離婚裁判の流れ 具体的に解説

離婚は人生における大きな転機であり、多くの不安を伴うものです。特に話し合いや調停で解決しなかった場合に進む離婚裁判に対して、どのような準備が必要なのかを知ることは、心の安定と望ましい結果を得るために欠かせません。
本記事では、離婚裁判の流れを軸に、かかる費用や期間の目安、さらに成功のために重要となる証拠収集のポイントについて分かりやすく解説します。

離婚裁判とは?法的解決への最終ステップ

離婚裁判(離婚訴訟)とは、夫婦間の話し合いである協議や家庭裁判所での調停で合意に至らなかった場合に、裁判官が証拠に基づいて離婚の可否や条件を決定する最終的な法的手続きです。
日本の離婚制度においては、いきなり裁判を起こすことは原則として認められていません。これは、調停前置主義という考え方に基づいています。まずは専門家を交えた話し合いの場である調停を行い、そこでも解決できなかった場合に初めて裁判へと進む流れが法的に定められています。離婚裁判を行う人は全体の数パーセントにとどまっており、多くのケースは調停までの段階で何らかの決着を見ています。
しかし、相手が絶対に離婚を認めない場合や、親権や財産分与について激しい対立がある場合には、裁判こそが公平な判断を得るための唯一の手段となります。裁判では、個人の感情論ではなく、提出された証拠と法律上の離婚原因(法定離婚事由)の有無が重視されます。

離婚裁判の流れをステップ別に解説

離婚裁判は訴状の提出から始まり、判決または和解まで平均して1年以上の時間をかけて進められます。各ステップの内容を把握しておくことで、適切な準備が可能になります。離婚裁判の流れを正しく理解することは、長期化する争いに備え、ご自身の将来を守るための確かな武器となります。

①訴状の作成と家庭裁判所への提出

離婚裁判の開始は、原告(訴える側)が管轄の家庭裁判所に訴状を提出することからスタートします。訴状には離婚を求める旨だけでなく、親権、養育費、慰謝料、財産分与といった付随的な請求も詳細に記載します。
提出先は、原則として夫婦のどちらかの住所地を管轄する家庭裁判所です。提出時には戸籍謄本や離婚調停不成立調書などの書類とともに、所定の印紙代と切手代(予納郵券)を納めます。
専門的な知識が必要な訴状の作成は、弁護士とともに進めるのが一般的です。特に、相手方に弁護士がついている場合、自身の主張が法的に整理されていないと不利な立場に追い込まれるリスクがあるため、初動の準備が重要です。

②答弁書の提出と第1回口頭弁論

訴状が受理されると、裁判所から被告(訴えられた側)に対して訴状の副本と呼出状が送付され、被告は答弁書を提出して反論を行います。
第1回口頭弁論の日程は、訴状提出から約1か月後に設定されるのが通例です。被告側は、この期日までに答弁書を提出しなければなりません。もし答弁書を出さずに欠席すると、原告の主張をすべて認めたものとみなされる(欠席判決)おそれがあるため、確実な対応が求められます。
第1回期日に限り、被告は答弁書を提出していれば欠席しても書面の内容を述べたものとみなされる(擬制陳述)ことができます。実際のやり取りは、双方が準備を整えた第2回以降の期日から本格化していきます。

③準備書面のやり取りと主張の整理

第2回以降の期日では、双方が準備書面を交互に提出し、自らの主張の正当性を訴え、相手の反論を崩していく作業を繰り返します。
期日は通常、1か月から1か月半に1回のペースで開かれます。この段階では弁護士のみが出廷することが多いため、当事者本人が毎回裁判所へ行く必要はありません。裁判官は提出された書面や証拠(写真、メール、診断書など)を読み込み、争点を整理していきます。
このプロセスを通じて裁判官の中に心証が形成されるため、説得力のある書面作成と証拠提示が、離婚裁判の流れにおける実務上の中心となります

④本人尋問・証人尋問

主張と反論が出尽くした段階で、裁判官が直接当事者の話を聞く本人尋問が行われます。
これは離婚裁判における山場です。当事者本人が法廷に立ち、双方の弁護士や裁判官からの質問に答えます。事前に提出した陳述書の内容と矛盾がないか、信憑性をチェックされます。
必要に応じて親族や知人が証人として呼ばれることもありますが、多くのケースでは夫婦本人の尋問が中心です。ここでの受け答えは裁判官の最終判断に影響するため、弁護士との入念に打ち合わせをして、リハーサルをしたほうがよいでしょう。

⑤和解勧告または判決による解決

すべての証拠調べが終わると、裁判所から和解の打診がなされることが多く、合意できなければ判決が言い渡されます。
実務上、離婚裁判の多くは、判決に至る前に和解によって終了しています(和解離婚)。和解には、柔軟な解決が可能であることや、戸籍に和解離婚と記載され、裁判で争った印象を和らげられるといったメリットがあります。
和解が成立しない場合は、裁判官が法と証拠に基づき、離婚の可否や条件を決定する判決を下します。判決に不服がある場合は、2週間以内に高等裁判所へ控訴を行うことが可能です。

判決・和解が成立した後の手続き

離婚が決まった後、法的な身分関係を確定させるための事務手続きが必要です。

離婚届の提出

判決確定または和解成立から10日以内に市区町村役場へ届け出ます。判決の場合は、判決謄本確定証明書、和解の場合は和解調書謄本が必要です。

年金分割の請求

離婚成立の翌日から2年以内に年金事務所で手続きを行います。期限を過ぎると一切の請求ができなくなるため、最優先で進めましょう。

名字と戸籍の変更

婚姻時の名字を使い続けるか旧姓に戻るかを選択し、必要に応じて役所で手続きを行います。

裁判で離婚を認めてもらうための5つの法定離婚事由

協議や調停とは異なり、裁判で離婚を成立させるには、民法第770条1項に定められた5つの事由(法的離婚事由)のいずれかに該当することを立証しなければなりません。

①不貞行為(不倫)

配偶者が自分以外の異性と自由な意思で肉体関係を持った事実を指します。単なるデートやメールのやり取りだけでは不十分とされることが多く、ラブホテルへの出入り写真や肉体関係を推認させる生々しいメッセージ履歴など、客観的な証拠が求められます

②悪意の遺棄

正当な理由なく、夫婦の義務である同居・協力・扶助を放棄することを指します。収入があるのに生活費を渡さない(経済的DV)、配偶者を放置して家を出るなどの行為が該当します。

③3年以上の生死不明

配偶者の生存も死亡も確認できない状態が3年以上継続している場合です。警察への行方不明者届などが資料となりますが、SNSの更新があるなど、生きていることが分かっている場合はこれに当たりません。

④強度の精神病と回復の見込みがないこと

配偶者が重度の精神病を患い、医学的に回復の望みが極めて薄い場合です。ただし、裁判所は病を持つ人を放り出すような結果を避けるため、離婚後の生活・療養計画が具体的に整っていない限り、この事由による離婚を認めない傾向にあります。

⑤婚姻を継続し難い重大な事由

上記で挙げた1〜4には当てはまらないものの、夫婦関係が深刻に破綻し、修復不能な状態を指します。実務上、最も多く主張される項目で、具体的には以下の事由があります。

  • DV・モラハラ:身体的暴力や精神的虐待
  • 多額の借金・浪費:家庭生活を破綻させるほどの金銭問題
  • 性格の不一致:単独では認められにくいが、長期の別居(目安として3〜5年程度)がある場合、関係破綻の証拠とみなされやすい

離婚裁判にかかる費用相場|実費と弁護士費用

裁判を進めるには、裁判所に納める実費と、弁護士に依頼する場合の弁護士費用の2種類が必要です。

裁判所へ支払う実費(訴訟費用)

裁判所に支払う直接的な費用は、概ね2万円〜程度で済むことが多いです。具体的には以下の内容です。

  • 収入印紙代:離婚のみを求める場合は13,000円。慰謝料などを請求する場合は、その金額に応じて加算
  • 郵便切手代(予納郵券):裁判所により異なるが数千円程度

弁護士費用の相場と本人訴訟の現実

弁護士に依頼する場合、総額で60万円〜120万円程度が一般的な相場です。調停から引き続き同じ弁護士に依頼する場合は、裁判の着手金が減額されるプランを設けている事務所もあります。弁護士費用の内訳は以下のとおりです。

項目 内容 目安額(税込)
着手金 事件依頼時に支払う固定費 30万〜60万円
成功報酬 離婚成立時や条件獲得時に支払う 30万〜60万円
経済的利益 獲得した慰謝料や財産分与額の割合 10%〜20%
日当 裁判所への出廷1回ごと 1回3万〜5万円

法的には、弁護士を立てずに自ら裁判を進める本人訴訟も可能ですが、現実的には極めて困難です。裁判では準備書面や上申書といった専門的な書類を、法的なルール(民法や家事事件手続法)に則って作成・提出し続ける必要があります。法律知識のない個人がこれらを独力で行うと、適切な反論や立証ができずに、本来得られたはずの有利な判決を逃してしまうリスクが高いです。そのため、多くの当事者は弁護士に依頼する道を選択します。

離婚裁判を有利に進めるための証拠収集術

裁判官は、客観的な事実に基づいて判断を下します。有利な結果を得るためには、質の高い証拠をどれだけ揃えられるかが重要です。

不貞行為の証明

配偶者の不貞行為を証明するのに有効な証拠は以下のとおりです。

  • ラブホテルへの出入りを記録した写真、動画(滞在時間がわかるもの)
  • 肉体関係を明確に示すメール、LINE、SNSのやり取り
  • クレジットカードの利用履歴やホテルの領収書
  • 探偵事務所による調査報告書

DV・モラハラの証明

  • 怪我の部位を撮影した写真
  • 医師による診断書(受傷原因がDVである旨を記載してもらう)
  • 暴言を録音したデータや動画
  • 被害の詳細を記録した日記やメモ(日付と状況を具体的に記す)
  • 警察や相談機関への相談記録

相手が離婚裁判で嘘をついている場合の対処法

裁判において相手方が事実と異なる主張をすることは少なくありません。嘘を暴くための戦略が必要です。

客観的証拠で反論する

配偶者が不貞行為を働いた証拠に対し、その日は家にいたなどと嘘をつけば、出張の領収書や他所でのGPS記録、LINEの送信履歴などで矛盾を指摘します。

主張の矛盾を指摘する

準備書面や尋問での発言を時系列で整理し、相手の主張に矛盾がある点を指摘します。また、尋問において、あえて小さな事実から認めさせ、逃げ場をなくした上で核心部分を問う手法を使うと有効です。
なお、民事裁判の当事者本人が嘘をついても偽証罪に問われることは極めて稀ですが、宣誓後に虚偽を述べた場合には過料という制裁が科される可能性があります。何より、一度嘘をつく人だと裁判官に判断されると、他の全ての主張の信用性が失われるため、誠実に臨むことが最終的には有利に働きます。

離婚裁判における親権争いと共同親権の導入

子どもがいる場合の裁判では、裁判官だけでなく家庭裁判所調査官という専門家が重要な役割を果たします。

家庭裁判所調査官の役割

家庭裁判所調査官は心理学や社会学の知識を活かし、以下の調査を行います。

  • 家庭訪問:子どもの生活環境や安全性を確認する
  • 子どもとの面談:子どもの意向や本心を把握する
  • 学校・保育園への照会:園や学校での様子を確認する

裁判所は、どちらの親がより優れているかではなく、どちらと暮らすことが子どもの利益(福祉)にかなうかを基準に親権を決定します。調査官が作成する調査報告書は、裁判官の判断に極めて大きな影響を与えます。

共同親権の導入について

2024年に成立した改正民法により、2026年4月1日から離婚後の共同親権が導入されます
これまで日本では、離婚後はどちらか一方が親権を持つ単独親権のみでしたが、今後は協議または裁判所の判断により、父母双方が親権を持つ共同親権を選択することが可能になります。裁判所が共同親権を認めるかどうかの判断基準には、以下の点が考慮される見込みです。

  • 父母間の意思疎通の可能性(最低限の連絡ができるか)
  • DVや虐待の有無(これらがある場合は原則として単独親権)
  • これまでの監護状況や子どもの意向

すでに単独親権で離婚している場合でも、施行後に親権者変更の申し立てを行うことで、共同親権に切り替えられる可能性があります。これからの離婚裁判の流れにおいて、親権のあり方はより複雑かつ重要な議論となるでしょう。

まとめ

離婚裁判の流れは複雑で、法律の専門知識だけでなく、長期戦を勝ち抜くための戦略と精神的なタフさが求められます。
弁護士に依頼することで、煩雑な書面作成や裁判所への出廷を任せられるだけでなく、客観的な見通しに基づいたアドバイスを受け、不利な条件を押し付けられるリスクを回避できます。正しい知識を備え、適切な準備を行うことで、離婚裁判は終わりではなく、あなたらしい新しい人生への始まりとなるはずです。
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