更新日:2022年9月21日 (水)

公開日:2022年9月21日 (水)

プロバイダ責任制限法の改正のポイントをわかりやすく解説

プロバイダ責任制限法の改正のポイントをわかりやすく解説 プロバイダ責任制限法の改正のポイントをわかりやすく解説

サマリー

プロバイダ責任制限法(特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律)が改正され、発信者情報開示について新たな裁判手続(非訟手続)を創設するなどの見直しが行われました。今回の改正により、より円滑な被害者救済を期待できるようになりました。

この記事では、プロバイダ責任制限法の改正のポイントを解説します。

プロバイダ責任制限法の改正のポイントは?

より円滑に被害者救済を図るために、どのような改正がされたのでしょうか。

改正のポイント

改正のポイントは以下の4点です。

  • 新たな裁判手続(非訟手続)の創設
  • 開示請求を行うことができる範囲の見直し
  • 意見聴取時に発信者が開示に応じない場合は、その理由も併せて聴取する
  • 発信者特定に必要な裁判上の手続きが2回から1回になった

改正前の問題点

改正前は、以下の問題点が指摘されていました。

  • 発信者の特定までに2回の裁判上の手続きが必要で、手間と時間と費用がかかる
  • ログの保存期間が経過する危険性
  • ログイン時情報の開示請求の不明確性

改正の目的

インターネットが普及し匿名で投稿できるサイトの利用者も増え、ネット上の誹謗中傷が社会問題になりました。この問題に対応するために平成13年にプロバイダ責任制限法が制定されました。

制定から20年以上経過した現在では、制定時よりもSNS(ソーシャルネットワーキングサービス)が普及してSNSでの誹謗中傷も増えていますが、改正前のプロバイダ責任制限法はSNSに見られるログイン型投稿での誹謗中傷については想定していませんでした

改正の目的は、以下にあるとされています。

インターネット上の誹謗中傷などによる権利侵害についてより円滑に被害者救済を図るため、発信者情報開示について新たな裁判手続(非訟手続※)を創設するなどの制度的見直しを行う

引用元:プロバイダ責任制限法の一部を改正する法律案(概要) 総務省

施行日はいつから?

改正法は令和3年4月28日に公布され、令和4年10月1日に施行されます。

プロバイダ責任制限法の改正後の内容

プロバイダ責任制限法の改正後の内容を解説します。

新たな裁判手続(非訟手続)の創設

発信者の特定までに2回の裁判上の手続きが必要で、手間と時間と費用がかかっていましたが、改正によって1つの裁判上の手続きで可能となりました。

改正前の問題点

サイトや接続プロバイダへ発信者情報開示請求をすることはできますが、開示されないことが多いです。その場合はそれぞれ別の裁判手続を行いますので、以下のように2回の裁判手続が必要です。

サイトに発信者情報開示請求
↓ 開示されなければ
裁判所に発信者情報開示仮処分命令申立
↓ 開示されたIPアドレスから接続プロバイダを特定
接続プロバイダに発信者情報開示請求
↓ 開示されなければ
裁判所に発信者情報開示請求訴訟提起

2回の裁判手続が必要になると、被害者にとって時間と費用が負担になっていました。

開示に時間がかかることで、ログの保存期間が経過して、発信者の特定が困難になる危険性もありました。

改正後

1つの裁判手続で発信者情報を開示できるように、新たな裁判手続(非訟手続)が創設されました。流れは以下のとおりです。

サイトに対する発信者情報開示命令申立
接続プロバイダの名称の提供を求める提供命令申立
↓ 接続プロバイダが判明したら
接続プロバイダに対する発信者情報開示命令申立+消去禁止命令申立を追加
サイトに通知
↓ サイトから接続プロバイダに発信者情報が提供される
サイト・接続プロバイダから発信者情報が開示される

非訟手続とは、訴訟以外の裁判手続のことで、訴訟手続に比べて手続きが簡易なので、事件の迅速処理が可能とされています。

裁判所は、特定電気通信による情報の流通によって自己の権利を侵害されたとする者の申立てにより、決定で、当該権利の侵害に係る開示関係役務提供者に対し、第五条第一項又は第二項の規定による請求に基づく発信者情報の開示を命ずることができる

引用元:特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律(令和4年10月1日施行)第8条

本案の発信者情報開示命令事件が係属する裁判所は、発信者情報開示命令の申立てに係る侵害情報の発信者を特定することができなくなることを防止するため必要があると認めるときは、当該発信者情報開示命令の申立てをした者(以下この項において「申立人」という。)の申立てにより、決定で、当該発信者情報開示命令の申立ての相手方である開示関係役務提供者に対し、次に掲げる事項を命ずることができる。

一 当該申立人に対し、次のイ又はロに掲げる場合の区分に応じそれぞれ当該イ又はロに定める事項(イに掲げる場合に該当すると認めるときは、イに定める事項)を書面又は電磁的方法(電子情報処理組織を使用する方法その他の情報通信の技術を利用する方法であって総務省令で定めるものをいう。次号において同じ。)により提供すること。

イ 当該開示関係役務提供者がその保有する発信者情報(当該発信者情報開示命令の申立てに係るものに限る。以下この項において同じ。)により当該侵害情報に係る他の開示関係役務提供者(当該侵害情報の発信者であると認めるものを除く。ロにおいて同じ。)の氏名又は名称及び住所(以下この項及び第三項において「他の開示関係役務提供者の氏名等情報」という。)の特定をすることができる場合 当該他の開示関係役務提供者の氏名等情報

ロ 当該開示関係役務提供者が当該侵害情報に係る他の開示関係役務提供者を特定するために用いることができる発信者情報として総務省令で定めるものを保有していない場合又は当該開示関係役務提供者がその保有する当該発信者情報によりイに規定する特定をすることができない場合 その旨

二 この項の規定による命令(以下この条において「提供命令」といい、前号に係る部分に限る。)により他の開示関係役務提供者の氏名等情報の提供を受けた当該申立人から、当該他の開示関係役務提供者を相手方として当該侵害情報についての発信者情報開示命令の申立てをした旨の書面又は電磁的方法による通知を受けたときは、当該他の開示関係役務提供者に対し、当該開示関係役務提供者が保有する発信者情報を書面又は電磁的方法により提供すること。

引用元:特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律(令和4年10月1日施行)第15条第1項

本案の発信者情報開示命令事件が係属する裁判所は、発信者情報開示命令の申立てに係る侵害情報の発信者を特定することができなくなることを防止するため必要があると認めるときは、当該発信者情報開示命令の申立てをした者の申立てにより、決定で、当該発信者情報開示命令の申立ての相手方である開示関係役務提供者に対し、当該発信者情報開示命令事件(当該発信者情報開示命令事件についての第十四条第一項に規定する決定に対して同項に規定する訴えが提起されたときは、その訴訟)が終了するまでの間、当該開示関係役務提供者が保有する発信者情報(当該発信者情報開示命令の申立てに係るものに限る。)を消去してはならない旨を命ずることができる。

引用元:特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律(令和4年10月1日施行)第16条第1項

開示請求を行うことができる範囲の見直し

開示請求の可否の判断が分かれていたログイン時のIPアドレスやタイムスタンプの開示請求が、改正によって可能であることが明確になりました。

改正前の問題点

SNSには、各投稿をした時のIPアドレスのログを保有せずに、ログイン時のIPアドレスしか保有していないものがあります。

改正前のプロバイダ責任制限法ではSNSに見られるログイン型投稿での誹謗中傷については想定していませんでしたので、開示対象になるのは、「当該権利の侵害に係る発信者情報」に限られており、ログイン時の情報が権利の侵害に係る発信者情報には該当しないとの考えもあり、開示の対象になるのか不明確でした。

改正後

ログイン時の情報も「侵害関連通信」として、侵害関連通信に係る発信者情報を「特定発信者情報」として開示請求の対象になることが明確になりました。ログイン型サイトでも発信者情報開示請求がしやすくなることが予想されます。

特定電気通信による情報の流通によって自己の権利を侵害されたとする者は、当該特定電気通信の用に供される特定電気通信設備を用いる特定電気通信役務提供者に対し、当該特定電気通信役務提供者が保有する当該権利の侵害に係る発信者情報のうち、特定発信者情報(発信者情報であって専ら侵害関連通信に係るものとして総務省令で定めるものをいう。以下この項及び第十五条第二項において同じ。)以外の発信者情報については第一号及び第二号のいずれにも該当するとき、特定発信者情報については次の各号のいずれにも該当するときは、それぞれその開示を請求することができる。

一 当該開示の請求に係る侵害情報の流通によって当該開示の請求をする者の権利が侵害されたことが明らかであるとき。

二 当該発信者情報が当該開示の請求をする者の損害賠償請求権の行使のために必要である場合その他当該発信者情報の開示を受けるべき正当な理由があるとき。

三 次のイからハまでのいずれかに該当するとき。

イ 当該特定電気通信役務提供者が当該権利の侵害に係る特定発信者情報以外の発信者情報を保有していないと認めるとき。

ロ 当該特定電気通信役務提供者が保有する当該権利の侵害に係る特定発信者情報以外の発信者情報が次に掲げる発信者情報以外の発信者情報であって総務省令で定めるもののみであると認めるとき。

(1)当該開示の請求に係る侵害情報の発信者の氏名及び住所

(2)当該権利の侵害に係る他の開示関係役務提供者を特定するために用いることができる発信者情報

ハ 当該開示の請求をする者がこの項の規定により開示を受けた発信者情報(特定発信者情報を除く。)によっては当該開示の請求に係る侵害情報の発信者を特定することができないと認めるとき。

引用元:特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律(令和4年10月1日施行)第5条第1項

意見聴取時に発信者が開示に応じない場合は、その理由も併せて聴取する

意見聴取時に発信者が開示に応じない場合は、その理由も併せて聴取しなければならないこととなりました。

改正前の問題点

発信者情報開示請求を受けたプロバイダが、権利侵害にあたる投稿をした発信者に開示請求に応じるかどうかの意見聴取を行うことになっていますが、応じない理由を聴取しなければならないわけではありません。

改正後

開示請求に応じるかどうかだけでなく、応じない場合にはその理由も意見聴取しなければならないと規定されました。

発信者が開示請求に応じない理由を聴取し、プロバイダが適切な対応をすることができます。

開示関係役務提供者は、前条第一項又は第二項の規定による開示の請求を受けたときは、当該開示の請求に係る侵害情報の発信者と連絡することができない場合その他特別の事情がある場合を除き、当該開示の請求に応じるかどうかについて当該発信者の意見(当該開示の請求に応じるべきでない旨の意見である場合には、その理由を含む。)を聴かなければならない。

引用元:特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律(令和4年10月1日施行)第6条第1項

プロバイダ責任制限法、新制度と旧制度の併用

改正によって、新たな裁判手続が新設されましたが、現行の裁判手続を選択することもできます。

新制度はサイトと接続プロバイダで、必要な情報を提供し合って発信者を特定しますので、より円滑に被害者救済を図ることができるようになるかは、両者の対応によるところもあります。

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まとめ

プロバイダ責任制限法の改正により、発信者情報開示請求の時間的・費用的な負担が軽減される事案もあると思われます。それでも、ログの保存期間が延びるわけではありませんので、できるだけ早い対応が必要です。

発信者情報開示請求にかかる時間や費用を理由に請求を諦めていた方も、ぜひ弁護士に相談することを検討してみてください。

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