不貞相手の配偶者に慰謝料を支払った後で、不貞相手に求償権を行使したいと考えている人もいるでしょう。
「自分だけ全責任を負うのは納得いかない。」
不貞相手にも責任を負って欲しいと考える気持ちは分かります。
不貞をした二人は、共同で不貞慰謝料の支払い義務を負っています。
共同でした不法行為に対しては、共同で責任を負わなければならないということです。
そこで、不貞をした一方当事者が負担部分を超えて慰謝料を支払った場合には、もう一方に対して責任割合に応じた額の支払いを請求できます。この権利が、求償権です。
では、求償権を行使できない場合はあるのでしょうか?
この記事では、次の3つのケースに分けて解説しています。
- 求償権を行使できないケース
- 求償権を行使できないと勘違いしやすいケース
- 求償権を行使しても回収が難航しやすいケース
ぜひ参考にしてください。
目次
求償権を行使できない2つのケース
求償権を行使できないケースは、次の2つです。
- 求償権を放棄した
- 求償権の時効が成立した
以下、詳しく見ていきましょう。
求償権を放棄した
求償権を放棄した場合には、求償権は行使できません。
求償権はあらかじめ放棄できます。
不貞相手の配偶者との示談の際に、求償権の放棄について合意するケースも多いでしょう。
既に求償権を放棄した場合には、求償権は行使できません。
求償権の時効が成立した
求償権の時効が成立した場合には、求償権は行使できません。
求償権の時効は、原則として慰謝料を支払った日から5年です。
時効が成立しているかの判断には、専門的な知識が必要です。求償権の時効について判断が難しい場合には、弁護士に相談するのがよいでしょう。
求償権を行使できないと勘違いしやすい3つのケース
求償権を行使できないと勘違いしやすいケースは、次の3つです。
- 相手夫婦が離婚していないケース
- 示談書に接触禁止条項を設けたケース
- 自分から不貞関係を迫ったケース
以下、詳しく見ていきましょう。
相手夫婦が離婚していないケース
相手夫婦が離婚していない場合でも、求償権は行使できます。
「相手夫婦が離婚していないと、求償権は行使できないのでは?」と勘違いする人もいますが、求償権の行使に、相手夫婦が離婚しているか否かは関係ありません。
たしかに、求償権を考える際、相手夫婦が離婚しているか否かは重要なポイントです。
これは主に相手夫婦側のデメリットにあります。
相手夫婦は、離婚しない場合に求償権が行使されると、慰謝料を獲得した家計と同じ家計から求償されたお金を支払うでしょう。つまり、家計全体でみると、慰謝料の一部を求償されたお金にあてる形になります。
相手夫婦からすると、この点が、離婚していないことより生じるデメリットなるでしょう。しかし、求償権を行使する側には関係がありませんので、相手夫婦が離婚していない場合でも、求償権は行使できます。
示談書に接触禁止条項を設けたケース
示談書に接触禁止条項を設けた場合でも、求償権は行使できます。
「不貞相手との接触が禁止されているから、求償権は行使できないのでは?」と不安に思う人もいるでしょう。
しかし、求償権を行使する目的で、不貞相手と接触することは、接触禁止条項の違反にはあたらないでしょう。
求償権は、法的に認められている権利であり、求償権行使を目的とした接触は、合理的な理由があると考えられます。
したがって、示談書に接触禁止条項を設けた場合でも、求償権は行使できます。
ただし、法的には問題がなくても、不貞相手と接触することで、不貞相手の配偶者が反感を抱く可能性が考えられます。この場合には、求償権の交渉が難航するおそれがあります。
求償権の行使をスムーズに進めたい場合には、不貞相手と直接接触する前に、一度弁護士に相談するのがよいでしょう。
自分から不貞関係を迫ったケース
自分から不貞関係を迫った場合でも、求償権は行使できます。
「自分から積極的に交際していたから、求償権は行使できないのでは?」と考える人もいるでしょう。
慰謝料の負担割合は原則として当事者間の合意で決まるため、どちらが交際を主導していたかは、負担割合に影響を与えます。
しかし、交際を主導した側に全責任があると考えられることは少なく、不貞をした以上は、もう一方当事者にも責任があると考えられます。さらに裁判では、配偶者を持つ不貞当事者側の責任が重いと判断される場合も多くあります。
不貞行為は、共同でした不法行為である以上、あなたが交際を積極的に迫った場合でも、不貞相手にも少なからず責任はあることから、求償権は行使できるでしょう。
求償権を行使しても回収が難航しやすい2つのケース
求償権を行使できないわけではないが、求償権を行使しても回収が難航しやすいケースは、次の2つです。
- 相手にお金がないケース
- 相手も慰謝料を支払ったと主張しているケース
以下、詳しく見ていきましょう。
相手にお金がないケース
相手にお金がない場合には、求償権を行使しても回収が見込めない可能性があります。
不貞相手にお金がない場合、求償権を行使する旨を伝えても、任意に支払いに応じてくれる可能性は少ないでしょう。
この場合には、不貞相手に対して訴訟を提起します。裁判によって、不貞相手に対する求償が認められ、勝訴判決が得られても、不貞相手にお金がなければ、結局回収はできません。
したがって、不貞相手にお金がない場合には、求償権を行使しても回収できない可能性が高いでしょう。
相手も慰謝料を支払ったと主張しているケース
相手も慰謝料を支払ったと主張している場合には、求償権を行使しても回収が難しいでしょう。
不貞相手も慰謝料を支払ったと主張している場合、まずはその証拠の提示を求めると良いでしょう。
あなたとしては、慰謝料全額の負担をしていたつもりでも、不貞相手も同等の慰謝料を支払っていた場合には、求償権を行使しても回収が難しいでしょう。
求償権を行使する場合の流れ
求償権を行使する場合の流れについて解説します。
相手に対して求償権を行使する旨を伝える
相手に対して求償権を行使する旨を伝えましょう。
連絡手段に決まりはありませんから、電話やLINEで伝えるのもひとつの方法です。不貞相手が無視をする可能性がある場合には、内容証明郵便を送るのがおすすめです。
内容証明郵便には、いつ・誰に対して・どのような内容の書面を送ったかを日本郵便株式会社が証明してくれるという特徴があります。そのため、不貞相手に本気度が伝わりやすく、何らかのリアクションを返してくれる可能性が高くなります。
話し合いをする
相手が請求に応じた場合には、話し合いをしましょう。
基本的には、不貞相手と直接会って話すことになるでしょう。
慰謝料請求の示談の際に、不貞相手との接触を禁止する旨の合意をした場合には、不貞相手の配偶者に反感を買われる可能性が考えられますから、慎重に行動しましょう。
再びトラブルが生じる可能性を少しでもなくしたい場合には、弁護士への依頼を検討しましょう。
話し合いがまとまらない場合には訴訟提起する
話し合いがまとまらない場合には訴訟提起しましょう。
話し合いがまとまらない場合には、訴訟で金銭の獲得を目指します。
まとめ
求償権を行使できないケースは、次の2つです。
- 求償権を放棄した
- 求償権の時効が成立した
求償権を行使する場合、まずは相手との話し合いによる交渉を目指すことになるでしょう。ご自身ですべて対応することに不安がある場合には、一度弁護士に相談することをおすすめします。
ネクスパート法律事務所では、不貞問題に強い弁護士が多数在籍しています。
初回の相談は30分無料ですので、ぜひ一度ご相談ください。