子どもの独立や退職などをきっかけに人生を振り返り、見つめ直した結果「熟年離婚」を選択する方も多いです。しかし、若い頃と同じような気力と体力があるわけではなく、人生をリスタートすることを躊躇い、つらい結婚生活を続ける選択をする人も少なくありません。そこで、今回は熟年離婚とは何か、原因や熟年離婚する夫婦の特徴について解説します。
離婚や不倫問題にお悩みの方は、おひとりで抱え込まず、ネクスパート法律事務所にご相談ください。ご相談者様の問題解決に向けて、当事務所の弁護士が全力でサポートいたします。
目次
熟年離婚とは
熟年離婚とは、長い婚姻生活の末に離婚することを言いますが明確な定義はありません。一般的には、結婚してから20年以上連れ添った夫婦、年齢的には40代半ば~60代くらいまでの離婚を熟年離婚と言うことが多いようです。
熟年離婚という言葉は、1980年代頃から使われるようになり、2005年に放映された「熟年離婚」というドラマが高い視聴率を記録し、一般的に広く使われるようになりました。また、2000年代以降、日本では夫や妻が退職をする60代を目途に熟年離婚をすることが1つの社会現象のように報道されるようになりました。
熟年離婚の背景には長年の「我慢」や「DV」、子育て期間に蓄積していた不満が引き金になることが多く、一度決断された方の離婚意志は大変固い場合が多い印象です。
熟年離婚の件数と割合
実際に熟年離婚の件数と割合はどうなっているのでしょうか。厚生労働省が発表している令和2年の「人口動態統計」を参考にすると、全体の離婚件数は「193,251件」、そのうち同居年数20年以上の離婚件数は「38,980件」となっています。離婚全体の約20%が同居年数20年以上の夫婦です。
年 | 件数 |
---|---|
昭和60年 | 20,434件 |
平成7年 | 31,877件 |
平成17年 | 40,395件 |
平成27年 | 38,648件 |
平成29年 | 38,288件 |
平成30年 | 38,537件 |
令和元年 | 40,396件 |
令和2年 | 38,980件 |
参考URL:厚生労働省 令和2年(2020)「人口動態統計月報年計(概数)の概況」
平成7年の頃と比較すると、同居年数20年以上の夫婦の離婚は31,877件から38,980件と増加しており、時代の変化を感じることができます。熟年離婚はこの約20年程度の期間で大きく変化しているのです。
熟年離婚の原因
長年一緒にいた夫婦が老年期に入る際に離婚を決断する理由とは、一体どのようなものでしょうか。熟年離婚の分析や記事は多数ありますが、大きな要因としては「女性の社会進出」が進んだことや女性の年金増加を目的とした「年金分割制度」が始まったことなどが挙げられます。
また、初婚年齢の上昇も挙げられます。結婚をする年齢自体が昔よりも遅くなっており、自ずと離婚をする年齢も後ろ倒しになっている、と言われています。
熟年離婚は女性が求める方が多いと言われており、長年家事や育児を担ってきた女性が子どもの自立をきっかけに人生のリスタートを求めることが多いようです。いずれにせよ、昨日今日で生まれた不満から突然離婚をするのではなく、長年のすれ違いや不満の積み重ねから熟年離婚に至ることがほとんどです。
・熟年離婚の財産分与で気を付けること|持ち家や年金の分割方法とは
熟年離婚される夫の特徴
熟年離婚をされる夫の特徴はどのようなものでしょうか。夫婦のことは夫婦にしかわからないことが多いですが、妻側が夫に嫌気がさし、熟年離婚を切り出す背景にはこんな特徴が挙げられます。
会話が成り立っていなかった
子育ての悩み、お金に関する悩み…夫婦関係を続けていくと恋愛モードだったカップルの頃とは違い、さまざまな悩みに直面します。特にお子様がいる場合には進学や友人関係など親として頭を抱えることは多いでしょう。
そんな時に仕事で不在が多く、単身赴任で家にいない夫に相談をしたとしても、会話がかみ合わず妻の不満が溜まっていくことがあります。そして、子育ての終了をきっかけに、自由にひとりで暮らしたいと考えるのです。家庭を顧みなかった夫と離れたい気持ちも理解できます。
モラハラやDV
熟年離婚を切り出す妻は、長年モラハラやDVに我慢を重ねてきたケースもあります。経済的に優劣が生じやすい夫婦関係で生活や子育てのためにモラハラやDVに耐え続ける人は少なくありません。
子育てや介護の終了
妻側は長年子育てや親の介護に従事することも多く、自由な時間を長年持てていなかった方もいます。子育てや介護が終了したことをきっかけに、第2の人生を目指して離婚を考える人も多いのです。
熟年離婚される妻の特徴
熟年離婚は妻から男性へと切り出すケースが多いとされていますが、夫から妻へ離婚を切り出すこともあります。では熟年離婚をされる妻にはどんな特徴があるでしょうか。
長年不仲である
長年夫婦関係が冷え切っている場合、夫から妻へ退職などをきっかけに離婚を切り出す場合があります。中年期に経験してきたセックスレスが尾を引くこともあります。妻と老後を暮らすより、人生をやり直したいと考えるようです。
モラハラやDV
モラハラやDVに悩んでいるのは女性だけではありません。長年虐げられるような生活をしている男性も多く、老年期に差し掛かるまえに婚姻生活を終わらせたいと考える方もいます。
親族との不仲
妻が夫側の姓を名乗ることが多く、夫側の親族と長年付き合ってきた中で親族との不仲に負担を感じる夫も多いのです。いわゆる「嫁姑問題」です。妻と親族の関係が悪く、それが引き金となり離婚に至る夫婦は少なくありません。
熟年離婚のメリット・デメリット
熟年離婚に至る原因はさまざまですが、長年の夫婦関係を終わらせる以上メリットもあれば、デメリットもあります。
メリット
熟年離婚のメリットとは、2つ挙げられます。まず1つ目は「生活のリセット」です。長年の苦痛が終わり、残りの人生を自分らしく彩ることができます。お子様も自立している場合には、のんびりと自分の趣味に生きることも良いでしょう。引っ越しをし、自由気ままな一人暮らしをすることもできます。
2つ目は「親族関係からの解放」です。特に女性の場合は長年夫側の親族関係に悩んでいることが多く、同居や介護に疲れているケースがあります。離婚によってこうした親族関係から解放されます。
デメリットとは
熟年離婚のデメリットも2つ挙げられます。まず1つ目は「困窮」です。離婚する際は財産分与によって夫婦共有の財産を分けることになりますが、双方の暮らしが不安定になる可能性があります。若い頃と違い、就職も難しい年齢のため生活が困窮に陥りやすいのです。
2つ目は「頼れる人が減る」ことです。長年の夫婦関係の終了により、双方の親族を頼ることはできなくなり、介護や病気などがご自身の身に起きた際に誰にも頼れない状況になる可能性があります。熟年離婚は老年期のご自身の生活を見据えて行う必要があるのです。
熟年離婚した夫婦のその後とは
熟年離婚をすると、男女の人生はその後どのようなものとなるでしょうか。
女性側のその後の人生
一説には女性は離婚をすると元気になる、とされますが長年専業主婦だった方は財産分与で得られた財産が少ない場合には、就職も難しく生活が不安定になる傾向があります。しかし、家事や育児の経験から生活が荒れることは少なく、金銭面の不安をクリアしていくことが大切です。
・専業主婦の財産分与が少なくなるケースや事前に確認すべきこと
男性側のその後の人生
長年妻に依存していた男性は、離婚をきっかけに生活が荒れやすくなります。不慣れな家事に悩まされる方も多いですが、再雇用などの機会は女性よりも得やすい可能性があり、生活の資金は女性よりも安定しやすい傾向があります。
まとめ
この記事では熟年離婚とは何か、メリット・デメリットについて解説しました。熟年離婚はその後の人生を見据えて、しっかりと考えたうえで決断しましょう。特にお金に関しての問題はクリアしておく必要があります。早くから人生再建の準備を念頭に考えていくことが大切です。