不倫の解釈は人それぞれですが、法律上は、不貞行為に該当するか否か、つまり肉体関係があるかどうかが重要になります。
いくら、「これは不倫だ!許せない!」と主張しても、その行為が法律上の不貞行為に該当しなければ、法律上の離婚請求や慰謝料請求はできません。
では、法律上の不貞行為にあたる肉体関係には、どのような行為が含まれるのでしょうか?
この記事では、主に以下の点について解説しています。
- 肉体関係に該当する行為
- 肉体関係がなくても肉体関係と同視される行為
- 同性間の肉体関係
ぜひ参考にしてください。
目次
不貞行為にあたる肉体関係の定義とは
不貞行為にあたる肉体関係とは、配偶者以外の異性と自由な意思に基づいて肉体関係を結ぶことです。
肉体関係には、性行為のほか性的類似行為も含まれます。
法律的にはどこからが肉体関係あり?みんなの疑問に答えるQ&A6選
不貞行為にあたる肉体関係の定義について解説しましたが、具体的にどんな行為が肉体関係に該当するのか気になりますよね。
以下では、多くの人が疑問を抱いている6つの行為について解説しています。
キスをしたら肉体関係ありと言える?
キスをしても肉体関係ありとは言えません。
なぜなら、キスをする行為には、通常、肉体関係が伴わないと考えられるからです。
手を繋いだら肉体関係ありと言える?
手を繋いでも肉体関係ありとは言えません。
なぜなら、手を繋ぐ行為には、通常、肉体関係が伴わないと考えられるからです。
裸で抱き合う・体を触り合うだけでも肉体関係ありと言える?
裸で抱き合う・体を触り合うだけでも肉体関係ありと言えます。
肉体関係には、挿入を伴う性交渉そのものだけでなく、性交類似行為も含まれ、裸で抱き合う行為・体を触り合う行為は性交類似行為に含まれると考えられているからです。
口淫や手淫だけでも肉体関係ありと言える?
口淫や手淫だけでも肉体関係ありと言えます。
口淫や手淫も性交類似行為に含まれると考えられているからです。
肛門性交も肉体関係にあたる?
肛門性交も肉体関係にあたります。
肛門性交も性交類似行為に含まれると考えられているからです。
人工授精も肉体関係にあたる?
人工授精は肉体関係にあたるとまでは言えませんが、人工授精を理由に慰謝料請求が認められた裁判例があります。
東京地裁平成24年11月12日判決では、人工授精が不貞行為に等しいか、これを超える大きな苦痛が生じたとして、慰謝料の支払い義務を認めています。
被告はBからの精子の提供による人工授精を受けているが、人工授精は不貞行為とは外形的にも質的にも異なる要素があるとしても、Bが被告との間で自身の子をもうけるだけの関係を築き、実際にも子が生まれる可能性のある行為に及ぶことは、いわば夫婦同様の関係があるといえるのであって、婚姻共同生活の維持を求める権利を有する原告にとって、不貞行為に等しいか、これを超える大きな苦痛が生じたというべきである。
したがって、人工授精を理由とした慰謝料請求が認められる可能性があります。
肉体関係がなくても肉体関係があったと同視される行為もある!
ここまでは、行為そのものが肉体関係に該当するか否かについて解説してきました。
この章では、肉体関係そのものはなくても、肉体関係があったと同視される行為について解説しています。
肉体関係があったと同視される行為には、次の2つがあります。
- 2人でラブホテルに宿泊した
- 同棲している
以下、詳しく見ていきましょう。
2人でラブホテルに宿泊した
2人でラブホテルに宿泊した場合には、肉体関係があると推認される傾向にあります。
ラブホテルは、通常、性的な行為を行う場所として世間一般に広く認識されていますから、2人でラブホテルに宿泊した場合には、肉体関係があると推認されるでしょう。
同棲している
同棲している場合には、肉体関係があると推認される傾向にあります。
男女が生活を共にしているということは、通常、肉体関係があると推認されるでしょう。
同性間の肉体関係を不貞行為と認める判決も出現
1章で、不貞行為にあたる肉体関係とは、配偶者以外の異性と肉体関係をもつことと説明していますが、同性間の肉体関係も不貞行為であると認める判決が出ています(東京地判令和3年2月16日)。
不貞行為とは、端的には配偶者以外の者と性的関係を結ぶことであるが、これに限らず、婚姻共同生活の平和の維持という権利又は法的保護に値する利益を侵害する蓋然性のある行為と解するのが相当であり、必ずしも、性行為(陰茎の挿入行為)の存在が不可欠であるとは解されず、夫婦共同生活を破壊し得るような性行為類似行為が存在すれば、これに該当するものと解するのが相当である。そして、同性同士の間で性行為あるいはその類似行為が行われた結果として、既存の夫婦共同生活が離婚の危機にさらされたり、離婚に至らないまでも形骸化するなど、婚姻共同生活の平穏が害される事態もまた想定されるところである。本件各行為は、原告とAの婚姻共同生活の平穏を害しかねない性行為類似行為であるといえ、不貞行為に該当する。
したがって、異性間だけでなく同性間であっても、不貞行為による慰謝料請求が認められる可能性があるでしょう。
慰謝料請求には必ずしも肉体関係の存在が求められるわけではない
不法行為の成立には、不貞行為が存在することが必須ではないので、肉体関係がなくても、世間一般で許される範囲を逸脱して、既婚者と親密な交際をし、被害者に精神的苦痛を与え、婚姻関係を破綻させたような場合には、慰謝料の支払い義務が生じる可能性があります。
不貞行為とみなされる回数の規定はありませんから、たとえ肉体関係が1度のみでも不貞行為には該当します。
しかし、不貞行為が1度のみの場合は、慰謝料請求が認められない可能性もあるでしょう。
風俗店の利用も不貞行為には該当します。
不貞行為は、あくまで肉体関係であって恋愛感情の有無は影響しません。
しかし、頻回ではない風俗店の利用を理由に離婚請求した場合には、離婚が認められない可能性もあるでしょう。
まとめ
どのような行為が肉体関係に該当するのかお分かりいただけましたでしょうか。
慰謝料請求には、原則、肉体関係(性交渉・性交類似行為)が必要です。
しかし、肉体関係がなくても、被害者に精神的苦痛を与え、婚姻関係を破綻させたような場合には、慰謝料の支払い義務が生じる場合もあります。
肉体関係がある場合でも、そうでない場合でも、既婚者との交際により慰謝料を請求された場合には、早めに弁護士に相談することをおすすめします。
ネクスパート法律事務所では、不貞問題に強い弁護士が在籍しています。
仕事が忙しくて相談に行けない人や遠方にお住まいの方のためにオンライン法律相談サービスも実施しています。初回のご相談は30分無料ですので、ぜひ一度ご相談ください。