更新日:2026年8月27日 (木)
公開日:2026年8月27日 (木)
借家権割合とは?意味や調べ方と相続税評価額の計算方法における使い方
サマリー
アパートなどの賃貸物件や、貸家建付地の相続税評価額を計算する際に欠かせない要素が、借家権割合という考え方です。国税庁の財産評価基本通達に基づき、借家権割合は実務上全国一律で30%と設定されるのが一般的ですが、土地の評価においては借地権割合と組み合わせて用いる場面も存在します。この記事では、借家権割合の意味や調べ方をはじめ、具体的な評価額の計算方法、および借地権割合との違いについて解説します。
借家権割合とは
借家権割合とは、建物を借りている人(賃借人)が法的に有する権利の価値が、対象となる建物の評価額に対してどの程度の割合を占めるかを示す指標です。賃貸物件の所有者が相続税の申告に向けて評価額を算定する際、建物の本来の価値からこの割合分を差し引くことにより、賃借人の権利が存在する分だけ評価額が下がる仕組みとなっています。
第三者に賃貸している建物は、借地借家法などにより所有者が自由に使用や売却を行うことが制限される傾向にあるため、自用の建物よりも評価額が低く算定されるという考え方に基づいています。
借家権割合は、国税庁が定める財産評価基本通達などの基準に基づき、実務上は全国一律で30%として扱われることが一般的です。
原則として地域や物件の種類によって数値が変動することはなく、貸家として利用されている建物であれば、基本的に同様の割合が適用される傾向にある点が特徴です。この点は、後述する借地権割合の性質との大きな違いにもなります。
借地権割合は、土地を借りる権利の価値割合を示すものであり、地域ごとに国税庁が公表する路線価図や評価倍率表などにおいて異なる数値(おおむね30%から90%程度)が設定されています。
一方の借家権割合は建物に関する権利であり、原則として全国どこでも30%とされる点で、両者は性質や設定方法が異なる指標といえます。この違いは、貸家建付地の評価額を計算する際など、両方の割合を組み合わせて用いる実務上の場面において特に意識する必要があります。
借家権割合の調べ方と確認手順
借家権割合は、国税庁が毎年公表している財産評価基準書で確認することができます。財産評価基準書は都道府県ごとにまとめられており、路線価や借地権割合などとあわせて借家権割合の記載を確認できる仕組みになっています。
借地権割合は地域によって数値が異なりますが、借家権割合については実務上、全国的に30%とされているケースがほとんどです。そのため、実際に評価を行う際は、借家権割合は30%という前提で計算を進めることが多く、財産評価基準書上でも各地域で同じ数値が示されているのが一般的です。
ただし、税制改正等により年度や地域で記載内容が変更される可能性も否定できないため、実際に相続が開始した年の財産評価基準書を必ず確認しておくことが望ましいといえます。
確認の一般的な流れとしては、まず評価対象となる不動産が所在する都道府県の財産評価基準書のページを開き、路線価図や評価要領といった資料の中から借家権割合に関する記載を探すという手順になります。多くの場合、借地権割合の説明とあわせて借家権割合についても触れられているため、両者をセットで確認しておくと理解がしやすくなります。
なお、財産評価基準書はその年の評価に用いる資料であるため、相続が発生した年や評価を行う時点に対応した資料を参照する必要がある点にも留意が必要です。
借家権割合を使った貸家・貸家建付地の相続税評価額の計算方法
アパートやマンションなど賃貸用の建物である貸家を相続税評価する場合、原則として固定資産税評価額に対して借家権割合と賃貸割合を反映させ、評価額を減額する仕組みが採用されています。貸家における具体的な評価額の計算式は次のとおりです。
貸家の評価額=固定資産税評価額×(1-借家権割合×賃貸割合)
この計算式からわかるように、借家権割合が実務上30%であっても、満室ではなく賃貸割合が低い状態であれば、評価額を減額する効果は小さくなる傾向があります。賃貸割合は、対象となる建物の中で実際に賃貸に供されている部分の割合を指し、各独立部分の床面積の合計を基準として算出するのが実務上の一般的な考え方です。
空室がある場合、その空室部分は原則として賃貸割合に含めることができず、評価額を下げる効果が及びにくくなります。ただし、空室期間が1か月程度であるなどの一時的な空室であり、退去後すぐに次の入居者を募集していたなど、実質的に継続して賃貸の用に供されていたと認められる客観的な事情がある場合には、例外的に空室期間中も賃貸されていたものとして扱われる余地があるとされています。
次に、アパートなどの貸家が建っている土地(貸家建付地)の評価額を計算する場合は、原則として自用地としての評価額に対し、借地権割合と借家権割合、および賃貸割合を組み合わせて反映させます。貸家建付地における具体的な計算式は次のとおりです。
貸家建付地の評価額=自用地評価額×(1-借地権割合×借家権割合×賃貸割合)
この式では、土地そのものの評価額(自用地評価額)を基準に、借地権割合と借家権割合を掛け合わせた分だけ評価額を引き下げる形になっています。前述のとおり借地権割合は地域によって異なる数値が設定されているため、対象となる土地の割合を路線価図などの財産評価基準書で正確に確認したうえで計算を行う必要があります。
賃貸割合の厳密な判定や一時的な空室期間の扱いは、実際の賃貸借状況や契約内容などの個別事情によって税務上の判断が分かれる部分でもあるため、計算の前提となる賃貸借契約書や入居状況の記録といった資料を整理しておくことが、適正な申告につながると考えられます。
借家権割合と借地権割合の主な違いと使い分け
借家権割合と借地権割合は、名称が似ているため混同されやすいものの、その性質は異なります。借家権割合は建物の賃借人が有する権利の価値割合を示す指標であり、実務上は原則として全国どの地域であっても一律30%として扱われるのが一般的です。
一方、借地権割合は土地の賃借権に関する権利の価値割合であり、その土地が所在する地域ごとに数値が異なります。一般的には30%から90%程度の範囲で地域ごとに定められており、都市部の商業地では高めの割合が設定されている傾向があります。
借地権割合は全国一律の数値ではなく地域ごとに変動する性質を持つという点が、借家権割合との実務上の大きな違いとなります。
この2つの割合は、それぞれ単独で使われる場面と、組み合わせて使われる場面があります。単独で使われる代表例は、借地権割合であれば借地権そのものの評価、借家権割合であれば貸家の評価です。
両者が組み合わさって使われる代表的な場面が、貸家建付地の評価です。貸家建付地とは、所有する土地の上に建てた建物を第三者に貸している場合の、その土地部分の評価上の呼び方を指します。
貸家建付地の評価では、自用地としての評価額から、借地権割合と借家権割合、さらに賃貸割合を掛け合わせた分を差し引く考え方が用いられます。地域ごとに異なる借地権割合と、全国一律の借家権割合という異なる性質の数値を組み合わせて計算する点が、この評価方法の特徴といえるでしょう。
このように、借地権割合と借家権割合はそれぞれ別の基準で定められている数値であるため、どちらの割合を確認しているのかを取り違えないように注意が必要です。特に借地権割合は地域によって数値が変わるため、対象となる土地の所在地に応じた確認が求められます。
借家権割合が関係する相続対策・不動産評価を考える際の留意点
賃貸物件は、自用の不動産と比べて相続税評価額が下がる傾向があるとされています。これは借家権割合や借地権割合を用いて評価額を減額する仕組みが働くためで、賃貸物件の所有が相続対策として話題になる理由の一つになっています。
ただし、この減額は賃貸割合の考え方と密接に関わっており、空室の有無や賃貸借契約の状況によって評価結果が変わり得る点には注意が必要です。
空室が多い状態では賃貸割合の数値が下がり、結果として相続税評価額の減額効果が小さくなる可能性があります。
例えば、相続開始時点で空室になっている部分は原則として賃貸に供されていないものとして扱われる考え方が一般的であり、一時的な空室かどうかや、退去後すぐに次の賃借人を募集していたかどうかなど、個別の事情によって判断が異なることがあります。契約形態についても、通常の賃貸借契約か、一時使用目的の契約かなどによって評価上の取り扱いが変わる場合があります。
こうした事情は数字だけでは判断がつきにくく、賃貸割合の算定方法や空室期間の考え方を誤ると、相続税評価額全体に影響が及ぶおそれがあります。特に複数の部屋や店舗が入る建物では、部屋ごとの契約状況を整理して確認する作業が必要になることもあります。
税務調査等における評価誤りを避けるためには、固定資産税評価証明書や賃貸借契約書などの客観的資料を整理した上で、個別事情に応じた正確な判断ができる税理士や弁護士などの専門家に相談しながら検討を進めることが望ましいと考えられます。
相続税の申告には原則として相続開始を知った日の翌日から10か月以内という期限が設けられているため、早い段階で必要な資料を整理し、適正な不動産評価方法について専門家に相談しておくことが、後の税務トラブルや遺産分割の紛争を避ける一助になると考えられます。
まとめ
借家権割合とは、建物の賃借人が持つ権利の価値を示す割合で、全国一律30%と定められています。地域による差がないため、借地権割合のように地域ごとの確認作業は不要です。
貸家は「固定資産税評価額×(1-借家権割合×賃貸割合)」、貸家建付地は「自用地評価額×(1-借地権割合×借家権割合×賃貸割合)」で評価額を求めます。空室状況によって賃貸割合が変わり、評価額にも影響が及ぶ点をあわせて押さえておくとよいでしょう。
賃貸割合に関する税務上の考え方や、借地権割合との組み合わせ計算を誤ると、相続税評価額を本来の実態とずれた不適正な形で算出してしまうリスクがあります。
対象不動産の個別事情や賃貸借契約の形態によって評価の法的見解が変わる場面も多く存在するため、ご自身のケースで具体的な判断が必要な場合は、自己判断を避け、税理士や弁護士などの専門家に直接相談することが有用と考えられます。相続手続きや不動産の適正な評価に関する法的・税務的な疑問がある場合は、弁護士法人ネクスパート法律事務所へのご相談も、解決に向けた選択肢の一つとしてぜひ検討してみてください。