「配偶者が宗教にのめり込んでしまった。」
「毎日宗教の話ばかりされて、一緒にいても苦痛しか感じない。」

こんなとき、離婚を検討される方も少なくないことでしょう。

そこで、今回は、配偶者が宗教にのめり込んでしまった場合に、そのことを理由に離婚できるか、離婚できる場合の親権や慰謝料はどうなるかなどについて解説します。

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配偶者が合意すれば協議離婚できる

協議離婚は、どんな事情でも夫婦の間で合意ができれば認められます。

配偶者が宗教にのめり込んで、離婚したいと思った場合、相手が合意してくれれば協議離婚ができます。

配偶者が調停で合意すれば調停離婚できる

配偶者が協議離婚に応じず、それでも離婚したい場合、すぐに訴訟を提起できません。
離婚には調停前置主義が採用され、裁判を起こす前に調停で話し合いによる解決を試みることが求められています。

そのため、協議離婚ができなかった場合には、家庭裁判所離婚調停(実務上は夫婦関係調整調停と呼ばれます)を申立てる必要があります。

調停では、主に調停委員の仲介により、夫婦間で離婚について話し合いを行います。その結果、離婚に合意できた場合には調停成立となり、離婚できます。調停離婚でも、離婚原因は問われません。

合意できなかった場合には、調停は不成立で終了となります。調停不成立になっても、どうしても離婚したい場合には、離婚裁判を起こすことを検討します。

配偶者が合意しない場合裁判離婚できるか?

以下では、配偶者が宗教にのめり込んでいる場合に裁判離婚できるかという点について詳しく述べます。

裁判で離婚できるケースは限られている

本記事公開日現在の民法上、裁判で離婚できる原因は、以下の5つに限定されています。

  1. 配偶者に不貞な行為があったとき
  2. 配偶者から悪意で遺棄されたとき
  3. 配偶者の生死が3年以上明らかでないとき
  4. 配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき
  5. その他婚姻を継続しがたい重大な事由があるとき

配偶者が宗教にのめり込んだ場合には、➄のその他婚姻を継続しがたい重大な事由があるときに該当するといえるかどうかが問題となります。

宗教にのめり込んだことで裁判離婚するために必要な事情

配偶者が宗教にのめり込んだことのみでは、婚姻を継続しがたい重大な事由に該当するとはいえず、裁判離婚はできません。

なぜなら、個人には誰でも信教の自由(憲法20条)が保障されており、配偶者が、自分が気に入らない宗教に加入したからという理由だけでは離婚できないからです。

婚姻を継続しがたい重大な事由に該当するといえるためには、宗教にのめり込んだことにより婚姻関係を破綻させるような事情が発生したことが必要となります。

例えば、宗教活動のために育児を一切しなくなった場合や、配偶者が信仰する宗教に無断で多額の献金を行い、家庭生活に支障が生じるようになった場合などが考えられます。

なお、配偶者が宗教団体の信者と不倫関係に陥った場合には、①の配偶者に不貞な行為があったときに、配偶者が宗教団体の活動拠点に身を寄せるようになり家に一切返ってこなくなった場合には、②の配偶者から悪意で遺棄されたときに該当しうることとなります。

実際に離婚が認められたケース

実際に宗教が理由で離婚が認められたケースには、以下のようなものがあります。

育児放棄をしたケース

子どもの病気がきっかけでとある宗教に入信した妻が、家事や育児を放棄して布教活動に熱中したため一度別居してその後同居を再開したものの、子どもが亡くなって再び妻が宗教に傾倒し、他の子どもの育児を夫の両親に任せて家を出たケースで、夫の離婚請求が認められました(昭和49108日仙台地裁判決)。

未成年の子どもを引き連れて宗教活動したケース

妻が宗教活動に熱心で、未成年の子どもを引き連れて宗教団体主催の集会に参加したため、夫がそのような活動をやめるように説得したものの妻が聞き入れなかったため最終的に別居したケースで、夫が離婚裁判を起こしました。

一審では離婚が認められませんでしたが、控訴審では、妻が自分の宗教活動の正当性ばかりを主張して夫の気持ちを無視したことについて婚姻関係の破綻の責任があるとして、離婚が認められました(平成2425日東京高裁判決)。

配偶者が宗教にのめり込んだことを理由に子どもの親権をとれるか?

配偶者が宗教にのめり込んだことを理由に離婚する場合に、子どもの親権はどうなるのかという問題があります。

配偶者が宗教にのめり込んだことのみを理由に、子どもの親権が認められないということはありません信仰と子どもの親としての適格性は別の問題だからです。

配偶者が宗教にのめり込んだ育児を放棄する、子どもを虐待するといった事態がある場合には、配偶者に親権が認められにくくなるでしょう。

配偶者が宗教にのめり込んだことを理由に慰謝料請求できるか?

配偶者が宗教にのめり込んだ結果夫婦関係が悪化した場合、協議段階や調停で相手が合意すれば、慰謝料を支払ってもらうことができます。

しかし、相手が拒否している場合、宗教にのめり込んだという理由だけで、配偶者に対して慰謝料を請求できません。

先にも述べたように、日本国憲法では個人に対して信教の自由が保障されており、これにより相手方が気分を害したとしても、それだけでは、慰謝料請求に必要な権利侵害が認められないからです。

慰謝料請求が認められるためには、以下のように、宗教にのめり込んだことで夫婦生活や家庭生活に具体的な支障を生じさせたり、相手の権利・利益を侵害したりしたことが必要です。

  • 生活費のほとんどを宗教団体に献金した
  • 宗教活動にのめり込むあまり家事や育児を一切しなくなった
  • 相手方に対して執拗な勧誘を行ったり、相手を無断で入信させたりした など

慰謝料の相場は、個別の事情にもよりますが、おおよそ50万円から300万円の間と考えられます。

さいごに

配偶者が宗教活動にのめり込んだだけでは、離婚することが難しい場合もあることがお分かりいただけたと思います。

しかし、これまでの解説からもわかるとおり、裁判離婚が難しくても、協議や調停によって離婚できる場合もあります。この場合には、交渉力ある専門家が携わることで円満に離婚できる場合も少なくありません。

配偶者が宗教にのめり込んで離婚を検討している方は、是非一度当事務所にご相談ください。

当事務所は、協議や調停での離婚の実勢が相当数あり、離婚の交渉力には自信がある弁護士が多数そろっています。

どうぞお気軽にご相談にいらしてください。