解決結果のサマリー
※プライバシー保護のため、事例の内容は特定できないよう一部変更し、金額は概数で記載しています。
※解決結果は個別の事案の内容に基づくものであり、同種の結果を保証するものではありません。
事例の概要
ご依頼者のAさんは、30代の女性です。仕事を通じて知り合った既婚男性Bさんとの関係について、Bさんの妻Cさんの弁護士から、慰謝料300万円を求める通知が届きました。通知には、減額を求めるなら訴訟も辞さない旨の記載がありました。当事務所は受任後、謝罪の意を伝えるとともに前提事実を照会し、ご夫婦が別居・離婚に至っていないこと、CさんがBさん本人には請求していないことを確認。これを軸に、「求償権を放棄する場合」と「放棄しない場合」の二本立てで金額を提示し、相手方が拒否した後には、別居に至らない事案の水準を示す裁判例を書面で引用して、再び二本立てで提示しました。相手方は最終提案を二度更新し訴訟の準備にも言及しましたが、最終的に120万円を、まとまった頭金のあと月々少額を約3年にわたって支払う分割で合意しました。担当は北條さやか弁護士と西尾潤弁護士です。
請求300万円に対し、合意額は120万円(6割減)。分割は現在も続いており、Aさんは無理のない範囲で履行を続けています。手続はすべて代理人限りの書面交渉で進み、訴訟にはなっていません。
ご相談時の課題
表面上の課題
- 相手方に弁護士が付き、慰謝料300万円の請求が届いた
- 減額を求めるなら訴訟も辞さない、との記載があった
- 300万円という金額が妥当なのか判断できなかった
- 休職中で、まとまった額を用意できる状況ではなかった
本当の課題は3つ
- 水準の根拠づけ——ご夫婦が別居・離婚に至っていない事案での慰謝料の水準を、裁判例を含めて根拠づける必要がありました
- 求償権の扱いと金額の組み合わせ——求償権を放棄するかどうかで金額が変わる以上、相手方が選びやすい形で提示することが着地を早める鍵でした
- 支払能力に見合う長期の分割——休職中のAさんが現実に払い切れる、長期の分割を確保する必要がありました
ご依頼中のやりとり——Aさんはどうサービスを使ったか
- 訴訟の予告を含む請求が届いた段階で相談・依頼し、以後の相手方対応はすべて事務所へ
弁護士の対応
(1) 謝罪の意を伝え、前提事実を照会する
受任後、当事務所は謝罪の意を伝えるとともに、ご夫婦の状況やBさん本人への請求の有無を照会しました。相手方からは、別居・離婚・調停には至っていないこと、Bさん本人には請求しておらず求償権の放棄も求めていないことなどの回答がありました。
(2) 二本立ての提示——一度目
当方は、ご夫婦が別居・離婚に至っていない点を軸に、求償権を放棄しない場合の額と、放棄する場合のさらに低い額を二本立てで提示しました。相手方はこれを拒否し、悪質であると主張して、求償権の放棄を前提とする額を最終提案として示してきました(交渉途中の金額は概数です)。
(3) 裁判例を引用し、二本立ての提示——二度目
当事務所は、別居に至らない事案では慰謝料が一定の水準以下にとどまることを示す裁判例を複数、書面で引用し、根拠を示したうえで、再び二本立てで提示しました。一度目より額を引き上げつつ、放棄する場合・しない場合の両方を並べる形です。相手方は、求償権の放棄を前提とする枠組みに乗ったまま、最終提案を引き下げて再提示し、訴訟の準備にも言及してきました。
(4) 当方の「放棄しない案」の額で、求償権不行使付きの合意へ
最終的に、相手方が示した額は、当方が二度目に提示した「放棄しない場合」の額と同じ水準でした。合意書では、Aさんが求償権を行使しない旨の取り決めを置いたうえで、この額で合意。支払いは、休職中のAさんの支払能力に合わせ、まとまった頭金のあと月々少額を約3年にわたって支払う分割としました。相手方は訴訟を予告していましたが、長期の分割を受け入れています。
ご依頼中のやりとり——Aさんはどうサービスを使ったか
- 関係の経緯と、休職中で支払能力が限られる事情を共有し、交渉方針の土台に
- 二本立ての提示の意味と、裁判例に基づく水準の説明を受けて方針を確認
- 相手方の最終提案が更新される局面で、その都度見通しの説明を受けて確認
- 合意金額・頭金と分割の条件・条項の説明を受けて判断し、締結後は分割を継続中
解決結果
ご依頼前、Aさんは300万円という請求額と訴訟の予告に追い詰められ、休職中でまとまった額を用意できる状況にもありませんでした。
解決時には、金額は300万円から120万円へ。支払いは、まとまった頭金のあと月々少額を約3年にわたって支払う分割に整理されました。合意書では、Aさんが支払う額を固有の負担分として整理し、求償権は行使しない旨の取り決めと接触に関する取り決め、清算条項を整えています。分割は現在も続いており、Aさんは無理のない範囲で履行を続けています。相手方本人とAさんが直接やり取りする場面はありませんでした。
担当弁護士からのコメント(北條さやか弁護士)
慰謝料の交渉では、「いくら」と「求償権をどうするか」を組み合わせて提示することが、相手方の判断を促します。本件では、求償権を放棄する案と放棄しない案を二本立てで、しかも裁判例で根拠を固めながら二度にわたり提示しました。相手方は訴訟を予告しつつも、この枠組みに乗って最終提案を引き下げ、最終的には当方の「放棄しない案」の水準で、長期の分割を受け入れています。根拠と提示の形式——その両方が、着地を引き寄せます。
この事例に関するよくある質問
Q1. 慰謝料300万円を請求されました。減額できますか?
慰謝料の水準は、関係の期間・態様や婚姻関係への影響などで判断されます。ご夫婦が別居・離婚に至っていない事案では、裁判例上、一定の水準以下にとどまることが多いといえます。本事例では、裁判例を引用して主張し、300万円の請求が120万円での合意となりました。結果は事案によって異なります。
Q2. 求償権を放棄する案と放棄しない案を、両方出すのはなぜですか?
求償権を放棄するかどうかで相手方にとっての価値が変わり、金額も変わるからです。両方を並べて提示すると、相手方は金額と求償権の扱いを一体で判断でき、着地点が見えやすくなります。本事例では二度にわたり二本立てで提示し、相手方をその枠組みに引き寄せました。
Q3. 「減額を求めるなら訴訟する」と言われています。
訴訟の予告が示されても、その後にさらに動くことは珍しくありません。訴訟に移行した場合の見通しを踏まえ、根拠を示して段階的に提示することで、着地点を探ることができます。本事例でも、相手方は訴訟を予告しつつ最終提案を二度引き下げ、長期の分割を受け入れました。
Q4. 休職中で収入がありません。長期の分割にできますか?
支払能力は、支払い方法を決めるうえで重要な事情です。まとまった頭金のあと月々少額を長期にわたって支払う分割にまとめられることがあります。本事例でも、約3年の分割で合意しました。