離婚時は決めなければいけないことがたくさんあり、財産分与の話し合いを後回しにする人も多いといいます。
この記事では、離婚後に財産分与について話し合うのは可能かどうか、離婚時に話し合っていたけれど、相手に隠し財産が見つかった場合の対処法について解説します。
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離婚後の財産分与は可能か?
離婚後、相手に対して財産分与の請求が可能です。
その場合は、まず当事者間の話し合いによる解決を目指します。
相手と連絡が取れて、話し合いができるようになった後のおおまかな流れは次のとおりです。
- 婚姻期間中に築いた共有財産をすべて調べる
- 共有財産が確定したら、相手方とどのように分けるか話し合う
- 話し合いが合意に至ったら合意書を作成する
- 話し合いで決定したとおり財産を受け取る
話し合いがまとまらなければ、家庭裁判所に調停を申し立てる流れになります。調停が成立しなければ審判に移行します。
離婚後、相手に隠し財産が発覚した場合の対処法は?
離婚前に財産分与の話し合いをしたものの、離婚後に相手の隠し財産が発覚するケースもあります。その際の対処法について解説します。
相手に直接確かめる
相手にコンタクトをとり、直接隠し財産の有無を確認します。
隠し財産があった場合は、改めて財産分与の話し合いに応じるように求めましょう。財産を隠されたことを理由に、相手を刑事罰に問うことはできませんが、民事上の不法行為に該当する可能性はあります。
財産隠しによって損害を受けたのであれば、元配偶者に対して損害賠償請求できる可能性もあります。
相手が離婚合意書を理由にして話し合いに応じない場合
離婚時に合意書を交わす際、多くの場合清算条項を入れますが、相手がこれを理由に話し合いに応じない可能性があります。
清算条項とは、合意書を交わした後に、離婚に際して話し合ったすべての事項を蒸し返さないとお互いに約束することです。
離婚時に交わした合意書に清算条項が入っていたら、隠し財産が見つかっても話し合いができないのでは…と思うかもしれません。相手が財産を隠していたのであれば、隠された側は財産の内容を勘違いしていたことで、前回の財産分与について錯誤による無効を主張できます。
万が一相手がわざと財産隠しをしていたなら詐欺に該当する可能性があるので、詐欺による取消しが主張できます。
お互いに知らなかった財産が新たに見つかった場合は、前に合意した財産分与を無効にせず、新たに見つかった財産についてのみ話し合いがやり直せます。
相手が財産隠しを認めない場合は、弁護士に依頼しよう
離婚後の財産分与ないし財産隠しによる損害賠償請求をする場合、弁護士へ依頼をおすすめします。
弁護士は、損害賠償請求など受任している事件の処理のために、所属弁護士会に対し、公私の団体等に照会して必要な事項の報告を求めることの申出ができます。この申出制度である弁護士法第23条の2に基づく弁護士会照会によって、相手が持っている財産を調査できる可能性があります。
照会先が必ずしも回答に応じるわけではないので、もれなく隠し財産を調査するのは難しいですが、見つけられなかった財産の一部が分かる可能性があります。
相手と合意できたら合意書の作成をする
隠し財産を含めた財産分与の話し合いをして、お互い合意に至ったら合意書を作成しましょう。
その際は、再度問題が起きないように公正証書の作成をおすすめします。
家庭裁判所に財産分与の調停を申し立てる
相手が財産分与に対して話し合いに応じない、離婚後に相手と連絡が取れない、連絡は取れたものの話し合いが合意に至らない場合は、家庭裁判所に財産分与調停の申し立てを検討しましょう。
財産分与調停の流れは?
この申立ては離婚成立から2年以内に行わなければならないため、相手が話し合いに応じないのであれば、早めに見切りをつけて調停に持ち込んだほうがいいかもしれません。
調停を申し立てると、家庭裁判所で裁判官と調停委員による調停員会で財産分与について数回にわたって話し合いを行います。
話し合いが合意に至れば調停が成立し、調停調書が作成されます。調停が不成立になった場合は、審判に移行し解決を目指します。
申立ての大まかな流れをまとめましたので、参考にしてください。
- 財産分与の調停の申し立てをする
- 約1か月後に初回の期日が設けられる
- その後、約1か月の間隔で数回期日が設けられる
- 話し合いが合意に至れば、調停成立となる
- 合意できなければ、審判に移行する
財産分与調停の申し立てはどのように行うか?
財産分与調停の申し立ては、申立書のほか、通常、以下の書類を添付します。
- 離婚によってどちらかが除籍された記載のある戸籍謄本の全部事項証明書
- 双方の財産に関する資料(不動産登記事項証明書や固定資産評価証明書、預貯金等の残高証明書など)
裁判所によっては、追加資料の提出を求められる場合があります。
調停の申立書は裁判所の窓口でもらえますし、裁判所のホームページからダウンロードも可能です。
申立ては、相手方の住所地を管轄する家庭裁判所に行います。申し立てに必要な費用は、以下のとおりです。
- 申し立て手数料1200円
- 郵便切手約1000円程度
財産分与調停を成功させるコツは?
相手が隠していた財産に対して、臆することなく自分の持ち分を主張しましょう。
その際には財産形成をするにあたり、自分がどれだけ貢献したかをわかりやすく述べたほうがよいです。
財産分与は、婚姻時に夫婦が協力し合って築いた財産を公平に分けることです。言いたいことを事前にまとめ、裁判官や調停員に伝わるように意見を主張しましょう。
財産分与を離婚後に請求する場合の注意点
財産分与は離婚後にも請求できますが、注意すべき点がいくつかありますので解説します。
財産の一部を消費される可能性がある
離婚後に財産分与を請求する際、相手が財産の一部を消費する可能性があります。
分かりやすい例でいえば、預貯金を相手が使ってしまうケースです。
財産分与は、離婚時までに築いた財産を対象とするので、その時点で存在していた財産にすべてについて請求が可能です。
例えば、離婚時に相手の貯金残高が1000万円で自分の貯金が500万円であれば、1500万円が財産分与の対象となります。通常、分与の割合は2分の1ずつなので750万円ずつ受け取る権利がありますが、相手が承諾なく200万円を費消した場合、原則として費消した金額を相手が取得する財産から控除するのが一般的で、このケースであれば相手に250万円請求できます。
離婚成立後の財産分与請求は、期限に追われる可能性がある
離婚後に財産分与を請求するには、離婚成立から2年以内でなければいけません。
2年を過ぎてしまうと権利が消滅します。財産分与の調停を申し立てるのも同様に離婚成立から2年以内となります。いったん財産分与の調停を申し立てれば、手続きをしている間に2年が経過しても財産分与請求権は消滅しません。
離婚時であれば、財産分与について十分に時間をかけて話し合い、合意できた可能性があったにもかかわらず、離婚後は2年以内という期限を気にして早めに調停を申し立てざるを得ない状況になるケースがあります。
離婚後、相手の居所が分からない場合がある
離婚後に相手の居所が分からなければ、話し合いをしようにもできません。
相手の本籍地で戸籍の附票を取得すれば住民票上の住所地は分かりますが、実際に住んでいないケースもあります。
このように離婚後に財産分与を請求しようとするなら、越えなければいけないハードルがあるため、財産分与の話し合いはできるだけ離婚時に行うのをおすすめします。
離婚後の財産分与で悩みがある方は弁護士に相談を
離婚後の財産分与の請求に困っているなら、弁護士に相談・依頼をしましょう。
財産分与の請求は離婚成立から2年以内に行わなければならないため、時間との闘いになります。相手が見つからなかったり協力的でなかったりしたら、できるだけ早い段階で弁護士に相談・依頼しましょう。
そのほかにも弁護士に依頼するメリットはいくつかありますので、解説いたします。
相手方との交渉をまかせられる
離婚後に元配偶者と会って話し合うのが嫌な人も多いでしょう。弁護士に依頼すれば代理人として相手方との交渉をまかせられますので、精神的な重荷から解放されます。
共有財産の調査をまかせられる
弁護士に財産分与請求等の手続きを依頼すれば、共有財産の調査をまかせられます。
共有財産の調査と確定は、想像以上に面倒で時間がかかります。自身で調査をすると時間がかかるだけでなく調査漏れが生じる可能性があります。せっかく話し合いが合意に至ってもやり直しになってしまっては時間の無駄になります。
弁護士に財産分与請求等の手続きを依頼すれば、弁護士会照会を利用した調査が期待できます。
相手が勝手に財産を使い込むのを防止するため、保全処分の手続きをまかせられる
弁護士に依頼すれば、相手が財産を使い込むのを防止するために、調停の申立てと同時に保全処分手続きを任せられます。
離婚後に財産分与の請求をする場合、相手が勝手に財産の処分をしないように注意を払わなければいけません。特に相手が借金を抱えていたり、お金にルーズな面があって不動産を売却したり預貯金を使い込んだりするおそれがあるなら、裁判所に仮差押えや仮処分といった保全処分の手続きを検討しましょう。
裁判所から仮差押えや仮処分の決定が出れば、預貯金口座がある銀行に対して払戻しを禁止したり、不動産を第三者に売買したりできなくなります。
保全処分は、裁判所が暫定的に特定の人の財産を差し押さえたり処分を制限したりする強い効力のあるものです。申し立てる人は一定の担保金をおさめるなど、手続きが難しい側面があるので、弁護士に依頼したほうがよいでしょう。
調停になった場合、代理人として手続きをまかせられる
相手との話し合いがうまくいかず調停になった場合、弁護士であれば代理人として手続きができます。
相手の住所は分かったもののそこに住んでいなかったり、どこへ行ったか行方が分からなかったりする場合は、弁護士に対応を依頼したほうがよいでしょう。
相手の行方が分からなくても審判の申し立ては可能です。ただしその際には、公示送達を利用しなければいけません。
公示送達とは、相手の所在が分からない場合に裁判所が書類を補完し、名宛人が出頭すればいつでもこれを交付する旨を裁判所の掲示場に掲示して行う送達方法です。相手が受け取らなくても書類を送った事実で裁判が可能となります。公示送達の申請を認めてもらうには、住居所等の詳細な現地調査を実施して、念入りに相手の所在を調査した事実を裁判所に伝えなければいけません。自身で行うのは難しい側面がありますので、弁護士に依頼をおすすめします。
まとめ
離婚時は、早く離婚を成立させたい思いや、親権や養育費に関する話し合いを優先させてしまい、財産分与の話し合いをしない人もいらっしゃるようです。婚姻中に夫婦共同で築き上げた財産は、双方が平等にもらう権利がありますので、離婚後の生活を安定させるためにも諦めずに納得できる話し合いをしましょう。
中には専業主婦(夫)だったから、財産形成に貢献していないとしり込みしてしまう方がいらっしゃるようです。確かにかつては専業主婦(夫)に対する評価が低く、財産分与の割合を3割程度としていた時期もありましたが、現在は2分の1ずつとしているのが家庭裁判所の判断です。自身の家庭への貢献度に自信を持ってください。
離婚後に財産分与を請求するには、難しい面が多々ありますので、できれば弁護士に相談・依頼しましょう。ネクスパート法律事務所には、離婚に関して多数の案件を手掛けてきた弁護士が在籍しています。それぞれの悩みに寄り添って解決方法をアドバイスいたしますので、ぜひ一度ご相談ください。
弁護士に依頼するのを躊躇する方もいらっしゃいますが、離婚後の財産分与は迅速に行わなければいけません。ご自身で悩みを抱え込むよりも早めに弁護士へ相談して対応しましょう。
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