離婚時や離婚後に慰謝料を請求された場合、どのように対応すればいいでしょうか?
この記事では、離婚慰謝料が請求される可能性があるケースと請求された場合の正しい対処法について解説します。
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離婚慰謝料はどのようなケースで請求されるか?
離婚慰謝料は、多くの場合以下の5つに該当する際に請求される可能性があります。
それぞれ解説します。
浮気や不倫などの不貞行為をした
浮気や不倫などの不貞行為をした場合、相手方から慰謝料を請求される可能性があります。
配偶者以外の人と肉体関係を持ち継続的に交際を続けていただけでなく、一度限りの関係を持った場合でも不貞行為に該当します。
身体的・精神的DVを行った
配偶者に対して、身体的・精神的DVを行っていた場合、相手方から慰謝料を請求される可能性があります。
殴ったり蹴ったりする身体的DVだけでなく、本当にバカだな、何をやってもダメだな、といった相手方を傷つける言動となる精神的DVも慰謝料請求の対象となります。
配偶者に無断で家を出たり、正当な理由なく生活費を渡さなかったりした
配偶者に無断で家を出てしまった場合、悪意の遺棄に該当して離婚慰謝料を請求される可能性があります。
夫婦は協力し合って共同生活をする義務があり、不倫相手の家に入り浸って家に帰らなかったり、実家に帰ったまま戻ってこなかったりするケースは、夫婦としての義務を放棄しているとみなされる場合があります。
自身が家を出るだけでなく、配偶者が家に帰れないように嫌がらせをした場合などにも、離婚慰謝料を請求される可能性があります。
例えば、帰宅が遅くなることを知らせておいたにもかからず、わざと嫌がらせで家に入れないようにしたり、正当な理由なく無断で家の鍵を替えて他方の配偶者を自宅から締め出したりするケースが該当します。
生活費を渡さなければ、配偶者が生活に困窮することを知っていながら、生活費を渡さないケースも悪意の遺棄に該当するとして慰謝料を請求される可能性があります。
正当な事由なく性交渉を長期間拒絶した
正当な事由なく性交渉を長期間拒絶した場合、離婚慰謝料を請求される可能性があります。
病気などの理由がないにもかかわらず、性交渉を求められて拒否し続けることは、その他婚姻を継続し難い重大な事由に該当する場合があります。
過去の判例でも当事者の一方が性交渉を拒否したことが婚姻破綻を招いたとして、慰謝料が認められた事例があります(東京地裁平成29年 8月18日判決)。
離婚慰謝料を請求された場合の正しい対処法は?
配偶者や元配偶者から、離婚慰謝料を請求された場合、どのように対応すればよいか正しい対処法について解説します。
支払い義務があるかどうか確認をする
離婚慰謝料の支払い義務があるかどうかを確認しましょう。
第1章で述べたとおり離婚慰謝料請求が認められる事例はいくつかありますが、中には慰謝料の支払い義務が生じない場合があります。
慰謝料請求原因 | 慰謝料を支払わずに済む可能性があるケース |
不貞行為を原因に慰謝料を請求された場合 | ・不貞行為をした証拠がない場合
・請求者も不貞行為をしていた場合 ・婚姻関係が破綻した後に不貞行為をした場合 ・相手方(請求者)が不倫相手から相応の慰謝料をすでに受け取っている場合 |
身体的・精神的・経済的DVを原因に慰謝料を請求された場合 | ・DVを行っていた証拠がない場合
・相手方(請求者)もDVを行っていた場合 |
悪意の遺棄を理由に慰謝料を請求された場合 | ・同居しない正当な理由がある場合
・仕事や家事・育児ができない正当な理由がある場合 ・生活費を渡せない正当な理由がある場合 |
性交渉拒否を理由に慰謝料を請求された場合 | ・夫婦のどちらも性交渉を望んでいない場合
・夫婦のどちらかが病気等で性交渉する能力がない ・性交渉を拒否した程度が軽い場合 |
以下でケース別に確認すべきポイントを解説します。
不貞行為を原因に慰謝料を請求された場合
不貞行為を原因に慰謝料請求をされた場合は、不貞行為の証拠の提示を求めましょう。
交渉段階では証拠の提示は必須ではないため、相手方に証拠の開示を求めても開示されない可能性はありますが、裁判になっても証拠を提示できない場合には、裁判所が不貞行為を認める可能性は低くなります。
婚姻関係が破綻したあとに不貞行為に至った場合や相手方も不貞行為をしていたなら、慰謝料の支払い義務が生じない可能性があります。
すでに相手方が不倫相手から十分な慰謝料を受け取っている場合も同様に、支払い義務が生じない可能性があります。
身体的・精神的・経済的DVを理由に慰謝料請求された場合
身体的・精神的・経済的DVを理由に慰謝料請求された場合、DVを行っていたことを証明する証拠の提示を求めましょう。
特にDVをした覚えがない場合は、慰謝料欲しさに相手方がでっち上げをしているケースもあります。
相手方のDVが原因で、図らずも相手方に暴力をふるってしまった場合、慰謝料の支払い義務が生じない可能性があります。
悪意の遺棄を理由に慰謝料請求された場合
悪意の遺棄(正当な理由なく夫婦の同居義務・協力義務・扶助義務を履行しないこと)を理由に慰謝料請求された場合、まずはあなたの行為が悪意の遺棄にあたるのかどうかを確認しましょう。
同居や家事の分担ができないことや、生活費を渡せないことに正当な理由があれば、悪意の遺棄にはあたりません。
例えば、次のような事情がある場合は、慰謝料の支払い義務が生じない可能性があります。
- 単身赴任など仕事上の理由で別居をした
- 相手方の暴力が原因で別居をした
- 夫婦間の合意により家計を各自で分けていた
- 病気や障害が原因で家事を担当できなかった
- 失業や病気により働けなかった
性交渉拒否を理由に慰謝料請求された場合
性交渉拒否を理由に慰謝料請求された場合、どちらかが性交渉を求めたのに片方が拒否をしたという事実が必要となります。夫婦のどちらも性交渉を望んでいなかった場合は、慰謝料の支払い義務が生じない可能性があります。
夫婦のどちらかが病気等を理由に性交渉をする能力がない場合は、いたしかたない事情であり、責められるべきものではないので慰謝料請求は認められにくいです。
性交渉を拒否したのが、3回に1回など、ある程度性交渉があったと認められる場合も慰謝料の支払い義務は生じない可能性があります。
請求金額が妥当かどうか確認する
相手が請求している金額が妥当かどうか、確認をしましょう。
以下、有責行為別に相場の金額を紹介します。
不貞行為の場合 | 50万円から300万円 |
身体的・精神的・経済的DVの場合 | 50万円から300万円 |
悪意の遺棄の場合 | 50万円から200万円 |
性交渉を拒絶した場合 | 100万円から300万円 |
具体的な金額は、それぞれの夫婦が抱えている事情を考慮したうえで、決められます。
離婚慰謝料の金額に影響を与える要素としては、主に次のようなものがあります。
- 婚姻期間
- 子供の有無や人数・年齢
- 離婚原因となった行為の悪質さ
- 夫婦の年収や資産状況
無視をしない
離婚慰謝料を請求された場合、無視をするのはやめましょう。
無視をし続けると相手方は裁判を起こす可能性があります。離婚慰謝料の支払いに納得がいかない場合は、無視するのではなく相手方に話し合いを求めましょう。
ご自身での対応に不安がある場合は、弁護士に交渉を依頼することをおすすめします。
離婚後であれば、時効になっていないか確認する
相手方が慰謝料の請求をしてきた場合、時効になっていないか確認をしましょう。
離婚した時点から3年が経過すれば時効となり、慰謝料が請求できる権利は失われます。
特に離婚後、相手方から慰謝料請求された場合は注意しましょう。
もっとも、離婚後に婚姻中の不貞行為の事実が発覚した場合などには、相手方が不貞行為を知ったときが時効の起算点となり、その日から3年間は離婚慰謝料を請求できます。
慰謝料を支払えない場合の対処法は?
離婚の原因は自分にあり、非を認めているが慰謝料が支払えない場合、どのように対処すればよいか、以下で解説します。
慰謝料の支払い義務がないことを主張する
第2章で述べた通り、離婚慰謝料を請求された場合、自分に支払い義務があるかどうかを確認するのが重要です。
支払い義務がないのであれば、その旨を相手方に主張しましょう。
不貞行為やDVを理由にしているなら証拠はあるかなど、相手方の主張が真実かどうかを見極めるのが重要です。
請求金額が妥当か確認する
相手方が請求している金額が妥当かどうかを確認しましょう。
離婚慰謝料には相場があり、相手方が法外な金額を請求しているケースがあります。
支払いに合意してからでは相場より高い金額だったとしても交渉を受け入れてもらえない場合があるので、安易に合意することはやめましょう。
減額交渉をする
離婚に関して責任を感じ、慰謝料を支払うのは同意できるが、経済的に支払いが難しい場合は、減額交渉をしましょう。
その際には給与明細を提示するなど、支払いが困難である証明をしたほうが、減額を認めてもらえる可能性が高いです。
分割払いをお願いする
慰謝料の支払いを分割払いにしたいとお願いをしましょう。
ただし、多くの人は途中で支払いが滞る可能性があるため、分割払いを避けたいと考えます。分割払いを了承する代わりに、合意書を公正証書で作成するなどの条件を相手方が提示してくるケースがあります。
あくまでも分割払いをお願いしている立場であることを理解し、ある程度譲歩をして相手方の意見に耳を傾けたほうがよいでしょう。
まとめ
離婚時や離婚後に慰謝料を請求されたら、心が穏やかでいられない人がほとんどだと思います。離婚した原因が自分にあったとしても、相手方にも悪い点があったのではないかと腑に落ちない人もいると思います。
慰謝料の支払いに納得ができない場合は、相手方と話し合いをしたほうがよいので、すぐに支払いに合意することはやめましょう。
ネクスパート法律事務所には、離婚案件を多数手がけている弁護士が在籍しています。離婚慰謝料を請求されたなど、お困り事がありましたらぜひ一度ご連絡ください。