夫婦の共有財産 離婚前の預金引き出しは違法?
離婚をする際、気になるのはお金に関することです。
できるだけ不安を取り除きたいという気持ちから、配偶者の口座から勝手にお金を下ろそうと考えている方がいらっしゃるかもしれませんが、この行為は違法でしょうか?
この記事では、離婚前に共有財産から勝手にお金を下ろすのは違法なのか、注意点について解説します。

離婚前にお金を下ろすことは違法なのか?

離婚前に夫婦の共有財産となるお金を下ろすことは、違法ではありません
共有財産は、双方に利用処分する権利があるからです。
共有財産とは、婚姻期間中に夫婦が協力して築き上げた財産です。例えば、婚姻期間中に夫もしくは妻が稼いだ給料を、どちらか一方の名義の口座で管理していたとしても、共有財産として夫婦双方に利用処分する権限があります。
そのため、どちらか一方が勝手にお金を引き出したとしても、そのお金を返還するように求められませんし、不法行為に基づく損害賠償の請求もできません(東京地裁平成4年8月26日判決)。
ただし、勝手に現金を引き出すことで財産分与をする際に影響が出る可能性があります。別居後の生活費が心配なら、配偶者の預金を引き出す前に、婚姻費用分担請求を検討しましょう。

離婚前に下ろしたお金は財産分与でどのように扱われる?

離婚前に配偶者が勝手にお金を引き出していた場合、財産分与でどのように扱われるのか解説します。

下ろしたお金が残っていれば財産分与の対象となる

配偶者の口座から下ろしたお金が残っていれば、財産分与の対象となります
例えば、配偶者の口座から勝手にお金を下ろしたお金が、現金として手元に残っている、自分の口座に入っている、そのお金をもとにして別の財産を取得している場合などです。この場合、残っている部分が財産分与の対象となります。
現金や他の財産として残っていなくても、下ろしたお金が多額で、生活費等に費消したなど合理的な説明がつかなければ、お金が残っていると推定され、下ろしたお金の一部が財産分与の対象になることもあります。

離婚前に別居をしていれば別居時の残高が基準になる場合がある

離婚前に別居をしていれば、別居時の残高が財産分与の基準になる場合があります。
財産分与は、夫婦双方が協力して形成した財産を公平に分配することが目的です。離婚に先立って別居するケースでは、通常、別居後に夫婦の協力関係がないと考えられるため、特段の事情がない限り、別居時までに形成した財産を分与の対象とすることが一般的です。
例えば、A名義の預金の別居時残高が500万円で、別居後にAが100万円を引き出したとします。この場合、離婚時の残高が400万円しかなくても、別居時における預金残高(500万円)がそのまま評価額となることがあります。このケースでは、AはBに対して250万円を分与することになります。

離婚前に配偶者がお金を下ろしたかどうか調べる方法はある?

離婚前に配偶者が勝手にお金を下ろしたかどうか、調べる方法について以下で解説します。

通帳の開示を求める

配偶者が自身の口座で保管している共有財産となるお金を勝手に下ろした場合、通帳の開示を求めましょう。
お金を引き出した場合は、通帳の履歴に残るため言い逃れができないからです。
共有財産として現金を管理していた口座から勝手に引き出された場合は、通帳記入等を行って提示をし、相手に対して説明を求めましょう。

調停を申立てる

配偶者が通帳の開示をしない、あるいは口座の取引履歴を提示しても現金を引き出したことを認めない等、話し合いで決着がつかなければ家庭裁判所に離婚調停を申立てましょう。調停は話し合いで合意を目指す方法ですが、調停委員が間に入るため当事者同士で行うよりもスムーズにいくケースがあります。調停委員を通じて配偶者に通帳開示等を求めれば、応じてもらえる可能性が高まります。
それでも配偶者が通帳開示等に応じなければ、裁判所が必要な調査を委託してそれによって得た調査報告を証拠資料とする調査嘱託や、裁判所を通じて文書を所有者している第三者に対して裁判所に送付するように嘱託する文書送付嘱託の申立てを検討しましょう。

弁護士に財産分与を含む離婚手続きを依頼する

弁護士に財産分与を含む離婚手続きを依頼することも検討しましょう。
弁護士は、受任事件に必要な範囲で弁護士照会(23条照会)を申し出られるため、配偶者の預金の取引履歴の調査ができる場合があります。
当事者同士で話し合ってもなかなか折り合いがつかない場合、弁護士が間に入れば、相手も対応を変える可能性があります。相手と直接話し合いをしなくて済むため、精神的な負担も軽減できます。
離婚の手続きは財産分与に限らず、さまざまなものがあります。子どもがいる場合は親権、養育費、面会交流、相手の不貞行為が原因で離婚に至った場合は慰謝料請求の問題があります。
これらすべてについて話し合い、最終的に離婚協議書を取り交わすとなると一人で行うのは大変な作業ですし時間がかかります。話し合いで解決できず、調停・裁判になった場合、裁判所への手続きも必要です。
弁護士に依頼すれば、こうした一連の手続きを任せられるので安心です。離婚後の生活を滞りなく送るためにも、早い段階で弁護士への依頼を検討してください。

まとめ

離婚前に配偶者に勝手にお金を引き出されたら、怒りと絶望感でいっぱいとなるでしょう。しかし、怒りにまかせて相手を責め立てたら余計に事がこじれる可能性がありますので、冷静に対応をしましょう。
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