サマリー
原状回復費用が高すぎると感じたらすべきことは?相談窓口はどこ?をテーマに、費用の内訳や負担関係、相談先や相談時に確認したい点を解説。貸主・借主・権利者が交渉や手続きを進める際のポイントを整理します。
賃貸物件の退去時(解約時)には、貸主(大家や管理会社)から原状回復費用が請求されることが一般的です。しかし、提示された退去費用の請求額が相場より高額であると感じたり、不当な請求ではないかと不安に思ったりした場合、借主はどのように対処すればよいのでしょうか。
この記事では、以下の点について解説します。
原状回復費用が不当に高いと感じた際の具体的な対処法
退去費用(原状回復費用)が高額になりやすいケースと原因
トラブル発生時における信頼できる専門の相談窓口
原状回復費用の高額請求に納得がいかない場合の対処法
請求された原状回復費用が不当に高いと感じた際は、直ちに合意や支払いを行わず、実務上重視される以下のポイントを順に確認することが重要です。
賃貸借契約書の特約事項を確認する
まずは、入居時の契約締結時に交付された賃貸借契約書の内容を再確認します。 実務上、退去時の修繕費用負担に関する特約(原状回復特約など)が定められているケースが多いためです。
具体的には、次のような特約条項が記載されている傾向があります。
退去時の専門業者によるハウスクリーニング代は借主(賃借人)の負担とする特約
ペット飼育時には敷金を1か月分上乗せし、退去時に全額敷金引き(償却)とする特約
貸主側からの請求内容が、契約書上の特約事項に合致している正当なものかを見極めることが解決への第一歩となります。
国土交通省の原状回復ガイドラインを参照する
国土交通省が公表している、原状回復をめぐるトラブルとガイドライン(以下、ガイドライン)の内容を把握することも不可欠です。ガイドラインには、経年劣化や通常損耗は貸主負担とするなど、実務上妥当とされる費用負担の一般的な基準が明記されています。過去の裁判例やQ&Aも掲載されているため、ご自身の状況と照らし合わせることで、請求された修繕費用が法的に適正な範囲内であるかを判断する材料となります。
貸主に対して請求費用の根拠と明細を求める
請求額に納得ができない場合は、貸主や管理会社に対して修繕費用の具体的な根拠を求めることが推奨されます。原状回復費用の見積書や内訳明細書の開示を依頼し、単価や施工面積、請求対象となる損傷箇所の詳細を精査しましょう。
実務上、預けた敷金から修繕費用が差し引かれるケースが多いですが、差し引く金額の根拠(借主の過失による損耗である事実など)については貸主側に立証責任があると考えられています。 明細の提示や合理的な説明を不当に拒否された場合は、金額の妥当性が証明されない限り敷金からの控除や追加請求には応じられない旨を冷静に伝えることが実務上有効です。
退去時の原状回復費用が高額になりやすいケース
退去費用は可能な限り低く抑えたいと考えるのが一般的ですが、借主の善管注意義務違反などにより、例外的に高額な請求が発生するケースも存在します。具体的に、以下の4つのような利用状況に該当する場合、借主負担の修繕箇所が増加し、請求額が跳ね上がる傾向にあります。
ペットを飼育していた場合
室内でペットを飼育していた物件では、退去時のクリーニング代や修繕費が高額になりやすいのが実務上の特徴です。ペットによるクロス(壁紙)の引っかき傷や柱の損傷などは、借主の故意・過失等による特別損耗とみなされ、通常使用による経年劣化としては扱われません。例えば、ペットがフローリングに粗相をした際、適切な清掃を怠り床材が腐食してしまった場合などは、張り替え工事等により原状回復費用が大幅に増加します。
貸主の承諾なく無断でDIYを行った場合
賃貸物件において、貸主の事前の許可を得ずに借主が独自にDIY(改装修繕)を実施した場合も、費用請求が高額になる傾向があります。民法上の原状回復義務とは、通常損耗や経年劣化を除き、物件を入居時の状態に戻して明け渡すことを指すため、大掛かりな造作を加えた場合は解体や修復に多額の工事費用がかかる可能性が高いといえます。契約上で無断の模様替え等が禁止されているにもかかわらず実施した場合、修繕費用のほかに契約違反に基づく違約金や損害賠償を別途請求されるリスクも想定されます。
日常的な清掃や手入れを怠った場合
日常の掃除やメンテナンスを怠った結果として設備を著しく汚損させた場合も、借主の原状回復義務の範囲と判断されやすく、請求額が高くなります。ガイドラインの基準に照らし合わせると、具体的には次のような事例が借主負担と判断される傾向にあります。
コンロ周りや換気扇の油汚れを長期間放置し、通常の清掃では除去できない状態にしたケース
浴室の換気や清掃を怠り、頑固なカビを広範囲に繁殖させたケース
窓ガラスの結露を拭き取らずに放置し、サッシや周囲の壁紙にカビや腐食を発生させたケース
室内で日常的に喫煙をしていた場合
室内での喫煙(タバコのヤニ汚れや臭い)も、原状回復費用を増大させる代表的な要因です。タバコのヤニによるクロスの著しい変色や強い臭いの付着は通常損耗とはみなされず、居室全体の壁紙張替えや特殊な消臭作業が必要となり、多額の費用が借主負担として算定されるのが一般的です。さらに、契約上室内での喫煙が明確に禁止されている禁煙物件においては、用法遵守義務違反としてクリーニング代以上の違約金や損害賠償を求められる事案も存在します。
原状回復費用のトラブルに関する主な相談窓口
自力での交渉が困難な場合や、請求額が依然として不当に高いと感じる場合は、以下の専門機関や専門家への相談を検討することが早期解決の鍵となります。
独立行政法人国民生活センター(消費生活センター)
消費生活センターは、消費者と事業者(貸主や不動産会社など)の間に生じたトラブル全般に関して、専門の相談員が公正な立場で助言やあっせんを行う公的な機関です。不動産の退去費用に関する相談実績も豊富であるため、高額請求への対処法がわからない場合や管理会社の対応に疑念がある場合の一次相談先として適しています。局番なしの消費者ホットライン188に電話をかけることで、お住まいの地域の消費生活相談窓口を案内してもらうことが可能です。
公益財団法人日本賃貸住宅管理協会
公益財団法人日本賃貸住宅管理協会は、多数の賃貸住宅管理会社が加盟する組織であり、適正な賃貸管理や住環境の提供を推進する機関です。一般の居住者を対象とした賃貸トラブルの苦情相談窓口を設置しており、所定のWebフォーム、FAX、または郵便による相談を受け付けています。原則として回答は電話等で行われますが、事案によっては専門的な助言が得られるまでに2から3週間程度の期間を要する場合がある点には留意が必要です。
弁護士
当事者同士の交渉が暗礁に乗り上げた場合や、貸主側が全く協議に応じない悪質なケースでは、法的な解決を図るために弁護士へ相談することが最も確実な選択肢となります。民法に基づく敷金返還請求など、不動産トラブルの解決実績が豊富な弁護士であれば、ガイドラインや判例を踏まえた上で、個別事情に応じた最適な法的見解と方針を提示できます。また、弁護士が正式に代理人として内容証明郵便の送付や交渉を行うことで、強硬な態度をとっていた貸主側が譲歩し、適正な金額で合意に至る可能性が高まります。
近年は初回の法律相談を無料で受け付けている法律事務所も多いため、費用対効果を含めて事前に見通しを確認するためにも、積極的に無料相談枠を活用することが推奨されます。
まとめ
引っ越し等の退去時に見覚えのない傷や不当な高額請求を受ければ、多くの借主が不安や精神的なストレスを抱えることになります。
貸主側の請求を鵜呑みにして安易に合意書へ署名や支払いをする前に、まずは契約書の特約やガイドラインの基準を確認し、費用内訳が客観的に妥当なものであるかを冷静に精査することが重要です。
ネクスパート法律事務所には、原状回復トラブルや敷金返還請求等の不動産案件について豊富な解決実績と実務経験を有する弁護士が複数在籍しています。ガイドラインを逸脱した不当な退去費用の請求などでお困りの際は、個別事情に応じた法的アドバイスを提供いたしますので、一人で悩まずに当事務所までご相談ください。
コラム監修者
SHIZU ISHIDA
所属:東京オフィス
広島県広島市出身。青山学院大学心理学科、東海大学法科大学院卒業後、新司法試験に合格し最高裁判所司法研修所を修了。弁護士として法曹界に入り、刑事、民事、法人案件等幅広い分野の専門知識を習得。弁護士登録10年目にしてネクスパート法律事務所に入所し、現在は主に離婚事件に注力している。