内縁関係を一方的に解消されたら、戸惑いの気持ちを抱くと思います。法律婚であれば、離婚に伴う慰謝料を請求できるケースがありますが、内縁関係の場合はどうなのでしょうか?

この記事では、内縁関係を一方的に解消されたら慰謝料請求ができるかどうかについて解説します。

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内縁関係を一方的に解消されたら慰謝料請求ができるか?

正当事由なく内縁関係を一方的に解消することは不当破棄にあたるため、慰謝料請求ができます

内縁解消の正当事由は、法律婚に準じて法定離婚事由に該当する行為や事実と同一に考えられています。

例えば、あなたに不貞行為、悪意の遺棄、虐待・侮辱など夫婦生活を継続し難い重大な事由などがないのに、内縁関係を解消された場合は、不当破棄にあたります。

内縁関係を不当に破棄された場合、破棄した者は、破棄された者に対して、不法行為による慰謝料等の損害賠償責任を負います。

内縁関係で法的保護を受けるため必要な条件は?

内縁の不当破棄を理由に慰謝料を請求するには、内縁関係が成立していたことを証明しなければならないことが多いです。

内縁の成立が認められるためには、以下の2点を満たす必要があります。

  • お互いに結婚する意思があったこと
  • 共同生活を送っていたこと

それぞれ詳しく解説します。

お互いに結婚する意思があったこと

内縁の成立が認められるためには、お互いに結婚する意思があったことが必要です。

お互いに結婚する意思があったことを証明するには、以下に挙げるものが有効です。

健康保険証

被扶養者として、内縁相手の勤務先から健康保険証の交付を受けている場合には、その保険証が内縁関係を証明する証拠になるといえます。

健康保険法は、被扶養者の範囲として、【配偶者(届出をしていないが、事実上婚姻関係と同様の事情にある者を含む)】と定めており(健康保険法第3条7項1号)、内縁関係でも一定の条件が満たされれば、被扶養者として給付を受けられるケースがあります。

内縁相手が加入する健康保険の被扶養者だった場合は、健康保険証に被扶養者と記載されるので、社会保障の面でも、法律婚と同様の扱いを受けていたということができるでしょう。

給与明細書

内縁相手の給与明細書も、内容によっては内縁関係を証明できる場合があります。

内縁相手が勤務先にあなたを被扶養者として申告し、勤務先もあなたを被扶養者と認めて扶養手当等を支給していた場合、その旨が給与明細書に記載されるため2人の関係を証明する証拠の一つになります。

結婚式を挙げたことが分かる写真や書類

結婚式を挙げた写真式場を申し込んだ際の契約書があれば、結婚の意思があったことを証明する証拠の一つになります。

実家の冠婚葬祭に2人で出席していたことが分かるもの

お互いの実家の冠婚葬祭に2人で出席していた場合、結婚する意思があったとみなされる可能性があります。

親族と一緒に映っている写真や親族の証言があるとよいでしょう。

共同生活を送っていたこと

内縁の成立が認められるためには、婚姻の意思だけでなく、それに基づく共同生活が必要です。

夫婦としての共同生活を送っていたことを証明するための証拠には、主に以下のような書類があります。

住民票

住民票を同一世帯にして、続柄に夫(未届)、妻(未届)と記載があれば、結婚の意思がありかつ共同生活を送っていたこととなるので、内縁関係を証明する有力な証拠となります。

賃貸借契約書

賃貸物件に住んでいた場合、賃貸借契約書の同居人欄に内縁の夫、内縁の妻と記載があれば、共同生活をしていた証拠となり得ます。

連名宛てに送られてきた郵便物

夫と妻の連名宛てに送られてきた郵便物があれば、共同生活を送っていたと証明できる可能性があります。

例えば、親族や友人らの結婚式に、夫婦としての招待状が届いている場合などです。

ただし、これはあくまで補充的な事実であるため、他の証拠と組み合わせることで内縁関係を立証する1つの証拠となりうるといえます。

内縁関係の不当破棄による慰謝料請求に関する判例

正当な事由なく内縁関係が不当に破棄されたとしても、必ずしも慰謝料請求が認められるわけではありません。

実際の裁判において慰謝料請求が認められた事例と認められなかった事例を紹介します。

慰謝料請求が認められたケース

内縁関係を一方的に破棄されたとして、内縁の妻が夫に対し、不法行為に基づき慰謝料を請求した事案です(東京地裁平成301116日判決)。

この事案では、そもそも内縁関係が成立していたか否かが争点となっていました。

裁判所は、次の点を考慮して内縁関係が成立していたと認めました。

  • 69か月の長期間にわたって同棲し、不妊治療を行うなど夫婦同然の生活をしていた
  • 妻がいつかは内縁の夫と結婚できると期待するには十分な理由があったこと

夫は内縁の妻に内緒で別の女性と婚姻し、一方的に内縁関係を破棄しただけでなく、婚姻したにも関わらず交際を継続するなど、女性に結婚を期待させるなど気持ちを弄ぶ誠意のない態度をとりました。

裁判所は、夫が内縁の妻に対して行った一連の行為は、将来結婚できると期待していた内縁の妻の気持ちを裏切り、人格権を侵害するものであると判断し、内縁破棄については、不法行為に該当するとしました。

このケースでは、内縁の夫に対し、慰謝料230万円の支払いが命じられました。

慰謝料請求が認められなかったケース

婚姻予約の後に内縁関係となった男女の事案です(平成28 713日東京地裁判決)。

男性と女性は、約93か月間同居しましたが、その後約2年間の別居後に、女性側から内縁関係を解消しました。男性は、内縁関係および婚約予約が不当破棄されたと主張して、慰謝料を請求しました。

裁判所は、次の状況を踏まえ、夫婦に準じるような法的保護に値する男女関係ではないと評価しました。

  • 93か月間の同居生活で、男性に不貞行為等の素行不良があり、女性は内縁関係を解消したいと考えていた
  • 別れ話に逆上する男性に対して一人暮らしをしたいという表現で別居を切り出し、関係を自然消滅させようとした
  • 男性は、別居が内縁関係を継続させるための一時的なものだったと主張するが、それを示す証拠がなかった
  • 2年に及ぶ別居期間は一時的な別居とはいえないと判断できる
  • 別居後、女性は男性に対してメールで結婚するつもりがないことを伝えている

その結果、内縁関係の不当破棄には当たらないと判断され、男性からの慰謝料請求は認められませんでした。

内縁関係の不当破棄に関するQ&A

内縁関係の不当破棄に関して、よくある質問とその回答を紹介します。

内縁関係の不当破棄による慰謝料の相場はいくらくらい?

内縁関係の不当破棄による慰謝料の相場は、50万円から300万円程度といわれています。

金額に幅があるのは、裁判所はさまざまな要素を考慮して慰謝料の金額を決定するからです。

裁判では、主に以下の要素を考慮して慰謝料額を決定します。

  • 内縁関係にあった期間
  • 内縁解消に至った経緯
  • 相手の不貞行為の程度や頻度
  • 相手の社会的地位・年齢・財力
  • 子の有無

内縁の夫(妻)の浮気相手にも慰謝料を請求できますか?

内縁関係が証明でき、かつ浮気の証拠があれば浮気相手にも慰謝料を請求できる場合があります。

この場合、浮気相手が内縁の夫もしくは妻の存在を知りながら(あるいは知る余地があった状況で)肉体関係を持っていた事実が必要です。

重婚的内縁関係だった場合も不当破棄されたら慰謝料を請求できる?

重婚的内縁関係だった場合も不当破棄されたら慰謝料請求できるケースがあります。

重婚的内縁関係とは、夫もしくは妻に法律婚をしている配偶者がある状況で内縁関係にあることです。

一般的な内縁関係であれば、法律婚をしている夫婦に準じる法的保護を受けられる場合がありますが、重婚的内縁の場合、原則として法律上保護されません。

ただし、法律上の夫婦の婚姻関係が破綻・形骸化している場合には、例外的に重婚的内縁でも法の保護を受けられる可能性があります。つまり、法律上の夫婦が、事実上離婚状態にあるといえるのであれば、慰謝料請求が認められる可能性があるということです。

法律上の夫婦関係が破綻・形骸化しているかどうかの判断では、主に以下のような点が考慮されます。

  • 法律上の夫婦の別居期間
  • 法律上の夫婦が別居に至った事情
  • 法律上の夫婦の別居後の交流・経済的協力の有無
  • 重婚的内縁関係が一定期間認められるかどうか(事実上夫婦としての生活基盤を有しているかどうか)

過去の判例で、重婚的内縁関係にあっても法律婚の妻との関係が形骸化していれば、内縁関係にある妻に相応の法的保護が与えられるとしたものがあります(東京地裁平成3718日判決)。

まとめ

長期間にわたり内縁関係にあった相手から、突然一方的に関係を解消されたら、精神的ダメージは大きいと思います。内縁関係が証明できるなどの条件が必要となりますが、相手に対して慰謝料請求が可能な場合もあるので、諦めずに弁護士に相談をしてみましょう。

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