離婚調停が不成立になったら?

離婚という人生における重要な決断に際し、家庭裁判所に離婚調停を申し立てることは、法的な手続きの第一歩として非常に適切です。しかし、調停の過程で相手方との意見が食い違い、話し合いが進まなくなると、「もし調停がうまくいかなかったら、どうなってしまうのだろうか?」という強い不安を抱かれることと思います。

離婚調停不成立は、当事者同士の話し合いによる解決が不可能だったことを示す一つの区切りに過ぎません。日本では、調停前置主義が採用されており、離婚訴訟を提起する前に、原則として調停を経ることが義務付けられているからです。

調停が不成立に終わった場合、当事者は法律に従って離婚訴訟を提起できる段階に進み、訴訟を選択したときには、裁判官が法に基づいて強制力のある解決を下すことが定められています。

本記事では、離婚調停不成立の定義から、その後の訴訟で離婚を勝ち取るための具体的な準備について専門的な視点から詳細に解説します。

離婚調停不成立とは何か?|典型的な終了パターン

離婚調停不成立とは、調停委員会が当事者双方の間で離婚の意思または条件について、話し合いを継続しても合意に至る見込みがないと判断した場合に、手続きを打ち切ることを指します 。離婚調停が不成立に終わる背景には、主に以下の状況が見られます。

相手方の欠席や話し合いの拒否

家庭裁判所からの呼び出しに対して、相手方が調停への出席を拒否したり、話し合い自体を強く拒絶したりするケースです。当事者が揃わなければ、合意形成の場が成り立ちません。継続しても合意に至る可能性がないと調停委員会が判断し、不成立として手続きを終了させます。

条件の深刻な対立により溝が埋まらない場合

離婚条件の主要な点において双方の主張が激しく対立し、調停委員会の仲介をもってしても、当事者間の溝を埋めることが不可能だと判断されるケースです。特に金銭的な利害が絡む条件や、子どもの福祉に関わる親権の問題は、感情的な対立も深く絡み、不成立の原因となりやすいです。

相手方が離婚意思を断固として拒否している場合

あなたが離婚を強く望んでいても、相手方(配偶者)がそれを断固として拒否しており、今後の話し合いを継続しても相手の意思が変わる見込みがないと調停委員会が判断した場合も不成立となります。

離婚調停が不成立になったら後の3つの選択肢は?

離婚調停が不成立となった後、あなたはご自身の状況や目的に応じて、以下3つの中から次の一手を選択することになります。

選択肢1|再度、夫婦間での話し合いを試みる

一つ目は、再度夫婦間での話し合いを試みる方法です。
調停という第三者を交えた話し合いを経たことで、かえってお互いの立場を冷静に見つめ直すことができる場合もあります。改めて夫婦で話し合い(協議)の場を設けてみるのも一つの選択肢です。もし相手方が離婚調停不成立後の訴訟リスクを考慮し、態度を軟化させたのであれば、協議離婚という形で早期に解決できる可能性もあります。

選択肢2|再び調停を申し立てる

二つ目は、再び離婚調停を申し立てる方法です。
一度離婚調停不成立となっても、再度調停を申し立てることは可能です。ただし、前回と同じ状況で調停を申し立てても、再び不成立となる可能性が高いでしょう。再度の調停を成功させるためには、前回不成立になった原因が解消されたり、状況が大きく変化したりした場合に限定すべきです。

選択肢3|離婚訴訟(裁判)を提起する

三つ目は、離婚訴訟(裁判)を提起する方法です。
協議でも調停でも落としどころが見つからなかった場合、最終的な解決手段は離婚訴訟(裁判)となります。裁判は、当事者双方の合意が必要な調停とは異なり、裁判官が法的な基準と証拠に基づいて判決を下します。判決は強制力があるため、相手が頑なに拒否していても、裁判官が離婚を認める判断をすれば、離婚は必ず成立します。離婚調停が不成立となったら、訴訟への移行を視野に入れ、裁判に勝てるための準備を開始することが、解決するための現実的な道筋となります。

離婚訴訟で解決を勝ち取るための具体的な準備とは?

離婚訴訟では、当事者の感情や主張の強さではなく、民法が定める法定離婚事由の有無と、それを裏付ける客観的な証拠に基づいて、強制的に結論が出されます。
離婚調停が不成立となり、訴訟を提起する場合、裁判で通用する証拠を集め、戦略を立てる必要があります。裁判官が法に基づいて離婚の可否を判断するため、客観的な証拠に基づく立証が必須だからです。

法定離婚事由を証明する証拠を集める

離婚訴訟で勝つためには、民法第770条に規定された以下の法定離婚事由のいずれか一つ以上を、確実な証拠で証明する必要があります。

  • 不貞行為(不倫)
  • 悪意の遺棄(生活費不払いや家出など)
  • 3年以上の生死不明
  • 回復しがたい精神病
  • その他婚姻を継続し難い重大な事由(DV、モラハラ、長期間の別居など)

これらの法定離婚事由がない状態で離婚訴訟を起こしても、裁判所によって棄却されます。
どのような証拠が有効になるか、以下の表で簡単にまとめましたので参考にしてください。

不貞行為 悪意の遺棄 婚姻を継続し難い重大な事由
配偶者以外との肉体関係があったことが分かる写真・LINE・メール等の記録
調査会社に依頼した報告書
生活費不払いの記録
一方的な家出の記録
DVでケガをした場合の診断書
DV・モラハラの様子が分かる録音・録画

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この他に、家庭の放置、不就労、飲酒癖、ギャンブルなどの浪費癖などの問題行動や、配偶者の犯罪行為や服役なども、婚姻生活に重大な影響を及ぼす問題として、破綻事由に該当する可能性があります。これらの事由が社会的な影響を及ぼし、家庭が経済的・社会的に窮地に陥る場合に、婚姻関係の破綻が認められることがあります。

なお、別居期間が短い場合は、上記で示したような婚姻関係の破綻を示す具体的な事情を証明する必要があります。裁判で離婚が認められる別居期間の目安は、あくまで一つの参考として3年~5年とされますが、婚姻関係の破綻を示す事情と併せて主張しなければ、離婚が認められる可能性が低くなります。

訴訟に備えて生活費等を準備する

離婚訴訟に備えて、生活費等を確保すべく準備を進めましょう。別居中であれば、収入の多い配偶者に対し、生活費として婚姻費用を支払うよう請求できます。婚姻費用は、一般的に離婚後の養育費よりも高額になる傾向があります。離婚を拒否し続ける相手方に対して、経済的な負担を突きつける交渉材料としても有効に機能します。離婚調停不成立後、離婚訴訟へ進む場合は、婚姻費用分担請求も同時に検討すべきです。

また、正確な別居開始日を確定し、その時点での夫婦の共有財産をリスト化しましょう。離婚時の財産分与の対象となる財産を確定する基準日は、裁判実務上、原則として別居開始日と定められています。別居開始日以降に、あなたや相手が独自に築いた財産(給与や貯金など)は、分与の対象外となるため、正確に把握しておきましょう。

離婚調停が不成立になったら弁護士のサポートを検討しよう

離婚調停不成立という状況は、ご自身だけで解決を進めるのが非常に困難であることを示しています。次のステップである離婚訴訟は、調停とは比べ物にならないほど専門的な知識と戦略が必要です。弁護士に依頼することで、以下のようなサポートが得られます。

法定離婚事由の有無の判断ができる

弁護士であれば、あなたの状況が法定離婚事由に該当するかどうかを法的観点から正確に判断し、必要な証拠収集のアドバイスを行えます。

訴訟に勝つための戦略を構築できる

弁護士であれば、訴訟に勝つための戦略を構築できます。裁判で離婚を勝ち取るための証拠提出のタイミングや、訴訟で認められやすい条件(財産分与の割合など)の設定をサポートします。

代理人として手続きができる

弁護士であれば、代理人として手続きができます。離婚訴訟になると裁判所と書類のやり取り等が頻繁に発生します。弁護士は、裁判所でのすべての手続きを代理し、裁判官に対して法に基づいた主張を展開できます。
また、相手方との連絡や書面のやり取りを弁護士が代行するため、精神的な負担が大幅に軽減されます 。

離婚訴訟に強い弁護士の選び方は?

離婚訴訟に進む際に、離婚訴訟に強い弁護士を選ぶことが重要です。離婚問題が得意な弁護士は、単に法律に詳しいだけでなく、調停と訴訟の両方の経験が豊富であることが必要です。特に、あなたの主な悩み(親権、財産分与、DV/モラハラなど)に特化した専門知識を持つ弁護士を選ぶことで、より適切な解決戦略を得られます。
弁護士は、あなたの事案が裁判になった場合にどのような解決が社会的に正しいと判断されるかを予測し、その価値観に沿った主張を準備してくれる心強い存在です 。

事務所のホームページ等で過去の離婚訴訟の実績を把握し、その内容を踏まえて選ぶことをおすすめします。
弁護士を選ぶ際には、弁護士費用の確認も重要です。弁護士費用は主に、着手金、報酬金、実費で構成されます。

  • 着手金は弁護士に依頼した時点で発生する費用です。納得できる結果が得られなくても、着手金は原則として戻りません 。
  • 報酬金は、離婚が成立したり、慰謝料や財産分与などで経済的利益を獲得したりした場合に支払う費用です 。

訴訟は調停よりも長期間にわたることが多く、費用も高額になる可能性があります。弁護士に相談する際に、訴訟に移行した場合の総額の費用を事前にシミュレーションしてもらうようにしましょう 。

まとめ

離婚調停不成立という現実に直面し、先の見えない不安を感じることは当然です。しかし、この結果は、ご自身の力だけでは解決が難しかったことを示していると同時に、法律に基づいて裁判で決着をつける時が来たという新しい扉が開いた合図でもあります。どうか一人で抱え込まず勝つための準備に集中してください。

ネクスパート法律事務所には、離婚裁判を多数手掛けた経験のある弁護士が在籍しています。私どもは、あなたが法的に守られ、新しい人生を力強くスタートできるよう、全力でサポートいたします。初回相談は30分無料ですので、ぜひ一度ご相談ください。