結婚した夫婦は法律上、同居して互いに協力し合う義務があります。
しかし、夫婦それぞれの事情によって、別居を選択する場合もあります。
今回は、別居中に夫婦のどちらかが不貞行為をしたら慰謝料請求ができるかどうかについて解説します。
目次
別居とはどのような状態か
ここでは、別居とはどのような状態なのか、解説します。
別居とは、夫婦が離婚せずに別々の家で生活している状態です。
離婚を前提とした別居もあれば、夫婦のどちらかが仕事や両親の介護を理由に、単身で別の場所に住むこともあります。
別居は婚姻関係の破綻にあたるのか?
ここでは、別居は婚姻関係の破綻にあたるかどうかについて解説します。
婚姻関係の破綻とは、夫婦に婚姻を継続する意思がなく、共同生活を回復する見込みがない状態を指します。
一般的にどのような状況で夫婦が別居することになったのか、どのぐらいの期間別居しているかによって、婚姻関係が破綻しているかどうか判断されます。
双方が離婚を前提に別居した場合
夫婦双方が、離婚することに合意して、別居を開始し、離婚に向けて具体的な手続きを進めている場合は、婚姻を継続する意思がなく、共同生活を回復する見込みがない状態と解されるでしょう。
夫婦のどちらにも責任がない長期間の別居の場合
性格の不一致による別居など、夫婦のどちらにも責任がない別居が長く続くこともあります。別居期間が長期に及ぶ場合は、婚姻関係の破綻が認められることがあります。別居状態が長く続くと夫婦関係は次第に形骸化していくと考えられているからです。
最近の判例では、別居に至った経緯などを踏まえて3年から5年程度の別居期間がある場合、婚姻関係が破綻しているものとして、離婚が認められた事例も多く見られます。
ただし、◯年の別居期間があれば、必ず婚姻関係の破綻が認められるという絶対的な基準はありません。裁判実務では、別居期間が夫婦の年齢および同居期間との対比において相当の長期間に及んでいるかどうかや、別居期間中に夫婦間で交流があったかどうかなどによって、婚姻関係の破綻の有無が判断されます。
正当な理由がある別居の場合
夫および妻が仕事や療養、家族の介護などで、家族と離れて暮らさなければいけない事情がある場合は、婚姻生活が破綻しているとはいえません。例えば、単身赴任は、離婚が視野にない別居の典型例といえます。
別居中の不貞行為で慰謝料を請求できるケースは?
ここでは、別居中の不貞行為で慰謝料を請求できる可能性があるケースについて解説します。
夫婦関係の修復を前提とした別居
夫婦喧嘩等により、冷却期間を置くために別居を選択する夫婦もいます。夫婦関係の修復を目的にした別居である場合、どちらかが不貞行為をした場合は、慰謝料請求が認められる可能性があります。
単身赴任、里帰り出産など合理的な理由のある別居
夫または妻の仕事の関係で単身赴任をしている、妻が里帰り出産で実家に帰るなど、合理的な理由のある別居中に不貞行為をした場合も、慰謝料を請求できるでしょう。
こうした別居は一時的なもので、双方に離婚の意思がない限り、婚姻関係が破綻しているとは言えないからです。
夫または妻による一方的な別居
離婚はもちろんのこと、別居も夫婦双方の合意が必要です。そのため夫または妻が一方的に家を出て、不貞行為をした場合は、婚姻関係が破綻しているとは言えないので、慰謝料請求が可能です。
別居中の不貞行為で慰謝料を請求できないケースは?
ここでは、別居中の不貞行為で慰謝料を請求できないケースについて解説します。
離婚を前提とした別居
夫婦双方が離婚に合意し、離婚に向けて準備をするために別居を開始した後は、どちらかが不貞行為をしても慰謝料請求が認められる可能性は低いです。
不貞行為が不法行為となるのは、婚姻共同生活の維持という法的保護に値する利益が侵害される場合であるため、不貞行為時に既に夫婦関係が破綻していた場合は、権利侵害の事実は生じないため、不貞行為は成立しないと解されるからです。
合理的な理由のない長期間の別居
長期間にわたり夫婦が別居している場合、婚姻関係が破綻していると評価されることがあります。別居に至った経緯等にもよりますが、概ね3年から5年の別居生活で婚姻生活が破綻していると判断されることが多いです。
ただし、別居期間が長くても頻繁に会って食事をしているなど、夫婦のコミュニケーションがとれている場合は、婚姻生活が破綻しているとはいえません。このような場合は、夫婦の一方が不貞行為をした場合、慰謝料を請求できる可能性があります。
離婚協議中、離婚調停中、離婚訴訟中の別居
夫婦の間で離婚協議をしている、もしくは離婚調停中、離婚訴訟中で別居している場合は、夫婦双方が離婚意思を有しているかどうかによって異なります。
夫婦双方が離婚に合意し、協議や調停において離婚に向けた話し合いを進めている段階では、婚姻関係が破綻していると判断されることもあるでしょう。不貞行為開始時に、既に婚姻関係が破綻していれば、慰謝料請求は認められません。
しかし、夫婦の一方が離婚を拒否し、婚姻関係の継続を求めている場合は、調停や訴訟係属下の別居でも、婚姻関係の破綻が認められない可能性があります。この場合、その期間中に不貞行為の事実があれば、慰謝料請求が認められる可能性があるでしょう。
別居中に不貞行為は証拠収集が難しい?
ここでは、別居中は、不貞行為を立証する証拠収集が難しい理由や、証拠の集め方について解説します。
証拠収集が難しい理由
配偶者や不貞相手が、不貞行為の事実を認めない場合や、訴訟で慰謝料を請求する場合には、不貞行為の事実を直接的に証明しうる証拠や、間接的に証明できる証拠を集める必要があります。
不貞行為の証拠には、以下のようなものがあります。
- 性行為中の写真や動画等
- ラブホテルに出入りしている写真や動画
- 不貞行為を認める配偶者もしくは不貞相手の音源や書面
- 親密な関係がうかがえるメールやLINEのやり取り
- ラブホテルなどの領収書
- 配偶者が利用する交通系ICカードやETCカード等
- ドライブレコーダーの映像、GPSの位置情報・移動履歴など
別居中は、これらの証拠を集めるのが難しくなることがあります。
生活を共にしていれば配偶者のスケジュールを把握しやすいため、怪しい行動を見抜ける機会がありますが、別居中は、不貞相手と連絡を取っていることや不貞行為の頻度を掴むチャンスも格段に減ります。
メールやLINEのやりとり、領収書などの証拠を手に入れる機会も同居中より少なくなります。
証拠の集め方
別居中に不貞行為の証拠を集めるには、どうしたらよいのでしょうか。一人で証拠を集めるのは困難ですし、証拠を掴もうと配偶者を尾行して気付かれると、かえって警戒されてしまいます。
別居中の不貞行為の証拠収集には、下記のような方法もあります。
探偵事務所・調査会社を利用する
探偵事務所や調査会社を利用すると、確実な証拠が手に入る可能性が高くなります。探偵事務所や調査会社の担当者は配偶者と面識がないため、尾行しても気付かれにくく、ラブホテルへ入る写真など、決定的な証拠を手に入れることが期待できます。
探偵事務所や調査会社が作成する調査報告書は、裁判になった場合、有効な証拠となります。
弁護士に相談する
弁護士は、どのようなものが不貞行為の証拠として有効であるか、ご自身が持っているものを組み合わせて不貞の事実を立証できるかなど、的確に判断できます。
どうしても証拠を集められなければ、弁護士に示談交渉を依頼するのも一つの方法です。証拠がなくても、配偶者や不貞相手が不貞行為の事実を認めれば、慰謝料を受け取れる可能性があります。
裁判での解決を図る場合は、証拠を出すタイミングなどについても的確なアドバイスが得られるでしょう。
別居中の不貞行為にお悩みの方に弁護士ができること
ここでは、別居中の不貞行為について、弁護士に相談・依頼するメリットを解説します。
損害賠償請求ができるかどうか、的確なアドバイスができる
別居中の不貞行為について慰謝料を請求できるか否かは、婚姻関係が破綻しているかどうかによって異なります。
弁護士に相談すれば、慰謝料請求の可否について的確なアドバイスが得られます。慰謝料を請求できるのであれば、具体的にどのような手続きをとればいいのか、適切な方法を示せます。
不貞行為の証拠を得る方法のアドバイスが得られる
別居中の配偶者の不貞行為を疑った場合、どのようにして証拠を得ればいいのか、弁護士なら的確にアドバイスができます。
同居でも不貞行為の証拠を得るのが難しい上に、別居中であればさらにハードルが上がります。一人でやみくもに頑張っても、相手に警戒心を抱かせてしまうかもしれませんし、違法な手段で証拠を集めると、予期せぬトラブルに発展することもあり得ます。弁護士のアドバイスに耳を傾けながら、適法に証拠を収集する方法を探りましょう。
代理人となって相手と交渉ができる
弁護士は、依頼者の代理人として、配偶者や不貞相手と交渉できます。別居中の配偶者や不貞相手と会うことは精神的なストレスになります。
弁護士が間に入ることで、精神的なストレスから解放されますし、建設的な話し合いが期待できます。
まとめ
別居中の不貞行為について、慰謝料を請求できるかどうかは、婚姻関係の破綻の有無や程度によって異なります。
ネクスパート法律事務所には、不倫・男女問題の解決実績が豊富な弁護士が多数在籍しています。
別居中の不貞行為にお困りの方は、一人で悩まずに、ぜひネクスパート法律事務所にご相談ください。