「配偶者に不倫がバレてしまい、念書を求められているけれど、どうしたらいい?」
「求められるがまま念書に署名・押印してしまったけれど、念書を無効にできない?」
この記事を読んでくださっているあなたは、このような悩みを抱えていることと思います。
不倫をしてしまった側のあなたは弱い立場にあることから、要求に応じてしまった方が良いのではないかと考えることと思います。
ですが、すぐに念書に署名・押印することはやめましょう。
念書に署名・押印するということは、その後の慰謝料請求といった問題にも大きく影響します。ですから、まずは念書の内容や効力について、しっかりと理解しましょう。
この記事では、不倫の念書の一般的な記載事項や文例、注意すべきポイントについて解説しています。ぜひ参考にしてください。
目次
不倫の念書とは?
念書とは、一般的に、後日の証拠として、念のために作成して相手に渡しておく文書を指します。
当事者双方が一定の行為を行うことに合意して署名押印を行う契約書と異なり、念書は、当事者の一方が約束した内容を記載して、他方に差し入れる場合に用いられることが多いです。
したがって、不倫の念書とは、不倫の事実を認める旨や二度と不倫をしない旨を書面に残すことで、後日の証拠とするものです。
念書の効力
念書には法的な強制力はありません。
念書に記載した内容を守らなかったからといって直ちに強制執行等の法的措置が取れるわけではありません。
ただし、念書は裁判の証拠になる場合があります。裁判の証拠として、不倫の事実を認める旨が記載された念書が提出された場合には、不倫(不貞行為)があったことを証明するひとつの強力な証拠になり得るでしょう。
念書に、二度と不倫をしない旨の記載があるにもかかわらず、不倫関係を継続していたといった事情がある場合には、その悪質性から慰謝料が増額する場合もあるでしょう。
念書の証拠としての効力については、期間の制限はありません。数年前の念書であっても、裁判の証拠として提出が可能です。
念書を書く目的
念書を書く目的は、主に次の3つです。
- 不倫の証拠を残すため
- 不倫の再発を防止するため
- 今後のトラブルを回避するため
以下、詳しく見ていきましょう。
不倫の証拠を残すため
1つ目は、不倫の証拠を残すためです。
慰謝料請求をする場合には、不倫の証拠が必要になります。しかし、不倫の決定的な証拠を集めることは簡単ではありません。
そのため、念書を作成することで、不倫の証拠のひとつとして残しておくことができます。
不倫の再発を防止するため
2つ目は、不倫の再発を防止するためです。
念書に、今後不倫相手と連絡を取らない旨や二度と不倫をしない旨を記載させることで、不倫の抑止に繋がるでしょう。
婚姻関係を継続する場合には、夫婦関係を再構築していくためにも有用でしょう。
今後のトラブルを回避するため
3つ目は、今後のトラブルを回避するためです。
不倫の事実についての言い分が、二転三転することは少なくありません。
最初は、気が動転していることから、自分に不利な内容を正直に話すことが多いでしょう。
しかし、その後話の内容を変えてくることはよくあります。不倫相手と口裏を合わせてくることも考えられるでしょう。
したがって、念書を残しておくことで、今後の話し合いのトラブルを回避できるでしょう。
一般的な不倫の念書はどんな内容?
一般的な不倫の念書は、不倫の事実を認める旨や二度と不倫をしない旨を記載します。
通常、具体的な慰謝料額についても取り決めをすることから、念書で取り決めた内容を覆すことは難しいでしょう。
不倫の念書は、不倫をされた側が事前に作成して用意していることがあります。この場合、作成者側に有利な内容で念書が作成されていることが多いです。
したがって、念書を求められてもすぐに署名・押印することは避けましょう。
以下、あなたにとって不利な材料になるおそれのある事項を含め、念書の記載事項や一般的な文例・テンプレートを見ていきましょう。
不倫の念書の記載事項
不倫の念書には、主に次のような事項を記載します。
不貞行為の事実を認める文言
具体的には、以下の表のようにいつ・どこで・誰と・どのようなについて記載します。
不倫をしたことに対する謝罪文言
不倫したことにつき反省と謝罪をする文言を入れます。
慰謝料の支払い条件(金額や支払い方法)
支払い方法については、一括払いのほか、分割払いの方法を取り決める場合があります。
不倫関係の清算をする文言
今後不倫相手と連絡や接触を行わない旨の文言を入れます。
約束に違反した場合の損害金の支払い条項
今後の不倫の再発を防止するために、再度不倫をした場合の罰則を取り決める場合が多くあります。
その他
第三者への口外禁止文言や清算条項を入れる場合があります。
配偶者の不倫相手との念書の場合、求償権放棄の条項を入れる場合があります。
★Attention★
上記のうち、清算条項以外の記載事項は、あなたにとって不利に働く可能性があります。
不倫をされた側が作成した念書にこれらの記載がある場合は、署名・押印をする前に、弁護士に相談することをおすすめします。
不倫の念書の一般的な文例・テンプレート
不倫の念書の一般的な文例を紹介します。
各文例に記された当事者の表示は、以下のとおりです。
- 甲:不貞行為をされた配偶者
- 乙:不貞行為をした配偶者
- 丙:不倫相手
不貞行為の事実
第1条(不貞行為の事実) 乙は、20○○年〇月ころから20○○年〇月ころまでの間、継続して、乙の自宅やホテルAにおいて、丙と少なくとも〇回程度の不貞行為があったことを認める。 |
謝罪
第2条(謝罪) 乙は、前条の事実を認め、甲に対して、深く謝罪する。 |
慰謝料及び支払い方法
第3条(慰謝料) 乙は、甲に対し、慰謝料○○○万円の支払い義務があることを認める。第4条(支払い方法) 【一括払いの場合】 乙は、甲に対し、前条の慰謝料につき、令和〇年〇月〇日限り、甲の指定する口座に振り込む方法により支払う。なお、振込手数料は乙の負担とする。 (振込先口座) ○○銀行○○支店 口座番号 ○○○○○○ 普通預金 口座名義 ○○○○【分割払いの場合】 乙は、甲に対し、前条の慰謝料につき、次のとおり分割して、毎月〇日限り、甲の指定する口座に振り込む方法により支払う。なお、振込手数料は乙の負担とする。 令和〇年〇月〇日から令和〇年〇月〇日まで○○万円ずつ (振込先口座)省略 |
不倫関係の清算
第5条(清算) 乙は、丙との交際を解消し、今後いかなる理由があろうと、丙と電話やメール、SNS等の手段を用いて連絡や接触を一切しないことを約束する。 |
違反した際の損害金
第6条(違反した際の損害金) 本契約書の記載事項に違反した場合は、乙は、甲に対し、違約金として○○万円を支払うものとする。 |
その他
第7条(口外禁止条項) 甲及び乙は、本契約書の内容について、第三者に対し一切口外しないことを約束する。 |
第8条(清算条項) 甲及び乙は、甲と乙の間には、本契約書に定めるもののほか、何らの債権債務がないことを相互に確認する。 |
★Attention★
上記のうち、清算条項以外の記載事項は、あなたにとって不利に働く可能性があります。
不倫をされた側が作成した念書にこれらの記載がある場合は、署名・押印をする前に、弁護士に相談することをおすすめします。
不倫の念書を求められたら注意すべき2つのポイント
不倫の念書を求められたら注意すべき点は、次の2つです。
- その場で署名・押印しない
- 念書の内容に納得できるまで署名・押印しない
以下、詳しく見ていきましょう。
その場で署名・押印しない
その場で署名・押印しないようにしましょう。
不倫の念書は、基本的に不倫をされた側が作成したものを出してくることが多いです。
突然、配偶者から念書を差し出されたら気が動転してしまうことと思います。その場を穏便に済ませようと、深く考えずに署名・押印してしまう人も少なくありません。
ですが、必ず記載内容をしっかりと確認したうえで書面・押印するようにしましょう。
その場では判断できない場合には、後日返事をすることを伝え、持ち帰るようにしましょう。
念書の内容に納得できるまで署名・押印しない
念書の内容に納得できるまで署名・押印しないようにしましょう。
念書の内容は、作成した側、つまり不倫をされた側に有利な内容になっていることが多くあります。
慰謝料額が相場と大きくかけ離れていないか、事実と異なる内容が記載されていないかをしっかりと確認しましょう。
記載内容が事実と違ったり、本当は記載内容に納得していなかったりしたとしても、念書に署名・押印をしてしまった以上、原則その内容を覆すことは難しいでしょう。
ですから、念書の内容はしっかりと確認し、納得いくまでは署名・押印しないようにしましょう。
不倫の念書に署名・押印してしまった!無効にはできない?
不倫の念書に署名・押印してしまったけれど、「慰謝料額が高過ぎる!」、「事実と異なる記載がある!」といったことから、「念書を無効にできないの?」と思う方もいるでしょう。
基本的には、念書に署名・押印してしまった場合に、その念書を無効にすることは難しいでしょう。
ただし、念書の内容や念書を作成した際の状況によっては、念書が無効になる場合もあります。
以下、詳しく見ていきましょう。
自由な意思に基づいて署名・押印した念書は、原則有効
自由な意思に基づいて署名・押印した念書は、原則有効です。
なぜなら、あなたが自由な意思に基づいて署名・押印したということは、念書の内容にあなた自身の意思で合意したと考えられます。
したがって、その内容に納得がいかなくても、念書を無効にすることは難しいでしょう。
不倫の念書が無効になる可能性のある3つのケース
不倫の念書が無効になる可能性のあるケースは、次の3つです。
- 相手が念書の無効に合意した場合
- 詐欺や脅迫、錯誤によって署名・押印させられた場合
- 公序良俗に反した内容の場合
以下、詳しく見ていきましょう。
相手が念書の無効に合意した場合
1つ目は、相手が念書の無効に合意した場合です。
例えば、経済事情が変わり、念書の金額を支払うことが困難になったので、もう少し低い金額にして欲しいといったことを相手と交渉し、相手がそれに合意してくれることもあるでしょう。
この場合には、相手の合意によって無効になる場合があります。
詐欺や脅迫、錯誤によって念書に署名・押印させられた場合
2つ目は、詐欺や脅迫、錯誤によって念書に署名・押印させられた場合です。
相手の詐欺や脅迫、錯誤によって無理やり念書に署名・押印させられた場合には、取り消せる場合があります。
民法上も、詐欺または脅迫による意思表示の取り消しを認めています。
(詐欺又は強迫)
第九十六条 詐欺又は強迫による意思表示は、取り消すことができる。
参照:民法 | e-Gov法令検索
東京地裁平成29年3月15日判決では、被告は、原告らから、本件和解契約に応じなければ、不利益を被る可能性があるとの恐怖感を感じ、本件和解契約に応じたと認められるのであって、本件和解契約は、強迫により取り消し得るものと認めるのが相当であるとしています。
この事案では、以下のような行動が相当性を欠いていると判断されました。
- 原告が被告の見知らぬ男性4人を同行させており、被告が恐怖心を抱く状況にあったこと
- 携帯電話を被告から手の届かないところに置いたこと
- 被告を解雇させることもできるが、本件和解契約に応じれば更なる攻撃はしない旨告げていること
念書の内容が公序良俗に反している場合
3つ目は、念書の内容が公序良俗に反している場合です。
例えば、慰謝料額が5000万円といったように、相場から法外にかけ離れた慰謝料額の場合は、その内容が公序良俗に反するとして無効になる場合があります。
東京地裁平成21年1月28日判決では、慰謝料500万円のほかに違約金としてその倍の金額の1000万円もの多大な金員を別途支払うことになるという違約金条項は、不貞行為による損害賠償請求という本件事案の性質に照らし、社会通念上、容認することができない不当かつ不合理な合意というほかない。結局、違約金に関する合意の限りでは、本件和解契約書は暴利行為ないし公序良俗に反しており、無効というべきであるとしています。
不倫の念書を求められたら弁護士へ相談を
不倫をしてしまった側が念書に書面・押印することは、リスクを伴う可能性もありますから、念書を求められたら弁護士に相談することをおすすめします。
念書に記載されている慰謝料額は適正か、あなたにとって不利な内容はないかを判断してもらえます。
念書を求められたら、すぐに署名・押印するのではなく、まずは弁護士に相談しましょう。
まとめ
不倫の念書についてお分かりいただけたでしょうか?
念書があることによって、その後の慰謝料請求や裁判に発展した場合に、あなたにとって不利に働くことが多いことが考えられます。したがって、念書の署名・押印は慎重に行う必要があります。
不倫の慰謝料請求をされてしまったという場合には、ぜひ一度弁護士に相談してください。
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