更新日:2026年9月14日 (月)

公開日:2026年9月3日 (木)

借金を原因に離婚できる?法的な離婚事由や返済義務を解説

借金を原因に離婚できる?法的な離婚事由や返済義務を解説 借金を原因に離婚できる?法的な離婚事由や返済義務を解説

サマリー

配偶者のギャンブルや浪費による借金が発覚し、「借金を理由に離婚できるのか」「自分にも返済義務があるのではないか」と不安を抱えている方も多いのではないでしょうか。夫婦間の合意があれば借金を理由とする離婚は可能ですが、裁判離婚では婚姻関係の破綻などが要件となります。また、借金の使途や名義によって、返済義務の有無や財産分与での清算方法も異なります。この記事では、借金を原因とする離婚の可否や手続きの流れ、返済義務や財産分与の扱いについて解説します。

借金は法律上の離婚原因(法定離婚事由)になるのか

配偶者の借金を理由に離婚を求める場合、進める手続きの種類や相手が合意しているかどうかによって法律上の扱いは大きく異なります。

合意があれば理由を問わず離婚できる

夫婦間の話し合いによって進める「協議離婚」や、家庭裁判所の調停手続きを通じて合意を目指す「調停離婚」の場合、双方が離婚に合意していればどのような理由であっても離婚が成立します。

借金の使途が生活費の不足によるものであっても、ギャンブルなどの個人的な浪費であっても、双方が納得して離婚届を提出したり調停条項に合意したりすれば、法律上の離婚事由の有無は問われません。

裁判離婚では単なる借金だけでは認められにくい

一方で、相手が離婚に応じず裁判(訴訟)によって離婚を目指す場合は、民法第770条第1項に規定されている「法定離婚事由」のいずれかに該当している必要があります。

民法の条文には「借金」という項目が直接定められているわけではないため、配偶者に借金があるという事実単体だけでは、裁判で直ちに離婚が認められる可能性は高くありません。

裁判で借金を理由に離婚を認めてもらうには、その借金によって婚姻関係が修復不可能なほど破綻していると法的に判断される必要があります。

法定離婚事由に該当する可能性がある具体例

借金が関係する事案において、裁判で法定離婚事由(特に「悪意の遺棄」や「婚姻を継続し難い重大な事由」)と認められやすい事情としては、主に以下のようなケースが挙げられます。

  • ギャンブルや過度な浪費、風俗通いなどを理由に多額の借金を重ね、注意されてもやめない
  • 自身の借金返済を優先し、長期間にわたり家族に生活費を渡さない(悪意の遺棄に該当する可能性)
  • 配偶者に無断で名義を使って借入を行ったり、配偶者に返済を強要したりする
  • 借金が原因で家庭内暴力(DV)やモラハラ行為が恒常化している
  • 度重なる隠し借金や虚偽の説明によって夫婦間の信頼関係が完全に失われている

裁判では、借金の金額だけでなく、借金を作った動機や使途、家計への影響、反省の有無、これまでの夫婦関係の実態などを総合的に考慮して判断が下されます。

借金を理由に離婚を進める手続きの流れ

配偶者の借金を理由に離婚を検討する場合、法的な手続きは段階を踏んで進めていくのが一般的です。まずは当事者同士の話し合いから始め、合意に至らない場合に裁判所の手続きを利用する流れが基本となります。

ステップ1:夫婦間の話し合いによる協議離婚

離婚手続きの第一段階は、夫婦間で直接話し合いを行って合意を目指す協議離婚です。協議離婚では双方が納得していれば借金の使途などを問わず、離婚届を提出することで成立します。

ただし、相手が借金の総額や使途を正確に開示しない場合、財産分与や養育費などの取り決めが不十分になるおそれがあります。条件について合意できた場合でも、後々のトラブルを防ぐために離婚協議書を作成し、可能であれば公正証書にしておくことが望まれます。

ステップ2:家庭裁判所での離婚調停

相手が離婚に応じない場合や、借金の清算・生活費の分担などをめぐる話し合いが平行線をたどる場合は、家庭裁判所に夫婦関係調整調停(離婚調停)を申し立てます。

調停では調停委員会が双方から個別に話を聞き、合意に向けた仲介を行います。当事者同士が直接対面せずに意見を伝えられるため、感情的な対立を避けて冷静に話し合いを進めやすい点が特徴です。

日本の法制度では調停前置主義が定められており、原則として調停を経ずにいきなり裁判を起こすことはできません。

ステップ3:調停不成立時の離婚裁判(訴訟)

調停でも合意が得られず不成立(不調)となった場合、最終的な手段として家庭裁判所に離婚訴訟(離婚裁判)を提起します。裁判では裁判官が判決によって離婚の可否を決定します。

裁判で離婚を認めてもらうためには、借金によって婚姻関係が修復不可能なほど破綻している事実を客観的な証拠に基づいて主張・立証することが重要です。借入残高がわかる利用明細や督促状、クレジットカードの利用履歴、生活費が渡されていなかったことを示す預金通帳の記録などが有力な資料となります。

配偶者の借金に対する返済義務と財産分与への影響

配偶者が多額の借金を抱えている場合、離婚時や離婚後に自分自身へ返済請求が及ぶのではないかと不安を感じる方は少なくありません。また、借金の存在が離婚時の財産分与にどのような影響を与えるのかについても、法的な仕組みを正しく把握しておく必要があります。

配偶者が作った借金の返済義務

日本の民法では「夫婦別産制」が採用されており、婚姻中であっても各自の名義で得た財産や負った債務は個人のものとして扱われます。そのため、原則として名義人以外の配偶者が借金の返済義務を負うことはありません。

配偶者の個人的な浪費やギャンブルによる借金について、名義人でない配偶者が返済を肩代わりする法的な義務はありません。

ただし、例外的に配偶者にも返済責任が生じるケースが存在します。代表的な例として、配偶者が借金の「保証人」や「連帯保証人」になっている場合が挙げられます。この場合、離婚が成立しても保証契約の効力は自動的に消滅しないため注意が必要です。

ご自身が保証人や連帯保証人になっている場合、離婚しても債権者に対する返済義務は残り続けます。

もう一つの例外は、民法第761条に規定されている「日常家事債務」に該当する場合です。日々の食費や水道光熱費の支払い、子どもの学費や医療費など、家族の共同生活を維持するために生じた借金については、夫婦が連帯して返済責任を負うとされています。

借金がある場合の財産分与の清算方法

財産分与は、婚姻期間中に夫婦の協力によって築かれた共有財産を公平に分ける手続きです。清算の対象には預貯金や不動産といったプラスの財産だけでなく、婚姻生活のために生じたマイナスの財産(借金)も含まれる場合があります。

住宅ローンや自動車ローン、家族の生活費補填のために生じた借金は、夫婦全体の債務として扱われます。財産分与の実務では、夫婦共有のプラスの財産総額から生活関連の借金総額を差し引き、残ったプラスの財産を原則として2分の1ずつ分け合う方法が一般的です。

一方で、配偶者が趣味やギャンブル、浪費などの個人的な目的で作った借金は「個人の債務(特有財産)」とみなされます。この場合、財産分与において共有財産から差し引かれることはなく、借金を作った名義人本人が単独で返済を背負うことになります。

借金の種類・目的 配偶者の返済義務 財産分与での扱い
ギャンブル・浪費・個人の趣味 原則なし(保証人を除く) 個人の債務となり、共有財産から控除しない
食費・光熱費などの日常家事債務 あり(夫婦で連帯責任) 夫婦共有の債務としてプラス財産から控除
住宅ローン・教育ローンなど 保証人・連帯債務者でなければなし 夫婦共有の債務としてプラス財産から控除

なお、夫婦全体の借金総額がプラスの財産総額を上回っている(債務超過の)状態では、財産分与においてマイナス分を分配することは原則として行われません。借金の使途や名義によって法的な扱いが大きく異なるため、事前に事実関係を整理しておくことが重要です。

借金を原因とする離婚で慰謝料は請求できるか

離婚に伴う慰謝料は、配偶者の不法行為によって精神的苦痛を被った場合に認められる損害賠償です。そのため、配偶者に借金があるという事実や単なる浪費行為そのものは直ちに不法行為と評価されにくく、借金のみを理由とした慰謝料請求は認められないケースが一般的とされています。

慰謝料請求が認められる可能性があるケース

借金そのものだけでなく、借金に関連して他の有責行為や不法行為が存在している場合には、慰謝料請求が認められる余地があります。婚姻関係を破綻に至らしめた直接的な違法行為があるかどうかが重要な判断要素となります。

  • 不貞行為(浮気・不倫)の交際費や貢ぎ物のために借金を重ねていた場合
  • 借金を問いただした配偶者に対して暴力(DV)や激しいモラハラ行為に及んでいた場合
  • 自身の借金返済を優先して家庭に生活費を一切渡さず、家族を経済的に放置していた場合(悪意の遺棄)

このように、配偶者が不貞行為や暴力、生活費の不払いといった明確な有責行為を行っており、それによって夫婦関係が破綻したと認められる場合には、当該行為を理由とした慰謝料請求が検討されます。

相手が無資力の場合における実務上の注意点

法的に慰謝料請求が認められる状況であっても、実務上は「相手から実際に金銭を回収できるか」という点が大きな課題となります。多額の借金を抱えている配偶者はすでに手元の資産や信用を失っており、無資力(支払い能力がない状態)に陥っているケースが少なくありません。

相手が無資力の場合、調停条項や判決で慰謝料の支払いが定められても、現実的な回収が極めて困難になるリスクがあります。

相手に資力がない状態で無理に慰謝料の支払いを求め続けると、手続きが長期化して精神的な負担が増す要因にもなり得ます。回収の見込みが薄い場合は、慰謝料の獲得に固執するよりも、速やかな離婚の成立によって経済的・精神的な関係を解消することや、将来の養育費の確保を優先するなど、現実的な落としどころを見極める視点も大切です。

借金が絡む離婚問題についての弁護士への相談

借金の法的な性質と見通しの整理

配偶者の借金が問題となる離婚では、負債の名義や使途によって法的な扱いが細かく分かれます。日々の生活を維持するための債務なのか、個人の浪費による債務なのかを法的な観点から明確に区別し、客観的な見通しを立てることが重要です。

相手が借金の開示に応じない場合や総額が不明瞭な場合でも、どのような資料を収集・確認すべきかを整理することで、離婚手続きを円滑に進める足がかりとなります。

財産分与や養育費の適正な取り決め

借金が存在する状態での財産分与は、プラスの財産との相殺や特有財産の切り分けなど計算が複雑になりがちです。適切な条件設定を行わないと、本来負う必要のない債務を実質的に負担させられるなどの不利益が生じるおそれがあります。

借金問題を抱える配偶者との離婚では、財産分与や養育費の取り決めを曖昧にせず、将来の不払いを防ぐ対策を講じることが重要です。

相手の資力に不安がある場合であっても、算定基準を踏まえた現実的な金額設定や、公正証書の作成を通じた執行力の確保など、将来的なトラブルを防ぐための準備が求められます。

状況に応じた専門家への相談

協議や調停、裁判といった各手続きにおいて、借金の経緯や夫婦関係の実態を法的に主張・立証していく作業には慎重な判断が必要です。弁護士へ相談することで、自身が置かれている状況の法的な位置づけを把握し、冷静に対処方針を検討できます。

配偶者の借金に関する離婚条件の調整や手続きの流れについて疑問や不安がある場合は、法的な助言を得るために弁護士への相談を検討するとよいでしょう。

まとめ

配偶者の借金を理由とする離婚は、双方が合意していれば協議や調停で成立しますが、裁判では婚姻関係の破綻が認められる必要があります。また、夫婦別産制により原則として配偶者の個人的な借金を肩代わりする義務はありませんが、保証人になっている場合や日常家事債務には注意が必要です。

借金の使途や名義、相手の資力によって財産分与や慰謝料の請求方針は異なります。適正な条件でスムーズに手続きを進めるためにも、事実関係を整理し、必要に応じて弁護士の助言を受けながら冷静に対処していくことが大切です。

コラム監修者

Shunsuke Teragaki

Shunsuke Teragaki

所属:代表(東京オフィス)

広島県広島市出身。修道高校、慶應義塾大学商学部、青山学院大学法科大学院を卒業後、新司法試験に合格し最高裁判所司法研修所を修了。弁護士として法曹界に入り、個人・法人問わず幅広い分野の相談・交渉に取り組む。ネクスパート法律事務所の代表弁護士として、依頼者に最適な見通しと戦略的な解決策を示すことを信条とし、丁寧かつ粘り強い対応で信頼を築いている。

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