離婚をする際、婚姻期間中に夫婦で築いた財産を分けることを財産分与といいますが、どのように分けるか双方で話し合いをしなければいけません。
この記事では、財産分与の割合はどのように決めるか、割合を変更できるのはどのようなケースなのか解説します。
財産分与の割合は原則2分の1
財産分与の割合は、原則2分の1ずつとなります。
これは婚姻生活において、夫婦それぞれの貢献度は平等であるとの考え方に基づいています。
財産分与の割合が変更できるケースは?
財産分与の割合は原則2分の1ずつではあるものの、夫婦間で合意できる場合は、その割合を自由に決められます。
裁判所の手続きを利用する場合でも、特段の事情があれば、財産分与の割合が修正されることもあります。
以下でケース別に解説します。
夫婦間で合意した場合
夫婦間で合意ができれば、財産分与の割合は変更できます。
財産分与の割合は、法律で定められているわけではないため、夫婦間の話し合いで自由に決められます。
例えば、離婚原因を作った配偶者の一方が他方の配偶者に対して謝罪の意味を込めて、財産分与の割合を減らすケースが考えられます。
双方が納得すればどのような割合に決めてもかまいません。
どちらか一方の浪費が激しかった場合
夫婦の一方の浪費が激しかった場合、財産分与の割合が修正されることがあります。
財産分与の割合は、婚姻期間中の財産形成・維持への貢献度に基づいて決められます。そのため一方が浪費によって多額の借金をする反面、他方が倹約に努めて非常に多くの財産を形成した場合などには、2分の1ルールをそのまま適用するのは不合理だと考えられるからです。
なお、浪費があれば必ずしも財産分与の割合が変更されるわけではなく、以下のような様々な事情を考慮して判断されます。
- 分与対象となる財産の金額
- 夫婦の一方による浪費の内容・程度
- 他方による財産形成に対する貢献の内容・程度
- 各人名義の財産の格差 など
どちらか一方の特別の努力や能力によって多額の財産を築いた場合
夫婦のどちらか一方の特別な努力や能力によって多額の財産を形成・維持できた場合は、財産分与の割合が修正されることがあります。
夫婦それぞれの貢献度は平等としつつも、どちらかの卓越した才能があったからこそ高額な財産を形成できたのであれば、その貢献度が考慮されることがあるからです。
例えば、医師や弁護士、プロのスポーツ選手、芸能人など、高額な収入の基礎となる特別な能力が、婚姻前の本人の個人的な努力により形成され、婚姻後もその能力や努力によって多額の財産が形成されたような場合は、分与割合を修正される可能性があります。
夫婦の一方の特別の努力や能力によって高額の財産が形成された場合でも、他方配偶者の貢献によって、その努力や能力を発揮できた場合などには、分与割合を修正すべき特段の事情があったとは認められないこともあります。
別居等により相互に経済的な協力関係がない場合
別居等によって相互に経済的な協力関係がない場合は、稀に、財産分与の割合が修正されることがあります。
どちらかが婚姻生活期間において経済的な協力をしなければ、夫婦それぞれの貢献度は平等であるという考え方に反するからです。
例えば、夫が急に仕事を辞めて海外を放浪したいと家を出てしまった場合、その期間は妻が一人で財産を形成・維持していることになります。婚姻期間が3年でそのうち1年半にわたって夫が海外を放浪していたにも関わらず、財産分与を2分の1ずつにした場合、不公平感があるといえるでしょう。
夫婦が別の場所で生活をしていた期間における財産形成・維持の相互の貢献が、同居している場合に比べて希薄である場合、別の場所で生活をしていた期間の財産分与の割合が調整されることが稀にあります。
もっとも、別居後に形成された財産を財産分与の対象から除外して、特有財産として処理するケースもあります。
夫婦の一方が勤労・家事労働を引き受けて他方がこれを行わなかった場合
夫婦の一方が勤労・家事労働を引き受け、他方がこれを行わなかった場合は、財産分与の割合が修正されることがあります。
夫婦のどちらか一方に勤労・家事労働が偏っていたのであれば、夫婦それぞれの貢献度は平等という考え方に反するからです。
例えば、夫が画家、妻が童話作家として活動し、婚姻後も各自が自ら収入・預貯金を管理し、それぞれが必要な時に夫婦の生活費を支出するという生活形態をとっていた夫婦の事例があります。このケースで裁判所は、約18年間、妻が専ら家事労働に従事してきた等の事情を考慮して、財産分与の割合を妻6、夫4としました(東京家審平成6年5月31日)。
夫婦が共働きの場合、収入や家事労働の分担割合に差があるからといって、直ちに寄与度の差となるものではありませんが、夫婦双方の行為を総合的かつ相対的に評価し、2分の1ルールの適用が不公平と考えられる場合には、分与割合を修正されることがあります。
特有財産をもとに財産を築いた場合
夫婦どちらか一方の特有財産をもとに財産を築いた場合、財産分与の割合が修正されることがあります。
特有財産とは、独身時代から所有している株や相続で取得した不動産など、夫婦の一方が名義的にも実質的にも単独で所有する財産を指します。例えば、独身時代から所有していた株を運用して得た利益や、相続によって取得した不動産で賃貸収入を得た場合は、夫婦が協力して築いた財産とはいえないため、財産分与の対象外となります。
特有財産を元手に財産を形成することもあるでしょう。例えば、婚姻前から保有していた預貯金を、自宅不動産の購入資金の頭金に充てられている場合などです。この場合、購入資金の原資に、特有財産が含まれていることが立証できれば、特有部分として財産分与の対象
から除外されますが、共有財産と特有財産が一見して明確に区別できる場合ばかりではなく、共有財産と特有財産が混在している場合も多いです。
特に、一方の特有財産を元手に形成した財産について、他方の配偶者が維持管理に貢献した場合には、分与対象から除外することが相当でない場合もあります。
この点について、東京高裁平成7年4月27日判決は、以下のように述べています。
特有財産の換価代金と婚姻中に蓄えられた預金等を併せて取得した財産も夫婦の共有財産に当たるもので、財産分与の対象となるものであり、ただ、財産分与の判断をするに当たって、その財産形成に特有財産が寄与したことを斟酌すれば足りるものと言うべきである。
もちろん、婚姻中に取得されたものであっても、親兄弟からの贈与や、相続による取得物あるいは婚姻前から所持していた物又はそれらの買替物は、それを取得した配偶者の特有財産であって、財産分与の対象となるものではないことは当然であるが、他の配偶者がその維持管理に貢献した場合には、その事情も財産分与に当たって考慮されなければならない。
したがって、そのような観点に立って、婚姻中に取得した個々の財産が各配偶者の特有財産であるか、それとも夫婦の共有財産に該当するかを判断するに当たっては、取得の際の原資、取得した財産の維持管理の貢献度等を考慮して判断しなければならないが、特段の事情が認められない場合には、夫婦の共有財産に属するものとして、財産分与の対象となるものと言わねばならない。
この事例では、婚姻後に形成された財産について、その原資を一方が出した場合でも、その財産は共有財産にはあたり分与対象にはなる、ただし、割合において調整されるという結論をとり、分与割合が修正されました。
財産分与をする際の流れは?
財産分与をする際に、どのような流れで行えばよいのか、順を追って解説します。
財産分与の対象となるものを調査する
最初に財産分与の対象となるものを調査しましょう。
婚姻中に形成・維持した預貯金、不動産、保険、車などが該当し、住宅ローンなどのマイナス財産も対象となります。
財産分与の対象となるもの・対象とならないものに関しては、「離婚時に財産分与の対象とならないものは何か?」をご確認ください。
夫婦で話し合いをする
財産分与の対象となるものをすべて調査したら、夫婦で話し合いをします。
財産分与は原則2分の1ずつ分けますが、基本的に夫婦の話し合いで合意できれば、財産分与の割合はどのように行っても構いません。
話し合いがまとまらなければ調停・審判・裁判を検討する
話し合いがまとまらない場合や、話し合いができない場合は裁判所の手続きによる解決を検討しましょう。
離婚前の場合
夫婦で財産分与について話し合いがまとまらなければ、家庭裁判所に離婚調停の申立てに付随する形で財産分与をします。
調停が不成立となった場合は、訴訟による解決を図ります。
もっとも、離婚のみ調停を成立させて、次項の手続きをとる方法もあります。
離婚後の場合
離婚後に財産分与を請求する場合には、家庭裁判所に財産分与調停または審判を申立てます。離婚後の財産分与は、調停を経ずに審判を申立てられます。
調停を経ずに審判を申立てても、通常は、当事者間での話し合いを先行させるという趣旨で、家庭裁判所が調停に付すことが多いので、話し合いで解決できない場合は、まずは調停の申立てから始めると良いでしょう。
財産分与の割合についてよくあるQ&A
財産分与の割合について、よくある質問に対する回答を紹介します。
専業主婦(夫)だったのですが、2分の1を要求してもいいのでしょうか?
専業主婦(夫)であっても、原則として財産分与で2分の1を取得できます。
婚姻中に夫婦が協力して築いた共有財産を分けるということで、金銭的な貢献度のみが対象になると考える人も多いと思います。しかし、専業主婦(夫)として、家事や育児で夫もしくは妻をサポートしていたからこそ、夫婦の一方は仕事に力を入れて収入が得られたといえます。そのため専業主婦(夫)も財産形成・維持に貢献したとみなされます。
財産分与の割合に納得できない場合の対処法はありますか?
財産分与の割合に納得できない場合、妥協して話し合いに合意せず、弁護士に相談をしましょう。
弁護士であれば、財産分与の割合について的確なアドバイスができます。2分の1ルールを修正すべき特段の事情があれば、弁護士がその寄与を整理し、その根拠を示して配偶者と話し合いができます。配偶者も弁護士が代理人として対応すれば、考えを改める可能性が高いです。
それでも話し合いがまとまらなければ、調停等での解決を図りますが、家庭裁判所の手続きを利用する場合も、弁護士であれば代理人として対応ができるので安心です。
まとめ
財産分与の割合に納得ができなくても、離婚成立を優先させて妥協する人がいるかもしれません。離婚後の生活の安定を考えると、財産分与で妥協するのはおすすめできません。原則2分の1ずつもらえるものですから、その点を頭に入れて自分の権利を主張し、配偶者としっかり話し合いをしましょう。
財産分与の話し合いがまとまらない場合は、弁護士に相談をしてください。ネクスパート法律事務所には、離婚全般に強い弁護士が在籍しています。初回相談は原則30分無料です。お気軽にお問合せください。