更新日:2026年2月26日 (木)
公開日:2024年8月14日 (水)
不倫慰謝料請求の弁護士費用相場|費用倒れを防ぐ選び方
サマリー
配偶者の不倫相手や配偶者に慰謝料を請求したいと考えつつも、「弁護士費用が高額になり、手元に残る金額が少なくなるのではないか」「費用倒れにならないか」と不安を感じる方は少なくありません。慰謝料請求にかかる弁護士費用は、請求単独か離婚も併せて行うか、あるいは手続きの種類によって変動します。この記事では、不倫慰謝料請求にかかる弁護士費用の相場や内訳、費用倒れを防ぐためのシミュレーションや判断のポイントを詳しく解説します。
不倫の慰謝料請求にかかる弁護士費用の内訳と相場
弁護士費用は各法律事務所が独自に設定できるため一律ではありませんが、一般的な費用の構造は主に「相談料」「着手金」「報酬金」「実費」「日当」の5項目から成り立っています。
初回相談料については無料としている事務所もあれば、30分ごとに一定額を設定している事務所もあります。契約前に各項目の意味と発生条件を把握しておくことが大切です。
着手金と報酬金(成功報酬)の相場
着手金は、結果の成否にかかわらず事件に着手する段階で支払う費用です。不倫相手との示談交渉を依頼する場合は10万〜20万円程度、裁判(訴訟)に発展する場合は20万〜30万円程度が一般的な相場とされています。
交渉から裁判へ移行する際に追加着手金が発生する事務所もあるため、委任契約を結ぶ際に追加費用の有無や条件を確認しておくと安心です。
報酬金は事件が終了し、慰謝料を獲得できた場合にその経済的利益に応じて支払う費用です。獲得した慰謝料額の10%〜20%程度が目安とされており、獲得額に応じて段階的に割合が変わる料金体系を採用している事務所もあります。
| 費用項目 | 概要 | 一般的な金額・割合の目安 |
|---|---|---|
| 着手金(交渉) | 示談交渉に着手する際に支払う初期費用 | 10万円〜20万円程度 |
| 着手金(裁判) | 訴訟手続きに着手する際に支払う初期費用 | 20万円〜30万円程度 |
| 報酬金 | 慰謝料を回収できた際に支払う成功報酬 | 獲得慰謝料額の10%〜20%程度 |
| 実費 | 郵便代、印紙代、交通費などの実際の支出 | 数万円程度(事案により変動) |
| 日当 | 裁判所出廷や現地調査に伴う時間拘束の費用 | 1回あたり1万円〜3万円程度 |
実費と日当の発生条件
実費とは、内容証明郵便の郵送費、裁判所に納める印紙代、証拠取得にかかる手数料、交通費など、事件処理に実際にかかった諸経費を指します。事務所によっては事務手数料として一括で設定されていることもあります。
日当は、弁護士が裁判所へ出廷したり、遠方での現地調査や面談のために移動・拘束されたりした際に発生する費用です。相手方が遠方に居住している場合は移動回数に応じて日当や交通費が増える可能性があります。
見積もりを比較する際は、着手金の金額だけでなく、実費の精算方法や日当が発生する条件も含めた総額を事前に確認することが重要です。
慰謝料請求のみと離婚手続きを含む場合での費用の違い
不倫トラブルで弁護士に依頼する際、不倫相手だけに慰謝料を請求するのか、それとも配偶者との離婚手続きも同時に進めるのかによって、発生する費用の総額や体系が大きく異なります。

請求の対象者による事件数の違い
夫婦関係を継続し、配偶者の不倫相手に対してのみ慰謝料請求を行う場合は、相手方が1名となるため、通常は単一の「慰謝料請求事件」として処理されます。
これに対して、不倫相手への慰謝料請求と並行して配偶者との離婚交渉や慰謝料請求を進める場合は、請求の相手方や法律上の争点が異なるため、2件分の事件として扱われることが一般的です。
相手方が分かれるケースでは、慰謝料請求事件と離婚事件のそれぞれに着手金や報酬金が設定される傾向があります。
手続きの種類(協議・調停・裁判)に伴う費用の変動
離婚手続きを併せて依頼する場合、どの手続き段階で解決を目指すかによっても弁護士費用が変動します。裁判所を介さない話し合いから調停、裁判へと進むにつれて対応事項が増えるため、着手金額も段階的に高くなる傾向が見られます。
| 依頼する手続きの種類 | 着手金の一般的な目安 |
|---|---|
| 協議離婚(当事者間での話し合い・交渉) | 30万円前後 |
| 調停離婚(家庭裁判所での調停手続き) | 40万円前後 |
| 裁判離婚(家庭裁判所への離婚訴訟) | 50万円前後 |
交渉(協議)段階で依頼したものの合意に至らず調停や裁判へ移行する際には、当初の着手金とは別に追加着手金が発生する料金体系をとる事務所もあります。
弁護士費用は各法律事務所が独自に定めているため、依頼前に手続きごとの料金設定や追加費用の発生条件を明確に確認しておくことが重要です。
費用倒れを防ぐための考え方と獲得額別シミュレーション
費用倒れとは、弁護士に支払う費用の総額が最終的に回収できた慰謝料額を上回ってしまい、経済的な利益が残らない状態を指します。慰謝料請求を行う際は、獲得できる見込み額と発生する費用のバランスを事前に把握しておくことが大切です。

着手金の有無や安さだけで判断せず、報酬金や実費、日当などを含めた「費用総額」で見積もりを比較することが費用倒れを防ぐ基本となります。
慰謝料獲得額別の費用・手取り額シミュレーション
慰謝料請求のみを弁護士に依頼した場合を想定し、着手金20万円、報酬金20%、実費等5万円(いずれも一般的な相場に基づく試算)として、獲得額に応じた手取り額のシミュレーション例を紹介します。
| 獲得慰謝料額 | 着手金 | 報酬金(20%) | 実費等目安 | 費用総額 | 手元に残る額 |
|---|---|---|---|---|---|
| 100万円 | 20万円 | 20万円 | 5万円 | 45万円 | 55万円 |
| 150万円 | 20万円 | 30万円 | 5万円 | 55万円 | 95万円 |
| 200万円 | 20万円 | 40万円 | 5万円 | 65万円 | 135万円 |
| 300万円 | 20万円 | 60万円 | 5万円 | 85万円 | 215万円 |
獲得できる慰謝料額が高くなるほど、費用総額が回収額全体に占める割合は下がり、手元に残る金額の割合が増える傾向にあります。一方で、獲得額が数十万円にとどまる見通しの場合は、手元に残る金額がわずかになるか、費用倒れのリスクが高まります。
回収見込み額と相手方の資力を踏まえた検討
費用倒れを回避するためには、証拠の強さや不貞行為の期間などから客観的な回収見込み額を検討することに加え、請求相手に慰謝料を支払うだけの資力や定職があるかを確認することも重要です。
相手方に支払い能力が全くない場合、どれほど法的に正当な請求であっても実際の回収が困難になり、弁護士費用のみが発生するリスクがあります。
弁護士への依頼には相手方との直接交渉を避けられる精神的なメリットもありますが、経済的な負担と回収可能性を冷静に比較し、依頼すべきかどうかを判断することが推奨されます。
慰謝料請求と弁護士費用に関するよくある質問(FAQ)
不倫の慰謝料請求や弁護士への依頼にあたって、費用の負担方法や法律相談時の手続きに関して多く寄せられる質問と一般的な考え方を解説します。
Q. 慰謝料請求にかかった弁護士費用は相手に請求できますか?
不倫の慰謝料請求にかかる弁護士費用は、原則として依頼者本人が負担する仕組みとなっています。交渉による示談や裁判上の和解で解決する場合には、相手方に弁護士費用を別途負担させる条項を設けることは実務上多くありません。
ただし、裁判で判決まで進み不法行為が認められた場合は、認容された慰謝料額の約10%が弁護士費用相当額の損害として相手方への請求に加算される傾向があります。基本的には全額回収を前提とせず、自己負担を見込んで計画を立てることが重要です。
| 解決方法 | 弁護士費用の相手方への請求傾向 | 実務上の留意点 |
|---|---|---|
| 判決 | 一部認められる場合がある | 認容された慰謝料額の約10%が損害として加算される傾向 |
| 示談・和解 | 原則として請求しない | 合意内容に含まれることは稀であり、各自負担となるケースが一般的 |
Q. 法律相談の際に配偶者や相手方の名前を聞かれるのはなぜですか?
法律相談の受付時に相手方の氏名を確認するのは、弁護士が「利益相反」に該当しないかを調査するためです。弁護士法および弁護士職務基本規程により、相手方からすでに相談や依頼を受けている事件について、利害が対立する側からの依頼を受けることは禁じられています。
この確認は、相談者の秘密を守り、公正な事件処理を行うために不可欠な手続きです。聞き取られた氏名などの個人情報は、利益相反の確認に必要な範囲でのみ取り扱われます。
Q. 相談した弁護士が後に相手方の代理人になることはありますか?
相談を受けた弁護士が、後に同一の紛争において相手方の代理人として職務を行うことは原則としてありません。弁護士には法令上の守秘義務が課されており、相談内容の秘密は厳格に保護されます。
正式な依頼契約を結ばずに相談のみで終了した場合であっても、実質的な相談を受けている限り利益相反の制限が適用されます。そのため、相談した内容が相手方に漏れたり、相手方の味方として交渉に出てきたりする心配はありません。
見通しや費用総額を確認するための弁護士への相談
不倫慰謝料の請求を検討する際は、手元の証拠や事案の状況に応じた見通しを立て、費用の内訳やリスクを把握したうえで方針を決定することが大切です。
具体的な事情や証拠に応じた見通しの把握
不倫の慰謝料請求において実際にどの程度の金額が回収できるかは、婚姻期間や不貞行為の期間、手元にある証拠の内容、相手方の資力といった個別の事情によって大きく異なります。
一般的な相場情報のみから自己判断することは難しいため、具体的な事実関係や証拠を整理したうえで弁護士に相談し、客観的な回収見込み額や進め方の見通しを確認することが役立ちます。
相談時に確認しておきたい費用とリスクの説明
法律相談を利用する際は、着手金や報酬金の割合だけでなく、実費や日当を含めた費用総額の概算について具体的な提示を受けられるかを確認することが重要です。
提示された報酬基準の算出根拠が明確であるか、難しい法律用語を避けて分かりやすく説明してくれる姿勢があるかどうかも、判断の基準となります。
また、慰謝料の回収が困難になる可能性や費用倒れのリスクなど、相談者にとって不利益となり得る点についても率直に説明がなされるかを見極める必要があります。
不倫の慰謝料請求を進める際は、回収見込み額と費用総額のバランスを事前に丁寧に確認し、納得できる方針を選択することが大切です。
まとめ
不倫の慰謝料請求にかかる弁護士費用は、着手金や報酬金だけでなく、実費や日当なども含めた総額で把握することが重要です。請求対象が不倫相手のみか離婚を伴うかによっても費用体系が異なります。
費用倒れを防ぐためには、証拠の状況や相手方の資力を踏まえた客観的な回収見込み額を事前に検討することが欠かせません。
個別の事情に応じた見通しや費用の内訳を確認し、納得して手続きを進めるためにも、まずは弁護士への相談を検討してみるとよいでしょう。
コラム監修者
SHIZU ISHIDA
所属:東京オフィス
広島県広島市出身。青山学院大学心理学科、東海大学法科大学院卒業後、新司法試験に合格し最高裁判所司法研修所を修了。弁護士として法曹界に入り、刑事、民事、法人案件等幅広い分野の専門知識を習得。弁護士登録10年目にしてネクスパート法律事務所に入所し、現在は主に離婚事件に注力している。