不貞慰謝料を請求するには、原則、不貞行為(肉体関係)を伴う交際が必要です。
「不貞行為がなければ、どんなことをしていても慰謝料請求できないの?」と疑問を抱くとともに、納得できない気持ちにもなるでしょう。配偶者が頻繁に異性とメールやLINEをしたり、二人だけで外泊したりしていることに悩まされている方もいらっしゃることと思います。
不貞行為がなくても、交際の態様によっては、慰謝料請求が認められる場合があります。
この記事では、不貞行為なしで精神的苦痛を理由に慰謝料請求する場合の慰謝料相場や慰謝料が認められる可能性のある6つのケースについて紹介しています。ぜひ参考にしてください。
目次
不貞行為なしでも精神的苦痛を理由に慰謝料請求できる?
不貞行為がなくても、社会一般の常識を考えて、男女の交際として明らかに逸脱した行動をしている場合には、精神的苦痛を理由に慰謝料請求が認められることがあります。
不貞行為とは、配偶者のある者が自由な意思にもとづいて配偶者以外の者と性的関係を結ぶことです。
基本的には、不貞行為があった場合に慰謝料請求が認められます。
ですが、過去の判例の中には、不貞行為がなくても慰謝料請求が認められているものがあります。
そもそも、不貞慰謝料の請求が認められるのは、夫婦の平穏な婚姻生活を侵害したことにあります。
既婚者が、配偶者以外の人と、二人きりで何十回にも渡り深夜の密会を繰り返していたことで、夫婦の間に溝ができ、婚姻生活を継続することが困難になったような場合には、たとえ不貞行為がなくても、限度を超えた交際により夫婦の平穏な婚姻生活を侵害したとして、慰謝料請求が認められる可能性があるでしょう。
不貞行為なしで精神的苦痛を理由に慰謝料請求した場合の慰謝料相場
不貞行為なしの慰謝料相場は、数十万円程度です。
不貞行為ありの慰謝料相場が、50~300万円程度ですから、不貞行為なしの場合は、比較的低い金額になる傾向があります。
しかし、不貞行為なしであっても、被害者の精神的苦痛の程度や夫婦に与えた影響の程度によっては、慰謝料が増額することもあります。
慰謝料の算出は、あらゆる要素を考慮するため、一概には言えませんが、以下のような事情がある場合には、慰謝料が増額する傾向にあるでしょう。
- 夫婦の婚姻期間が長い
- 夫婦の間に子どもがいる
- 夫婦が離婚に至った(婚姻関係が破綻した)
- 不倫相手との交際期間が長い
- 反省や謝罪がない
不貞行為なしでも精神的苦痛を理由に慰謝料が認められる可能性のある6つのケース
不貞行為なしでも精神的苦痛を理由に慰謝料請求が認められる可能性のあるケースは、次の6つです。
- キスやハグといった密接した行為がある
- 頻繁にメールやLINEでやり取りをしている
- 頻繁に不貞相手と密会している
- 結婚を前提に交際している
- 高額なプレゼントを贈りあっている
- 二人でラブホテルを利用している
以下、詳しく見ていきましょう。
キスやハグといった密接した行為がある
キスやハグといった密接した行為があるケースです。
配偶者がキスやハグといった密接した行為をしていた場合、多くの人が「不倫(浮気)している!許せない!」と考えるでしょう。
キスやハグといった行為だけでは、原則、不貞行為には該当しないと判断されます。
しかし、キスやハグといった密接した行為の頻度や回数が明らかに多いような場合や、その態様が明らかに逸脱しているような場合には、精神的苦痛を理由に慰謝料請求が認められる可能性があります。
以下の判例では、肉体関係の存在は認められないものの、キスやハグといった密接した行為により、慰謝料請求が認められています(東京地裁平成28年9月16日判決)。
不貞行為がなくても、キスやハグといった密接した行為がある場合は、慰謝料が認められる可能性があるでしょう。
頻繁にメールやLINEでやり取りをしている
頻繁にメールやLINEでやり取りをしているケースです。
単に仕事のやり取りをしているといったようなケースではなく、毎日メールやLINEを何通も送り合っており、その内容も男女の関係を匂わすような親密なものである場合には、精神的苦痛を理由に慰謝料請求が認められる可能性があります。
以下の判例では、肉体関係の存在は認められないものの、メールで親密なやり取りをしていたことにより、慰謝料請求が認められています(東京地裁平成24年11月28日判決)。
不貞行為がなくても、頻繁に愛情表現を含むメールやLINEのやり取りがある場合、慰謝料が認められる可能性があります。
頻繁に不貞相手と密会している
頻繁に不貞相手と密会しているケースです。
密会している場所や時間帯によって不貞関係が疑われるような場合には、精神的苦痛を理由に慰謝料請求が認められる可能性があります。
以下の判例では、肉体関係の存在は認められないものの、かつて不貞関係にあった相手と深夜に密会していたことにより、慰謝料請求が認められています(東京地裁平成25年4月19日判決)。
深夜に密会するなど、不貞行為があったと誤解されかねない行動によって、夫婦関係に亀裂が生じた場合には、慰謝料が認められる可能性があります。
結婚を前提に交際している
結婚を前提に交際しているケースです。
結婚を前提に交際している場合には、その行為自体が不法行為にあたるとして、精神的苦痛を理由に慰謝料請求が認められる可能性があります。
以下の判例では、肉体関係の存在は認められないものの、結婚を前提に交際していたことにより、慰謝料請求が認められています(東京地裁平成20年12月5日判決)。
既婚者と知りながら互いに結婚することを約束して交際したり、配偶者に対して別居や離婚を要求したりすると、慰謝料が認められる可能性があります。
高額なプレゼントを贈りあっている
高額なプレゼントを贈りあっているケースです。
男女間であっても、友人としてプレゼントを贈ることは珍しくありませんから、一度や二度プレゼントを渡していただけでは、慰謝料請求が認められるのは難しいでしょう。
頻繁にプレゼントを交換し合っており、そのプレゼントも高額であるといった事情から男女の関係が伺える場合には、精神的苦痛を理由に慰謝料請求が認められる可能性があります。
以下の判例では、肉体関係の存在は認められないものの、高額なプレゼントを交換したり、二人だけで旅行に行ったりしていたことにより、慰謝料請求が認められています(東京簡裁平成15年3月25日判決)。
不貞行為がなくても、高額なプレゼントを交換したり、2人きりで旅行に行ったりするなど、社会的妥当性の範囲を逸脱する行為がある場合、慰謝料が認められる可能性があるでしょう。
二人でラブホテルを利用している
二人でラブホテルを利用しているケースです。
そもそも不貞行為を理由に(不貞行為があったとして)慰謝料請求する場合であっても、不貞行為があったかどうかが確実に判明しているケースは少なく、不貞行為があったことを推認するような証拠によって、不貞行為があったことを主張・立証していきます。
二人でラブホテルを利用しているということは、たとえ本当に不貞行為がなかったとしても、社会一般的に考えて、不貞行為があったものと推認される可能性が高いでしょう。
二人でラブホテルを利用しているケースでは、不貞行為があったことによる精神的苦痛を理由に慰謝料請求できる可能性があります。
たとえ肉体関係があったとまでは認定されなくても、慰謝料請求が認められる可能性はかなり高いでしょう。
不貞行為なしで精神的苦痛を理由に慰謝料請求する場合の2つのポイント
不貞行為なしで慰謝料請求する場合には、次の2つを心がけましょう。
- できるだけ多くの証拠を集める
- 話し合いでの解決を目指す
以下、詳しく見ていきましょう。
できるだけ多くの証拠を集める
できるだけ多くの証拠を集めましょう。
不貞行為なしで慰謝料請求する場合、どのような行為で精神的苦痛を受けたかを証明する必要があります。不貞行為ありの場合と比較すると、主張・立証が難しくなるでしょう。
配偶者が異性と深夜に密会していたこと、頻繁に親密なメールやLINEをしていたこと等を客観的に証明する証拠が必要になりますから、次のような証拠をできるだけ多く集めましょう。
- メールやLINEでのやり取りの履歴
- ドライブレコーダーの会話記録
- ラブホテルに出入りしている写真や動画
- 食事やプレゼント代等の領収書やクレジットカードの明細
- 探偵の調査報告書
話し合いでの解決を目指す
話し合いでの解決を目指しましょう。
裁判で争うことになった場合には、不貞行為なしで精神的苦痛を受けたことを主張・立証する必要がありますから、慰謝料請求を認めてもらうのは簡単ではありません。
そもそもの交際自体を否定されたり、言い逃れされたりした場合には、確実な証拠がなければ、慰謝料請求自体が認められないといったことにもなりかねません。
当事者間の話し合いであれば、双方の合意次第で慰謝料額を決められます。
交渉段階では証拠の提示が必ず必要なわけではありませんから、十分な証拠がなくても相手が交際の事実を認め、支払いに応じてくれるようであれば、慰謝料を受け取れます。
話し合い次第では、相場よりも高い慰謝料額が受け取れる可能性もあるでしょう。
裁判になってしまうと、時間的にも経済的にも負担が大きくなりますから、交渉の段階で、相手側から分割払いにしたいといった要望がある場合には、多少の譲歩も検討しましょう。
不貞行為なしで慰謝料請求する場合に弁護士への依頼をおすすめする2つの理由
不貞行為なしで慰謝料請求する場合には、弁護士への依頼を検討しましょう。
弁護士への依頼をおすすめする理由は、次の2つです。
- 不貞行為なしで慰謝料請求するのはハードルが高い
- 慰謝料を獲得するには交渉が重要になる
以下、詳しく見ていきましょう。
不貞行為なしで慰謝料請求するのはハードルが高い
不貞行為なしで慰謝料請求するのはハードルが高いからです。
不貞慰謝料を請求するには、原則、不貞行為を伴う交際が必要です。
過去の判例では、不貞行為なしでも慰謝料請求が認められているケースはありますが、慰謝料請求を認めてもらうことは簡単ではありません。
弁護士に依頼することで、過去の判例をもとに、あなたのケースで慰謝料請求が認められるかどうか、慰謝料額はいくらぐらいになるかを検討してもらえるでしょう。
慰謝料を獲得するには交渉が重要になる
慰謝料を獲得するには交渉が重要になるからです。
慰謝料請求をするには、慰謝料額の算定理由やその根拠をひとつずつ示していく必要があります。これには専門的な知識や交渉のスキルが必要になります。
あなたひとりで交渉した場合には、そもそもの交際自体を否定されたり、言い逃れされたりする可能性があるでしょう。
特に、相手に弁護士がついている場合は、不貞行為なしで慰謝料請求の交渉をするのは簡単ではありません。
弁護士に依頼することで、慰謝料を獲得できる可能性が高まるでしょう。
まとめ
不貞行為なしで慰謝料請求することは、簡単ではありません。
しかし、配偶者が頻繁に異性とメールやLINEをしたり、二人だけで外泊したりしているのをただ見逃しておくのは納得できませんよね。
明らかに逸脱した交際をしている場合には、慰謝料を獲得できる可能性があります。
慰謝料請求を検討している場合には、弁護士への依頼も検討してみましょう。あなたのケースで慰謝料請求が認められるか、認められる場合にはどのくらいの慰謝料額が見込めるかを判断してもらえるでしょう。
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