不貞慰謝料は減額してもらえる?9つの減額要素と交渉方法を徹底解説

  • 最終更新日: 2024.04.12

不貞慰謝料を突然請求されたら、動揺しますよね。焦りから、早く支払わなきゃ!と考えることと思います。

不貞行為が事実ならば、謝罪の意を示し、慰謝料を支払う必要があります。しかし、請求されている慰謝料額が妥当であるとは限りません
あなたや相手の状況によっては、慰謝料の減額ができるかもしれません。

この記事では、不貞慰謝料の減額要素や減額に応じてもらうための交渉方法を解説しています。
ぜひ参考にしてください。

不貞慰謝料が減額される可能性のある8つの減額要素

不貞慰謝料が減額される可能性のある減額要素は、次の8つです。

  • 不貞行為の回数が少ない・期間が短い
  • 不貞行為により相手夫婦が離婚していない
  • 相手夫婦の婚姻期間が短い
  • 相手夫婦の間に子がいない
  • ダブル不倫である
  • 求償権を放棄する
  • 相場からかけ離れた高額な慰謝料請求がされている
  • あなたが既に社会的制裁を受けている

あなたにこれらの減額要素が当てはまる場合には、不貞慰謝料の減額交渉が可能でしょう。
不貞慰謝料の減額は、1つの減額要素に当てはまれば必ず減額されるわけではなく、複数の減額要素から総合的に判断されます
以下、詳しく見ていきましょう。

不貞行為の回数が少ない・期間が短い

1つ目は、不貞行為の回数が少ない・期間が短い場合です。

そもそも不貞慰謝料は、被害者の精神的苦痛を理由に請求できるものです。

したがって、被害者の精神的苦痛の程度によって慰謝料額が大きく変わります

不貞行為の回数が少ない・期間が短い場合は、被害者の精神的苦痛が比較的少ないことや、悪質性が低いと考えられます。

東京地裁令和元年10月3日判決では、不貞行為は1回のみであり、この関係が継続していた事実までは認められないとして慰謝料が減額されています。なお、この事案では不貞行為の前に離婚を求めていた事情も考慮されています。

したがって、不貞行為の回数が少ない・期間が短い場合、慰謝料を減額できる傾向にあります。

不貞行為により相手夫婦が離婚していない

2つ目は、不貞行為により相手夫婦が離婚していない場合です。

不貞慰謝料の支払い義務が生じるのは、平穏な婚姻生活を侵害したことにあります。

ですから、相手夫婦が離婚していない場合には、離婚した場合と比較して、その侵害の程度が低いと考えられます。

東京地裁平成4年12月10日判決では、相手夫婦が離婚していないことを理由に慰謝料が減額されています。なお、この事案では被告が退職していることにより、既に相応の社会的制裁を受けているといった事情も考慮されています。

したがって、不貞行為により相手夫婦が離婚していない場合、慰謝料を減額できる傾向にあります。

相手夫婦の婚姻期間が短い

3つ目は、相手夫婦の婚姻期間が短い場合です。

夫婦の婚姻期間が短いほど、それにより保護される利益は小さいと考えられます。

例えば、離婚後の再スタートや経済的負担も、婚姻期間が長い場合と比較すると、小さい場合が多いでしょう

したがって、相手夫婦の婚姻期間が短い場合、慰謝料を減額できる傾向にあります。

相手夫婦の間に子がいない

4つ目は、相手夫婦の間に子がいない場合です。

相手夫婦に子がいる場合、その子に対する精神的影響は大きいでしょう。両親には、その子の心や生活を保護する義務があります。

ですから、相手夫婦の間に子がいない場合には、子がいる場合と比較して、その保護する利益が小さいと考えられます。

したがって、相手夫婦の間に子がいない場合、慰謝料を減額できる傾向にあるでしょう。

ダブル不倫である

5つ目は、ダブル不倫の場合です。

あなたも既婚者である場合には、交渉で減額が可能でしょう。

どちらの配偶者にも不貞行為がばれている場合には、双方が慰謝料請求できます。この場合には、双方の被害者から双方の不貞をした当事者に対して慰謝料を請求するので、夫婦単位で見るとプラスマイナスゼロになる可能性が高いからです。

そのため、不貞された配偶者双方が慰謝料請求をしないと判断する場合があります。

したがって、ダブル不倫を材料に減額交渉してみましょう。

求償権を放棄する

6つ目は、求償権を放棄する場合です。

あなたが求償権を放棄する場合には、交渉で減額が可能でしょう。

そもそも、不貞行為をしたあなたと不倫相手は共同不法行為者に該当します。つまり、共同で不貞慰謝料の支払い義務を負っています

したがって、被害者は、あなたと配偶者双方に対して、不貞慰謝料を請求できます

この場合に、どちらか一方に慰謝料の全額を請求してもよいですし、責任の割合が半々の場合には、双方に半分ずつ請求してもよいです。
例えば、認められる慰謝料が200万円であった場合、あなたに対して200万円全額を請求してもよいですし、双方に100万円ずつ請求してもよいです。
あなたが200万円全額を支払った場合に、不倫相手には何らの支払い義務が生じないわけではありません
あなたは、不倫相手に対して、責任割合に応じた額、(責任割合が半々の場合は)100万円の支払い請求ができます。この権利を、求償権と言います。

相手夫婦が離婚しない場合、あなたが求償権の放棄をすることは相手のメリットになるでしょう。
なぜなら、あなたに対する慰謝料請求が解決しても、あなたが不倫相手に対して求償権を行使した場合、二度手間になるからです。

したがって、求償権を放棄することを材料に減額交渉してみましょう。

相場からかけ離れた高額な慰謝料請求がされている

7つ目は、相場からかけ離れた高額な慰謝料請求がされている場合です。

不貞慰謝料の金額は、過去の判例によって相場が決まっています

そのため、相場からかけ離れた慰謝料を請求されている場合には、減額できることが多いでしょう。

以下、3つのケースの相場を紹介しますので、参考にしてください。

  • 相手夫婦が離婚しない場合は50〜100万円程度
  • 不貞行為が原因で相手夫婦が別居した場合は150〜200万円程度
  • 不貞行為が原因で相手夫婦が離婚した場合は200〜300万円程度

あなたが既に社会的制裁を受けている

8つ目は、あなたが既に社会的制裁を受けている場合です。

なぜなら、不貞慰謝料は精神的苦痛の補填と考えられますが、社会的制裁の意味も含まれると考えられます。社会的制裁の内容によっては、相手の精神的苦痛が緩和されたとも考えられます。

社会的制裁には、例えば、退職せざるを得ない場合が挙げられます。

したがって、あなたが既に社会的制裁を受けている場合には、減額できる傾向にあるでしょう。

そもそも不貞慰謝料の支払い義務が生じない4つのケース

不貞行為の慰謝料を請求された場合、そもそもあなたに不貞慰謝料の支払い義務があるのかを確認しましょう。

不貞慰謝料の支払い義務が生じないケースは、次の4つです。

  • 不倫相手との肉体関係が全くないケース
  • 不倫相手が既婚者であることを知らなかったケース
  • 不倫相手に肉体関係を強制されていたケース
  • 時効が成立するケース

以下、詳しく見ていきましょう。

不倫相手との肉体関係が全くないケース

1つ目は、不倫相手との肉体関係が全くないケースです。

そもそも不貞行為とは、配偶者のある者が、自由な意思に基づいて、配偶者以外の者と性的関係を結ぶことです。性的関係には、性交渉そのものだけでなく、性交類似行為も含まれます。

したがって、不倫相手との肉体関係が全くないケースでは、不貞慰謝料を支払わずに済む可能性があります。

ただし、肉体関係がなくても、既婚者との交際として社会的妥当性の範囲を逸脱する行為がある場合には、慰謝料の支払い義務が認められることもあります。

肉体関係がない場合でも慰謝料が認められる可能性があるケースについては、「不貞行為なしで慰謝料請求された!あなたの危険度チェックと8つの裁判例」をご参照ください。

不倫相手が既婚者であることを知らなかったケース

2つ目は、不倫相手が既婚者であることを知らなかったケースです。

不貞慰謝料が請求できるのは、不貞行為が民法上の不法行為に該当するからです。

不法行為が成立するためには、加害者の故意または過失が必要です。
不倫相手が既婚者であることを知らなかった場合には、故意がありませんから、不法行為が成立しません。

したがって、不倫相手が既婚者であることを知らなかったケースでは、不貞慰謝料の支払い義務が生じません。

しかし、あなたの不注意で既婚者であることを知らなかった場合、つまり交際中の言動や態度により普通の人なら気付くような場合には、あなたに過失があったとして、不法行為が成立するので注意しましょう。

不倫相手に肉体関係を強制されていたケース

3つ目は、不倫相手に肉体関係を強制されていたケースです。

不法行為が成立するには、自分の意思で肉体関係を持っていたことが必要です。

ですから、不倫相手からの暴行や脅迫により、強制的に肉体関係を持たざるを得なかった場合には、不貞慰謝料の支払い義務が生じません。

時効が成立するケース

4つ目は、時効が成立するケースです。

不貞慰謝料の時効は次のいずれかの期間が経過すると成立します(民法724条)。

  • 不貞行為の事実及び相手を知った時から3年
  • 不貞行為があった時から20年

既に時効が成立している場合には、不貞慰謝料の支払い義務が生じません。

したがって、時効が成立しているか把握しましょう。

不貞慰謝料の減額要素がある場合の交渉の進め方

不貞慰謝料の減額要素がある場合には、次の手順で相手との交渉を進めていきましょう。

  • 相手の主張や要望を確認する
  • 減額要素を考慮した適正な慰謝料額を検討する
  • 誠実な姿勢で交渉を始める
  • 示談書を作成する

相手の主張や要望を確認する

相手の主張や要望を確認しましょう

相手が慰謝料額そのものよりも、あなたの謝罪を重視している場合もあります。

相手の提示している金額が相場と大きくかけ離れている場合もあります。

したがって、相手の主張や要望を確認し、今後の方針を検討しましょう。

減額要素を考慮した適正な慰謝料額を検討する

減額要素を考慮した適正な慰謝料を検討しましょう

あなたに当てはまる減額要素がある場合には、その減額要素をもとに適正な慰謝料を検討する必要があります。相手に減額の理由や根拠を説明する必要もあります。

ですから、減額要素がある場合には、弁護士に相談することをおすすめします。

誠実な姿勢で交渉を始める

誠実な姿勢で交渉を始めましょう

減額要素があることを理由に、強気な態度で交渉するのは絶対にやめましょう。

不貞行為が事実である場合には、相手に謝罪の意を示す必要があります。
減額できそうな事案であっても、あなたの態度によっては、相手が頑なに減額を拒否することにも繋がりかねません。

ですから、誠実な対応で交渉することが大切です。

示談書を作成する

示談書を作成しましょう

相手との交渉がまとまった場合には、示談書を作成しましょう。

書面に残すことで、今後のトラブルを回避することができるからです。

ですから、示談書を作成することをおすすめします。

不貞慰謝料の減額要素がある場合の交渉でやってはいけない3つの行動

不貞慰謝料の減額要素がある場合の交渉でやってはいけない行動は、次の3つです。

  • 相手からの慰謝料請求を無視する
  • 感情的になる
  • 言われるがまま示談書に押印する

相手からの慰謝料請求を無視する

相手からの慰謝料請求を無視しないようにしましょう

慰謝料請求を無視し続けると、裁判を起こされる可能性が高くなります。反省していないと捉えられて、慰謝料が増額するおそれもあります。

ですから、相手からの慰謝料請求は無視しないようにしましょう。

感情的になる

感情的にならないようにしましょう

相手の請求してきた慰謝料額が高額の場合、感情的になってしまうこともあるかと思います。

しかし、あなたの態度や行動によっては、あなたの立場が不利になったり、さらなるトラブルを招いたりする可能性もあります。

ですから、感情的にならずに相手との交渉を進めましょう。

相手に言われるがまま示談書に押印する

相手に言われるがまま示談書に押印しないようにしましょう

不貞行為が事実である場合、あなたは不利な立場にあります。相手が強気な態度で交渉してくる可能性もあるでしょう。

しかし、相手の要求のままに示談書に押印してしまうと、その慰謝料額が相場とかけ離れていたとしても、その内容を変更することは難しいでしょう。

双方が納得する内容がまとまるまでは、示談書に押印しないようにしましょう。

まとめ

不貞慰謝料の減額は1つの減額要素で必ず減額できるとは限りません。
減額交渉には、相手を説得できる理由や根拠を説明する必要がります。

あなた一人で減額交渉するのに不安がある場合は、ぜひ弁護士に相談してください。

ネクスパート法律事務所では、不貞問題に強い弁護士が在籍しています。不貞慰謝料を請求された方のご相談は、お問い合わせのお電話でそのまま弁護士におつなぎし、ご相談いただける場合もございます(一旦お時間をいただく場合もございます。)もちろん、ご来所いただいて、対面でご相談いただくことも可能です。

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