2024年4月1日から、民法の嫡出推定制度の見直し等を内容とする民法等の一部を改正する法律が施行されました。
今回の改正で、これまで問題となっていた300日問題、100日問題にどのような影響があるのか、本記事で解説します。
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離婚後すぐに再婚できるか?
離婚後、男性も女性もすぐに再婚できます。
民法改正前から、男性は離婚後すぐに再婚できましたが、女性には再婚禁止期間が設けられるなどの制約がありました。
このたびの改正で、女性も離婚後すぐに再婚できるようになりました。
女性が離婚後再婚するにあたりハードルとなっていた点が解消されたといえます。
民法改正により離婚後の再婚や出産に関する規定はどのように変わった?
民法改正により、離婚後の女性の再婚や出産に関する規定が下表のとおり変更されました。
改正前 |
改正後 |
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再婚禁止期間 | 女性に限り離婚後100日間は再婚が禁止されていた。 | 再婚禁止期間が廃止された。 |
嫡出推定 | 離婚後、300日以内に生まれた子は前夫の子とみなされる。 | 離婚後300日以内に生まれた子は、母親が再婚していれば現夫の子とみなされる。再婚していなければ、前夫の子とみなされる。 |
嫡出否認の訴え | 父のみ嫡出否認の訴えが可能で、期間は1年間。 | 父だけでなく、母・子からも嫡出否認の訴えが可能になった。期間は3年間。 |
300日問題といわれる嫡出推定制度が見直された
300日問題といわれる嫡出推定制度が見直されました。
300日問題とは、旧法の規定により女性が離婚後300日以内に出産をしたら、たとえ再婚後の夫の子であっても、前夫の子であると推定されることで生じる問題です。
前夫からDVを受けていたなど、前夫との関わりを断ちたい女性が、この嫡出推定を避けるために出生届を出さず、結果的に生まれた子が戸籍を持たない無戸籍児となる問題がありました。
無戸籍でも住民登録ができたり義務教育を受けられたり一定の救済措置はあるものの、無戸籍のまま成長すると以下のような弊害が起きます。
- 選挙権を行使できない
- 運転免許が取得できない
- パスポートが取得できない
- 銀行口座が開設できない
- 家を借りられない
- 遺産相続ができない など
無戸籍児の問題を解消するために、このたびの民法改正で嫡出推定制度が見直されました。
離婚後300日以内に生まれた子でも母親が再婚していれば、現夫の子と推定されるようになったため、再婚後の現夫を父とする出生の届出が可能となりました。
改正法は、原則として2024年4月1日以後に生まれた子に適用されます。
100日問題といわれる女性の再婚禁止期間が廃止された
100日問題といわれていた女性の再婚禁止期間が廃止されました。
100日問題とは、一定の場合を除き、女性は離婚後100日間は再婚できないと定めた旧法の規定が、法の下の平等を定めた憲法に違反するのではないかと指摘されていた問題です。
この規定が女性だけに設けられた理由は、女性が離婚後すぐに妊娠をした場合、生まれた子の父親の推定が重複することを避けて、子の利益や権利を保護するためでした。
旧法では、嫡出推定について、以下のように規定していました。
- 離婚後300日以内に生まれた子は、前夫の子と推定する
- 結婚後200日を経過した後に生まれた子は、現夫の子と推定する
これによると前夫と現夫が父親だと推定される期間が100日重なっているため、父親の推定が重複する事態になります。このような混乱を避けるために再婚禁止期間が設けられました。父親を明確にすることで、生まれてくる子の利益と権利を守ろうとしたのです。
かねてから女性だけに再婚禁止期間を設けるのは、男女平等に反するのではないかという声が上がっていました。昨今は医学が発達したこともあり、DNA鑑定等で父子関係を科学的に判別できるため、再婚禁止期間を設ける意味がないのでは…という意見も出ていました。
このたびの民法改正で、嫡出推定制度が変更され、前夫の嫡出推定と再婚後の夫の嫡出推定との重複により父が定まらない事態が避けられるようになりました。
これにより、再婚禁止期間は廃止され、2024年4月1日以後は、女性も離婚後すぐに再婚できるようになりました。
嫡出否認の訴えが母・子からもできるようになった
嫡出否認の訴えが、母・子からもできるようになりました。
嫡出否認の訴えとは、嫡出推定される嫡出子との法律上の父子関係を否認するための裁判所の手続きです。
嫡出否認の手続きは、父子関係の存否という家庭内のプライバシーに関わる問題を扱うため、できる限り非公開の場での話合いによる解決を図ることが望ましいと考えられています。そのため、嫡出否認の訴えは、調停前置主義の適用があり、訴訟に先立ち、まずは家庭裁判所に、嫡出否認の調停を申し立てなければなりません。
調停不成立の場合や合意に相当する審判による解決ができなかった場合は、嫡出否認の訴えを提起できます。
民法改正前は嫡出否認の訴えは父親しかできず、前夫の協力がなければ訴えを起こせませんでした。今回の改正により、子の出生時から原則3年以内に母および子からも嫡出否認の訴えを起こせるようになりました。
これにより母親が嫡出否認の手続きを取ってから子の出生届が出せるようになります。
離婚後の再婚・出産に関するQ&A4選
離婚後の再婚・出産に関してよくある質問を、以下Q&A方式で取り上げます。
血縁上前夫の子でも再婚後に生まれたら再婚後の現夫の子となる?
血縁上、前夫の子であっても再婚後に生まれたら現夫(再婚後の夫)の子とみなされます。
嫡出推定は血縁関係とは関係がなく、あくまでも一定期間に生まれた子が夫婦の子と推定する制度だからです。
現夫との父子関係を否認したい場合は、以下の期間内に、まず家庭裁判所に嫡出否認の調停を申し立てる必要があります。
- 父(再婚後の現夫)・前夫が申し立てる場合:子の出生を知った時から3年以内
- 母・子が申し立てる場合:子の出生時から3年以内
離婚後300日以内でも現在のパートナーと再婚せずに子を出産した場合はどうなる?
前夫と離婚後300日以内に、再婚しないで新たなパートナーとの間に子ができて出産した場合、前夫の子としてみなされます。
前夫との父子関係を否認する場合は、嫡出否認の調停を申立てる必要があります。
当事者間で、前夫の子どもではないという合意ができ、家庭裁判所が必要な事実の調査等を行った上で、その合意が正当であると認めれば、合意に従った審判がなされます。
既に子の出生届を提出している場合は、審判確定から1か月以内に審判書謄本と確定証明書を添えて、戸籍の訂正を申請すれば、父の欄から前夫の氏名が消除されます。
出生届を提出していない場合は、審判書謄本と確定証明書を添えて出生届を提出できます。
調停不成立の場合や合意に相当する審判による解決ができなかった場合は、嫡出否認の訴えを起こし、前夫の子でないことを認める判決を得なければ、前夫を父としない出生の届出ができません。
妊娠から出産までの間に2回以上婚姻していた場合はどうなる?
妊娠から出産までの間に2回以上婚姻している場合、出生直近の婚姻における夫との間の子とみなされますが、その人が嫡出否認の訴えを起こして認められたら、前夫の子とみなされます。
例えば、Aさんが、Bさんと離婚した後Cさんと再婚し、その後離婚してDさんと再婚したとします。Dさんとの再婚後に子が生まれたらDさんの子とみなされます。Dさんが嫡出否認の手続きをとり、それが認められた場合は、Cさんの子とみなされます。
さらにCさんも嫡出否認の訴えを起こし認められたら、Bさんの子とみなされます。
民法改正施行日前に生まれた子について母から嫡出否認の訴えはできない?
2024年4月1日以前に生まれた子については、2024年4月1日から1年間に限って、子や母が嫡出否認の訴えを提起できます。
嫡出推定制度および嫡出否認制度の見直しは、原則2024年4月1日以後に生まれた子に適用されますが、無戸籍者の救済を図るため、このような経過措置が取られています。
まとめ
これまでたびたび問題となっていた100日問題と300日問題等を解消するために、民法が改正され、2024年4月1日に施行されました。
法務省は、2020年9月末の時点で、無戸籍者が3235名存在すると発表していますが、このたびの改正が、無戸籍児の解消につながるのではと期待が寄せられています。
離婚全般に関してお悩みがある方は、弁護士に相談することをおすすめします。
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