配偶者が同性と不倫!?同性間の不倫も不貞行為と認められる?

  • 最終更新日: 2024.09.17

配偶者の言動に違和感を覚えたことがきっかけで、不倫が明るみに出るケースは少なくありません。配偶者が不倫していた事実に加え、不倫相手が配偶者と同性であることが発覚すると、大きな衝撃を受けることでしょう。

この記事では、配偶者が同性と性的関係を持った場合も不貞行為になるか同性間の不倫で慰謝料が認められるか等について解説します。

性の多様性への理解や認知が求められる中で、裁判所の考え方も変化してきています。配偶者が同性と不倫していた場合も泣き寝入りすることなく、納得のいくけじめをつけていただければ幸いです。

配偶者が同性と不倫!?同性と性的関係を持った場合も不貞行為になる?

配偶者が同性と性的関係を持った場合、不貞行為と認められる可能性があります。

性的関係には挿入行為を伴う性行為だけでなく、裸で抱き合う、性器を触り合う等の性交類似行為も含まれます。そのため、体の構造上挿入行為ができない同性間であっても、性交類似行為があった場合、不貞行為と認められる可能性があります

同性間の不倫が不貞行為と認められるかどうかについて、以下で詳しく解説します。

従来は同性間の不倫は不貞行為に含まないと考えられていた

従来は、同性間の不倫は不貞行為に含まないと考えられていました。

最高裁判所は、民法の離婚原因としての不貞行為の定義について、以下のとおり判示しています。

不貞な行為とは、配偶者のある者が、自由な意思にもとづいて、配偶者以外の者と性的関係を結ぶことをいい、相手方の自由な意思にもとづくものであるか否かは問わない

参照:最高裁判所昭和48年11月15日判決| 裁判所 – Courts in Japan

実のところ、この判例では不貞行為の相手が異性か同性かには触れられていませんが、民法の離婚原因としての不貞行為には同性との行為が含まれず、配偶者の同性愛行為を理由として離婚を求める場合、770条1項5号のその他婚姻を継続し難い重大な事由として訴えを提起しなければならないと考えられてきました。

この考え方を基礎とし、不貞行為は異性間における性行為または性的類似行為を意味すると考えられていました。

同性間の不倫も不貞行為と認める判例が出現した

多様化する性的マイノリティへの対応が求められる中、同性間の不倫も不貞行為と認める判例が出現しました。

同性同士の間で行った性行為類似行為が不貞行為に該当するとした判例を紹介します(東京地方裁判所令和3年2月16日判決)。

原告が、インターネットの出会い系掲示板を通じて原告の妻と知り合った女性に対して、原告の妻と不貞行為をしたとして慰謝料を求めた事案です。

裁判所は、不貞行為は、婚姻共同生活の平和の維持という権利又は法的保護に値する利益を侵害する蓋然性のある行為であり、性行為(陰茎の挿入行為)に限らず、夫婦共同生活を破壊し得るような性行為類似行為も含まれると判示しました。

その上で、同性間で性行為あるいはその類似行為が行われた結果として、婚姻共同生活の平穏が害される事態も想定されるとし、被告と原告の妻が行った同性間の性的類似行為が不貞行為にあたると判断しました。

このケースでは、不貞行為と相当因果関係のある損害として、慰謝料10万円のほかに弁護士費用1万円が認められました。

不貞行為に該当しなくても同性間の不倫で慰謝料が認められる可能性はある

不貞行為に該当しなくても、同性間の不倫で慰謝料が認められる可能性はあります

同性間の不倫によって不法行為が成立するとして、慰謝料の支払いを命じた判例があるためです。

不貞行為に該当しなくても、同性間での性的行為や友人関係を超えた親密な関係が婚姻生活の平穏を害したと評価できる場合には、不法行為に基づく慰謝料を請求できる可能性があります。

同性間の不倫によって不法行為が成立するとして慰謝料が認められた、2つの判例を紹介します。

名古屋地方裁判所平成29年9月15日判決

女性である被告が原告の妻と不貞行為を行った上、原告からの示談の申し入れに対して不誠実な対応をとったとして、不法行為にもとづく慰謝料の支払いを求めた事案です。

裁判所は、同性の者でも、既婚者であることを知りながら肉体関係を有することは、社会的相当性を逸脱した違法な行為であって不法行為と評価すべきであると判断しました。

示談金を提示するなどした被告の交渉対応については、不法行為に該当するとまで評価すべき特段の事情があったとは認められないとした上で、被告に対し、慰謝料100万円の支払いを命じました。

このケースでは、不法行為と相当因果関係のある損害として、慰謝料のほかに弁護士費用10万円が認められました。

東京地方裁判所平成16年4月7日判決

原告の妻である被告が同性愛に陥り、長期間にわたって夫との同居を拒絶したことで精神的損害を被ったとして、不法行為にもとづく慰謝料の支払いを求めた事案です。

裁判所は、被告が同性愛に走り、長期間にわたって原告との同居を拒絶したほか、原告が家族のために購入し、現に長女と長男の2人の家族が同居している自宅に、被告が同性愛の恋人を住まわせて家族関係を決定的に崩壊させた事実は、社会通念上の限度を超えたものであり、違法なものと判断しました。

以下の事情を酌量しても、被告の違法行為は相当程度重いものといわざるをえないとし、被告に対し、慰謝料350万円の支払いを命じました。

  • ことの発端は原告のオーストラリア赴任であること
  • 原告自身も妻である被告の精神的ストレスを的確に把握してサポートすることができなかったこと
  • 被告の生活状況 など

上記の2つの判例のように、同性間での性的行為や友人関係を超えた親密な関係が婚姻生活の平穏を害したと評価できる場合には、不法行為と評価され、慰謝料請求が認められるケースもあります。

同性間の不倫で慰謝料が認められるかどうかは、不貞行為に該当するかどうかが全てではありません。

同性間の不倫の慰謝料の相場は?

同性間の不倫の慰謝料の相場は、まだ裁判例が少ないため、事前に決めるのが難しいといえます。

不倫慰謝料は、不倫の期間・回数や婚姻期間、夫婦間の子どもの有無など、さまざまな事情を考慮して判断されます。

同性間の不倫であっても判断基準は変わらないため、異性間の不倫に比べて著しく金額が減少することはないと考えられます。

異性間の不倫の慰謝料の相場については、「不倫(不貞行為)の慰謝料相場と過去の判例」をご参照ください。

配偶者の同性不倫が発覚した場合の対処法

配偶者の同性不倫が発覚した場合の主な対処法として、以下の3つが挙げられます。

  • 感情的にならないよう心がける
  • 同性不倫の証拠を収集する
  • 婚姻関係を継続するか離婚するか検討する

以下で詳しく紹介します。

感情的にならないよう心がける

配偶者の同性不倫が発覚したら、感情的にならないよう心がけましょう

既婚者であるにもかかわらず配偶者が同性と性的関係を持っていることが判明したら、取り乱してしまうのも無理もありません。

同性愛者であることを隠して結婚したのだろうか、結婚後にセクシャリティが変化したのだろうか等、答えも出ないのに考え続けてしまうことも考えられます。
大きな不安やストレスを抱え配偶者を問い詰めてしまいがちですが、感情的に行動すると、事態をより悪化させることになりかねません。

夫婦関係を修復したいのに離婚を切り出してしまったり、暴言を吐いてしまい不利な状況に追い込まれたりするおそれがあります。
配偶者の同性不倫が発覚したら、冷静な対応を心がけましょう。

同性不倫の証拠を収集する

配偶者の同性不倫が発覚したら、同性不倫の証拠を収集しましょう

不倫の証拠がなければ、配偶者や不倫相手に言い逃れをされる可能性が高いためです。
同性同士の場合、2人きりでホテルに宿泊したからといって、性的関係を持ったと推認される可能性は低いといえます。

同性同士で性的関係を持ったことが分かる、以下のような証拠があるといいでしょう。

  • 性的関係を持ったことが分かるLINEやメールのやり取り
  • 性的関係を持ったことが分かるドライブレコーダーの音声や動画
  • 裸で抱き合っている写真や動画

ホテルに2人きりで出入りする写真やホテルの領収書等、同性同士で性的関係を持ったと推認できるとはいえない証拠であっても、複数を組み合わせることで有力な証拠となる場合もあります。

同性不倫の証拠となり得るものは、できるだけ多く集めておくことをお勧めします。

婚姻関係を継続するか離婚するか検討する

配偶者の同性不倫が発覚したら、婚姻関係を継続するか離婚するか検討しておきましょう

同性不倫をした配偶者を受け入れて今後も婚姻関係を継続するか、離婚して新たな生活をスタートさせるかにより、今後の対応が大きく異なります。

今後の生活や子どもへの影響等を総合的に考慮し、配偶者との今後の関係を決めましょう

まとめ

配偶者が同性と性的関係を持っていることが発覚したら、誰にも相談できず、ひとりで抱え込んでしまうケースも少なくありません。
不倫相手が配偶者と同性であっても、慰謝料が認められる可能性があります。まずは落ち着いて、同性不倫の証拠を収集しましょう。

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