不倫相手が、あなたの配偶者に対して慰謝料を支払った場合、その後で、あなたに対して支払った慰謝料の一部を請求してくることがあります。これを求償権の行使と言います。
「不倫相手から求償権を行使された場合に、これを拒否できるのか?」「求償権を行使されないためにはどうしたらよいのか?」
この記事では、主に次のことについて解説しています。
- 不倫相手から求償権を行使されたら拒否できるか?
- 求償権の行使・拒否のトラブルを回避するための3つのポイント
ぜひ参考にしてください。
目次
不倫相手から求償権を行使されたら拒否できる?
不倫相手から求償権を行使された場合、原則拒否できません。
しかし、次の2つの場合には拒否できる場合があります。
- 不倫相手が求償権の放棄に合意した
- 既に配偶者に対して慰謝料を支払った
以下、詳しく見ていきましょう。
原則拒否できない
不倫相手から求償権を行使された場合、原則拒否できません。
不貞をしたあなたと不倫相手は共同で不貞慰謝料の支払い義務を負っています。共同でした不法行為に対しては、共同で責任を負わなければならないということです。
あなたの配偶者が不倫相手にのみ慰謝料を請求し、不倫相手がそれに応じて慰謝料全額を支払った場合、共同でした不法行為の責任の全部を不倫相手が負担しています。この場合には、不倫相手にはあなたに対して、あなたの責任部分を請求する権利(求償権)がありますし、あなたには自らの責任部分を負担する義務があります。
不倫相手から電話やメール、LINE等で連絡が来ている場合には、これを無視し続けてしまうと、最終的に裁判を起こされる可能性があります。
無視し続ければ支払いを免れるだろうと安易に考えることはやめましょう。
既に求償権を行使されている場合には、支払いの義務があるか否かに関わらず、何らかのアクションを取る必要がありますから、早めに弁護士に相談することをおすすめします。
拒否できる2つのケース
不倫相手から求償権を行使された場合に、拒否できるケースは次の2つです。
- 不倫相手が求償権の放棄に合意した
- 既にあなたが配偶者に対して慰謝料を支払った
不倫相手が求償権の放棄に合意した
不倫相手が求償権の放棄に合意したケースです。
求償権の放棄とは、求償権をあらかじめ放棄することです。
求償権の放棄に合意した場合には、不倫相手はあなたに対して求償権を行使できません。
既に求償権の放棄の合意をしているか確認しましょう。その際には、必ず示談書等の書面を確認しましょう。
既にあなたが配偶者に対して慰謝料を支払った
既にあなたが配偶者に対して慰謝料を支払ったケースです。
例えば、上の図のように、不貞の慰謝料の適正額が200万円で、あなたと不倫相手がそれぞれ100万円ずつ慰謝料を支払っている場合(責任割合は半々とする。)には、求償権はどちらにも発生しません。
求償権は、不貞をした2人のどちらかが責任部分を超えて金銭の負担をしている場合に限り発生する権利です。
あなたが既に配偶者に対して慰謝料を支払っている場合には、それを証明できる資料等を提示しましょう。
求償権の行使・拒否のトラブルを回避するための3つのポイント
求償権の行使・拒否のトラブルを回避するためには、慰謝料交渉の段階でしっかりと話し合うことが重要です。
求償権の行使・拒否のトラブルを回避するためのポイントは、次の3つです。
- 慰謝料の示談交渉は三者間で行う
- 適正な慰謝料額と負担割合についての認識を共有する
- 合意内容は示談書に記載する
以下、詳しく見ていきましょう。
慰謝料の示談交渉は三者間で行う
慰謝料の示談交渉は三者間で行いましょう。
慰謝料請求権と求償権で、主体となる当事者が異なります。
慰謝料請求権は、慰謝料を請求した側・慰謝料を請求された側に関わる権利です。
求償権は、慰謝料請求された側・不貞をした既婚者に関わる権利です。したがって、慰謝料の示談交渉は三者間で行いましょう。
適正な慰謝料額と責任割合(負担額)についての認識を共有する
適正な慰謝料額と責任割合(負担額)についての認識を共有しましょう。
求償権の放棄を合意しない場合、これらの認識にずれがあると、後に求償権を巡るトラブルが生じる可能性が高くなります。
例えば、上の図のように、適正な慰謝料額が250万円で、負担額はあなたが150万円、不倫相手が100万円であることが話し合いで決まったとします。そのうえで、不倫相手が慰謝料100万円をあなたの配偶者に支払った場合には、求償権は生じません。
しかし、適正な慰謝料額と負担割合についての認識がずれており、不倫相手としては適正な慰謝料額が100万円でそのすべてを自分が負担し、100万円の支払いをしたと認識していた場合には、上の図のように求償権を行使してくる可能性は十分にあります。
したがって、適正な慰謝料額と負担割合については必ず認識を共有しましょう。
合意内容は示談書に記載する
合意内容は示談書に記載しましょう。
求償権は、慰謝料を請求した側・慰謝料を請求された側だけでなく、不貞をした既婚者にも影響を与えます。後で、言った・言ってないとトラブルが起きやすいのも特徴です。
求償権の放棄についての合意がされた場合には、必ずその旨を示談書に記載しましょう。
求償権放棄の条項の記載例をご紹介します。
なお、当事者の表記については次のとおりです。
- 慰謝料を請求する側(あなたの配偶者):甲
- 慰謝料を請求される側(不倫相手):乙
- あなた:丙
【例1】
乙は、丙に対する求償権を放棄する。
【例2】
乙は、第〇項の慰謝料の支払いにかかる丙に対する求償権を放棄する。
【例3】
乙は、丙に対する、本件不貞行為に基づく慰謝料支払債務に関して、求償権を行使しないことを約束する。乙が、前項に違反し、丙に対して求償権を行使したときは、乙が丙に対して請求した金額と同額を、甲に対して直ちに支払うものとする。
後にトラブルを起こさないために、求償権に関する合意内容は示談書にきちんと記載しましょう。
求償権の行使・拒否のトラブルを回避するには弁護士に相談を
求償権の行使・拒否のトラブルを回避するには弁護士に相談するのがおすすめです。
慰謝料の示談交渉を三者間で行う段階であれば、弁護士に依頼することで次のようなメリットがあります。
- 求償権の放棄を前提とした交渉をしてもらえる
- 適正な慰謝料額と責任割合について判断してもらえる
- 後日トラブルにならないよう不備のない示談書を作成してもらえる
既に求償権を行使されている場合には、弁護士に依頼することで次のようなメリットがあります。
- 求償内容に問題がないか確認してもらえる
- 拒否できる場合には法的な主張をしてもらえる
- 相手とのやり取りを全て任せられる
求償権に関する問題は、法的な知識を要することから、弁護士に依頼することで早期解決に繋がるでしょう。
まとめ
求償権を行使された場合、原則拒否できません。
ただし、求償権を放棄した場合やあなたも既に慰謝料を支払った場合には拒否できることがあります。
しかし、双方の認識が異なることで、上手く解決できないことが多いでしょう。
求償権に関しては、慰謝料の示談交渉の段階できちんと話し合いをすることで、その後のトラブルを回避できる可能性が高くなります。これから三者間で示談交渉を行う場合には、この記事で紹介した3つのポイントを参考にしてください。
求償権に関する交渉に不安がある・既に求償権に関するトラブルが生じているような場合には、一度弁護士に相談することをおすすめします。
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