60代で離婚を考える場合、経済的にやっていけるのか、一人での生活に対する不安、将来の介護はどうするのかなど、現実的な問題が数多く浮かびます。
離婚を決意しても、十分な準備がないまま手続きを進めてしまうと、生活面・金銭面で後悔することにもなりかねません。
後先を考えずに勢いで決めてしまうのではなく、離婚後の生活設計や条件交渉をしっかり行うことが大切です。
ここでは、60代で離婚を考える人に向けて、離婚に多い理由、メリット・デメリット、財産分与の注意点、離婚後の暮らしのポイントなどをわかりやすく解説します。
目次
60代の離婚率は約1%
2022年の人口統計資料集によると、2020年の60代男女の離婚率は約1%でした。
一見少なく感じられますが、60代夫婦の100組に1組が離婚するという意味ではありません。
日本には約3,000万組の夫婦がいるとされ、仮にそのうちの1割が60代だとすると、毎年約3万組の60代夫婦が離婚している計算になります。
あくまで概算ですが、60代でも一定数の離婚が現実に起きていることがわかります。
60代女性の離婚理由でよくあるもの
性格の不一致を長年我慢してきた
若い頃から感じていた夫との性格の不一致を、子育てや家事に追われる中で我慢してきたという女性は少なくありません。
60代になり子どもも独立すると、「もう我慢しなくていい」と感じて離婚を選ぶケースがあります。
特に、感情を抑え込んできた人ほど、老後の自由を求めて離婚を考える傾向があります。
【参考:離婚理由が性格の不一致の場合の具体例|本当の理由を紹介】
定年後の夫との生活がストレス
夫が定年退職を迎えて家にいる時間が長くなると、妻の生活リズムが崩され、精神的な負担が増すことがあります。
自分の時間が持てなくなったり、夫の干渉が増えたりすることで、ストレスが限界に達し、離婚を考えるきっかけになります。
定年後の、ずっと一緒が重荷に感じられることも多いのです。
夫の介護をしたくない
60代になると、夫が将来的に介護を必要とすることも現実味を帯びてきます。
「家族だから介護して当然」という空気に縛られたくないし、自分の人生を犠牲にしたくないという思いから、離婚を選ぶ女性もいます。
介護負担を避けたい思いから、早めに離婚を選ぶ人もいます。
【参考:配偶者の病気や障害を理由に離婚できる?【弁護士が解説】】
老後を自分のために生きたい
子育てや家庭のために人生の大半を費やしてきた女性が、「これからは自分のために生きたい」と考えるのは自然な流れです。
趣味や友人との時間を大切にしながら、自分らしく老後を過ごす選択肢として離婚を選ぶ人もいます。
60代で離婚するメリット
60代での離婚は大きな決断ですが、どのようなメリットがあるのでしょうか。
精神的ストレスを軽減できる
夫との関係が長年のストレスの原因だった場合、離婚によって精神的に大きく楽になることがあります。
無理に会話を合わせたり、価値観の違いに悩まされたりすることがなくなり、自分のペースで生活できるようになります。
心の余裕が生まれ、笑顔や健康を取り戻すきっかけになる人も多いです。
老後を自分らしく過ごせる
離婚をしたら、家族や配偶者中心の生活をしなくてよくなります。老後の時間を自分らしく使えるようになるでしょう。
趣味に打ち込んだり、友人と過ごしたり、新しいことに挑戦したりと、自分の価値観を中心に暮らす自由が生まれます。
これまでの制約から解放されることで、生きがいを見つけやすくなる点も魅力です。
子どもが自立しているので離婚しやすい
60代になると、子どもがすでに独立しているケースが多く、親の離婚が子どもの進路や生活に直接影響を与えることは少なくなります。
「子どもがいるから離婚できない」と悩んでいた人にとっては、離婚しやすいタイミングです。
離婚後も親子関係を保ちやすいのも、この年代の特徴です。
夫の介護をしなくて済む
夫の健康状態に不安がある場合、今後の介護をどうするかは大きな問題です。
妻が介護するのが当然、と考える夫との関係に疲れてしまう女性も少なくありません。
離婚によって、介護の責任から解放され、自分の将来設計に集中できるようになります。
【参考:離婚後の生活や一人暮らしの生活費・必要な準備を解説】
60代で離婚するデメリット
60代での離婚によるデメリットは大きく、人によっては看過できないこともあります。
離婚後に後悔することのないように注意しましょう。
経済的不安がある
60代で離婚すると、年金や貯金など限られた収入で生活していかなければならず、経済的な不安を抱えやすくなります。
特に専業主婦だった女性は、離婚後の生活費を賄うのが難しいケースがあります。
パートで働くにも体力的に厳しくなる年代のため、事前の資金計画や支援制度の活用が重要です。
住まいの確保が難しいことも
離婚後は住まいを新たに確保する必要がありますが、高齢になると賃貸物件の入居審査が厳しくなる傾向があります。
保証人の確保や収入証明などで不利になりやすく、希望の物件に入れないケースもあります。
それにより、離婚時に持ち家の所有権を争うことになることも考えられます。
孤独や不安を感じやすい
離婚を希望していたものの、長年連れ添った相手と離れて一人になることで、思っていた以上に孤独を感じる人もいます。
特に、近くに家族や頼れる人がいない場合は、日々の生活で心細さを感じやすくなります。
病気や入院など、いざというときに支えてくれる人がいないという不安も大きな課題です。
60代夫婦が離婚時の財産分与で気を付けること
60代の夫婦の場合、婚姻期間が長くなるため、夫婦で築いた財産も多くなります。
財産分与で適切に財産を受け取れるかどうかが、離婚後の生活のために重要です。
ここでは、60代夫婦が離婚時の財産分与で気をつけることを説明します。
夫婦にある財産を見逃さないようにする
財産分与の対象となるのは、名義に関係なく婚姻期間中に築いた共有財産です。
預貯金だけでなく、不動産、年金、退職金、保険、株式なども含まれるため、見落としのないよう注意が必要です。
特に夫名義の財産は見えづらくなりがちなので、開示を求めて確認することが大切です。
通帳のコピーを確保しておく、不動産の登記簿を取得する、退職金の支給規定を確認するといった現実的な方法も併用すると安心です。
不明な点は専門家への調査依頼を検討しましょう。
財産分与の条件で妥協しないようにする
離婚を早く終わらせたい一心で、不利な条件でも応じてしまうケースは少なくありません。
しかし、60代以降は再就職や収入の回復が難しいため、妥協してしまうと老後の生活に直接響いてしまいます。
本当に必要な金額や資産を見極め、妥協せずに交渉しましょう。
【参考:財産分与の割合はどのようにして決めるか?原則と例外を解説】
不安なとき・納得できないときは弁護士に相談する
財産分与に関して疑問や不安があるときは、迷わず弁護士に相談することをおすすめします。
公平な分与の仕方や、法律の知識がないまま交渉しても、不利な条件で決着がついてしまう可能性があります。
弁護士に依頼すれば、財産の把握や交渉、分与の手続きまでサポートを受けられ、安心して進めることができます。
【参考:離婚時の財産分与は相談すべき?問題点をしっかり押さえて解決を目指そう】
60代で離婚してよかったと感じる女性の特徴は?
経済的な自立ができている人
安定した収入源や蓄えがある女性は、離婚後の生活費や住宅の確保などに困るリスクが低くなります。
経済的な基盤があることで、離婚後の生活設計に選択肢が広がり、他人に過度に頼らず生活できるようになります。
結果として自由度の高い生活を送りやすくなります。
離婚後の生活に明確なイメージがあった人
離婚後はどんな仕事をして、どんな家に住んで、どんな生活をするのか。
離婚後の生活について具体的な計画を持っている人は、生活の変化に備えた準備ができているため、離婚後も混乱なく生活を再構築しやすいです。
現実的な視点を持っていることで、安定した生活を送りやすくなるでしょう。
趣味や交友関係が豊かな人
趣味や交友関係を継続的に持っている人は、離婚後も日常生活に社会的接点があるため、孤立しにくくなります。
地域活動や趣味の集まりなどを通じて、人とのつながりを維持することで、精神的に豊かな生活を送ることができます。
家族から理解や協力を得られた人
子どもや親族など、身近な家族から協力を得られている場合、離婚後の生活で必要な支援や相談環境が整いやすくなります。
医療や介護、いざというときのサポート体制があることで、安心感のある生活を送りやすくなります。
【参考:熟年離婚で後悔しないために準備すべきこと】
60代で離婚して一人暮らしをする男性が注意すべきことは?
次に、60代で離婚して1人暮らしをする男性が心がけるべき点について説明します。
食事や家事を自立して行えるようにすること
離婚後の1人暮らしでは、毎日の食事や掃除、洗濯などの家事を自力でこなす必要があります。
質の良い生活を保つためにも、基本的な家事を習慣化し、日常生活を安定的に送る準備が求められます。
家事スキルが不足している場合は、事前に学び、無理なく続けられる方法を取り入れることが重要です。
孤独にならないように生活を工夫すること
高齢男性の一人暮らしは、社会的孤立のリスクが高くなります。孤独によるストレスはうつ病などの原因にもなります。
地域の活動に参加したり、趣味のつながりを維持したりすることで、人との接点を持ち続ける工夫が必要です。
意識的に外部との関わりをつくることが大切です。
健康管理をして長く働けるようにする
収入や生活の安定を保つためには、健康を維持して長く働ける状態を確保することが重要です。
適度な運動やバランスの取れた食事、規則正しい生活などを意識することで、なるべく健康な状態を維持できるようにしましょう。
身体的な安定があってこそ、1人暮らしや就労の継続が可能になります。
老後のサポート体制を早めに確保しておく
一人暮らしをしていると、病気やケガなど、万が一のときに助けを求めにくくなります。
体調を崩してから慌てても、すぐに対応できないことがあります。
元気なうちに、近くの相談窓口や見守りサービス、頼れる人との連絡先などを確認しておくと安心です。
60代貯金なしで離婚する際に重要なこと
60代で貯金がなくても、離婚後に生活を立て直すことは可能です。
ただし、準備や工夫が必要です。ここでは、経済的な不安を抱える中で離婚を進める場合に、意識すべきポイントを紹介します。
離婚条件をなるべく有利にする
貯金がない場合は、離婚のときに受け取れるお金がその後の生活に大きく影響します。
財産分与や年金分割、必要に応じて慰謝料など、正当な権利はきちんと主張することが大切です。
焦って妥協するのではなく、納得できないときは弁護士に相談することも検討しましょう。
【参考:離婚の際に決めるべき7つの項目】
生活保護などの公的支援を検討する
収入がなく、生活がどうしても成り立たない場合は、生活保護などの公的支援を利用する方法もあります。
市区町村の福祉課で相談ができ、住まいや医療費などについて支援が受けられることがあります。
一人で悩まず、まずは窓口で問い合わせてみることが重要です。
パートなどで収入を補う
年金だけでは生活が苦しいことも十分考えられます。
無理のない範囲でパートなどの仕事を始めることで、毎月の生活費を補いましょう。
年齢や体力に合った働き方を見つけることで、収入だけでなく生活の張りにもつながります。
60代の離婚に関するよくある質問
60歳を過ぎてからの離婚は遅い?
60代での離婚が特別に遅いということはありません。
ただし、収入や住まい、健康面など、離婚後の生活を現実的に考える必要があります。
勢いだけで判断せず、事前に準備することが大切です。
60代の専業主婦でも離婚できる?
専業主婦でも離婚は可能です。離婚時に得られる財産分与などを元手に生活を始めましょう。
もちろん、自分で収入を得る、必要な支援を受けるなどの行動も必要になるでしょう。
【参考:女性が離婚を有利に進めるために知ってきたいお金と子どものこと】
まとめ
60代での離婚は決して珍しいものではなく、毎年多くの夫婦が離婚を選択しています。
ただし、離婚後に自立した生活を送るには、経済面・住居・健康管理などをしっかり考える必要があります。
財産分与や年金分割など離婚条件で妥協せず、自分に必要な備えを整えることが大切です。
そして、孤独にならないためには、社会との関わりや人とのつながりを持ち続けることが重要です。
孤独にならないために最も重要なことは、適度な運動、バランスの取れた食事、規則正しい生活などによって、健康を維持することです。