更新日:2023年11月6日 (月)
公開日:2023年11月6日 (月)
交通事故の損害賠償請求の時効は何年?請求の種類別に解説
サマリー
交通事故の被害に遭われた際、治療や示談交渉に追われる中で損害賠償請求の期限が気になっている方もいらっしゃるのではないでしょうか。交通事故の損害賠償請求権には消滅時効が定められており、物損や人身といった損害の種類や加害者の判明状況によって時効期間や起算点が異なります。この記事では、交通事故の損害賠償請求における時効期間の目安や起算点、時効の完成猶予や更新の仕組みについてわかりやすく解説します。
交通事故による損害賠償請求権の時効期間と起算点
交通事故における損害賠償請求権には消滅時効が定められており、一定期間権利を行使しないと請求できなくなる可能性があります。時効が完成するまでの期間や進行が始まる時点(起算点)は、請求の対象が物損なのか人身なのか、また加害者が判明しているかによって異なります。
なお、2020年4月1日施行の民法改正により、人の生命や身体を害する不法行為による損害賠償請求権の時効期間が見直されており、同日以降に発生した事故には改正後の規定が適用されます。
物損事故の時効期間と起算点
車両の修理費用や携行品の破損など、物損事故に関する損害賠償請求権の消滅時効期間は3年です。
時効の起算点は「損害および加害者を知った日の翌日」となります。一般的な物損事故では、事故の発生時点で被害と相手方を認識することが多いため、事故発生日の翌日から時効期間が進行します。
人身事故(傷害・後遺障害・死亡)の時効期間と起算点

交通事故によって怪我を負ったり亡くなられたりした場合、人身損害に対する賠償請求権の時効期間は5年と定められています。ただし、請求する内容によって起算点が異なる点に注意が必要です。
治療費や休業損害、入通院慰謝料といった「傷害」に関する損害は、通常、事故発生日の翌日から時効が進行します。
事故による怪我が完治せず後遺症が残った場合、「後遺障害」に関する逸失利益や慰謝料の時効は、医師によってこれ以上治療を続けても症状の改善が見込めないと判断された「症状固定日」の翌日から起算されます。
被害者が亡くなられた「死亡事故」においては、死亡した日(または相続人が被害者の死亡を知った日)の翌日が起算点となり、そこから5年間で時効が完成します。
ひき逃げや当て逃げなど加害者が不明な場合
ひき逃げや当て逃げなどの事案で事故発生時に加害者が分からない場合、加害者を知るまでは時効期間のカウントは始まりません。ただし、事故発生日の翌日から20年が経過すると、加害者が判明していなくても請求権は消滅します。
事故後に加害者が特定された場合は、加害者を知った日の翌日から起算して物損は3年、人身損害は5年が時効期間となります。ただし、事故発生から20年を超えることはできないため、いずれか早く到来する期日が請求期限となります。
| 損害の種類・状況 | 時効期間 | 起算点 |
|---|---|---|
| 物損事故 | 3年 | 事故発生日の翌日(加害者判明時) |
| 人身事故(傷害損害) | 5年 | 事故発生日の翌日(加害者判明時) |
| 人身事故(後遺障害) | 5年 | 症状固定日の翌日 |
| 人身事故(死亡損害) | 5年 | 死亡日(または死亡を知った日)の翌日 |
| 加害者不明(未判明のまま) | 20年 | 事故発生日の翌日 |
| 加害者不明(途中で判明) | 物損3年/人身5年(最長20年) | 加害者を知った日の翌日 |
時効の完成を一時的に防ぐ「完成猶予」の仕組み
交通事故の損害賠償請求では、示談交渉が長引いて時効期間が迫ってしまうケースがあります。そのような場合に備えて、法律上、時効の進行を一時的に止める「完成猶予」という制度が設けられています。
時効の完成猶予が生じると、一定の事由が存続している間や一定期間が経過するまでの間は、本来の時効期間が過ぎても時効が成立しません。主な猶予事由としては以下の4つが挙げられます。
裁判上の請求や支払督促
加害者や保険会社に対して訴訟を提起(裁判上の請求)したり、支払督促を申し立てたりした場合、その手続きが終了するまでの間は時効の完成が猶予されます。
もし訴えの取り下げなどによって権利が確定しないまま手続きが終了したとしても、終了した時点から6か月を経過するまでの間は引き続き時効の完成が猶予されます。
内容証明郵便等による「催告」
加害者側に対して損害賠償の支払いを求める意思を通知することを「催告」といいます。催告を行うと、催告の時から6か月間は時効の完成が猶予されます。
口頭での催告も法律上は可能ですが、通知した日付や内容を証拠として残すため、配達証明付きの内容証明郵便を利用するのが一般的です。
催告による時効の完成猶予は一度しか利用できず、催告期間中に再度催告を行っても猶予期間は延長されません。
強制執行等の手続き
確定判決などの債務名義をもとに強制執行を申し立てた場合、その手続きが行われている間は時効の完成が猶予されます。
申立ての取り下げや取り消しによって手続きが終了した場合でも、終了した時点から6か月間は時効の完成が猶予される仕組みとなっています。
書面による協議の合意
当事者双方が損害賠償請求について協議を行う旨を書面で合意した場合にも、時効の完成猶予が認められます。猶予される期間は以下のいずれか早い時点までです。
- 合意があった時から1年が経過した時
- 1年未満の協議期間を定めた場合は、その期間を経過した時
- 一方から協議拒絶の通知が書面でなされた場合は、その通知から6か月を経過した時
なお、この書面合意による時効の完成猶予は、再度合意を繰り返す場合であっても、通算で最長5年までと定められています。
時効がリセットされる「時効の更新」とは
時効の更新とは、一時的に時効の完成を先延ばしにする完成猶予とは異なり、それまで経過していた期間のカウントがリセットされ、新たにゼロから時効期間が進行し始める仕組みです。
法律上の特定の事由が発生した場合に時効が更新されるため、時効の完成を防ぐ上で重要な制度となっています。
確定判決等による権利の確定
裁判上の請求や支払督促、起訴前の和解、調停などの手続きを経て、確定判決または確定判決と同一の効力を有するものによって損害賠償請求権が確定したときは、手続きが終了した時点で時効が更新されます。
確定判決等によって確定した権利については、民法の規定により、元の時効期間にかかわらず時効期間が一律で10年に延長されます。
通常の物損事故の3年や人身事故の5年という時効期間よりも長い期間が確保されるため、判決等の確定後は10年の間に賠償金の回収や手続きの進行を検討することになります。
強制執行等の手続きの終了
加害者の財産に対して行われた強制執行などの手続きが、申立ての取り下げや取り消し等がされることなく終了した場合にも、時効のカウントがリセットされます。
手続きの終了とともに時効が更新され、その終了時点から改めて新たな時効期間がゼロからスタートすることになります。
損害賠償金の一部の支払いや提示(債務の承認)
加害者側が損害賠償義務の存在を認める行為を「債務の承認」といい、これが行われた場合も時効が更新されます。
具体的には、加害者や相手方保険会社から治療費や休業損害などの内払いとして損害賠償金の一部が支払われた場合や、具体的な示談案・支払い条件の提示があった場合などが債務の承認に該当します。
債務の承認があった時点で時効のカウントはリセットされ、承認が行われた日の翌日から再び時効期間が進行します。
交通事故の損害賠償請求における弁護士への相談
交通事故の損害賠償請求では、適正な賠償を受けるための示談交渉を進めるとともに、消滅時効の期間を適切に管理することが欠かせません。怪我の治療が長引いたり、過失割合や損害額を巡って相手方と意見が対立したりすると、気づかないうちに時効期日が迫ってしまうことがあります。
時効を意識しすぎるあまり示談を急いで不利な条件を受け入れてしまう事態を避けるためにも、法的な観点からの進行管理が役立ちます。
時効完成のリスクを踏まえた示談交渉
損害賠償請求権には所定の時効期間が定められており、物損や人身傷害、後遺障害などの状況によって起算点や期間が異なります。弁護士に相談することで、事案ごとの正確な時効期日を把握した上で、余裕を持った交渉スケジュールの組み立てが可能になります。
相手方との交渉が難航している場合でも、時効消滅のリスクを回避しながら、妥当な賠償内容を目指して粘り強く協議を継続しやすくなります。
相手方や保険会社とのやり取りに伴う負担の軽減
交通事故の被害に遭われた方は、怪我の治療や生活への影響に直面している中で、加害者側や保険会社との連絡・交渉を行わなければなりません。損害賠償に関する法的な議論や感情的な対立は、被害者の方にとって大きな精神的・身体的ストレスとなります。
弁護士が代理人として窓口となることで、相手方との直接のやり取りを一任でき、被害者ご自身は治療や日常の回復に専念できる環境を整えられます。
時効期間を踏まえた法的手続きの検討
もし時効期間の満了時期への対応が必要な場合は、内容証明郵便による催告や、裁判所に対する支払督促・訴訟提起など、時効の完成を猶予・更新するための迅速な措置を講じる必要があります。
これらの法的手続きには要件や期限が厳格に定められているため、法律上の見地から適切な手段を選択し、速やかに書類を整えて対応を進めることが重要です。時効期間について少しでも不安がある場合は、早めに弁護士へ相談し、今後の見通しを確認することをおすすめします。
コラム監修者
JUNICHI TASHIRO
所属:福岡オフィス 支店長
福岡県北九州市出身。小倉高校、岡山大学法学部、神戸大学法科大学院を卒業後、新司法試験に合格し最高裁判所司法研修所を修了。弁護士として法曹界に入り、個人・法人問わず幅広い分野の相談・交渉に取り組む。ネクスパート法律事務所福岡オフィス所長として、依頼者にとって何が大事かを第一に考え、スピード感をもって解決することを信条とし、どこの事務所よりもネクスパート法律事務所に依頼したいと思ってもらえるよう日夜奮闘中。