万一に備えるため、生命保険に加入している人も多いことでしょう。加入している保険の種類によっては、財産分与の対象になります。
今回はどのような生命保険が財産分与の対象となるのかについて紹介します。
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目次
生命保険は財産分与の対象になるのか?
ここでは、財産分与の対象となる生命保険について説明します。
財産分与の対象となる生命保険は?
死亡保険
生命保険には、貯蓄型と呼ばれるものと掛け捨て型と呼ばれるものがあります。解約返戻金(または満期返戻金)が発生する貯蓄型の保険は、契約者(保険料の負担者)や受取人の名義に関係なく、解約返戻金(または満期返戻金)が財産分与の対象となります。
学資保険
学資保険は、子どもの将来の教育資金のために夫婦で積み立てた保険なので、財産分与の対象となります。保険内容は、満期受取金のみのものや、一定の年齢に達したときに祝い金が給付されるものなど様々です。
損害保険
火災保険や自動車保険、地震保険などの損害保険も、貯蓄型のものであれば財産分与の対象となります。
財産分与の対象にならない生命保険は?
解約返戻金が発生しない掛け捨て型の保険は、財産分与の対象となりません。掛け捨て型の保険として代表的なものは、一般的な医療保険、がん保険などが該当します。
このほか、下記のような保険も財産分与の対象になりません。
親がかけている生命保険
夫または妻の名義であっても、保険料をどちらかの親が払っている場合は、夫婦共有の財産とはみなされないので、財産分与の対象にはなりません。
学資保険も「孫のために…」と、夫または妻のどちらかの親が保険料を負担していたら、財産分与の対象になりません。
ただし、いずれの場合も当該保険を財産分与の対象から外すためには、実質的な保険料負担者が親であることの立証が必要です。
団体信用保険
団体信用保険は、住宅ローンの債務者が亡くなったり高度障害になったりした場合に備えて加入するものです。債務者に万が一のことがあれば、保険金でローンの残額が返済されます。団体信用保険は貯蓄型の保険ではないため、財産分与の対象にはなりません。
財産分与の対象になる場合とならない場合がある生命保険は?
貯蓄型の保険であっても、財産分与の対象とならないケースについて解説します。
結婚前に加入した生命保険
結婚前から生命保険契約を締結し、保険料を支払っていた場合には、結婚前までの期間に相当する解約返戻金は、特有財産になると考えられるため、財産分与の対象になりません。
ここで問題となるのは、結婚後も引き続き同じ生命保険に加入していた場合、財産分与の対象となる部分の評価です。判例では、財産分与の基準時(通常は別居時)の解約返戻金から、仮に結婚した時に生命保険を解約していた場合の返戻金を控除する方法をとっています。
例えば、財産分与の基準時の解約返戻金が300万円で、仮に結婚した時に解約していたら100万円だった場合、財産分与の対象となるのは200万円となります。
保険料を特有財産から支払っていた場合
婚姻期間中に保険料を支払っていても、相続財産など夫婦の一方の特有財産から保険料が支払われていた場合、当該保険は財産分与の対象外となります。
この場合は、保険料の支払原資が特有財産であることの立証が必要ですので、お金の流れに関する客観的な証拠が残っているかによって判断が分かれることがあります。
生命保険や学資保険の財産分与の方法とは?
ここでは、生命保険、学資保険、損害保険の財産分与の方法について説明します。
生命保険の財産分与の方法
生命保険を財産分与する方法は、離婚(別居)時の解約返戻金額が財産価値となるので、その金額を夫婦で2分の1ずつ分けるのが原則です。
該当する保険を解約して、保険会社から解約返戻金を受け取って2人で分けるのが簡単ですが、保険を解約したくない場合もあるでしょう。その場合は、その金額分を他の財産で代わりに清算する方法もあります。
学資保険の財産分与の方法
学資保険は、子どもの将来の教育費の備えという側面や一度解約すると再加入が難しいことから、解約を希望しない人が多いです。その場合、今後も払い続けていく保険料を養育費の一部に充て、学資保険は財産分与の対象にしない方法をとることがあります。
この場合には、保険給付の受取人の名義変更の要否を検討します。例えば、父親が契約者で引き続き保険料の支払いをし、離婚後の親権者が母親となる場合は、将来のトラブル防止の観点から、受取人を母親に変更する方が良いこともあります。
なお、契約者以外が受取人になれるかどうかは保険会社によってさまざまなので、約款を確認するか保険会社に問い合わせをしましょう。
契約を継続する場合は、学資保険の契約者(保険金受取人)から、他方の配偶者に対し、財産分与として離婚時(または別居時)での返戻金額に分与割合を乗じた額を代償金として支払うのが原則です。他の分与対象財産で取得させる方法もあります。
当事者の話し合いでスムーズに離婚が成立するケースでは、代償金を支払わずに済むこともあるでしょう。
損害保険の財産分与の方法
2022年10月以降、火災保険は最長5年までしか長期契約を結べなくなりましたが、それ以前は最長で10年または36年の長期契約が可能でした。
婚姻中に締結した火災保険長期契約の場合、解約返戻金が発生するものもあります。この場合は、離婚時(または別居時)の解約返戻金を夫婦で2分の1ずつ分けるのが相当です。
婚姻中に夫婦が取得した自宅を財産分与される場合、加入していた火災保険の名義変更も必要です。
婚姻中に夫婦のいずれかが交通事故に遭ったことにより受けた損害保険金については、自賠責保険から支払われたものにつき、財産分与の対象とした判例もあります(ただし、障害慰謝料や後遺障害慰謝料は除く)。
生命保険の財産分与を弁護士に相談・依頼するメリット
ここでは、生命保険の財産分与を弁護士に相談・依頼するメリットについて説明します。
分与対象となるかどうかや最適な分与方法を判断してもらえる
保険にはさまざまな種類があり、当事者が掛け捨て型の保険と認識していても、調査によって解約返戻金が発生する貯蓄型保険であることが判明する場合もあります。
離婚に強い弁護士であれば、当該保険が分与対象財産となるかどうかについて的確にアドバイスできます。配偶者がどのような保険に加入しているか分からない場合にも、弁護士会の紹介制度(弁護士法23条照会)を利用して、保険の種類や証券番号、保険期間、保険金受取人名、解約の有無等を調査できます。
話し合いがまとまらず調停・訴訟になった場合は、代理人として交渉ができる
夫婦間でスムーズに話し合いが進めばよいですが、それぞれが納得できる結論を導き出すのは難しいものです。
早めに弁護士に相談すれば、万が一話し合いが難航し、調停・訴訟になった場合でも、不利な状況に置かれるリスクを軽減できます。弁護士は代理人として相手方と交渉できるので、夫婦だけで話し合う場合よりも早期に解決することも多いです。
まとめ
生命保険には、財産分与ができるものとできないものがあります。
保険にはさまざまな種類があるため、調査するのは手間と時間がかかります。離婚に強い弁護士に早めに相談することでスムーズに解決することが期待できます。
離婚時の財産分与にお悩みの方は、お気軽に当事務所にご相談ください。