更新日:2026年7月28日 (火)
公開日:2026年7月28日 (火)
フローリングの原状回復費用を貸主・借主が負担する範囲は?
サマリー
フローリングの原状回復費用を貸主・借主が負担する範囲は?をテーマに、費用の内訳や負担関係を解説。貸主・借主・権利者が交渉や手続きを進める際のポイントを整理します。
昨今は、床をフローリングにしている賃貸物件が多く、退去時の敷金精算や修繕費用をめぐるトラブルが少なくありません。この記事では、賃貸物件の退去時におけるフローリングの原状回復義務について、国土交通省のガイドラインや実務上の判断基準をもとに、貸主(大家)と借主(入居者)がそれぞれどこまで修繕費用を負担すべきか、その範囲を解説します。
賃貸物件のフローリングの原状回復費用を貸主が負担する範囲は?
賃貸物件の退去時に、フローリングの原状回復費用を貸主が負担する範囲の原則は、国土交通省が公表している「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」によって、以下のとおり示されています。
入居者確保を目的に行うフローリングのワックスがけ
次の入居者を確保する目的で行うフローリングのワックスがけ費用やハウスクリーニング代は、特約がない限り、原則として貸主が負担するとされています。これは、入居者の入れ替わりに伴う賃貸物件の全体的な維持管理業務にあたると解釈されるためです。
家具による凹みや日照等による色落ち
家具を置いていたことによる床の凹みや、日照等によるフローリングの色落ちを修繕する費用は、一般的に貸主の負担とされています。通常の生活範囲内で家具を設置したことによる凹みは必然的な経年変化であり、民法上の通常損耗に該当するとみなされる傾向にあります。日照による日焼けなども、通常生活する上で避けられない自然損耗と考えられるためです。
賃貸物件のフローリングの原状回復費用を借主が負担する範囲は?
賃貸物件のフローリング修繕費用を借主(入居者)が負担する範囲についても、民法上の善管注意義務や国土交通省のガイドラインに基づき、以下のように示されています。
引っ越し作業等で生じたフローリングの傷や凹み
引っ越し作業等で生じたフローリングの目立つ傷や深い凹みを修繕する費用は、借主側の過失(特別損耗)として、借主が負担する可能性が高いとされています。引っ越し作業の際、フローリングに養生シートや敷物を敷けば、家具等の搬入による傷やへこみのリスクを避けられます。そのような一般的な注意を払わずにフローリングに傷や凹み等を生じさせた場合、実務上、借主の善管注意義務違反や過失に該当すると判断される傾向にあります。
借主が法的に原状回復義務を負うのは、あくまで過失によって損傷させた部分の補修費用に限られます。フローリングの修繕は原則として平方メートル単位で算出されますが、損傷箇所が複数にわたる場合は、結果として居室全体の原状回復費用を求められる可能性があります(以下の項目についても同様です)。
雨の吹き込みにより生じたフローリングのカビ・色落ち
窓を開けたままにしたことによる雨の吹き込み等で生じたフローリングのカビや色落ちの修繕費用は、借主が負担する可能性が高いとされています。雨の吹き込みによってフローリングが濡れた場合でも、速やかに拭き取ればカビの発生や色落ちを防ぐことができます。適切な手入れを行わずに放置すると、木材が傷み、カビや色落ちが発生する原因となります。速やかに拭き取るなどの適切な対応を怠り、カビや色落ちを生じさせた場合は、借主の善管注意義務違反(日常の管理不足)に該当するとみなされるのが一般的です。
掃除・手入れ不足により生じたフローリングのカビ・シミ
日常的な掃除や手入れの不足が原因で生じたフローリングのカビやシミを修繕する費用も、借主が負担する可能性が高いといえます。例えば子どもが飲み物をこぼした場合でも、すぐに清掃を行えば床材のシミやカビを防ぐことが可能です。そうした基本的な清掃対応を怠った結果として生じた汚損は、借主の善管注意義務違反と判断される傾向にあります。
タバコの不始末で生じた焦げ跡
タバコの不始末によってフローリングに生じた焦げ跡の修繕費用は、借主が負担する可能性が高いとされています。これは日常的な使用上の不注意(過失)を超えた事象であり、借主の善管注意義務違反と判断される蓋然性が極めて高いためです。
ペットによるフローリングの傷
犬や猫などペットの飼育によって生じたフローリングの傷の修繕費用は、特約の有無にかかわらず、借主が負担する可能性が高いといえます。ペットが床材を傷つけないよう適切な対策や管理を行わなかった場合、借主の善管注意義務違反に基づく特別損耗と判断されるのが実務上の一般的な見解です。
フローリングへの落書き
子ども等によるフローリングへの落書きを消すための修繕費用は、借主が負担する可能性が高いとされています。落書きは故意または重大な過失による毀損行為にあたるため、借主の善管注意義務違反として原状回復を求められる傾向にあります。
フローリングの原状回復費用でお悩みの方は弁護士に相談を
賃貸物件を退去するにあたり、フローリングの原状回復や敷金返還をめぐって借主との間でトラブルになっている場合は、不動産問題に強い弁護士への相談をご検討ください。借主が部屋を乱暴に使っていたにもかかわらず、高額な修繕費用の支払いや原状回復義務に納得しない場合、弁護士が代理人として法的な根拠をもとに交渉することで、よりスピーディーな解決を目指せる可能性が高まります。
弁護士が過去の判例や国土交通省のガイドラインなどの法的な根拠を示して説明することで強い説得力が生まれ、借主側も訴訟などの法的手続きへの発展を懸念し、誠実な対応に応じる可能性が高くなります。当事者同士での直接の話し合いは、感情的な対立から一度こじれてしまうと、早期解決が困難になる傾向があります。証拠散逸や長期化を防ぐためにも、早い段階で法律の専門家である弁護士に相談・依頼し、適切な解決を目指すことをお勧めします。
まとめ
賃貸物件を退去する際、経年変化や特別損耗に関する認識の違いから、部屋の原状回復をめぐって貸主と借主の間で敷金トラブルになるケースは珍しくありません。事前の合意不足からトラブルに発展することを防ぐため、入居時に貸主・借主の双方で部屋の中の傷や汚れをチェックし、写真や現況確認書などの書面として客観的な証拠を残しておくことが実務上推奨されます。
ネクスパート法律事務所には、不動産の原状回復や敷金返還に関するトラブル解決の実績が豊富な弁護士が多数在籍しております。借主との退去費用の話し合いがスムーズに進まないなど、法的対応でお悩みの方は、ぜひ一度当事務所の弁護士までご相談ください。
コラム監修者
SHIZU ISHIDA
所属:東京オフィス
広島県広島市出身。青山学院大学心理学科、東海大学法科大学院卒業後、新司法試験に合格し最高裁判所司法研修所を修了。弁護士として法曹界に入り、刑事、民事、法人案件等幅広い分野の専門知識を習得。弁護士登録10年目にしてネクスパート法律事務所に入所し、現在は主に離婚事件に注力している。