不倫相手の配偶者から慰謝料請求をされ、無視し続けてはいませんか?
無視をしていれば相手が諦めるだろうと高をくくっていたら、それは大きな間違いです。
無視を続ければ裁判で訴えられるなど、あなた自身が背負うリスクが増え、解決への道が遠のきます。
この記事では、慰謝料請求を無視し続けたらどんな顛末が待ち受けているのか、紹介します。
目次
慰謝料請求の無視は絶対にダメ!
あなたが不倫をして、不倫相手の配偶者(以下、相手方)から慰謝料請求をされた場合、無視をしてはいけません。
なぜなら次のようなリスクがあり、結果的にあなたが損する可能性が高いからです。
- 内容証明が届く:内容証明を無視すると裁判を起こされる
- 訴状が届く:訴状を無視すると裁判に敗訴する
- 支払いの要求が届く:無視すると財産を強制執行される
次の章ではこれらのリスクについて一つずつ解説していきます。
慰謝料請求を無視し続けるとどうなるのか?
内容証明が届く:内容証明を無視すると裁判を起こされる
LINEやメール、手紙などで慰謝料を請求され無視を続けると、相手方は内容証明で慰謝料を請求してきます。そして内容証明も無視し続けるとどうなるでしょうか。
ここである女性の例を紹介します。
一部上場企業の人事課で課長職に就いているAさんは、順調に出世している人物です。
大学の同級生Bさんと不倫関係にあり、それなりに楽しんでいます。ある日Aさんは、Bさんの配偶者CさんからLINEで不倫の慰謝料請求をされました。
無視をしているとCさんはAさんに対して内容証明で慰謝料を請求してきました。それでもAさんは無視を続けた結果、AさんはCさんから裁判を起こされる可能性があります。近い将来、裁判所から訴状が送られてくるでしょう。
内容証明には通常、いつまでに回答が欲しいという期日が記載されています。その期日が過ぎ、もはや話し合いでの解決が望めないと判断すれば、内容証明を出した人は、裁判で決着をつけようと考えるのがごく自然な流れです。
訴状が届く:訴状を無視すると裁判に敗訴する
相手方が裁判を起こしてもなお無視し続けると、最終的に裁判で負ける結末になります。
先ほどの例で考えてみましょう。
Cさんの内容証明を無視し続けた結果、Aさんの自宅に裁判所から訴状が届きました。Aさんは裁判所からの通知を開封せずに放置しました。訴状には第1回口頭弁論期日は〇月〇日、そして〇月〇日までに答弁書(訴状に対して反論や主張を書いたもの)を提出するように書いてあります。
Aさんは訴状を放置したことで、これら重要な期日を見逃してしまいます。Aさんは答弁書を提出しないまま、第1回期日を迎えます。
そうなると裁判所は、Cさん(原告)が主張することをAさん(被告)がすべて認めたとみなします。被告が原告の言い分をすべて認めたのであれば、裁判所はこれ以上裁判を続ける意味はないので、弁論を終結し判決を言い渡します。
判決正本が送達された日の翌日から2週間以内に控訴しなければ、判決は確定し、Aさんは何かを主張したいと思ってもできません。よってAさんが裁判に敗訴します。
参考までに、訴状を無視し、裁判を欠席したために慰謝料の支払いが認められた過去の裁判例を紹介します。
なお、不倫(不貞行為)に基づく慰謝料(損害賠償)請求権については、損害が精神的苦痛に対するものであるため、裁判所が裁量的に金額を算定します。そのため、原告主張の慰謝料全額が必ずしも認められるわけではなく、裁判所が慰謝料として適当と認めた金額を認めることとなります。
(ケース1)東京地裁平成27年1月9日判決
訴外A(Xの妻)に夫がいることを知りながら約7か月間不貞関係を継続したYに対し、Xは不倫慰謝料500万円の支払いを求め訴訟を提起しました。Yは、Xからの連絡を一方的に絶っていたので、裁判所は公示送達によってYを呼び出しましたが、Yは口頭弁論期日に出席せず、答弁書その他の準備書面も提出しませんでした。
裁判所はXが主張した事実を判決の基礎とし、Yに対して慰謝料300万円の支払いを命じました。
(ケース2)東京地裁平成27年1月13日判決
訴外A(Xの夫)に妻子がいることを知りながら不貞行為をしたYに対し、Xが慰謝料の支払いを求めて裁判を提起しました。しかしYは口頭弁論期日に出頭せず、答弁書その他の準備書面も提出しませんでした。そのため、裁判所はYがXの主張をすべて認めたものをみなして、Xが主張した事実を基礎に判決を下しました。
XはYに対して500万円の慰謝料を請求していましたが、裁判所は諸般の事情を考慮して200万円の慰謝料を認めました。
(ケース3)東京地裁平成27年2月12日判決
訴外A(Xの配偶者)と3年以上にわたり不貞関係を継続したYに対し、Xが2000万円の不倫慰謝料の支払いを求めた裁判で、Yは口頭弁論期日に出頭せず、答弁書その他の準備書面も提出しませんでした。
裁判所はXが主張した事実を判決の基礎とし、Yに対して慰謝料300万円の支払いを命じました。
敗訴判決が下されても無視したら、財産を強制執行される
裁判で敗訴し、判決を無視したら財産を強制執行される可能性が高いです。
先ほどの例で考えてみます。
AさんはCさんが起こした裁判に敗訴したことで、慰謝料を支払わなければいけません。しかし慰謝料を支払うことに納得ができないAさんは、裁判の判決さえも無視しました。
そうなるとCさんは、Aさんの財産を差し押さえるため、裁判所に強制執行の申し立てをします。CさんはAさんの給料や預貯金を差し押さえる債権執行に踏み切り、Aさんが勤務する会社から直接お金をもらうように手続きを進めていきます。
Aさんは、不倫をしていたこと、不倫相手の配偶者から裁判を起こされたこと、それを無視したために裁判に負けたこと、すべての事実が会社にバレてしまいます。
不倫を理由に会社側はAさんを解雇することはできません。しかしAさんの不誠実な態度が、いち企業の人事課の管理職に就く者としていかがなものかと問題視されるでしょう。会社側は、Aさんに対して人事課の課長職を解くかもしれませんし、別部署に異動させる可能性もあります。その瞬間、Aさんは財産だけでなくコツコツと築いてきたキャリアも一瞬にして失うことになります。
さらに噂が広がれば、Aさんの会社内での立場はすこぶる悪くなります。上司は不誠実な態度をとったAさんに重要な仕事を任せられないと考えるでしょうし、部下は心情的にAさんの指示に従いたくないと言うかもしれません。
仕事がすべてだったAさんですが、会社にいるのが耐えられず自ら退職を選択せざるを得なくなるかもしれません。Cさんの申し出を無視し続けたことで、Aさんは、すべてを奪われる屈辱的な結果を迎えることになります。
まとめ:相手の主張を無視するのは絶対にやめよう
慰謝料請求を無視し続けるとどうなるのか、お分かりいただけたでしょうか?不倫慰謝料を請求されると驚きとともに、なぜ私だけが…という思いがよぎるかもしれません。
だからといって相手の主張を無視するのはやめましょう。
あなたが意地とプライドのために無視したことで、その先にあるのは悲惨な末路です。
そして不倫をしているなら、不倫相手の配偶者に慰謝料請求をされる可能性があることを、常に心に留めておきましょう。