更新日:2026年2月26日 (木)
公開日:2024年10月15日 (火)
慰謝料請求を無視されたら?ケース別の対処方法を弁護士が解説
サマリー
慰謝料を請求したものの、電話やメールを相手に無視されてしまい、どのように対応すべきか困っている方も多いのではないでしょうか。相手が話し合いに応じないからといって、直ちに請求を諦める必要はありません。適切な法的手続きを段階的に踏むことで、支払いを求めていく手段が用意されています。この記事では、慰謝料請求を無視された際の具体的な対処手順や内容証明郵便の活用、訴訟や強制執行の流れ、弁護士へ依頼するメリットについて解説します。
慰謝料請求を無視された場合でも法的な対処手段はある
相手が話し合いに応じない場合でも請求の権利は失われない
不貞行為やその他の不法行為によって精神的苦痛を受けた場合、加害者に対して慰謝料を請求する権利が生じます。しかし、相手に対して連絡を取ろうとしても、一切返答がなく無視されてしまうケースは珍しくありません。
話し合いに応じてもらえない状態が続くと、請求そのものを断念せざるを得ないのではないかと悩む方も少なくないでしょう。相手方としても、連絡を断ち切っておけば請求を諦めてもらえるだろうと考えている可能性があります。
相手が連絡を無視しているからといって、法的な請求権が直ちに消滅するわけではありません。適切な手順を踏んで対応を進めることが大切です。
段階的に用意されている法的な解決手続きの概要
任意の連絡(電話やメッセージなど)に反応がない場合には、まず公的な記録が残る内容証明郵便を送付し、相手方に法的な請求意思を明確に伝える手法が用いられます。
それでも相手が応じない場合は、裁判所に訴えを起こす民事訴訟の手続きへ移行することが検討されます。訴訟を起こされた相手が裁判所の呼び出しをも無視した場合には、請求側の主張がそのまま認められる判決が下される可能性があります。
判決が確定してもなお支払いが行われない場合には、相手方の給与や預貯金といった財産を差し押さえる「強制執行」という最終的な法的手段も用意されています。
相手が無視を決め込んでいる場合であっても、段階を踏んだ法的手続きを進めることで問題の解決を目指すことが可能です。
【ケース別】連絡への反応に応じた対処手順
慰謝料を請求する際、最初は電話やメール、普通郵便など手元で対応しやすい方法で連絡を試みるケースが一般的です。しかし、手軽な連絡手段は相手にとっても心理的な負担が少なく、そのまま放置されたり無視されたりしやすい傾向があります。
電話・メール・普通郵便を無視された場合:内容証明郵便の送付
電話やメールなどによる連絡が拒否されたり無視されたりした場合には、次の段階として「内容証明郵便」を活用した請求書の送付を検討することが有効です。
内容証明郵便とは、いつ、誰が誰に対して、どのような内容の文書を差し出したかを日本郵便株式会社が公的に証明してくれる郵便サービスです。一般的には配達証明も併せて付加して送付します。
内容証明郵便を利用することには、主に以下のようなメリットや法的効果があります。
- 請求を行った日時や内容を客観的な証拠として残せる
- 正式な形式で届くため、相手に対して支払いを求める本気度が伝わりやすい
- 民法上の「催告」として、消滅時効の完成を6か月間猶予させることができる(民法150条)
口頭や通常の書面では「受け取っていない」と言い逃れされるおそれがありますが、内容証明郵便(配達証明付き)を用いれば、相手に確実に請求の意思表示が到達したことを証明しやすくなります。
内容証明郵便も無視された場合:弁護士名義での請求や訴訟への移行
内容証明郵便を送付しても相手から一切連絡がない場合、本人名義でのこれ以上の任意交渉は難しい状況と考えられます。内容証明郵便自体には相手の財産を差し押さえるような強制力はありません。
内容証明郵便が無視された場合の対応としては、弁護士名義で改めて督促の書面を送付して相手の出方を見るか、裁判所へ訴訟を提起する段階へと移行していくことが一般的です。
内容証明郵便に直接的な強制執行力はないため、相手が交渉を拒絶し続ける場合は訴訟提起などの法的手続きへの移行を視野に入れる必要があります。
弁護士名義の書面が届くことで事態の深刻さを理解し、協議の席に着く相手もいますが、それでも頑なに無視を続ける場合には、裁判所に訴状を提出して法的な判断を仰ぐことになります。
裁判(訴訟)の訴状を相手が無視した場合の流れと強制執行
内容証明郵便による請求にも応じない相手に対して訴訟を提起した場合、「裁判所からの訴状も無視されるのではないか」と懸念されることがあります。実際に訴状が届いても対応しない相手も存在しますが、裁判手続きにおいては無視を続けること自体が相手にとって不利益に働く仕組みになっています。
訴状を無視して期日を欠席した場合の民事訴訟法上の効果
相手方が裁判所から送達された訴状を放置し、答弁書などの反論書面を提出しないまま指定された裁判期日を欠席した場合でも、裁判は相手を待たずに進行します。
民事訴訟法第159条においては、当事者が相手方の主張した事実を争わない場合、その事実を自白したものとみなす規定(擬制自白)が設けられています。
相手方が反論や出廷を一切放棄した場合には、こちらの請求原因事実を相手が認めたものと扱われ、請求を全面的に認める判決(いわゆる欠席判決)が言い渡される可能性が高くなります。
判決確定後の強制執行手続きと差押えの対象財産
裁判で勝訴判決(「被告は原告に対し金○○円を支払え」など)が下されると、その判決書は相手方にも送達されます。判決が確定した後も相手が自発的に支払わない場合、次の段階として強制執行の申立てを検討することになります。
強制執行とは、確定判決などの「債務名義」を取得した申立人の請求に基づき、裁判所を介して相手方の財産を差し押さえ、強制的に権利の実現を図る法的手続きです。
差押えの対象となる主な財産
- 給与(勤務先から支給される給料債権の一部)
- 預貯金(銀行等の金融機関にある預金口座)
- 不動産(土地や建物など)
- 自動車やその他の動産
相手が連絡や請求を無視し続けたとしても、確定判決を得て財産の差押え手続きを進めることで、法的な手段を通じて慰謝料を回収できる道が用意されています。
慰謝料請求の対応を弁護士に依頼するメリット
慰謝料請求を無視され続けている場合、当事者間だけで状況を打開することは容易ではありません。弁護士に対応を依頼することで、相手への心理的な働きかけや法的手続きのスムーズな進行など、さまざまなメリットが期待できます。
相手が対応を見直すきっかけになりやすい
個人からの電話や手紙を無視していた相手であっても、弁護士名義で内容証明郵便などが届くことで、事態の重大性を認識するケースがあります。
弁護士が代理人として就いたことが伝わると、「このまま放置すれば訴訟を起こされるかもしれない」という心理的な影響を与えやすくなります。
その結果、これまで無視を続けていた相手であっても態度を改め、示談交渉や話し合いの場に応じてくる可能性が高まります。
また、弁護士が交渉の窓口となるため、ご自身が相手と直接やり取りをする必要がなくなり、精神的な負担を大きく軽減できる点も利点です。
訴訟への移行や複雑な手続きの負担を軽減できる
相手が依然として話し合いに応じない場合には訴訟手続きを検討することになりますが、裁判を起こすには訴状の作成や証拠資料の収集・整理など、多くの手間がかかります。
法的な知識がない状態で書類を作成したり裁判所へ出廷したりすることは、時間的にも精神的にも大きな負担となりがちです。
弁護士に依頼していれば、訴訟提起に必要な書類の準備から裁判期日への出廷まで対応を任せられるため、日常生活への影響を抑えながら適切に手続きを進められます。
慰謝料請求を無視されてお悩みの場合は弁護士へ相談を
適切な法的手続きを選択することの重要性
慰謝料を請求したにもかかわらず相手が連絡を無視し続ける場合、当事者間でのやり取りだけで解決を目指すことには限界が生じやすいといえます。対応が進まないまま放置してしまうと、時間の経過とともに請求権の時効完成が近づく懸念もあります。
そのため、相手からの返答がない状況では、感情的な催促を重ねるのではなく、内容証明郵便の送付や裁判手続きへの移行など、法に基づいた段階的な手続きを適切に選択していくことが重要になります。
個別の状況に応じた方針の検討
どのような手段をどのタイミングで選択すべきかは、相手方の態度や手元にある証拠の内容、相手方の財産状況などによって事案ごとに異なります。再度書面を送付して交渉の余地を探るべきか、速やかに訴訟へ踏み切るべきかの判断は一律ではありません。
弁護士に相談することで、法的な観点から現状の証拠関係や見通しを整理し、将来的な強制執行の可能性なども見据えた上で、それぞれの状況に応じた進め方を検討することができます。
相手から慰謝料請求を無視されて対応にお困りの際は、一人で抱え込まずに弁護士への相談を検討し、今後の進め方を整理してみることをおすすめします。
コラム監修者
SHIZU ISHIDA
所属:東京オフィス
広島県広島市出身。青山学院大学心理学科、東海大学法科大学院卒業後、新司法試験に合格し最高裁判所司法研修所を修了。弁護士として法曹界に入り、刑事、民事、法人案件等幅広い分野の専門知識を習得。弁護士登録10年目にしてネクスパート法律事務所に入所し、現在は主に離婚事件に注力している。