不倫慰謝料を請求するにあたって、事前に税金について知っておきたいですよね。
不倫慰謝料を受け取った場合、受け取った慰謝料に税金は原則かかりません。
しかし、慰謝料の受け取り方によっては、税金がかかってしまうケースもあります。
この記事では、主に次のことについて解説しています。
- 税金がかかる可能性のあるケース
- 慰謝料に税金がかかるのを防ぐ対策法
慰謝料請求を検討している場合には、ぜひ参考にしてください。
目次
不倫慰謝料に税金はかかるのか?
不倫慰謝料に税金は原則かかりません。
しかし、例外的に税金がかかる可能性のあるケースもあります。
慰謝料に税金は原則かからない
受け取った慰謝料に税金は原則かかりません。
不倫慰謝料は、不貞行為によって精神的苦痛を受けたことを理由に請求できます。
つまり、受け取った慰謝料は、精神的苦痛に伴う損害を賠償する性質があることから、あくまで損害の填補であって、利益をもたらすものではありません。
したがって、所得税はかかりません(所得税法第9条)。
国税庁のホームページにも、慰謝料などの損害賠償金は非課税である旨が記載されています。詳しくは国税庁ウェブサイトをご参照ください。
参照:No.1700 加害者から治療費、慰謝料及び損害賠償金などを受け取ったとき|国税庁 (nta.go.jp)
損害賠償の履行は贈与行為ではないことから、贈与税も原則かかりません。
例外的に税金がかかる可能性のある4つのケース
例外的に税金がかかる可能性のあるケースは、次の4つです。
社会通念上妥当な範囲を超える慰謝料を受け取った
社会通念上妥当な範囲を超える慰謝料を受け取ったケースです。
社会通念上妥当な範囲を超える部分については、実質贈与であると判断され、贈与税が課せられる可能性があります。
不倫慰謝料の額は明確な基準があるわけではありませんが、過去の裁判例に基づいて相場が決まっています。
不倫慰謝料の相場は、夫婦の離婚の有無によって、おおむね下図のように分けられます。
交際期間が長いケースや交際態様が悪質なケースなど慰謝料が増額する要素があることで、300万円以上の慰謝料の支払いを命じた裁判例もあります。
もちろん、当事者の合意があれば、相場よりも高い慰謝料額を決められます。
慰謝料の適正額はケースバイケースなので、いくら以上であれば贈与税が課税されるという明確な基準があるわけではありませんが、税務署が社会通念上相当の金額を超えていると判断した場合には、贈与税が課される可能性があるでしょう。
不貞による慰謝料であると証明できない
不貞による慰謝料であると証明できないケースです。
不貞による慰謝料であると証明できない、つまり高額な金銭のやり取りの理由を証明できない場合には、偽装を疑われる可能性があります。
例えば、慰謝料という名目を借りた税金逃れの贈与を疑われる可能性があるでしょう。
このような場合には、贈与であると判断され、贈与税が課せられる可能性があるでしょう。
慰謝料として不動産を受け取った
慰謝料として不動産を受け取ったケースです。
めったにないケースではありますが、現金による支払いが難しい場合に、慰謝料として現金ではなく不動産を譲渡する場合が考えられるでしょう。
現金の場合は、社会通念上妥当な金額であれば税金はかかりません。
しかし、不動産の場合には、その価値が不倫慰謝料として社会通念上妥当な範囲であっても、不動産を受け取った側には、不動産を取得した際に原則不動産取得税が課せられます。
不動産の所有権移転登記をする際には、登録免許税が課せられます。
慰謝料として不動産を受け取る場合には、事前に税金についてしっかりと調べておくことをおすすめします。
第三者が慰謝料を立て替えた
第三者が慰謝料を立て替えたケースです。
例えば、慰謝料請求した不倫相手に資力がなく、不倫相手が親に支払いを立て替えてもらうケースが挙げられます。
慰謝料の支払い義務があるのは、あくまで加害者である不倫相手であり、第三者である不倫相手の親には慰謝料の支払い義務はありません。
しかし、資力がない等の理由から、第三者が加害者本人に替わって慰謝料を支払うケースも多々あります。第三者による慰謝料の支払いも有効です。
第三者からあなたに直接慰謝料が支払われた場合、第三者には実質的な慰謝料の支払い義務はありませんから、第三者からの支払いは慰謝料の支払いではなく贈与であると判断され、贈与税が課せられる可能性があるでしょう。
慰謝料に税金がかかるのを防ぐ4つの対策法
慰謝料に税金がかかるのを防ぐ対策法として、次の4つが挙げられます。
- 慰謝料の相場を把握する
- 示談書等の書面を作成する
- 慰謝料は不動産等の物ではなく現金で受け取る
- 慰謝料は第三者ではなく支払い義務のある本人から受け取る
以下、詳しく見ていきましょう。
慰謝料の相場を把握する
慰謝料の相場を把握しましょう。
相場からかけ離れた慰謝料であるほど、税金がかかる可能性が高くなります。
事前にあなたの場合にはいくらが妥当であるか調べておくことが大切です。
示談書等の書面を作成する
示談書等の書面を作成しましょう。
課税を回避するためには、金銭のやり取りが不貞行為による慰謝料であることを証明できるようにしておく必要があります。
税金の問題だけでなく、後日の当事者間のトラブル防止にもなりますから、示談書等の書面は必ず作成するようにしましょう。
慰謝料は不動産等の物ではなく金銭で受け取る
慰謝料は不動産等の物ではなく金銭で受け取りましょう。
不動産等の物は各種税金がかかり、その手続きも大きな負担になるでしょう。できるだけ金銭で支払ってもらうようにしましょう。
なお、金銭授受の方法は、現金での受け取りのほか、振り込みでも問題ありません。
慰謝料は第三者ではなく支払い義務のある本人から受け取る
慰謝料は第三者ではなく支払い義務のある本人から受け取りましょう。
慰謝料の支払いのやり取りに第三者を介入させることで、税金がかかる可能性があります。
慰謝料の支払い義務のある者が、第三者に立て替えをお願いするのは問題ありません。
しかし、その場合には第三者からあなたに直接支払ってもらうのではなく、一度第三者から支払い義務のある本人に支払ってもらい、そのうえで支払い義務のある本人からあなたに対して慰謝料を支払ってもらうようにしましょう。
まとめ
慰謝料と税金の関係についてお分かりいただけましたでしょうか。
慰謝料には原則税金はかかりませんが、例外的に税金がかかってしまうこともあります。
しかし、事前に対策をすることで税金が課せられるのを回避できるでしょう。
慰謝料請求を検討している場合には、事前に税金についてしっかりと理解しておくことが大切です。