配偶者の不倫相手との示談では、口外禁止条項を盛り込むことが多いでしょう。
口外禁止条項とは、以下のように不倫の内容や解決に至る経緯などを第三者に口外しないことを約束する条項です。
(口外禁止条項)
甲及び乙は、本契約書の内容について、第三者に対し一切口外しないことを約束する。
「少しくらい家族や友人に話しても大丈夫ではないか。」
「実際に口外して、損害賠償を請求されるなんてことはあるの?」
示談の内容を第三者に口外した場合、どうなるのでしょう?
この記事では、口外禁止条項+違約金の定めがあるケース、口外禁止条項のみのケース、口外禁止条項を入れていないケースの3つのパターン別にご紹介しています。口外禁止の対象となる第三者の範囲や示談成立前に口外した場合についても解説しますので、ぜひ参考にしてください。
目次
示談書に口外禁止条項を入れたのに第三者に口外した場合どうなる?
示談書に口外禁止条項を入れたのに第三者に口外した場合は、不倫相手から損害賠償請求をされる可能性があります。以下、示談書の内容別に見ていきましょう。
口外禁止条項+違約金の定めがある場合
口外禁止条項+違約金の定めがある場合は、損害賠償請求をされる可能性があります。
口外禁止条項の違反があったことが立証された場合には、違約金を請求される可能性が高いでしょう。
「口外したことはバレないのでは?」と考える人もいるかもしれません。
たしかに、口外禁止に違反したことを立証するのは難しいです。例えば、あなたの友人が示談の内容を知っていた場合であっても、あなたが友人に話したことを証明できなければ、口外禁止に違反したことの立証にはなりません。
しかし、口外禁止に違反したことの立証ができれば違約金が請求される可能性は高いでしょう。
口外禁止条項のみの場合
口外禁止条項のみの場合でも、損害賠償請求をされる可能性があります。
「違約金の定めがないから、損害賠償を請求されないだろう。」と思っている人もいるかもしれませんが、そうではありません。
違約金の定めがない場合であっても、口外禁止条項に違反したことを理由に損害賠償請求が可能です。なぜなら、口外禁止条項の違反が契約違反に該当するからです。
では、なぜ、わざわざ違約金を定めておくことが多いのかというと、違約金を定めておくことで、損害額の立証をする必要がなくなるからです。
損害賠償請求をする場合、損害賠償請求をする側は、相手方に口外禁止条項の違反があったことに加えて、損害額の立証をしなければいけません。損害額の立証とは、相手方の違反によって自身に発生した損害の程度を証明することです。
あらかじめ違約金を定めておけば、損害額の立証をしなくても、示談書で合意した違約金の請求が可能です。
したがって、口外禁止条項のみの場合には、口外禁止条項の違反があったことに加えて、損害額の立証ができれば、損害賠償を請求される可能性はあるでしょう。
口外禁止条項を入れていなくても損害賠償請求される可能性も
口外禁止条項を入れていなくても損害賠償請求される可能性があります。
口外禁止条項がないからと言って、何でもかんでも第三者に言いふらしていいわけではありません。
不貞が事実であっても、相手の名誉を傷つける発言があった場合には、名誉毀損の罪に問われる可能性や、損害賠償請求される可能性があります。不倫をされたことで許せない気持ちを抱くことは当然です。
ですが、感情のままむやみやたらに第三者に口外することは避けましょう。
口外禁止の対象となる第三者の範囲は?
口外禁止の対象となる第三者の範囲は、示談をした当事者以外の第三者です。
あなたと不倫相手の二者間で示談した場合には、不倫相手以外が対象です。
あなたと不倫相手、あなたの配偶者の三者間で示談した場合には、不倫相手とあなたの配偶者以外が対象です。
友人や職場の人はもちろん、不特定多数の人が閲覧可能なSNSも対象です。
厳密にいえば、あなたの両親も含まれますが、相談をしたり、経過を報告したりすることもあるでしょう。両親等の近しい間柄の場合には、事細かに話さなければ、損害賠償請求まで発展する可能性は低いでしょう。
ただし、不倫相手を特定できる情報はできるだけ避ける、話した相手に対して他の人に口外しないようにしてもらう等の対策はした方が良いでしょう。
示談成立前に口外した場合は?
示談成立前に口外した場合は、対象外です。
示談書の効力は、示談書に署名押印した時に発生します。
ただし、名誉毀損に該当する場合には、示談成立前でも損害賠償請求される可能性があります。
まとめ
「不倫の意実を不倫相手の周囲の人間にも知らせてやりたい。」
「SNSで不倫の詳細を発信したい。」
示談が成立しても、不倫相手に対する怒りの感情を鎮めるのは難しいですよね。
しかし、せっかく示談が成立して慰謝料も獲得できたのに、示談の内容を口外することで、あなたが損害賠償を請求されてしまうことにもなりかねません。
示談が成立した以上、第三者に口外することはしないようにしましょう。