不倫相手の配偶者と示談交渉中の人の中には、相手方から示談の内容に「違約金の定めを入れたい。」と言われ、悩んでいる人もいるでしょう。
違約金の定めとは、将来、約束違反があった際の損害賠償額をあらかじめ定めておくことです。
あなたとしては、もちろんきちんと守るつもりはあるでしょう。しかし、あまりに高額な違約金を定められたら、不安になりますよね。違約金を低くして欲しいと思っても、不倫をした立場であることから、なかなか言い出せない人もいるでしょう。
この記事では、不倫の違約金の相場や違約金に合意する前に確認すべきポイントについて解説しています。ぜひ参考にしてください
目次
不倫の違約金の相場は?
不倫の違約金の相場は、下表のとおりです。
不倫相手と接触をした場合の違約金は10~50万円程度
不倫相手と接触をした場合の違約金は10~50万円程度です。
実際に不倫相手と会うだけでなく、連絡を取ることも含めて禁止することが多いです。
この場合には、不貞を行っていなくても違約金を支払わなければならないことから、違約金の相場は10~50万円程度になります。
再度不貞関係に至った場合の違約金は100万円程度
再度不貞関係に至った場合の違約金は100万円程度です。
再度不貞を行ったことは違法性が高いと評価されることから、違約金も100万円程度と高くなるでしょう。
高額な違約金は無効になる可能性も
高額な違約金は無効になる可能性があります。
違約金は、原則として当事者間の話し合いで自由に決められます。
しかし、あまりに高額な違約金を定めた場合には、公序良俗に違反するとして無効になる可能性があるでしょう(民法90条)。
違約金の有効性に関する裁判例
違約金の有効性に関する裁判例について、ご紹介します。
不貞行為1回につき100万円の違約金を定めた事例
東京地裁令和3年10月28日判決は、不貞行為1回につき100万円の違約金を定めたところ、その後の違反行為(不貞行為)が6回あり、損害賠償額が600万円に上った事例です。
裁判所は、短期間に不貞行為が多数回繰り返された場合には損害賠償額が高額に上る可能性があり、著しく過大な金額であるとの評価を受ける余地がないではないとしつつも、本件違反行為による不貞行為の回数が6回であり、損害賠償額が600万円になるとしても、著しく過大であると評価することはできず、公序良俗に反して無効であるということはできないとしています。
面会や連絡等の禁止条項の違約金を1000万円と定めた事例
平成25年12月4日東京地裁判決は、面会や連絡等の接触禁止の違約金を1000万円と定めた事例です。
裁判所は、違約金額1000万円は損害賠償額として著しく過大であるというほかないとし、 面会・連絡等禁止条項に違反した場合の損害賠償額は、その態様が悪質でも、せいぜい50万円ないし100万円程度であると考えられることから、少なくとも150万円を超える部分は著しく合理性を欠き、公序良俗に反し無効であるとしています。
違約金を取り決めずに済む方法はある?
違約金を定めるには、当事者間の合意が必要なため、あなたが違約金の定めを拒否する場合には、違約金を取り決めずに済む可能性はあります。
もちろん、違約金の減額を交渉する余地もあるでしょう。
しかし、違約金の定めを頑なに拒否したり、減額を求めたりすることで、相手方が「本気で関係を断つ気がないのではないか。」「今後も不貞関係を継続しようとしているのではないか。」と考える可能性は高いでしょう。この場合には、示談交渉がスムーズに進まなくなる可能性があります。
違約金の取り決めをする際には、頑なに拒否するよりも、妥当な範囲で適正な違約金を取り決める方がよいでしょう。
違約金を取り決める際のポイントについて、次章を見ていきましょう。
違約金に合意する前に確認すべき2つのポイント
違約金に合意する前に確認すべきポイントは、次の2つです。
- 制約内容が妥当か
- 違約金が高すぎないか
以下、詳しく見ていきましょう。
制約内容が妥当か
1つ目のポイントは、制約内容が妥当かです。
違約金の前提となっている約束の内容が妥当であるかを確認することが大切です。
例えば、不倫相手との一切の接触を禁じる約束を入れたケースを考えてみましょう。
不倫相手が会社の同僚である場合には、仕事の業務に関連して接触せざるを得ないこともありますから、一切の接触を禁じる内容は妥当ではありません。この場合には、業務上やむを得ない場合を除きとするのが妥当な範囲と言えるでしょう。
違約金の前提となっている制約内容が守れる範囲であるかをきちんと確認しましょう。
違約金が高すぎないか
2つめのポイントは、違約金が高すぎないかです。
違約金が相場よりも高くないかを確認することが大切です。
3章で紹介した東京地裁令和3年10月28日判決では、再度の不貞行為が6回あったとして600万円の損害賠償が認められています。違約金の定めがなければ、おそらく600万円もの損害賠償は認められない可能性が高いでしょう。
裁判所は、当事者間で合意のあった違約金が著しく過大でない限りは、当事者の合意が有効であると判断する傾向にあります。つまり、ある程度高額な違約金でも、合意した以上は支払う義務が生じる可能性があります。
したがって、違約金が相場よりも高くないかをきちんと確認しましょう。
違約金に合意する前に弁護士に相談を
制約内容や違約金の額に納得できない場合や不安に感じる場合には、合意する前に弁護士に相談しましょう。
制約内容が妥当かどうか、違約金の額が適正かどうかは、事案によってケースバイケースなため、ご自身で判断するのは難しいでしょう。
弁護士に依頼することで、事案に沿った適正な違約金を定められます。
違約金を定める場合には、違約金の額自体の減額交渉だけでなく、違約金を定める代わりに慰謝料の減額交渉をすることも実務では多くあります。ご自身で交渉すると、不倫をした立場であることから、違約金や慰謝料の減額を言い出しづらいと感じる人が多いでしょう。相手方もスムーズに応じてくれる可能性は低いでしょう。
弁護士であれば、法的な根拠や過去の裁判例等を示し、説得力のある交渉によって、適正な慰謝料額・適正な違約金での示談が可能です。示談内容に不安がある場合には、早めに弁護士に相談することをおすすめします。
まとめ
違約金の相場は、不倫相手と接触をした場合は10万~50万円程度、再度不貞関係に至った場合は100万円程度です。
しかし、一度合意した違約金は、その額が著しく過大でない限り、相場を超えている場合でも支払い義務が認められる可能性があります。示談は、一度成立すると、その内容を変更することは原則できません。
示談交渉中に、相手方から過大な違約金を提示された場合には、早めに弁護士に相談しましょう。
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