解に依拠裁判実務を踏まえた整理が可能
精神的負担直接交渉が必要代理交渉により負担軽減が期待できる
財産調査相手の開示に依存弁護士会照会制度などを活用できる場合あり

財産分与とは?いつまで請求できる?|2年・5年の除斥期間を解説

財産分与とは、離婚の際に婚姻期間中に形成された財産を整理・清算する制度です。
単なる預貯金の折半ではなく、夫婦の協力関係を前提に公平な分配を図る法的手続と位置付けられています。
ここでは、民法第768条の規定、財産分与の性質、請求期限(除斥期間)について整理します。

財産分与の定義(民法768条)

民法第768条第1項は、離婚した当事者の一方が他方に対して財産分与を請求できると定めています。
実務では、婚姻中に夫婦が協力して形成した共有財産の清算が中心となります。
名義が一方のみであっても、実質的に夫婦の協力によって築かれた財産であれば、分与対象となる可能性があります。

財産分与の3つの性質|清算的・扶養的・慰謝料的

裁判実務では、財産分与は次の3つの要素を総合考慮して判断されます。

①清算的財産分与

婚姻中に夫婦で築いた財産を、寄与度に応じて分配するもので、財産分与の中心的な性質です。

②扶養的財産分与

離婚後の生活状況を踏まえ、一定の生活補助的要素を考慮する場合があります。

③慰謝料的財産分与

不貞行為やDVなどの事情を、財産分与の枠組みの中で調整することがあります(別途慰謝料請求が行われることもあります)。

財産分与の割合は2分の1が原則?|実務上修正されるケースとは

裁判実務では、専業主婦(主夫)の家事労働も貢献として評価され、分与割合は2分の1とされることが多いとされています(いわゆる2分の1ルール)。
もっとも、次のような事情がある場合には、割合が修正される可能性があります。

  • 経営者や専門職など、個人の特殊な能力による高額所得
  • 一方による著しい浪費
  • 結婚前の資産(特有財産)を主たる原資とする財産形成

最終的な割合は、具体的事情を総合して判断されます。
財産分与の割合の決め方について、さらに詳しく知りたい方は以下の記事を合わせてご覧ください。

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財産分与の請求期限(除斥期間)はいつまで?

財産分与の請求は、原則として離婚後一定期間内に行う必要があります。

現行法

民法第768条第2項により、原則として離婚成立から2年以内とされています(一般に除斥期間と解され、時効とは異なります)。
起算点は、協議離婚では離婚届の受理日裁判離婚では判決確定日などとなるため、ケースに応じた確認が重要です。
この期間を経過すると、家庭裁判所への申立てが認められない可能性があります。

民法改正の動向(2026年施行予定)

民法改正により、除斥期間を5年へ延長する見直しが予定されています。
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ただし、施行日以前に離婚が成立しているケースについては、旧法の期間(2年)が適用されるなどの経過措置に注意が必要です。
適用関係や施行時期については、最新の法令をご確認ください。

【財産分与の請求期限まとめ】

  • 法的性質:除斥期間(時効とは異なる制度)
  • 起算点:離婚成立日(協議離婚は離婚届受理日、裁判離婚は判決確定日など)
  • 期間:現行2年(改正後5年予定)
  • ※除斥期間は、原則として時効のような更新・完成猶予が認められないと解されています。

  • 注意点

当事者間で話し合いを継続している場合でも、期限管理は重要です。
請求可能期間について判断に迷う場合は、最新の法改正情報を踏まえた確認が必要となります。

財産分与の対象になる財産・ならない財産|共有財産と特有財産

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財産分与の実務で争点になりやすいのが、どの財産が分与対象(共有財産)に当たるのかという点です。
判断基準は名義ではなく、「婚姻期間中に夫婦の協力によって形成されたかどうか」とされています。

財産分与の対象となる共有財産の具体例

原則として、婚姻日から基準時(一般に別居開始時)までに形成された財産は、分与対象となる可能性があります。

  • 預貯金・現金
  • 不動産(自宅・マンションなど)。
  • 退職金
  • 有価証券(株式・投資信託・暗号資産など)
  • 生命保険
  • 家財・自動車

財産分与の対象外となる特有財産の範囲

夫婦の協力とは無関係に取得した財産は、原則として分与対象外とされています。

婚姻前から保有していた資産

独身時代の預貯金や、結婚前に取得した不動産など。

相続・贈与により取得した財産

婚姻中であっても、親から相続した不動産や遺産などは原則対象外です。
もっとも、特有財産であることを主張する側が、その根拠を示す必要がある場合があります。

例外|特有財産が分与対象となることがあるケース

特有財産であっても、他方配偶者の協力により価値が維持・増加したと評価される場合には、その寄与部分について分与が検討されることがあります。
例:相続した不動産の維持費やローンを夫婦の家計から支出していた場合など。
※判断は個別事情によります。
離婚時に財産分与の対象とならないものについて、さらに詳しく知りたい方は以下の記事を合わせてご覧ください。

[kanren link=”https://nexpert-law.com/rikon/3016/”]

別居後に取得した財産は対象になる?

裁判実務では、夫婦の経済的協力関係が解消した時点として、財産分与の基準時を別居開始時とする考え方が採られることが多いとされています。
そのため、別居後に形成した給与・預貯金などは、原則として分与対象外となる方向で整理されやすい一方、基準時や評価時点が争点化することもあるため、個別事情を踏まえた検討が必要です。

【財産分与の対象一覧・早見表】

財産の種類共有財産(分与対象となる可能性)特有財産(原則対象外)
預貯金婚姻中に形成された分(名義不問)結婚前から保有していた分
不動産婚姻中に取得した自宅など結婚前取得・相続取得
退職金婚姻期間に対応する部分婚姻前・別居後相当分
負債住宅ローン・生活費由来の借入個人的浪費や独身時代の借入

財産分与の具体例|分与額の相場・計算シミュレーション

※以下は一般的な計算例です。実際の財産分与額は、個別事情や立証状況、裁判所の判断により異なります。
財産分与の計算は、単純な合計額の折半ではなく、基準時(一般に別居時)や評価方法によって結果が変わることがあります。
ここでは、不動産と退職金を例に、代表的な計算方法を示します。

ケース①|不動産(住宅ローンあり)+預貯金の財産分与

【計算の考え方】
不動産は、

評価額 − 住宅ローン残高 = 純資産価値

を基準に検討されることが一般的です。
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【前提例】

  • 自宅の評価額:3,000万円
  • 住宅ローン残高:2,000万円
  • 不動産の純資産価値:1,000万円
  • 預貯金(婚姻中形成):800万円
  • 合計共有財産:1,800万円

【シミュレーション】

1,800万円 × 1/2 = 900万円(目安額)

※分与割合は2分の1とされることが多いものの、事情により修正される場合があります。
【オーバーローンの場合】
査定額をローン残高が上回る場合(オーバーローン)は、不動産の評価を0円またはマイナスとして扱う運用がみられます。
マイナス分を他の財産とどのように調整するかは、個別事情によって異なります。
不動産の財産分与について、さらに詳しく知りたい方は以下の記事を合わせてご覧ください。

[kanren link=”https://nexpert-law.com/rikon/206/”]

ケース②|将来支給される退職金の財産分与

退職金は、支給の確実性が高い場合に、婚姻期間相当部分が分与対象とされる傾向があります。
【計算方法の一例】

  1. 別居時点で自己都合退職した場合の支給見込額を算出
  2. 在職期間に対する婚姻期間の割合を乗じる
  3. その金額を分与割合で按分する

【前提例】

  • 別居時自己都合退職見込額:2,000万円
  • 婚姻期間割合:50%
  • 分与対象額:1,000万円

【シミュレーション】

1,000万円 × 1/2 = 500万円(目安額)

※定年まで期間が長い場合には、不確定要素を考慮し現在価値へ調整する考え方がとられることもあります。
退職金の財産分与について、さらに詳しく知りたい方は以下の記事を合わせてご覧ください。

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分与額の相場はある?

財産分与には「一律の相場」はありません。
共有財産の総額 × 分与割合(多くは2分の1)が基本的な枠組みです。
そのため、

  • 共有財産が1,000万円 → 約500万円が目安
  • 共有財産が3,000万円 → 約1,500万円が目安

というように、財産規模によって変動します。
※割合や評価方法は個別事情により異なります。

補足|会社経営者・医師など資産規模が大きい場合

自社株(非公開株式)や多額の金融資産がある場合は、評価方法(純資産価額方式・類似業種比準方式など)により結果が変わることがあります。
これらのケースでは、画一的なシミュレーションが難しく、評価の前提整理が重要になります。
資産構成が複雑な場合は、家事事件の実務を踏まえた検討が必要となることがあります。

財産分与を弁護士に依頼するメリット・デメリットと費用対効果

財産分与を弁護士に依頼するかどうかは、想定される経済的利益・精神的負担の軽減・弁護士費用を踏まえて検討することが重要です。
すべてのケースで依頼が必要とは限りませんが、事案によっては専門的な対応が有力な選択肢となることがあります。

財産分与を弁護士に依頼する主なメリット

財産分与を弁護士に依頼する主なメリットは以下のとおりです。

①財産調査の手段が広がる可能性

相手方が十分に財産を開示しない場合、弁護士は

  • 弁護士会照会制度(弁護士法23条の2)
  • 裁判所の調査嘱託

といった制度の活用を検討できます。
もっとも、これらは万能ではなく、事案や証拠状況によって可否が左右されることがあります。

②法的整理に基づく財産評価

不動産の評価方法、退職金の現在価値換算、特有財産の範囲、寄与度の主張などは、判断が分かれやすい論点です。
弁護士が裁判実務の枠組みに沿って整理することで、法的に整合的な主張を構成しやすくなります。

③代理交渉による負担軽減

財産分与の協議は感情的対立を伴うことがあります。
弁護士が代理人となることで、直接の連絡や交渉を任せることが可能となり、心理的負担が軽減される場合があります。

④調停・裁判への一貫対応

協議がまとまらない場合、家庭裁判所での調停や審判に進むことがあります。
弁護士が関与していれば、書面作成や証拠整理を含め、一貫した対応が可能となります。

弁護士に依頼するデメリット・注意点

弁護士に依頼するデメリット・注意点は以下のとおりです。

①弁護士費用が発生する

着手金や成功報酬などの費用がかかります。
共有財産の規模によっては、費用と得られる利益のバランスを慎重に検討する必要があります。
事前に見積りや報酬体系を確認することが重要です。

②解決まで時間を要する場合がある

法的整理や証拠収集を行う場合、当事者間の単純な合意より時間がかかることがあります。
もっとも、合意内容を明確にすることで、将来の紛争予防につながる側面もあります。

財産分与における費用対効果の考え方

一般的には、弁護士の関与によって見込まれる増減額と、弁護士費用との比較が一つの判断要素になります。
ただし、金額面だけでなく、

  • 相手方との直接交渉を避けたい
  • 将来の不払いに備えて公正証書を作成したい
  • 法的整理を明確にしておきたい

といった事情を重視して依頼を検討するケースもあります。

【比較表】自分で行う場合 vs 弁護士に依頼する場合

比較項目自分で行う場合弁護士に依頼する場合
財産調査相手の開示に依拠弁護士会照会制度などを活用できる場合あり
交渉負担直接協議が必要代理交渉が可能
法的整理当事者の理解に依存実務に基づく主張整理が可能
費用実費中心着手金・報酬金などが発生

財産分与の弁護士費用相場はいくら?|着手金・成功報酬の目安

財産分与を弁護士に依頼する際、多くの方が気になるのが費用の水準と総額の見通しです。
もっとも、弁護士費用は一律ではなく、事務所の方針や事案の内容、財産額、手続段階によって異なります。
ここでは、実務上みられる一般的な目安を紹介します。

財産分与の弁護士費用の主な内訳と相場

※以下はあくまで参考水準です。正式な費用は各法律事務所にご確認ください。

項目費用の目安内容
相談料30分5,000円~1万円程度
※初回無料の場合あり
法律相談のみで終了する場合の費用。
時間制が一般的。オンライン対応事務所も増えています。
着手金30万円~50万円程度結果にかかわらず依頼時に支払う費用。
調停・訴訟移行時に追加費用が発生する場合があります。
成功報酬30万円~50万円+経済的利益の10%~20%程度獲得額や減額できた額を基準に算定されることが一般的です。
計算方法は事務所ごとに異なります。
実費・日当数万円程度印紙代・郵券代・戸籍取得費用などの実費。
遠方出廷の場合は日当(3万~5万円程度)や交通費が必要となることがあります。

弁護士費用を確認する際のポイント

弁護士費用については、次の点を事前に確認すると見通しが立てやすくなります。

  • 成功報酬の算定基準(総額基準か増額分基準か)
  • 調停・訴訟移行時の追加費用の有無
  • 実費の概算見込み
  • 分割払いの可否

複数の事務所で説明を受け、内容を比較検討することも一つの方法です。

財産分与を自分で進める場合の注意点|見落としやすいポイント

財産分与は、必ずしも弁護士に依頼しなければならない手続きではありません。
財産の内容が比較的単純で、双方が誠実に開示し合える状況であれば、当事者間の協議で解決できるケースもあります。
もっとも、不動産や退職金など評価が難しい財産が含まれる場合には、整理に専門的な知識が必要となることがあります。
ここでは、実務上見落とされやすい主なポイントを整理します。

①不動産の評価方法と基準時の整理

自宅や投資用不動産は、共有財産の中でも高額になりやすい資産です。

  • 査定方法が複数存在する(簡易査定・訪問査定など)
  • 住宅ローン残高との関係で「純資産価値」の算定が必要
  • 財産の確定時点(別居時)と評価時点の整理が必要となる場合がある

評価方法や基準時の理解が不十分なまま合意すると、後から疑問が生じることがあります。

②退職金や年金分割の整理

預貯金などの現金資産は把握しやすい一方で、将来受給予定の財産は見落とされることがあります。

  • 将来支給予定の退職金(支給の蓋然性が高い場合)
  • 財産分与とは別制度である「年金分割」

年金分割は、原則として離婚成立の翌日から2年以内に、年金事務所などで請求手続を行う必要があります(合意の期限ではなく、手続期限である点に留意が必要です)。
財産分与の協議と並行して、早めに日本年金機構(年金事務所)での確認を進めることが重要です。
年金分割について、さらに詳しく知りたい方は以下の記事を合わせてご覧ください。

[kanren link=”https://nexpert-law.com/rikon/3327/”]

③財産開示の十分性

財産分与は、双方が把握している財産を前提に話し合いが進みます。

  • 口座の有無や残高の確認方法
  • 特有財産と共有財産の区別
  • 証拠資料(通帳写し・評価書など)の保存

開示内容に疑問がある場合は、どのような確認方法があるかを事前に調べておくことが有用です。

自分で進めることが適しているケースとは

次のような場合は、当事者間での解決が比較的進めやすい傾向があります。

  • 財産が預貯金中心で構成が単純
  • 不動産や事業資産がない
  • 双方が協力的で情報開示が十分
  • 合意内容を書面化できる環境がある

一方で、財産の種類が多岐にわたる場合や、評価方法に争いがある場合には、弁護士の意見を確認することも一つの選択肢となります。

まずは情報整理から

弁護士に依頼するかどうかは、事案の内容や希望する解決方法によって異なります。

  • 財産の一覧を作成する
  • 取得時期・名義・残高を整理する
  • 不動産や退職金の有無を確認する

といった準備を行ったうえで、必要に応じて弁護士の説明を聞くことで、より適切な判断がしやすくなります。

財産分与の解決までの流れ|協議・調停・裁判と弁護士の関与

財産分与は、一般的に
①協議 → ②調停 → ③裁判(審判・訴訟)
の流れで進みます。
すべての案件が裁判に進むわけではなく、多くは協議や調停段階で解決します。
弁護士が関与する場合でも、どの段階から依頼するかは状況により異なります。

①協議(話し合い)

当事者同士で合意を目指す方法です。
【弁護士が関与する場合】

  • 財産の整理と法的観点からの評価
  • 交渉の代理対応
  • 合意内容の書面化(公正証書作成の支援など)

合意内容を明確に残すことで、将来の紛争予防につながることがあります。

②調停(家庭裁判所)

協議が整わない場合、家庭裁判所で調停委員を介して話し合います。
【弁護士の役割】

  • 法的根拠に基づく主張整理
  • 必要に応じた資料収集の検討
  • 調停調書の内容確認

調停が成立すると、判決と同様の効力を持つ書面が作成されます。

③裁判(審判・訴訟)

調停でも合意に至らない場合、裁判所が提出資料に基づき判断します。
【弁護士の役割】

  • 証拠の整理と書面作成
  • 判例に基づく法的構成の提示
  • 相手方主張への対応

裁判は専門的な手続きとなるため、法的整理がより重要になると考えられます。

財産分与に強い弁護士の選び方|確認したい4つの視点

弁護士を選ぶ際は、次の点を確認すると比較しやすくなります。

  1. 取扱分野・解決事例:財産分与を含む離婚案件の取扱実績があるか。
  2. 説明の分かりやすさ:評価方法や見通しについて具体的に説明してくれるか。
  3. 費用の明確さ:着手金・成功報酬の算定基準が事前に示されているか。
  4. 不利な点も含めた説明:見通しやリスクをバランスよく説明しているか。

複数の事務所で話を聞き、比較検討することも一つの方法です。

よくある質問(FAQ)|財産分与と弁護士に関する疑問を解消

財産分与の相談時に、多くの方から寄せられる代表的な質問をQ&A形式でまとめました。

Q. 専業主婦(主夫)でも2分の1の財産分与を受けられますか?

A. 原則として、2分の1が基準とされています。
裁判実務では、家事や育児も夫婦の財産形成への貢献と評価されます。そのため、収入の有無にかかわらず、清算的財産分与は「2分の1」を基本とする運用が一般的です。
もっとも、

  • 一方の特殊な才能や資質によって多額の財産が形成された場合
  • 著しい浪費などの特別な事情がある場合

には、割合が調整されることもあります。最終的な割合は個別事情により判断されます。

Q. 離婚後でも財産分与を請求できますか?

A. 一定期間内であれば可能です。
現行法(民法第768条第2項)では、離婚成立から2年以内に家庭裁判所へ申立てを行う必要があります(除斥期間)。
この期間を経過すると、原則として裁判所に申し立てることができなくなります。
なお、法改正により、この期間は5年へ延長される予定(2026年施行予定)とされています。
ただし、施行日以前に離婚が成立しているケースについては、旧法の期間(2年)が適用されるなどの経過措置に注意が必要です。
適用関係や施行時期については、最新の法令をご確認ください。

Q. 相手が財産を十分に開示しない場合はどうすればよいですか?

A. 手続きの中で確認方法を検討することになります。
調停や裁判の段階では、裁判所を通じた調査手続きが利用される場合があります。
また、弁護士が関与する場合には、弁護士会照会などの制度の活用を検討できることがあります。
もっとも、これらは事案ごとに可否や範囲が異なります。
不明点がある場合は、どのような方法があるのかを事前に確認することが有用です。

Q. 不倫をした側(有責配偶者)でも財産分与は請求できますか?

A. 原則として請求自体は可能です。
財産分与は、夫婦が協力して形成した共有財産を清算する制度であり、離婚原因の有無とは性質が異なります。
そのため、有責配偶者であっても分与請求権は否定されません
ただし、別途発生する慰謝料との関係で、最終的な金額が調整されることがあります。

まとめ|まずは正確な見通しを知ることから

財産分与は、離婚後の生活設計に影響する大切な問題です。
もっとも、すべてのケースで弁護士への依頼が必要となるわけではありません。
重要なのは、「自分のケースでは、どの程度の財産分与が見込まれるのか」を客観的に把握することです。
特に、

  • 不動産や退職金など評価が難しい財産がある
  • 財産の範囲や金額について認識に差がある
  • 分与額が大きくなる可能性がある
  • 直接の話し合いに不安を感じている

といった事情がある場合には、早い段階で一度弁護士の説明を受けておくことで、判断材料が整理しやすくなります。
ネクスパート法律事務所では、離婚問題に強い弁護士が在籍しています。
ご来所による面談はもちろん、仕事が忙しくて相談に行けない人や遠方にお住まいの方のためにオンライン法律相談サービスも実施しています。
初回の相談は30分無料ですので、ぜひ一度ご相談ください。

この記事の監修弁護士

弁護士 石田志寿
第二東京弁護士会所属
石田 志寿(登録番号:47706)

はじめまして。ネクスパート法律事務所 東京オフィス弁護士の石田志寿です。

これまで家事事件をはじめ、不倫慰謝料や離婚など男女問題に特化した事件に携わってまいりました。その中でも、夫婦関係や不倫問題のご相談は、法律論だけでなくお気持ちへの配慮が重要となる分野だと強く感じております。

私が大切にしているのは、まずお話を丁寧に伺うことです。ご相談者様が抱えている不安や葛藤を正確に理解したうえで、法的に適切かつ現実的な解決策をご提案いたします。

「相談したら気持ちが落ち着いた」「話しやすかった」といったお声をいただくことも多く、心に寄り添う姿勢と、解決に向けた冷静な判断の両立を常に意識しております。

一人で抱え込まず、まずはお気軽にご相談ください。