
「話し合いや調停を尽くしても解決せず裁判を検討しているけれど、もし負けてしまったら……」 そんな不安を抱えておられる方は少なくありません。離婚裁判における負けとは、単に離婚が認められないことだけではなく、親権を望み通りに決められなかったり、納得できない条件での金銭的な決着を強いられたりするなど、その後の生活に大きな影響を及ぼす状況を指すことが一般的です。
裁判には一定の判断基準があり、どのような場合に不利になりやすいかを知ることで、望まない結果を避けるための対策を立てることができます。法律の考え方を分かりやすく解説しながら、裁判官に正しく状況を理解してもらうための準備や、後悔しないための進め方を詳しくお伝えします。
目次
離婚裁判で負けるとはどのような状態か
離婚裁判における負けは、大きく分けて2つのパターンが考えられますので、それぞれ解説します。
離婚の訴えそのものが認められない
裁判所に離婚を認めないという判断(棄却)を下されることが、形式上の敗訴にあたります。離婚が認められないと法律上は夫婦であり続けることになり、別居していても生活費(婚姻費用)を支払い続けなければならないなどの経済的・精神的負担が続くおそれがあります。
離婚の条件で希望が通らない
離婚そのものは成立しても、条件面で以下のような不利な結果になることは、実質的な負けといえるかもしれません。
- 親権の喪失|子どもとの生活を望んでいたのに、相手に親権が指定される
- 慰謝料の棄却・低額化|相手の有責性を証明できず、慰謝料が認められない、あるいは相場を大きく下回る金額になる
- 財産分与の取りこぼし|相手の隠し財産を特定できず、適切な分配を受けられない
- 養育費や面会交流の不一致|子どもの将来に関わる条件が希望と大きく乖離する
これらは実質的な負けと感じられることが多く、このような事態を避けるためには事前の準備が重要です。
離婚裁判で不利になりやすい4つのパターン
裁判所が離婚を認めない、あるいは希望する条件が通りにくい背景には、法律が定めるルールや証拠の有無が大きく関わっている場合が多いです。
①法律が定める離婚の理由を証明できない
相手が離婚を拒んでいる場合、法律で定められた5つの理由(法定離婚事由)のいずれかに当てはまることを、客観的に示す必要があります。
- 配偶者に不貞な行為があったとき
- 配偶者から悪意で遺棄されたとき|生活費を渡さない・同居の拒否等
- 配偶者の生死が3年以上明らかでないとき
- 配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき
- 配偶者がDV・モラハラをするなど婚姻を継続し難い重大な事由があるとき
例えば、単なる性格の不一致だけでは5番目の事情として認められる可能性が低く、相手に修復の意思がある場合には、離婚請求が退けられるおそれがあります。
②主張を裏付ける客観的な証拠が不足している
裁判では、あなたがどれほど辛い思いをしてきたかを訴えても、それを裏付ける具体的な証拠がなければ、事実として認めてもらうことが難しくなる場合があります。例えば、不貞行為を理由に慰謝料を請求する場合、単に親密なメールがあるだけでは不十分と判断されるケースも少なくありません 。裁判で不貞を認めさせるには、肉体関係を強く推認させる証拠(不倫現場の写真・動画、宿泊を伴う旅行の客観資料、不貞を認めた書面や録音など)を、いかに多角的に揃えられるかが極めて重要です。
DVやモラハラが原因であれば、継続的な被害を示す客観的な記録(診断書や録音など)が求められる傾向にあります。
③自身が離婚の原因を作った側(有責配偶者)である
自分自身が不倫をしたり暴力を振るったりして家庭を壊してしまった側(有責配偶者)である場合、裁判で離婚を求めるのは厳しくなるとされています。有責配偶者からの離婚請求は、裁判所によって非常に厳格に判断される傾向にあります。実務上、離婚が認められるためには、最高裁判例で示された以下の3つの要件を軸に、個別の事情を総合的に検討することになります。
- 相当の長期間の別居|目安として長期の別居が必要になりやすく、事案によって求められる期間は大きく異なる
- 未成熟の子どもがいない
- 相手方が離婚によって過酷な状況にならない
④相手が弁護士を立て、こちらが立てていない
裁判は法的なルールに基づいた手続きであるため、弁護士のサポートがあるかどうかで、主張の組み立てや証拠の出し方に大きな差が出てしまうおそれがあります。相手の弁護士に法的な矛盾を突かれ、不利な状況に追い込まれてしまうことが、負けに繋がる一つの要因となり得ます。
離婚裁判に負けないための準備
離婚裁判で不利な状況を避け、納得のいく決着を目指すためには、裁判所のルールに則った準備を進めることが重要です。
強い証拠を丁寧に揃える
裁判官が判断を下す際の大きなポイントは、どちらの主張がより真実らしいかという点です。その説得力を高めるために、以下に挙げる資料の準備をしましょう。
不倫(不貞行為)の証拠
裁判所が認める不貞行為とは、原則として肉体関係があることを指します。それを証明するのに有効な証拠は以下のものです。単に2人で食事をしているだけの写真や、好きだという言葉だけのやり取りでは、証拠として不十分と判断される可能性があります。
- ラブホテルへの出入り写真(滞在時間がわかるもの)
- 肉体関係を前提としたメール・LINEのやり取り
- 不貞を認める音声データや念書
DV・モラハラの証拠
DV・モラハラは密室で行われるため、継続性を証明することがポイントです。
- DVによってケガをした部位の写真
- 医師の診断書(精神科・心療内科を含む)
- 暴言の録音・録画
- 警察や相談機関への相談実績
- 具体的な被害内容を記した日記|手書きの場合、改ざんしたと疑われないよう、消せないボールペンで毎日書き具体的に記すことが重要
適切な財産分与をするための調査
相手が財産を隠してしまうと、本来受け取れるはずの分与額が減る可能性があります。別居前に以下のコピーをとっておきましょう。
- 相手のすべての口座の預金通帳
- 給与明細・源泉徴収票
- 不動産登記簿(所有している不動産がある場合)
- 証券口座の通知
- 保険証券
相手に隠し財産がないかどうかを確認したいのなら、弁護士を通じて裁判所に調査嘱託を申し立て、金融機関や勤務先から直接情報を開示させることも検討しましょう。
親権を確保するための実績証明
親権争いでは、これまでどちらが主に育児を担ってきたか(監護の継続性)が重視されます。以下のものが有効な証拠として扱われる可能性があります。
- 母子手帳
- 保育園・幼稚園の連絡帳
- 子どもの検診や行事への参加記録
- 日々の生活を記した育児日記
感情的になって子どもを連れ去ったり、相手の悪口を子どもに吹き込んだりする行為は、裁判所の心証を著しく悪化させるおそれがあります。
別居期間によって夫婦生活の破綻を客観視させる
はっきりとした離婚理由を証明しにくい場合、長期間離れて暮らしているという事実は、夫婦関係が破綻していることを示す強力な材料の一つになります。事案によりますが、別居期間が一定程度長期化していることは、夫婦関係の破綻を基礎づける事情として重視されやすいといわれています(ただし、別居年数だけで結論が決まるわけではありません)。
一度裁判で離婚が認められなかったとしても、そのまま別居を続けることで、数年後の再提訴の際に、やはり関係修復は不可能だと判断される可能性が高まると考えられています。
婚姻費用の請求を継続する
離婚が成立するまでの間、原則として、収入の多い側は相手に生活費(婚姻費用)を支払う義務があります。もし相手が離婚を拒否していても、高額な生活費を支払い続ける負担が重荷となり、最終的には相手側から、条件を整えるので離婚に応じてほしいという譲歩を引き出せるケースがあるかもしれません。
離婚裁判における本人尋問で失敗しないための心得
離婚裁判において、裁判官の前で直接話をする本人尋問は、あなたの言葉の信頼性を測る大切な場です。感情的になって相手を罵倒したり、提出済みの書面(陳述書など)と矛盾することを話したりすると、裁判官の受け取り方が悪くなるおそれがあります。
事前に自分の主張を整理し、事実を淡々と話すことが大切です。判断を下す裁判官に自分の声を届ける意識を持つことが、良い印象に繋がりやすいとされています。
質問に対しては、はい・いいえなどの結論から述べ、その後に理由を添えるようにすると、裁判官に伝わりやすくなります。
また、本人尋問の前に提出する陳述書は、あなたの主張をまとめたものです。裁判官が事案を把握するうえで、参照されやすい資料となるため、単なる不満の羅列ではなく、証拠と結び付けて整理し、筋道立てて構成することが重要です。
裁判官が和解を勧める本当の理由とは?
裁判の途中で裁判官から提案される和解(話し合いでの解決)は、決して敗北を意味するものではありません。裁判官が和解を勧めるのは、判決による白黒決着よりも、当事者双方が納得できる柔軟な解決(早期解決や秘密保持など)を図るためです。これにより、控訴による裁判の長期化を防ぐメリットがあります。
一方で実務的にはもう一つの側面があります。それは、裁判官が現在の証拠をみた結果、「このまま判決に進むと、あなたにとって厳しい(不利な)結果になる可能性がある」と判断し、それを暗に伝えているケースです。
裁判官が判決で、あなたの主張を退ける前に「和解という形で少しでも利益を確保してはどうか」と、いわば敗訴によるダメージを最小限に抑えるための出口を提示してくれている場合があるのです。
離婚裁判に負けた後の再起と次のステップ
万が一、離婚裁判で望まない判決が出たとしても、道が完全に閉ざされるわけではありません。負けた後に取るべきステップについて解説します。
控訴による再審査をする
判決に納得がいかない場合、2週間以内に控訴をすることで、上の裁判所(高等裁判所)でもう一度判断してもらうことができます。ただし、新しい証拠がないまま一審と同じ主張を繰り返すだけでは、結果を覆すのは難しいとされることが多い点に注意しましょう。
別居を続けて再提訴を待つ
裁判で離婚が認められなかったとしても、そのまま別居を継続すれば、時間の経過が婚姻関係の破綻を証明する新たな事情となります。数年後に改めて訴えを起こすことで、今度は離婚が認められる可能性が高まると考えられています。
離婚裁判にかかる期間と費用の現実
裁判を戦い抜くためには、どれくらいの時間と費用が必要になるかをあらかじめ把握しておくことが、自分を守ることに繋がります。
離婚裁判の期間
平均して1年から2年程度かかることが一般的です。争点が多い場合はさらに長引く可能性があります。
離婚裁判をする際の費用
裁判所に支払う実費(印紙代や切手代)は2万円程度ですが、弁護士に依頼する場合は以下のような費用が発生します。
- 着手金|30万円〜50万円程度(依頼時に支払い、負けても原則返金されない)
- 成功報酬|30万円〜60万円程度(離婚が成立した際に支払う)
- 実費・日当|裁判所へ出廷する際の日当・交通費・郵便切手代等
まとめ
離婚裁判は、これまでの離婚を決意するに至る経緯を証拠という形でどこまで提示できるかに左右される傾向があります。納得のいく判決を得るには、冷静な現状把握と早めの準備が肝要です。一人で抱え込まず、弁護士に相談しながら、今の自分の状況でどのような対策が取れるのか、現実的な見通しを立てていくことが、何よりも重要です。
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