離婚届を提出する際、「証人が必要と書かれているけれど、誰に頼めばいいのか分からない」と戸惑う方は少なくありません。証人がいなければ手続きが進まないため、悩んだまま提出を後回しにしてしまうケースもあります。

この記事では、離婚届の証人が必要な理由や依頼できる相手、断られた場合の対処法まで、押さえておきたい基本情報をわかりやすく解説します。

離婚届の「証人」とは?

離婚届を提出する際、証人の署名欄があることに疑問を持つ方もいるかもしれません。これは、協議離婚の場合に必要となる法定の記載事項です。

証人は、離婚届の成立要件のひとつとして記載が求められるだけで、特別な責任や義務を負うものではありません。

証人が必要なのは協議離婚の場合のみ

夫婦の話し合いによって離婚する“協議離婚”では、離婚届に証人2人の署名と押印が必要です。これは民法上の要件とされており、証人欄の記載がなければ離婚届は役所で受理されません。

証人は、当事者が合意のうえで離婚を決めたことを、第三者として確認する立場にあります。

実際のところ、証人が離婚に賛成している必要はなく、離婚の意思があることを形式的に確認して署名・押印すれば要件を満たします。

協議離婚を予定している場合は、証人になってもらう相手を事前に選び、記載項目や印鑑の準備などを確認しておくと、手続きがスムーズに進みます。

離婚の証人は2人必要

協議離婚における証人は、1人では足りません。民法763条により、離婚届には証人2人の署名・押印が必要と定められています。

証人の役割は、離婚届を提出する夫婦に離婚の意思があることを確認し、その事実に署名と押印で同意するというものです。

ただし、証人が離婚の内容に賛成する必要はありません。あくまで離婚するという意思が夫婦間で合意されていることを確認すれば十分です。

証人が記入する内容は、氏名・住所・本籍・押印などです。不備があると受理されない可能性があるため、署名や印鑑に誤りがないよう注意しましょう。

万が一不備があれば、市区町村の担当者から証人本人に連絡が入ることもあります。

離婚届の証人が不要なケース

離婚届に証人が必要なのは協議離婚の場合に限られます。家庭裁判所を通じて離婚が成立する場合、離婚届に証人欄の記入は求められません。

たとえば、調停離婚・審判離婚・裁判離婚といった法的手続きを経た離婚では、裁判所の判断や調停調書などがあるため、第三者の確認を証人によって補う必要がないからです。

こうしたケースでは、判決書や調停調書の謄本を離婚届とあわせて提出することで、証人欄が空欄のままでも受理されます。

証人が不要となるかどうかは、離婚の成立方法によって異なります。協議離婚以外の手続きをとった場合でも、形式上離婚届の提出は必要となるため、必要書類の確認は事前に行っておくと安心です。

【関連:協議離婚とは|協議離婚の進め方や流れ・決めること

離婚届の証人は誰に頼むべき?

離婚届の証人は、特別な資格を持っていなければならないというものではありません。ただし、誰にでも依頼できるわけではないため、基本的なルールを理解しておくことが大切です。

親族や友人に依頼するのが一般的

離婚届の証人は、身近な人に依頼するのが一般的です。両親や兄弟、親しい友人など、信頼できる相手であれば問題ありません。

相手が離婚に賛成している必要はなく、当事者同士の離婚の意思を確認したうえで署名・押印すれば十分です。

証人欄には、氏名、住所、本籍、押印を記入する必要があります。個人情報を記載することになるため、関係が浅い人には頼みにくいと感じることもありますが、信頼関係があれば特に問題はありません。

なお、職場の上司や恩師などに依頼する例もありますが、相手との関係性やプライバシーへの配慮も必要です。

無理に頼まず、事情を説明したうえで納得してもらえる相手に依頼するのが望ましいでしょう。

18歳以上であれば誰でも可能

証人には、年齢や職業などに関する厳しい制限はありません。満18歳以上の成人であれば、誰でも証人になることができます。(※2022年4月の民法改正により成人年齢が18歳に引き下げられています)

国籍も問われず、日本人でなくても構いません。外国籍の方でも、日本語が読めて必要事項を理解できる場合には、証人として署名・押印することが可能です。

ただし、離婚届の内容や署名欄の書き方がわからない場合には、日本語が堪能な第三者の補助が必要になることもあります。

証人に対して特別な責任が発生することはありませんが、記載内容に虚偽があると、場合によっては公正証書原本不実記載等罪などに問われる可能性もあります。

内容をきちんと理解したうえで署名してもらうことが重要です。

離婚の当事者は不可

証人として署名・押印できるのは、あくまで第三者です。離婚する本人が自分自身を証人とすることはできません。

夫婦の一方がもう一方の証人欄を記載することもできず、それぞれ独立した第三者2名の署名・押印が必要です。

また、未成年者は証人になれません。成人に達していない子どもが署名しても、離婚届は正式に受理されません。

証人欄に不備があると、離婚届そのものが無効扱いとなることがあります。提出後に役所から連絡が入り、証人の訂正や再提出を求められるケースもあるため、証人の条件を事前に確認してから記入を依頼することが大切です。

離婚届の証人が見つからないときの対処法

離婚届に記載する証人は、基本的に身近な人から頼むことが多いですが、事情によっては誰にも依頼できないケースもあります。そうしたときは、第三者に有償で依頼する方法も選択肢のひとつです。

離婚届証人代行サービスを利用する

証人を身近に頼めない場合、証人代行サービスを利用することができます。行政書士事務所や代行業者が提供しており、一定の費用を支払うことで、証人欄の署名・押印をしてもらえます。

費用の相場は1人あたり5,000円〜1万円程度で、2人分をまとめて依頼できるところもあります。利用時は、本人確認書類の提出や、離婚の意思が確認できる資料の提示が求められることがあります。

ただし、証人代行サービスには法的な規制が明確にあるわけではないため、依頼先の信頼性や実績をしっかり確認してから利用することが大切です。安易に匿名業者を利用すると、離婚届が受理されない可能性もあるため、注意しましょう。

弁護士や行政書士に依頼する

証人欄の記載について不安がある場合は、弁護士や行政書士に証人を依頼する方法もあります。本人確認や意思確認の手続きがしっかり行われるため、確実性が高く、安心して手続きが進められます。

とくに、離婚手続き全体を法律専門家に依頼している場合は、そのまま証人も引き受けてもらえることがあります。

証人としての署名だけでなく、離婚協議書の作成や内容のチェックなども併せて対応してもらえるケースが多いため、今後のトラブル防止にもつながります。

費用は事務所によって異なりますが、一般的に証人1人あたり10,000円〜1万5,000円程度が目安とされています。代行業者より高めになる傾向はありますが、法的専門知識をもとに対応してもらえる分、安心感は大きいと言えるでしょう。

離婚届の証人を頼む時のマナーと注意点

証人は、離婚届の提出にあたって形式的に必要な存在ですが、記載内容に不備があると届出が受理されない可能性もあります。スムーズに進めるためには、基本的なマナーやルールを理解したうえで依頼することが重要です。

離婚届の証人になってもリスクはない

証人と聞くと「責任を負うのでは…」と心配される方もいますが、離婚届の証人に法的な責任が生じることは基本的にありません。

証人の役割は、夫婦が合意のもとで離婚を決めたことを確認し、それを署名・押印によって示すことです。

離婚の内容に口を出す立場ではなく、あくまで事実確認の一端を担うものです。たとえば、後日トラブルが起きたとしても、証人が責任を問われることは通常ありません。

ただし、本人の意思に反して勝手に署名された場合や、虚偽の記載があった場合には、刑法上の問題が生じる可能性もあります。

署名を依頼する際は、事情を丁寧に説明し、納得したうえで記入してもらうことが大切です。

署名の代筆はできない

証人欄は、本人が自署し、押印する必要があります。たとえ家族であっても、代筆や印鑑の代理使用は認められていません。

本人の了承を得ずに署名欄を記入したことで、離婚届が受理されなかったり、虚偽記載として扱われたりするケースも見られます。記載に不備があった場合、市区町村の担当者から証人本人へ連絡が入ることもあります。

住所や本籍、氏名、押印など、書き間違いや記入漏れがないかをあらかじめ確認し、提出前に本人にも内容を見てもらうと安心です。

記入用の印鑑についても、朱肉を使用するタイプを使い、シャチハタなどのスタンプ印は避けましょう。

離婚の証人についてよくある質問

離婚をするのに必ず承認は必要?

協議離婚を成立させるには、離婚届に証人2人の署名・押印が必要です。これは民法763条に基づく手続きで、本人同士だけの合意では受理されません。

証人は、離婚の内容に同意するわけではなく当事者に離婚の意思があることを確認した人として署名します。

つまり、離婚そのものに口を出す立場ではなく、あくまで事実の証明をする人です。

万が一、証人欄が未記入のままだと、役所では離婚届が受理されません。署名・押印があって初めて正式な書類として扱われます。

自分の子供も離婚届の証人になれる?

満18歳以上であれば、お子さんも証人になることが可能です。証人には、一定の判断力が求められるため、年齢制限が設けられています。

2022年4月の民法改正により、成年年齢は18歳に引き下げられたため、現在は18歳以上の成人であれば、証人になることが可能です。

証人が親族かどうかは関係ありません。友人や知人など、成人であれば誰でも証人になれます。ただし、本人が署名・押印することが必須です。代筆や印鑑の代理使用は認められていません。

虚偽の記載があると、離婚届が受理されなかったり、証人本人に市区町村役場から確認の連絡が入る場合もあります。

証人をお願いする際は、あらかじめ事情を説明して同意を得たうえで正しく記入してもらうことが大切です。

離婚の証人欄に印鑑は必要?

署名とともに印鑑の押印も必要です。これは本人確認の一環であり、離婚届の形式的要件となっています。

印鑑は認印で構いませんが、シャチハタ(スタンプ印)は避けましょう。ゴム印は時間が経つとインクが薄れて印影が不鮮明になりやすいため、役所で受理されない可能性があります。

また、印鑑がにじんでいたり、枠からはみ出していたりすると、訂正を求められることがあります。くっきりと押印することが大切です。

なお、証人の本人確認書類(免許証など)の提出までは求められませんが、記載内容に誤りがあれば役所から連絡が来ることもあります。正確な記入が求められます。

まとめ

離婚届を提出するには、夫婦本人のほかに2名の証人が必要です。証人は親族でなくても問題なく、友人・知人などでも構いません。

原則として満18歳以上の成人であれば証人になれますが、自治体によっては従来どおり20歳以上を求めるところもあるため、事前に確認しておくと安心です。

証人は、離婚の内容に同意する立場ではなく、あくまで“本人たちの離婚意思を確認した第三者”として署名・押印する形式的な役割を担います。

ただし、署名・押印は本人の手によるものでなければなりません代筆や虚偽の記載があると、離婚届が無効になる可能性があります。

また、証人欄の記載内容に不備があると、提出後に役所から証人本人へ確認の連絡が入ることもあります。

スムーズな受理のためにも、証人には事前に事情を説明し、了承を得たうえで依頼することが大切です

離婚届は提出後の修正が難しい書類です。証人の選定も含めて、慎重に準備しておきましょう。必要に応じて、弁護士など専門家に相談するのも一つの方法です。