更新日:2026年8月24日 (月)

公開日:2026年8月24日 (月)

美容師や弁護士の広告推薦は違反?インフルエンサー起用の法務知識

美容師や弁護士の広告推薦は違反?インフルエンサー起用の法務知識 美容師や弁護士の広告推薦は違反?インフルエンサー起用の法務知識

サマリー

美容師などの資格を持つインフルエンサーに広告を依頼する場合、医薬品等適正広告基準により専門家の推薦表現が制限されており、ヘアケア以外の化粧品でも違反となるおそれがあります。民間資格の保有者でも同様のリスクがあり、薬機法の対象外の商材でも景品表示法や各資格の職務規程への配慮が必要です。

近年、SNSを活用したインフルエンサーマーケティングは、企業の認知拡大や販促活動において重要な手法となっています。しかし、特定の資格を持つインフルエンサーを起用する際には、法律や各種ガイドラインによる厳格な広告規制への配慮が必要となります。
特に美容や法律といった専門分野に関わる表現は、意図せず法令違反と判断されるリスクをはらんでいます。

本記事では、インフルエンサーに依頼する際に企業が押さえるべき薬機法や景品表示法の注意点について、具体的なケースを交えて解説します。

インフルエンサーマーケティングにおける資格保持者の起用

企業がインフルエンサーを起用する際、「美容師の資格を持っているから説得力がある」「民間資格の保有者なので専門家として紹介しやすい」といった理由で人選を行うケースは少なくありません。また、医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(以下「薬機法」といいます。)の対象外となる商材において、弁護士などの国家資格を持つインフルエンサーにPRを依頼することもあります。

しかし、これらの起用には広告規制上の盲点が存在します。資格の有無や商材の種類によって、どのような表現が認められ、何が違反となるのか、その境界線は非常に複雑です。実務担当者が正しい知識を持たずに広告を配信した場合、行政処分の対象となる可能性もあるため、事前のリーガルチェックが不可欠とされています。

薬機法に基づき厚労省が定める広告ガイドラインにおける「専門家」の推薦規制

医薬品、医薬部外品、化粧品、医療機器などの広告においては、専門家による推薦表現が厳しく制限されています。これは、専門家の発言が一般消費者に与える影響力が極めて大きく、商品の効能効果について過度な信頼や誤認を誘引するおそれがあるためです。

医薬品等適正広告基準」(平成29年9月29日薬生発0929第4号)第4の10では、医薬関係者、理容師、美容師、病院、学校や学会などの団体が指定・公認・推薦・指導・選用しているかのような広告を行ってはならないと明示されています。さらに、日本化粧品工業連合会「化粧品等の適正広告ガイドライン」(2020年版)F11.0においても、同様に専門家による推薦の制限の原則が定められています。

美容師による推薦広告の判断基準

実務において頻出する論点として、ヘアケア以外の商材であれば、美容師を起用して推薦表現を行っても問題はないのではないかという疑問があります。

しかし、美容師は職業の特性上、ヘアケアに限らず美容全般の専門家として一般消費者に広く認知される傾向が強いといえます。そのため、メイクアップ製品などの化粧品全般において美容師が特定の商材を推薦する表現を行うと、消費者に専門家としての強い誤認を与えるおそれがあります。

現在の実務運用の観点からは、これらは条件付きで認められるという緩やかな判断ではなく、原則として認められない扱いとなり、例外的に個別判断されると捉えるのが適切です。したがって、美容師インフルエンサーに化粧品全般のPRを依頼する際は、推薦や公認と受け取られる表現を避けるなど、慎重な原稿確認が求められます。

日本化粧品検定などの民間資格におけるリスク

国家資格ではなく民間資格であれば、プロフィールに記載して推薦を行っても無条件で認められると考えるのは誤りです。

化粧品等の適正広告ガイドラインF11.0では、医師や美容師といった国家資格者に規制の範囲を限定せず、「化粧品等の効能効果に関し、世人の認識に相当の影響を与える」者による広告を広く禁止しています。そのため、日本化粧品検定や日本メイクアップ技術検定といった民間資格であっても、それらをプロフィールに掲げて美容の専門家として活動している場合、一般消費者に対する相当の影響力を持つと認められる可能性があります。

結果として、民間資格の保有者であっても、国家資格者と同様に推薦制限の定めに抵触するリスクが生じます。資格の種類が国家資格か民間資格かという点にとらわれるのではなく、消費者がその人物を専門家として認識し、その発言に強い影響を受けるかどうかという実質的な観点からリスクを評価する必要があります。

薬機法対象外の商材における国家資格者起用の留意点

一方で、薬機法の規制対象に含まれない商材において、国家資格を持つインフルエンサーを起用する場合はどのような判断になるのでしょうか。例えば、弁護士のインフルエンサーを起用し、大手の電子契約サービスなどの業務用ソフトウェアをPRするようなケースが想定されます。

結論として、薬機法や化粧品等の適正広告ガイドラインの観点からは、これらの商材に対する規制は及びません。薬機法の法的な規制対象は、同法2条において医薬品、医薬部外品、化粧品、医療機器および再生医療等製品と明確に限定されているためです。ただし、薬機法以外の観点から、以下の2点について注意を払う必要があります。

景品表示法上の優良誤認リスク

薬機法の対象外であっても、すべての商品・サービスの広告には不当景品類及び不当表示防止法(以下「景品表示法」といいます。)が適用されます。特に国家資格という強い権威を持つ人物を広告に起用する場合、その表現は景品表示法5条1号が禁止する優良誤認表示に該当しないか確認を要します。

資格者が商品やサービスを推奨する文脈において、実際の品質や性能よりも著しく優良であると一般消費者に誤認させるような記述が含まれている場合、不当表示として措置命令などの対象となる支障が生じる可能性があります。専門家の言葉を借りて効果を過度に強調するような表現は、慎重に排除しなければなりません。

各資格の職務規程・広告規制への配慮

さらに留意すべきなのは、国家資格の保持者には、それぞれの資格ごとに業界団体や法令が定める職務規程や広告規程が存在する点です。

たとえ紹介する商材が薬機法の対象外であり、景品表示法上も適切な内容であったとしても、インフルエンサー側の職務規程において、品位を損なう広告活動や特定の営利企業への過度な加担が制限されている場合があります。このような規程に抵触すると、インフルエンサー自身が懲戒処分などの不利益を被るリスクがあるだけでなく、起用した企業のブランドイメージにも悪影響を及ぼす事態が想定されます。そのため、他業種の専門職を起用する際にも、個別の職務制限について事前に確認を行うことが望ましいといえます。

まとめ・ご相談はネクスパート法律事務所へ

インフルエンサーマーケティングにおいて資格保持者を起用する際は、薬機法や各種広告ガイドラインの推薦制限に留意する必要があります。国家資格か民間資格かを問わず、消費者に専門家としての影響力を与える場合は一律に規制のリスクを考慮しなければなりません。また、薬機法の対象外の商材であっても、景品表示法や各資格の職務規程による制約を受ける点に注意が必要です。広告配信後のトラブルを防ぐためには、企画や原稿の段階で法的リスクを正しく評価し、適切な表現への言い換えを進めることが有効な対策となります。

ネクスパート法律事務所では、薬機法・医療法・景表法を強みとして、企業の法律問題に関する様々なご相談を承っております。お気軽にお問い合わせください。

※本記事は一般的な情報提供を目的とするものであり、個別の事案に対する法的助言ではありません。具体的な対応については弁護士にご相談ください。

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