子どもがいる夫婦が離婚する場合、子どもと離れて暮らす親が、養育費をどれぐらい負担するかが重要な問題となります。

養育費は、子どもの平均的な衣食住に必要なお金、公立高校までの学費、平均的な医療費やお小遣いが該当しますが、子どものために突発的に必要となる費用はどのように金額や負担分を決めればよいのでしょうか?

この記事では、養育費に含まれない特別費用はどういうものが該当するのか、決め方や請求についても解説します。

ネクスパート法律事務所が
問題解決に向けて全力でサポートいたします

養育費とは別の特別費用とは何か?

特別費用とは、養育費に該当しないといわれているお金で、子どものために生じる一時的な大きな出費を指します。

養育費には、未成熟子の衣食住のための費用や医療費などのほか、自立するまでにかかる生活に必要な費用が含まれています。

養育費は、親同士が合意すれば金額や支払い方法を自由に決められます。
調停・審判実務では裁判所が公表している養育費算定表を参考にします。養育費算定表は、子どもの人数や年齢、親の収入で相場の金額が定められているため、それをもとに養育費を算出するのが一般的です。

この算定表は、教育費については平均的な公立高校までの学費と平均的な諸経費のみを含めた費用を元に算出されています。医療費についても健康保持のために必要な平均的な医療費を元に算出されています。

この算定表でカバーされていない費用を特別費用といい、一時的に大きな支出を伴う子どもの費用を指します。

養育費のとは別の特別費用にあたるものは?

特別費用にあたるものは何か、具体的に解説します。

大学や専門学校へ進学するための入学金と学費

大学や専門学校へ進学する際に必要な入学金と学費は、特別費用に該当します。

子どもの教育費は養育費の中に含まれていますが、その範囲は平均的な公立高校までの学費とされています。

養育費の取り決めをする際に、親同士が合意すれば、大学や専門学校の入学金や学費などの特別費用についても、負担者や負担割合等をあらかじめ決められます。

私立学校へ進学のための入学費や学費

子どもが私立の学校へ進学する場合の入学金や学費は特別費用に該当します。

先述したように養育費の中に含まれる教育費は平均的な公立高校までの学費とされているので、私立の小学校、中学校、高校に進学した場合は、その際に必要な入学金や学費は、養育費に含まれていません。

大学・専門学校の学費と同様に、親同士が私立の学校へ進学させるのを見込んで学費を負担することに合意していれば、費用の負担についてあらかじめ定められます。

もっとも、当事者の合意があれば、養育費の一部として(標準的な養育費の額に別途加算して)支払っても問題ありません。

予期せぬ病気やけがの治療費

子どもが予期せぬ病気やけがをした場合の治療費は、特別費用に該当します。

風邪をひいて病院で治療を受けた場合の医療費は養育費の一部とみなされますが、大きな病気やけがをして入院した場合の治療費や持病や障がいのための治療費等は、標準的な養育費に含まれていません。

当事者の合意があれば、このような特別費用が生じた場合の負担者や負担割合等をあらかじめ決めておけます。

子どもに障がいがある場合などには、医療介護費を当事者の基礎収入割合で按分した額を、標準的な養育費に加算するといった解決方法がとられることもあります。

塾や習い事にかかる費用

子どもの塾や習い事の月謝などの費用は特別費用に該当します。

例えば、中学受験のために通う塾代やフィギュアスケートやバレエなどの習い事にかかる費用は高額になるケースが多いため、平均的な金額を超えていると判断されます。

こうした費用も、養育費とは別の特別費用として、当事者間の合意で負担方法等を決められます。

養育費に含まれない特別費用はどのように決めるか?

養育費は、基本的に当事者同士の話し合いで行われ、合意できなければ調停・審判を申し立てます。
特別費用の支払い条件などについても、協議の際に書面を交わしたり、調停・審判時の条件に盛り込まれたりするのが一般的です。

当事者間で協議し自由に決める

特別費用は、当事者間で協議して自由に決められます。

どのような内容のものを特別費用にするかや、突発的に支出があった場合にどう分担するかなどの金額や条件は、当事者間で合意して決められます

もっとも、当事者間で事前に合意していなくても、突発的な費用が生じた際に、特別費用を請求すること自体は可能です。ただし、特別費用は養育費と違って、一方の当事者の請求により他方の当事者に当然に支払い義務が生じるものではありません。

そのため、事前に合意を取り付けておくのが理想です。

当事者間に合意が成立していることを証するためには、合意書を作成するのが良いですが、合意書がなくても、例えば私立大学へ入学金と学費を特別費用として請求する場合、相手方が大学受験のための塾の費用を出していたり、子どもの受験を応援していたりするなら、支払いに合意していると判断される可能性があります。

家庭裁判所に調停・審判を申し立てる

養育費や特別費用について親同士が話し合いで合意できない場合は、家庭裁判所に調停・審判を申し立てます。

実務では、将来の学費等について、金額や支払時期があらかじめ分かっているものは、金額や支払時期を明示して調停条項を作成したり、金額や支払時期が不明なものについては、当事者間で別途協議の上、応分の負担をする旨を定めたりすることがあります。

養育費に含まれない特別費用をあらかじめ決めておくなら公正証書に!

特別費用をあらかじめ決めておくなら、合意した内容を強制執行認諾文書付きの公正証書で作成するのがよいでしょう。

離婚時に養育費について話し合いをする際に、特別費用の支払いについても合意しておきましょう。合意できた場合は、公正証書に特別費用について必ず盛り込んでおきましょう。
例えば、特別費用について双方の負担割合を定めておくとよいでしょう。

特別費用の条項を入れなければ、離婚後に請求する際に相手が拒否する可能性があります。

離婚後に別途特別費用について話し合いをして合意した場合についても、同様に公正証書で合意書を作成しておきましょう。

養育費以外に特別費用の請求を考えたら弁護士に相談を!

特別費用の請求を考えているのであれば、弁護士に相談をおすすめします。

特別費用は、養育費以外のイレギュラーな支払いであること、多くの場合高額になりがちであるため相手に拒否される場合があります。そのため当事者同士で話し合っても話し合いが平行線でなかなか解決しません。

特別費用を請求するにあたっては、相手を納得させるために金額の根拠となるものを明確に提示しなければいけません。そういう意味で養育費に関する事例を多く手がけている弁護士に任せると安心です。

離婚後に子どもにやむを得ない事情が発生し、特別費用の請求をしたいと考えた場合は、特に弁護士に依頼するのをおすすめします。離婚した相手と直接交渉するのは、精神的に負担に感じる人が多いと思います。代理人として交渉ができるのは士業の中でも弁護士だけですので、ぜひ早めにご相談ください。

まとめ

養育費の関係は、離婚時に話し合っておかなければいけませんが、将来何が起きるかまで予測は不可能です。突発的な病気やけがは誰にも予測ができないため、そうした事態への備えは養育費の話し合いをする上でしておいたほうがよいでしょう。

日頃から子どもを大学まで進学させたいと考えたり、特定の習い事をさせたいと考えていたりする場合は、養育費の話し合いをする際にあらかじめ特別費用について取り決めておくのがよいかもしれません。

特別費用を請求したいけれど、相手と話し合うのが難しいと悩んでいる方は、ぜひネクスパート法律事務所にご相談ください。
離婚案件を多数手がけてきた弁護士が在籍していますので、悩みに沿った適切なアドバイスが可能です。お気軽にご相談ください。