財産分与について話し合いを進める上で、退職金がどのように扱われるのか、疑問に思う人も多いでしょう。

今回は、退職金と財産分与の関係について紹介します。

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離婚時の財産分与における退職金の取り扱いについて

ここでは、離婚時の財産分与における退職金の取り扱いについて説明します。

退職金は財産分与の対象になるのか?

退職金が財産分与の対象となるかどうかは、当該退職金の性質によって分かれます。

一般的に、企業の退職金規定に基づいて支給される退職金は、給与の後払いという考え方が主流となっているため、退職金が労働の対価的側面を有している場合は財産分与の対象になります。

ただし、通常、退職金は退職時に支給されるものなので、定年退職はずいぶん先で受給が確定的とは言えない場合は、財産分与の対象にならないこともあります。

退職金が、給与の後払い的性質ではなく、生活保障的性質を含む場合には、清算的財産分与の対象とならず、扶養的財産分与の対象として考慮されることがあります。

関連記事:離婚時の財産分与とは?財産分与の対象になるものと3つの決定方法

財産分与の対象になる期間は?

財産分与の対象になる退職金は、働いてきた期間と婚姻していた期間が重なる部分です。婚姻前や離婚(または別居)後に働いた期間に対応する退職金は、原則として財産分与の対象になりません。

退職金がすでに支払われている場合の扱いは?

ここでは、退職金がすでに支払われている場合の扱いについて説明します。

手元に退職金が残っている場合

退職金がすでに支払われ、手元に退職金が残っている場合、財産分与の対象となります。夫婦で2分の1ずつ分けるのが基本です。

手元に退職金が残っていない場合

手元に退職金が残っていない場合は、財産分与の対象になりません。退職金がすでに支払われている場合には、預貯金や株式、不動産など別の財産に形を変えて残っていることもあります。その場合には、それらの財産を分与対象として清算するのが通常です。

どちらか一方が浪費した場合は、他の財産で財産分与の割合を考慮してもらえる可能性があります。

退職金が将来支払われる場合の扱いは?

ここでは、退職金が将来支払われる場合の扱いについて説明します。

退職金の支払い確実性の判断基準は?

将来支払われる退職金を財産分与の対象にするにあたり重要なのは、確実に支払われるかどうかという点です。その判断基準には主に下記が挙げられます。

会社の就業規則で退職金について定められているかどうか

退職金制度がない会社もあるので、会社の就業規則や雇用契約書に退職金の条項があるかどうかを確認します。

会社の規模

将来会社が倒産してしまうと退職金は支払われませんから、会社の規模や経営状態も重要な要素です。

退職金の算定方法が分かっている

支払われる退職金の金額が分からないと財産分与が難しいため、退職金の算定方法が分かっていることが必要です。

これまでの勤務状況

過去に転職を繰り返すなど、定年まで働き続けることが難しいとされると、退職金が支払われる可能性が低いと判断される可能性があります。

退職まで10年以上あると退職金の分与は期待できない?

退職金の支給時期があまりにも先になる場合、本当に退職金が受け取れるのか確実性がないため、財産分与の対象とならないという考え方もあります。

しかし、実務上は、退職金の支給時期が10年以上先でも、離婚時点で任意に退職すれば支給されるであろう退職金のうち、婚姻期間に相当する退職金は財産分与の対象として認められる傾向があります。

支給時期が10年以上先でも、公務員など勤務先によっては支給の蓋然性が高いと評価されることがあり、逆に3年先に定年退職を控えていても支給される蓋然性が低いと評価されれば分与対象財産とならないこともあります。

財産分与で受け取れる退職金の計算方法は?

ここでは、財産分与で受け取れる退職金の計算方法について説明します。

退職金がすでに支払われている場合

退職金がすでに支払われている場合、一般的には下記の計算式で算出されます。

退職金額×(婚姻期間÷勤続期間)=財産分与の対象となる退職金額

なお、婚姻期間とは実際に同居していた期間となり、別居している期間は含まれませんが、単身赴任で離れて暮らしていた場合は、別居期間とみなされません。

退職金が将来支払われる場合

退職金が将来支払われる場合、離婚した時点で退職したとみなして計算をします。この場合、一般的には、以下の計算式で算出します。

離婚時の退職金相当額×(婚姻期間÷勤続期間)=財産分与の対象となる退職金額

離婚時の退職金相当額とは、離婚時に自己都合退職をしたと仮定して退職金額を計算する方法と、将来の受給額から中間利息(実際に受け取った時点から将来の受け取るべき時点までに発生する利息)を控除する2つの方法があります。

退職金の隠匿や使い込みが心配な場合の対処法は?

もともと浪費癖がある配偶者であれば、退職金の隠匿や使い込みが心配になります。

退職金を使ってしまったと言われないように対策を練ることが大切ですが、保全の必要性が高い事案であれば、裁判所に退職金請求権や退職金が入金された預金口座の仮差押えを申立てる方法があります。

裁判所が申立てを相当と認めて仮差押命令を発令すれば、相手方配偶者が退職金を使いこんだり動かしたりできなくなるので、離婚に向けた話し合いを落ち着いて進められます。

仮差押手続きは複雑で、申し立てをしても必ず認められるわけではありません。退職金の使い込みが心配な方は、弁護士に相談して、仮差押を含めた効果的な対処法についてアドバイスを得ることをおすすめします。

財産分与を弁護士に相談・依頼するメリットは?

ここでは、財産分与を弁護士に相談・依頼するメリットについて説明します。

財産分与だけでなく離婚に関する問題全般を相談できる

離婚は財産分与だけでなく、慰謝料や養育費・親権、婚姻費用など様々な問題を解決しなければなりません。離婚案件を豊富に扱ってきた弁護士であれば、さまざまなケースに適切に対応できます。

退職金に関する計算方法など、的確なアドバイスが可能

退職金に関する計算方法など、財産分与の手続きは複雑です。相手が退職金を使い込んでしまわないか、不安になる人もいるでしょう。弁護士に相談すれば、こうした案件に対して的確なアドバイスが可能です。

話し合いがまとまらず、調停・訴訟になった場合、代理人として交渉が可能

財産分与の話し合いがまとまらず、調停・訴訟になった場合、弁護士は代理人として交渉が可能です。

まとめ

離婚時における財産分与は、今後の人生を決める大切な案件です。

退職金はどんな場合でも財産分与の対象になるわけではないので、判断が難しい側面があります。離婚を考えている人は弁護士に相談して、適正な財産分与がされるようにしましょう。