子どもがいる場合には離婚後に「面会交流」が行われることが一般的です。夫婦は離婚届の提出によって関係が終了しますが、子どもからすると大切な父母である事実は変わりません。面会交流という機会を通して親子の交流は続いていくことになります。
しかし、面会交流の度に元夫婦が顔を合わせることになるため、元夫婦の関係によってはうまく交流ができなくなる場合もあります。では、面会交流は拒否をすることはできるのでしょうか。
この記事では離婚後に行われる「面会交流」をテーマに、交流拒否ができるケースなどをご紹介します。今から離婚をお考えの方も、現在面会交流にお悩みの方も、是非本記事をご参考ください。
目次
面会交流は原則拒否できない
面会交流は子どもにとって不利益となる場合を除き、原則拒否はできません。例えば、子どもは父親に会いたいと思っているにもかかわらず、母は離婚で揉めた相手とは会いたくないケースもたくさんあります。しかし、母の一存で面会交流を拒否をすることはできません。
民法では協議離婚でも調停や訴訟による離婚でも「面会交流の方法を決めるように」と定めています。親の都合ではなく、子どもの権利を保障する側面が強く、民法第766条では面会交流は子の利益を優先するようにと定めています。小さな子どもを抱えて毎月面会交流に出向くことは大変な苦労ですが、面会交流は法律で認められている権利なのです。
面会交流を拒否できる正当な理由はあるのか
たとえ1か月に1度の頻度であったとしても、面会交流の調整は意外と大変です。子どもの体調管理や学校行事、部活動や習い事の日程に加え、離婚した夫婦の都合を調整する必要があり、大変な負担と感じる人も少なくありません。
実は、面会交流は必ずしも強制されるものではありません。先に触れたように、子どもの権利を保障する要素が強い面会交流は、以下のようなケースにおいて拒否ができると考えられます。
子どもが拒否している
面会交流で別居した父母のいずれかと「会いたくない」と子供が明確に意思表示をしている場合には拒否できます。
一般的に15歳以上の子どもが面会交流を明確に拒否をしている場合は、認められる可能性が高いでしょう。また、子どもの成長とともに受験や部活動など優先すべき行事が増える可能性があり、こうした子どもの都合によって面会交流のペースを変えることも可能です。
子どもを連れ去る可能性がある
近年世間一般に「子の連れ去り」に関しても広く知られるようになりました。子の連れ去りとは夫婦が婚姻中にまだ共同親権を有していた際に、一方が無理に子どもを連れ去ってしまうことを言います。
離婚時に養育権や監護権をきちんと定めたにもかかわらず、離婚前から子どもを連れ去ろうとする強硬な姿勢を見せていた方は、面会交流を機会に再び連れ去りを試みようとする可能性があります。こうしたケースでは面会交流を拒否できる場合があります。
過去に虐待をしていた
離婚の原因に子どもへの虐待があった場合、面会交流は子どもの健やかな成長を阻む可能性があります。面会交流は子どもの権利を優先するものですから、子どもの心と身体を傷つける可能性がある場合には拒否ができます。
面会交流をしないことに双方が合意している
そもそも夫婦間で面会交流を行わないと決めている場合には、面会交流は無理に実施しなくても良いのです。例えば、離婚をきっかけに遠方に引っ越す場合や、再婚のご予定がある、子どもの受験や療育などの関係で面会交流が負担となることが夫婦で予想できている場合などは、面会交流をしないと決定しても問題がありません。
その他
面会交流は強制的に行われるものではありません。子どもの都合によっては単発的に面会交流を中止することもできますし、子どもを連れて面会交流に伺う父母のいずれかが高熱で出向けない、などのケースも中止が可能です。子どもが全寮制の学校に入る、などのケースも面会交流を一時的に中止することが考えられます。
こんなケースでは面会交流は拒否できる?
面会交流は子どもにとってはプラスの要素があるとしても、長期間決められたペースで面会の場を設けることは、正直双方にとって負担と感じる場合もあるでしょう。では、以下のようなケースでは面会交流を拒否することはできるのでしょうか。
コロナを理由に面会交流を拒否したい
新型コロナウイルスの感染拡大から時間も経過してきましたが、まだまだ猛威を振るっていますね。職場や学校などでクラスターが発生するたびに「次の面会交流は中止にしたい」と思う方も多いでしょう。
新型コロナウイルスと面会交流に関して下記リンクのとおり法務省が一定の見解を発表しており、父母間で話し合いを行って調整をすることを求めています。
父母間で話合いをすることができる場合には,子どもの安全の確保に最大限配慮し,どのような方法で面会交流を実施するのが相当かについて話し合ってください。
案としては、面会には感染リスクをともなうと考えられる場合には、オンライン会議ツールの活用や電話での交流も手段の1つです。原則として話し合いでの協議が重要ですが、衝突が予想される場合には弁護士へ相談されることがおすすめです。
相手が養育費を払っていないから拒否したい
面会交流に悩んでいる方の中には「養育費を払ってくれないのに、面会交流を続ける必要があるのか」という問題です。面会交流を重ねるたびに相手方へ養育費を督促することは大きなストレスになります。
子どもが面会を希望している場合には拒否が難しいですが、養育費を支払ってくれない上面会交流を拒否すると、支払い再開を求める場が失われるとも考えられます。
面会交流は重ねつつ、弁護士に相談を行い履行勧告などの機会を持つ方が得策の可能性もあります。お金の問題はデリケートな側面もあるため、離婚手続きにも弁護士が代理人となった場合には、同弁護士に相談をすることもおすすめです。
面会交流を拒否されたらどうすればいい?
離婚をする際に面会交流を決めていても、相手方から面会交流を拒否されるケースもあります。何度機会を持とうとしても、子の体調不良や行事を理由にする、再婚をきっかけに面会交流を拒否するケースも後を絶ちません。
では、面会交流の拒否が続く場合には、拒否された側はどのように対応すべきでしょうか。面会交流は正当な権利であるため、もしも拒否が続く場合には「履行勧告」で再開を求めることが可能です。
履行勧告とは、離婚調停や訴訟で面会交流の取り決めをしている場合、家庭裁判所から勧告をしてもらう方法です。この他にも、間接強制などの方法もありますので、弁護士にご相談されることがおすすめです。
面会交流を理由なく拒否したら罰則はある?
面会交流を正当な理由なく拒否をしてしまったら、何か罰則を受ける可能性はあるのでしょうか。以下2つのポイントで解説します。
慰謝料、損害賠償を請求される
面会交流を正当な理由なく拒否をしたら、慰謝料や損害賠償請求を受ける可能性があります。特に調停などで面会交流の頻度などを明確に決めたにもかかわらず、虚偽の理由で拒否をされた、などの場合には慰謝料の請求を受ける可能性があります。
慰謝料の相場は「数十万円~100万円程度」とされていますが、最終的には裁判に発展する可能性もあるため、理由なく面会交流を拒否することはおすすめできません。
親権者に相応しくないと判断される
面会交流は冒頭に述べたように子どものために運用するものでもあります。それにもかかわらず交流を妨害したら、親権者に相応しくないと家庭裁判所に判断される可能性があります。
拒否されている側が家庭裁判所へ親権変更の申立に発展する前に、面会交流をどうするのか話し合うことが重要です。
まとめ
この記事では面会交流について、拒否できるケースや正当な理由なく拒否した場合に考えられることを焦点に詳しく解説を行いました。面会交流は原則として行われるべきものですが拒否できるケースもあります。しかし、あいまいな理由で拒否をすると大きなトラブルに発展することもあります。面会交流にお悩みがありましたら、まずは弁護士にご相談ください。