協議離婚は夫婦双方が合意した上で離婚届を提出し、受理されることで成立します。

離婚届は必要事項が不備なく記載されていれば受理されるので、夫婦のどちらかが勝手に作成して提出されると、形式上、離婚が成立したとして取り扱われる可能性があります。これを阻止するには、離婚不受理届が有効です。

この記事では、離婚不受理届をすべき3つのケースを紹介し、届け出をする際の必要書類について解説します。

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離婚不受理届とは何か

離婚不受理届とは、夫婦間で離婚が合意されていないのに、どちらかが勝手に離婚届を提出するのを阻止する制度です。

協議離婚の場合、離婚届を不備なく記載して提出し受理されると成立しますが、それには夫婦双方が離婚に合意していなければいけません。

役所の窓口では提出された離婚届に不備がなければ、夫婦双方が合意しているか否か確認はしないので、そのまま受理されてしまいます。いったん離婚が成立すると取り消し・無効にするには家庭裁判所での手続きが必要です。

こうした状況を避けるための制度が離婚不受理届です。

離婚不受理届をすべきケースは

離婚不受理届をすべきケースは、主に以下のとおりです。

  • 離婚条件の話し合いが決まらず、相手が離婚届を所持している場合
  • 離婚届にサインしたものの、気持ちが変わった場合
  • 相手が離婚を急いでいる場合

離婚条件の話し合いがまとまらず、相手が離婚届を所持している場合

離婚条件の話し合いが難航してまとまっていないのに、先に署名押印した離婚届を相手が持っている場合は、離婚不受理届をしたほうがよいでしょう。

離婚届に不備がなければそのまま受理される可能性が高いからです。

例えば、離婚の合意が存在するものの、未成年の子の親権について話し合いがまとまらない場合、夫婦の一方が勝手に親権者を記入して離婚届を提出したら、親権者の指定は無効になるものの離婚自体は有効に成立する可能性があります。

離婚自体が有効に成立したと判断されると、親権を取り戻すには親権者指定無効訴訟と親権者指定の審判を行わなければならないので気を付けましょう。

離婚届にサインしたものの、気持ちが変わった場合

離婚届にサインをして相手に渡したものの、気持ちに変化があった場合は離婚不受理届をしましょう。

離婚意思は届出のときに存在していなければならないため、夫婦間で合意の上で離婚届にサインをしても、届出前に離婚意思を翻していれば、その協議離婚は無効となります。

しかし、万一あなたの意思に反して届出が受理されて戸籍に記載された場合には、判決または審判によらなければ戸籍の訂正ができません。

別居をして相手とすぐにコンタクトが取れない場合は、気を付けたほうがよいです。

相手が離婚を急いでいる場合

相手が離婚を急いでおり、離婚届のあなたが記入すべき欄まで勝手に書いたり、第三者に代筆させたりして離婚届を勝手に提出する可能性があれば、離婚不受理届をしましょう。

離婚届を受理する役所は、記載すべき内容を満たしているかの形式上のチェックのみで、本人が実際に書いたかどうかまで確かめません。

相手が勝手に出した離婚届は無効となりますが、届出が受理されて戸籍に記載された場合には、判決または審判によらなければ戸籍の訂正ができません。

離婚を急ぐ相手が離婚届を勝手に提出する可能性があれば、離婚不受理届をしましょう。

離婚不受理届をするメリットは?

離婚不受理届をするメリットは、主に以下のとおりです。

  • 知らない間に離婚届を出されても受理されない
  • 離婚条件の話し合いを妥協せずにできる
  • 無料で手続きができる

知らない間に離婚届を出されても受理されない

離婚不受理届をしておけば、知らない間に離婚届を出されても受理されません。

勝手に離婚届を出すと法律上離婚は無効となりますが、いったん受理されてしまうと戸籍の記載が変更されます。訂正するには裁判所での手続きになり面倒なので、不安があれば早めに離婚不受理届をしましょう。

離婚条件の話し合いを妥協せずにできる

離婚不受理届をすれば、親権者や慰謝料など、離婚条件の話し合いを妥協せずに行えます。勝手に離婚届を出されてしまうのでは…と不安な気持ちを抱えながら話し合いをするのではなく、離婚条件に妥協しない話し合いが臨めます。

無料で手続きができる

離婚不受理届は、無料で手続きできるのがメリットです。

手続き方法も複雑ではないので、勝手に離婚届を出される不安があれば、積極的に活用しましょう。

離婚不受理届をするデメリットは?

離婚不受理届をするデメリットは、以下のとおりです。

  • 原則、役所の窓口に直接出向かなくてはいけない
  • 相手にバレたら、けんかになる可能性がある

原則、役所の窓口に直接出向かなくてはいけない

離婚不受理届は、原則、役所の窓口に直接出向かなくてはいけないのが、仕事や家事や育児で忙しい人にとってはデメリットといえるかもしれません。

相手にバレたら、けんかになる可能性がある

離婚不受理届をしたことが相手にバレてけんかになり、離婚の話し合いがこじれる可能性があります。

離婚不受理届をしたことで相手にその旨が通知されることはありませんが、相手が離婚届を提出したときに受理されないため、バレるケースがあります。

離婚不受理届の流れは?

離婚不受理届の流れは、以下のとおりです。

届け出に必要な書類をそろえる

離婚不受理届に必要な書類は次の2点です。

離婚届不受理申出書

離婚届不受理申出書に必要事項を記入して準備をします。

この書類は各市区町村の役所で入手できますし、役所のホームページからダウンロードできる場合もあります。

写真付きの本人確認書類

写真付きの本人確認書類を用意しましょう。運転免許証、マイナンバーカード、パスポートが該当します。

申請人の本籍地または住所地の市区町村役場の窓口に申し出る

離婚届不受理申出書と写真付きの本人確認書類を用意したら、離婚不受理届を申請する人の本籍地もしくは住所地の市区町村役場の窓口に申し出ましょう。

離婚不受理届の効力はいつまでか?

離婚不受理届には、有効期限はありません。ただし、離婚不受理届の効力が失効するケースがあります。

離婚不受理届の有効期限はない

いったん提出した離婚不受理届に有効期限はありません。

以前は申請から6か月の有効期限でしたが、20085月から申請人が取り下げをしない限り、無期限となりました。

離婚不受理届の効力が失効するケースは?

離婚不受理届の効力が失効するケースは、次の4つです。

申請人が取り下げをした場合

離婚不受理届をした申請人が取り下げをしたら、効力が失効します。

申請人が離婚届を提出した場合

申請人が離婚届を提出したら、離婚不受理届の効力は自動的に失効します。

裁判で離婚が成立した場合

裁判で離婚が成立した場合は、離婚不受理届の効力は自動的に失効します。

申請人が亡くなった場合

申請人が亡くなった場合は、離婚不受理届の効力は自動的に失効します。

まとめ

政府統計の戸籍統計によると2022年度は全国で35027件の離婚不受理届出があったとしています。比較的簡単な手続きで行えるので、離婚条件の話し合いが進まず勝手に離婚届を出される不安がある人は、この制度の利用を検討してみるとよいかもしれません。

配偶者と離婚条件の話し合いが進まない方は、一度弁護士に相談してみましょう。

親権をどうしてもとりたいのに相手が譲らない、慰謝料の金額に同意してもらえないなど、離婚に関わる問題は当事者同士で話し合いを進めるには限界があります。

離婚を焦るあまり、妥協すると後悔する日がくるでしょう。

ネクスパート法律事務所には、離婚全般に強い弁護士が在籍しています。慰謝料を必ず相手から取りたい、親権は絶対に手に入れたいなど、あなたの想いを実現するために全力でサポートいたします。初回相談は30分無料で行いますので、ぜひ一度お問合せください。