残業代請求(みなし・固定残業代制度の方)

固定残業代制度について


「うちの会社は固定残業代制度を採用しているから、何時間働いても残業代がでないんだよね。」と嘆いているあなた!
固定残業代制度を正しく理解すれば、会社に残業代を請求できる場合があります。

固定残業代制度とは

基本給または各種手当などに、一定時間分の時間外労働等に対する割増賃金を含めて支給する制度のことです。要するに、一定時間分の残業代を固定給に織り込んで払いますという制度です。

固定残業代制度の問題点は、残業代を低く抑えるために、会社側に都合よく運用されている実態があることです。

例えば、毎月20時間分の残業代を固定給に含めて支払うことにしている会社があるとします。労働者が実際に20時間未満の残業しかしないのであれば、労働者にとって有利な制度です。
しかし、毎月20時間を超える残業が常態化しているような会社が、残業代を全額支払いたくないために採用することがあるのです。

上記の例で、会社が労働者に対して固定残業代しか支払わないのであれば、労働基準法に違反することになります。

また、そもそも20時間の固定残業代制度が無効となり、手当を残業代ではなく割増賃金の基礎となる賃金として計算して支払うことを請求することができる場合もあります。
そこで、固定残業代制度が合法となるには、次の要件を満たす必要があります。

① 固定残業代制度を採用することが労働契約の内容になっており、支払われた手当の趣旨としても、残業代として認められること

② 通常の労働時間に対する賃金部分と固定残業代部分が明確に区別されていること

③ 労働基準法所定の計算方法で算定した残業代の額が、固定残業代の額を上回るときは、その差額(固定超過部分の割増賃金)を支払うことが合意されていること


では、具体的に見ていきましょう。

労働契約の内容になっていること

固定残業代制度は、労働者の賃金という最も重要な労働条件に関する制度です。したがって、固定残業代制度をある特定の労働者に対して適用するためには、その労働者と使用者との間で、固定残業代制度を採用するという個別の労働契約を締結する必要があります。

もっとも、個別の労働契約がない場合でも、就業規則に固定残業代制度に関する規定があれば労働契約の内容となりますが、その就業規則が労働者に周知されていることが必要です。
固定残業代制度に関して、個別の労働契約も就業規則の規定もない場合や、就業規則に規定があっても周知されていない場合には、その固定残業代制度は労働契約の内容とはいえないので、当然、効力を生じないことになります。

では、入社当初は個別の労働契約も就業規則の規定もなかったが、その後、就業規則を変更して固定残業代制度を導入した場合、問題はないのでしょうか。 この点、就業規則は、労働者の不利益に変更することは原則として禁止されています(労働契約法第9条)。例外的に、その変更が合理的なものである場合に限り、有効となるのです(同法第10条)。

では、合理的なものとはどのような場合でしょうか。
第四銀行事件(平成9年2月28日)で、最高裁は次のように判示しています。

「就業規則の変更によって労働者が被る不利益の程度、使用者側の変更の必要性の内容・程度、変更後の就業規則の内容自体の相当性、代償措置その他関連する他の労働条件の改善状況、労働組合等との交渉の経緯、他の労働組合又は他の従業員の対応、同種事項に関する我が国社会における一般的状況等を総合考慮して判断すべきである。


基本給と固定部分が明確に区別されていること

固定残業代制度を採用した場合、通常の基本給に相当する部分はいくらなのか、また、何時間分の残業代が固定部分とされているのかが分からなければ、労働者は、通常の割増賃金を計算することができず、固定部分が適正な割増賃金を反映しているのか判断できません。

したがって、固定残業代制度が有効となるためには、通常の労働時間の賃金に当たる部分と時間外の割増賃金に当たる部分とを判別することができるようになっていなければなりません(高知県観光事件、テックジャパン事件)。

例えば、月20時間分の残業代を固定部分として支給する場合は、「基本給24万円、固定部分3万7500円、合計27万7500円」のように明確に区分する必要があります。


固定超過部分の割増賃金を支払う合意

ある会社が毎月20時間分の残業代を固定給に含めて支払うという固定残業代制度を採用しているとします。ある月の残業時間が30時間になった場合、超過した10時間分の残業代を支払う合意が必要ということです。


判例

最後に、有名な判例をご紹介します。最高裁判所平成24年3月8日(テックジャパン事件)判決です。

【事案の概要】

(1) 人材派遣業に勤務する労働者が、派遣元の使用者に対して残業代の支払いを請求。これに対し、使用者側は、基本給には時間外労働に対する割増賃金も含まれていたと反論。

(2) 使用者は、労働者に対して基本給41万円が支給されており、労働者と使用者との間では「月間総労働時間が180時間を超えた場合にはその超えた時間につき1時間当たり一定額を別途支払い、月間総労働時間が140時間に満たない場合にはその満たない時間につき1時間当たり一定額を減額する旨の約定」がなされていた。

(3) 最高裁判所第一小法廷は、月180時間以内の労働時間中の時間外労働に対しても残業代を支払うべきと判示。



【判示の骨子】

(1) 本件雇用契約は、月額41万円の全体が基本給とされており、その一部が他の部分と区別されて時間外の割増賃金とされていたなどの事情はうかがわれない。また、割増賃金の対象となる1か月の時間外労働時間は、月によって勤務すべき日数が異なること等により相当大きく変動し得るものである。そうすると、月額41万円の基本給について、通常の労働時間の賃金に当たる部分と時間外の割増賃金に当たる部分とを判別することはできない。

(2) 本件雇用契約において、基本給は月額41万円と合意されていること、時間外労働をしないで1日8時間の勤務をした場合の月間総労働時間は、月によって変動し得るものの、就業規則の定めにより相応の日数が休日となることを踏まえると、おおむね140時間から180時間までの間となることからすれば、本件雇用契約における賃金の定めは、月額41万円の基本給が支払われるという通常の月給制による賃金を定めたものと解するのが相当である。
したがって、「月間総労働時間が180時間を超える場合に1時間当たり一定額を別途支払い、月間総労働時間が140時間未満の場合に1時間当たり一定額を減額する。」との約定も、法定の労働時間に対する賃金を定める趣旨のものと解されるのであって、月額41万円の基本給の一部が時間外労働に対する賃金である旨の合意がされたものということはできない。


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