面会交流とは、離婚後または別居中に、子どもを養育・監護していない親が子どもと会って親子の交流を行うことです。
子どもを養育・監護している親は、離婚した経緯によっては、配偶者に子どもを会わせるのが嫌だと感じる人もいます。
この記事では、面会交流を拒否し続けるとどうなるか、あわせて子どもに与える影響についても解説します。
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目次
面会交流を拒否し続けるとどうなるか?
面会交流は、原則として拒否ができません。
なぜなら、面会交流は親のためではなく、子どもが健全に成長するため、子どものために行うと考えられているからです。
こうしたことを踏まえて、面会交流を拒否し続けるとどうなるかについて解説します。
面会交流調停を申し立てられる
当事者間で取り決めをしていない段階で面会交流を拒否し続けると、相手方から面会交流調停を申し立てられる可能性があります。
面会交流調停は、裁判官や調停委員が間に入り、離婚や別居により子どもと離れて暮らす親が子どもに会うためのルールを話し合う場です。
協議または調停で決めた面会交流の内容を変更したい場合や、面会を拒否したい場合にも申立てができます。
面会交流を拒否し続ければ、相手方が不服に思い、面会交流調停を申し立てる可能性があります。
履行勧告の申出をされる
離婚時に調停や審判で面会交流の取り決めをしたにもかかわらず、約束を守らずに面会交流を拒否すると相手方から履行勧告の申出をされる可能性があります。
履行勧告とは、約束を守らない相手に対して、家庭裁判所が調停や審判で決めたことを守りなさいと促す制度です。
裁判所から書面が届くのでドキッとする人もいると思いますが、履行勧告に強制力はなく、守らなかったための罰則などが科させるわけではありません。
間接強制を申し立てられる
面会交流を拒否し続けると、相手方から間接強制を申し立てられる可能性があります。
間接強制とは、面会交流に応じない相手方に対して、「面会交流不履行1回につき〇万円を払え。」などとして、一定額の金銭の支払いを命じることで心理的な圧迫を加え、自発的な面会交流の履行を促すことです。
間接強制を行うには、次の2つの条件を満たしていなければなりません。
- 調停や審判で面会交流の取り決めていること
- 面会交流の内容(日時・頻度・時間・引渡し方法等)が具体的に特定されていること
間接強制に従わなければ、申立てをした側は制裁金を課せますが、無理やり子どもを連れ戻したりはできません。
親権者変更を申し立てられる
正当な理由もなく面会交流を拒否し続けたら、相手方が親権者変更を申し立てる可能性があります。
実際の裁判例で、子どもの親権者および監護権者である母親が父親に子どもを会わせたくないために、子どもが面会を拒否するように誘導したとして、親権者を父親に変更することを認めた事例があります(福岡家庭裁判所 平成26年12月4日判決)。
この決定は、親権者を父親に変更したものの、監護者は母親のままとなっているため、子どもを監護し、日常的に交流を持つのは母親という意味では、現状はあまり変わらないかもしれません。
しかし、虐待やDV(家庭内暴力)を理由に親権者の変更が認められるケースはありますが、面会交流の拒否を理由とした変更を認めたのは珍しく、興味深い判例といえます。
慰謝料を請求される
正当な理由なく面会交流を拒否し続けた場合、子どもと会えず精神的苦痛を被ったとして相手方から慰謝料請求される可能性があります。
面会交流の拒否を理由に慰謝料を請求できるかどうかは、次の3点がポイントとなります。
- 調停・審判等で面会交流の取り決めをしていること
- 正当な理由なく面会交流を拒否していること
- 面会交流が長期にわたって繰り返し拒否されていること
相手方が裁判所に慰謝料請求訴訟を申立て、裁判所が慰謝料請求を認めた場合、慰謝料を支払う義務が生じます。
おおむね相場の金額は数十万円といわれますが、悪質性が高いと判断されれば高額になる可能性があります。
面会交流を拒否できる正当な理由は?
面会交流を拒否できる正当な理由は、次に挙げる4点といわれています。
- 子どもが拒否している
- 相手方が子どもを連れ去る可能性がある
- 双方が面会交流をしないと合意している
- 相手方が子どもを虐待していたことがある
面会交流を拒否できる正当な理由については、「面会交流を拒否できる正当な理由とは|拒否されたらどうすればいい?」をご参照ください。
正当な理由なく面会交流を拒否し続けることで子どもに与えうる影響
ここでは、正当な理由なく面会交流を拒否し続けることで、子どもに与えうる影響について解説します。
法務省が子どもの精神発達に関する研究をする有識者に委託していた父母の離婚後の子の養育の在り方に関する心理学及び社会学分野等の先行研究に関する調査研究業務の報告書によれば、定期的な面会交流をせずに成長した子どもには、次の3つの特徴があると報告されています。
自己肯定感が低下する傾向にある
面会交流を適切に行ってこなかった子どもは、両親と同居している子どもや、離婚後も面会交流をしていた子どもに比べて、自己肯定感が有意に低いことが報告されています。
自己肯定感とは、自分の存在価値や存在を肯定できる感情を意味しますが、その感覚が低いと引っ込み思案になり、勉強やスポーツ、仕事など人生において大切な物事に対して前向きに取り組めなくなると考えられています。
対人関係において壁を作りがちになる
面会交流を適切に行わなかった子どもは、他人を信頼する感覚が低くなり、対人関係を築くにあたって壁を作りがちになると報告されています。
親が離婚したり別居したりしていても、定期的に面会交流をしている子どもは、両親がいる子どもと比較しても他人を信頼する感覚に変わりがないことが分かっています。
社会適応に問題を抱える可能性がある
子どもの頃、適切に面会交流をしなければ、不登校や引きこもりなど社会適応に問題を抱える可能性があることも指摘されています。
自己肯定感が低い、他人に対して信頼感が低いといったことが不登校や引きこもりにつながり、大人になっても転職を繰り返したり、職場に適応できなかったりします。最悪の場合は、ドラッグやアルコールの依存症になるケースもあります。
もっとも、面会交流の有無だけでなく、子ども側の評価を含め様々な視点で検討されるべきですが、上記のとおり、面会の有無が子どもの精神発達に影響を及ぼす可能性があることを踏まえ、面会を実施する意義を改めて考えることも大切です。
拒否し続ける理由を解消し、安心して面会交流をする方法は?
相手方と子どもを会わせたくないと考えるには、それなりの理由があると思います。
ここでは、拒否し続ける理由を解消し、安心して面会交流をする方法について解説します。
第三者機関を利用する
面会交流を安全に行うためにサポートする第三者機関があります。
面会交流の実施にあたって、相手方と日時場所等の調整・連絡や子の引渡しに支障がある場合には、第三者機関のサポートを受けるのも一つの方法です。
法務省のホームページに親子交流支援団体等の一覧表が掲載されているので、そちらを参考にして自宅近くの機関の利用を検討してみましょう。
第三者機関では、当事者間の連絡調整や子どもの見守りなどさまざまな支援を行っています。
元家庭裁判所の調査官や臨床心理士、保育士といった有資格者が在籍している機関もあります。
参考:法務省:親子交流支援団体等(面会交流支援団体等)の一覧表について (moj.go.jp)
弁護士に相談する
相手方と子どもを会わせたくない理由があるのなら、弁護士に相談をして法的アドバイスを受けましょう。
弁護士であれば、あなたに面会交流を拒否できる正当な理由があるかどうかを的確に判断ができます。
相手と直接話し合うのが困難な場合は、弁護士に交渉の代理を依頼できます。相手方の不当・不合理な要求や主張に対しては適切に反論することで、不利な面会条件を避けられることもあります。弁護士に相談・依頼すれば、あなたが置かれている状況によって最適な対応ができるようにサポートやアドバイスが受けられます。
交渉による解決が難しく調停・審判や裁判に移行した場合も、弁護士が代理人として手続きを進められるので安心です。
まとめ
離婚後は、相手方となるべく会いたくないでしょうし、ましてや子どもを会わせるのも複雑な想いがあるでしょう。
しかし、面会交流は親のためではなく、子どもの健全な成長のために行うものです。正当な理由なく親のエゴで子どもを父親もしくは母親から無理やり切り離すのはやめましょう。
ただし、離婚原因がDVや子どもへの虐待だったり、モラハラだったりする場合は、面会交流が拒否できるかもしれません。面会交流させることが子どもにとってよくないと考えたり、面会交流の方法で相手方ともめたりしている場合は、弁護士に相談をしてみましょう。
ネクスパート法律事務所には、離婚案件を多数手がけている弁護士が在籍しています。
面会交流についてお悩みの方に、状況に沿ったアドバイスができます。初回の相談は無料なので、一度ご連絡ください。